【第42話】凡ミス
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト・マルマロン 透明人間。
ハキマ・クォーツ メイトの同級生。女。
スピネル 男性嫌悪。
イト メイトのゲーム相手。
ドン!
小鳥が囀るような清々しく晴天の春の朝、メイトは身体の側面の強い衝撃にて目が覚めた。
「――っ〜……」
メイトは痛みを感じながら体を起こす。暫しボーと呆けた後、状況を理解する。
――あ、落ちたのか……。
体の横にはフカフカのソファがあり、昨日ここで寝たことを思い出す。
俺は欠伸をしながら立ち上がり、周りを見る。
違うソファではハキマがだらしなく桃色の髪を乱しながら寝ており。
そして、部屋に唯一あるベットでは、部屋主であるスピネルがスヤスヤ礼儀正しく寝ていた。
「……ふぁ……顔洗お」
俺は眠気に対して、こういうのは顔洗えば消えるという答えで、顔を洗うことにした。
洗面台までノソノソ移動し、顔を洗う。
まー透明だし臭いもないから洗う理由はないけど、気合い入れるためにな。
前世は生粋の引きこもり予備軍だったメイトにとって、汚い=臭いであるので、臭くなければ汚くなかった。
冷たいはずの水で顔をバシャバシャした後、ついでに髪も洗い、顔と髪を近くにあったタオルで拭く。
「ふぅ、綺麗さっぱりいいね!」
眠気はすっかり冷め、俺は今日から日課のストレッチをする。
「さて……今日から授業か……」
俺は肩を回しながら部屋に戻る。するとハキマとスピネルは身体を起こしていた。
「あ、すまん、起こしたか?」
「ううん、今起きたよ、おはようメイト」
「おぅ、おはヨーグルト」
俺とハキマは軽く会話する、その後、ハキマも顔を洗いに行った。
そして残ったは、そう、俺とスピネルだね。
「…………はぁ……」
はい、朝一番のスピネルさんのため息頂きました! 俺をしっかり見てからのため息でした!
「なんだよ……」
「いえ、あなたのローブを見た瞬間寒気が……風邪かしら」
「俺の存在をばい菌扱いしているのかそれは」
「あら、そんなこと言ってないわ。そう思うのは自分はそう思われるような存在だと自覚してるからじゃない? 良かったわ自覚しててくれて」
「言ってるだろ、自覚ならもうそうなんだろ」
昨日と変わらず、なかなかそりが合わない二人、スピネルは男性嫌悪しているので、メイトのことが嫌いである。
「ま、どうでもいいけど、てか見ないで」
スピネルは俺を卑下する視線を向けながら、部屋を出て行った。
俺はそんなスピネルにため息を吐きつつ、前を見る。
「さて……今日会えればいいけどな……」
俺はそう呟いた後、部屋を出て、廊下を歩いて"部屋自体"を出て行った。
――――――――――――――――――――
「え? 今日来ないってこと!?」
各々色々終わった後、昨日と同じソファやら低いガラス作りの机やらがあるスペースにて、朝ごはんを食べていたときのこと。
――ハキマは食べていたパンを持ちながら驚く。
「あぁ」
俺もテキトーに学食から持ってきた飯を食べながら言う。
「な、なんで!? 学校だよ!? 普通行くよ!?」
「……確かに、授業への参加は強制ではないものね」
メイトは今日、授業に出ないと言った。
ハキマは少し身を乗り出して聞いてくる。スピネルはスープを飲みながら呟く。
「そ、参加の義務がないなら、いかない」
「確かに、周りに合わせるのって大変だものね、でもそうしないといざ授業出たときに困るわよ? 魔法なんて、ほとんど対人でしょうし」
「『ネルネル』は行くんだよね?」
「えぇ、後々困るのは嫌だか――」
「ちょ、ちょっと待って」
俺は話を止める。
「ネルネルってなに?」
「え? スピネルのあだ名だよネルネル、可愛くない?」
ネルネルさんはそれに賛成したんですか?
「なに? ねるね○ねるね? 練ってたら色変わりそうなあだ名だな……」
「ねるね……? なに?」
ハキマは首を捻り、スピネルは疑うように俺を下から見る。
「いや、知らないならいいけど」
反応なし……本当に、日本人であるイトではない、か。
「ま、まぁ話戻すけど! 本当に行かないの?」
「そうだな、別に、俺はここに授業を受けに来たんじゃないしな」
「え?」
ハキマとスピネルは揃って首を捻る。俺はそれを一瞥した後、答える。
「俺はここに、"ゲーム"しに来たからな」
二人は目をパチパチさせ、固まる。
「えゲーム? どういうこと?」
ハキマが聞いてくる。スピネルは真顔で俺を見つめる。
「ま、詳しくは言えないけどな、あとコレは他言無用で頼む」
「う、うんいいけど……ゲームするために入ったってすごいね……」
「別にどうでもいいことだよ、忘れてくれ。ってわけで俺は今日いかない」
「……まぁメイトがいいって言うならいいけど……」
ハキマは不服そうに口を尖らせる。スピネルは真顔で聞いてくる。
「あんたのそのゲーム、"勝てるの"?」
その質問の意図は分からないが、ただメイトは反射的に答えていた。
「勝つさ、ゲームは勝たなきゃ楽しくないだろ」
俺は飯を食べ終わり、立ち上がり、二人を上から見る。
「それに、ロリ校長も言ってただろ、諸君らは自由だみたいな。次は何をするのか、俺が考えた結果だ」
二人は呆けたまま、俺を見る。それを横目に――。
「じゃ俺、やることあるからもう行くわ」
そうして、食器をキッチンの引き出しに入れる。ここに入れたものは食堂の厨房に転移されるらしい。
「ど、どこ行くんですか?」
ハキマが少し困惑しながら質問する。俺は半身だけ振り返り、考えた後、答える。
「とりあえず、八階以降を立ち入り禁止にしたやつらと会ってくるわ」
俺はそう言い、「へっ?」と首を捻るハキマと眉を寄せるスピネルを残し、部屋を出て行った――。
――――――――――――――――――――
メイトは一人、階段を登っていた。
――いくら校則ではないとしても、授業に参加するのは当たり前で、さらに初日とならば尚更である。
なら、それを利用する他ない。
「ここが、六階か……」
俺は階段の途中にある『6』を読みながら登る。
「八階に上がったら退学……気をつけないとな」
八階を立ち入り禁止にしたやつ、イトと関係があるのか分からないが、気にはなる――。
――俺は階段の登り切き、振り返る。
「さて、張り込みますか……」
俺は近くの壁に背をつける。
……初日、授業に出たいと思うのは誰でも同じなら、八階を立ち入り禁止にしたやつも同じこと。ならば必ずここを通るはず。
下の階に降りるには、俺が登ってきた階段か、その隣のエスカレーターしかない。
階段を使ったら普通に俺と鉢合わせるし、エスカレーターを使っても、エスカレーターが七階より上に行った瞬間俺がボタンを押せばこの七階で止まり、俺と鉢合わせる。
会えればいいけど……会えなさそうだなー。
八階を立ち入り禁止に、誰とも会いたくないと言うことがビンビンと伝わってくるルールを作りやがって……。
「ルール」
俺は腕を構えながら呟く。そして、光が現れて現状生徒によって作られたルールの数々が全て閲覧できる。
「さて、これか……」
俺は『八階以降上がっては禁止』と言うルールを見る。
やはり、どう見てもそれ以上のことは読み取れない。
――が、ふと気がつく。
その文の端に、違和感があった。やけに隙間が狭いのだ。
俺はまるで、ただの汚れを払うように、光に触れた。
「――」
文字はスライドし、新しい文字が現れた。
『ただし、この文字の意味が分かる者は、立ち入りを許可する』
その後ろに、まごうごとなき日本語が見えた。
『『自分がゲーム相手だ』』
――これは、気づかなかった。マジでやばかった。
俺は緊張と不安が津波のように押し寄せた後、静かに冷静になる。
もし俺が立ち入り禁止ルール気づかず、八階に上がっていたら退学になっていた、ということはもとから分かっていたが、この"意味が分かるならセーフ"があるせいで、もし登ってしまった時、俺が"そう"だと言ったようなもの。
「ま、マジでやばかった……スライドできるのかよコレ知らねぇよ……でもこれで確定だな」
俺は安堵のため息を吐き、ニヤと笑う。
これで上の階にいるやつが、イトであると確定した。あとは会うだけだ。
会えれば、日本語が使える点やゲーム相手など、俺とイトしか知らないような情報を知っていることを証拠すれば、勝てる。
「おやぁ? 意外と勝てるかぁ?」
俺がそう、呟いた瞬間、ハッとする。
いかんいかん、慢心するな、何があるかも分からないんだから、最後までしっかり! てかなんか恥ず! 一人で何やってんだろ。
俺は羞恥心で顔をパタパタ仰ぎながら周りを見る。
人いないな、良かった。
そう、一考した後、エスカレーターに視線を移す。
その瞬間、俺の中に、何かが動いた。心の中で、ザワと触る悍ましい虫が。
「……」
――人、いなすぎじゃね――?
その瞬間、扉が開く音がした。静寂の中に発生した無機物的な音は何にも遮られることなく、そのままメイトの耳に届く。
メイトはまるで機械のように、目を広げながら振り返る。
そこには、一人のローブを纏った女の子が俺を見ていた。
その子はドアから覗くように、浮き上がるローブを見た後、まるで透明人間であることを理解したように納得した。
「君が、"ゲーム相手"かな?」
俺の脳内は、戸惑いを理性で払拭し、思考を始める。
――誰? いやなぜバレた? ここは七階、バレるのは八階からだ、なぜ? いや、そもそもこいつがイト……? いや、とりあえずここは誤魔化すしか……。
「ゲーム相手? なんのことだ?」
「あれ? 違ったかな? あの人が言うなら絶対君が"そう"なのだが」
あの人……? いや、色々考えるのは後だ。
「うーん、人違いじゃないか? 俺急いでるのでもう行きますね」
ひとまずここは一時撤退だ。
「嘘だね」
そいつは最初から分かっていたと言うように、俺の心を悍ましく包むような声音で呟く。
「……嘘じゃないですよ、なんで嘘つくんですか」
――マズい、マジでやばい。こいつ、ほぼ俺で確信している。
俺は早く離れようと、足を早めて階段を降りる。
「いや、嘘だよ。だってここ……」
俺は目の前の状況に目を疑った。透明で意味のない瞼を閉じた後、ゆっくり開くが、ずっと"見えている"ので意味はない。
「は、"八階"だと……」
階段の階を表す文字は、八階だった。つまり、ここは――。
「うん、ここは八階だよ」
なぜ、いや、これは……もう――。
「それで、なんで君はここに入られるのかな?」
そいつは分かりきった質問をメイトに投げかける。メイトは頭に浮かぶ二文字が満ちていた。
『敗北』。
負けた。ルールがあり、あの意味が分かる人しかここに入れない。つまり、この人間は日本語の『自分がゲーム相手』と理解していると言うこと。
これほど簡単かつ単純に"負ける"など、俺は思っていなかった。
大方、俺が六階を登る時洗脳魔法でもかけて、七階の記憶を飛ばした、とかだろう。そう考えれば、思えば七階の記憶がない……。
俺は愉快な心や楽しむ心が崩れていき、俺の立っている場所が細くなっていく。
俺はそれを止めることはできず、ただ今、後悔だけが満ちていた。
もう、負け――――。
『否ッッ!!』
俺は叫んだ、心の中で。
「なぜいれるのかって? それは俺がゲーム相手だと理解できているからだろうな」
俺は努めて平然と、女に返す。女はニコッと笑った後、口を開く。
「じゃあ君が"そう"なのだね――」
「"そう"とは? 俺はただ、七階のやつとゲームしに来ただけなんだけど、ここ八階なら用はない」
女は口を開けて驚く。
ふむ……ここから言い訳で誤魔化す気か。
女は、見えないメイトの顔を伺ってから、愉快に笑う。
――では見せてみよ、どうやって言い逃れるのかを。
ご精読ありがとうございました!
毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




