【第37話】出発点
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト・マルマロン 主人公。透明人間。
ハキマ・クォーツ メイトの同級生。
「や、やばいよ〜!」
すでに誰もいない整備された歩道に、ブーツの石を打つ音をたてながら走る女の子がいた。
走りながら背負う鞄を肩に乗せ直す。
「遅刻はヤバイよ〜、入学初日に遅刻は終わってるよ〜いじめられるよ〜多分」
薄いピンク色のショートヘアで整えられた髪を翻し、頬を紅潮させながら汗を垂らす。
「転移魔法ってあんなに難しいの〜? 予想外の時間ロスだよ〜……あ!」
すると、遠目に『神聖アルディア魔法学校』の紋章が見えた。腕時計を見ると、まだ時間はありそうだ。
「よ、良かった〜、間に合った〜……」
少女は息切れしながら正門を潜ろうとする。と、その時。
「――あだっピッ!?」
何かに当たった。少女は疲れていたのもあり、反動で後ろに転ぶ。
「っいったぁ〜……あれ?」
少女はぶつけたお尻を摩りながら前を見る。が、自分を疑う。
「何かにぶつかったような……あれ?」
少女は目を白黒させながら困惑する。
すると、"手が伸ばされた"。
「すみません、大丈夫ですか? 俺は透明人間です」
――――――――――――――――――――
メアリーやシャル、ハルさんと別れ、やってきた魔法学校。
俺は、異世界で初めて会った地球人とここでゲームをすることとなっている。会ったと言っても顔を合わせた訳ではない。
題して『どちらが先に「お前がそうだ」と証拠を出せるかゲーム』。
あっちの理由は不明だが、俺と隠密に接触しようとした、それは俺に悟られると困るからだろう。ならばもちろんそれは俺にとっていいことではなかろう。
だが、あっちは俺のことは分かっていない雰囲気だったし、俺もあっちのことは何も知らない。
ならば好都合。
互いの姿や声名前も分からないならば、必然的に探し合う流れになるだろう。
俺は楽しみという感情を押し殺しながらゆっくり、冷静に意識が覚醒した。
――必ず見つけてやる……。
次の瞬間、背中に衝撃があった。
「――あだっ!?」
俺はトトトとバランスを崩すが、すぐに体勢を直し振り返る。
そこには薄いピンク髪の女の子がお尻を痛そうに摩っていた。
あ、ぶつかったか。俺透明人間だし見えなかったか。
「すみません、大丈夫ですか? 俺は透明人間です」
俺は見えないだろうなと、自覚しながら手を伸ばした。少女は突然の声に瞼をパチパチさせる。
「……え?」
「あ、俺はここにいます」
俺は少女の肩をポンと叩いた。少女は「ひっ!」と驚いてから状況を理解し始めた。
「ホントに透明人間……? そんな人いるの?」
「いるんだなこれが……それより腰大丈夫ですか?」
「え、あ、大丈夫です、ありがとうございます」
すると、少女はまるで俺が見えるのか如く俺の手を掴み立ち上がる。
「あ、俺のこと見えるんですか?」
「え? ……」
少女は自分が相手の見えない手をなぜ掴めたのか、分からなかった。
「いや、見えないです……でもなんとなく、そこにあるような気がして」
ふむ、山賊で最強のライカと同じような、"感覚"のようなモノだろうか。
「そうなんですか……」
俺は一人で納得しながら手を離し、訊く。
「それで、もしかしてここの生徒さんですか?」
「え、ま、まぁそうです……一応今日からですけど」
少女は頬をぽりぽりかきながら照れくさそうに言う。
「俺も今日からですよ、なんだ、同級生でしたか」
「そ、そうなんですか! 良かった〜」
先輩とかだったら怖かったと慄いていた少女は安堵する。
「てかっ! それなら早く行きましょ! 時間やばいです!」
すると少女は走りだした。俺もそれに合わせて振り返る。
俺は目の前の建造物に声を失った。
まるで城。天に突き刺さるような途方もない大きさに、絢爛豪華な装飾が施さられた石作りの城壁や、それを囲う広大な庭。城壁内に存在する森や泉さえも、学校の一部として存在していた。
門をくぐり、本校に入るまで数十分歩くほどの前庭に、足が震える。
こんなバカデカい建物が、俺の学校か……!
「フッ――」
俺は癖で鼻で笑いながら、少女の後を追った。
――――――――――――――――――――
だだっ広い前庭の奥に進むと、長机や椅子があった。外には似合わない豪華な模様が施されたそれは、異様な雰囲気を放っていた。
ちょうど、俺と桃色の髪の少女の前に二人組がなにやら手続きを終え、城とは違う建物に入って行った所だった。
「あ、あのっ! すみません遅れました!」
少女は机に座っていた正装をした女性に話しかける。
「お名前は」
女性は真顔で聞く。底知れない何かを隠しているようで不気味である。
「『ハキマ・クォーツ 』です、番号は――」
何やら色々やることがあるらしい。
何それ番号とか聞いてないけど……まぁいいか、こっちはこっちでやろう。
俺はハキマの話しかけた女性の横にいる、もう一人に話しかける。そして、その容姿はハキマの相手をしている女性と全く同じであった。
「すみません……『メイト・マルマロン』です」
俺は小声で話しかける。
「はいではっ――」
すると、人形のようだった女性は固まり、その後ガクッと項垂れる。
「は? え? あの大丈夫ですか――?」
俺は心配で声をかけると、女性は顔を上げた。
「お待ちしてました、メイトさん」
すると、今までの不気味さは消え失せ、女性は優しく微笑んだ。
「あ、どうも」
「私は繰るい主です。少し、確認してもいいですか?」
「いいですけど……」
確認とは? てか繰るい主ということはやはりこの女性のようなモノは人形なのか……すげぇ人みたい。やはり魔法学校、魔法でいろいろ効率化されているのか。
すると、女性は手を机の上に出す、と、同時に紙が出現した。
「えー、メイトさんの情報に間違いないか、確認します」
――持ち上げたものは透明になる。
他人は自分の事を魔法感知で知覚できない。
体温はない。
体臭はない。
『動かす魔法』のみ使用可能――。
「――などですが、間違いありませんか?」
まぁ、どれも間違いは言ってないが……。
「正しいです」
「分かりました、確認ありがとうございました。ではこちらをお受け取りください」
すると、女性は紙を消し、代わりに服が出てきた。
俺はそれを受け取り、広げる。
それは大きな黒色のローブであった。胸元には先ほど門で見た龍の紋章が刺繍されてあり、すぐに制服だと理解する。
一応、制服はあるようだ。
完全に私服でいいと思っていたが、一応あるのか、まぁローブだけ学校指定なのかな。
「この学園では、自室以外ではそのローブを必ず纏ってもらいます、それはこのアルディアの生徒であるという証です」
「なるほど、分かりました」
まぁ制服と言う判断で間違い無いだろう。しかし、これは……。
俺は服をさらに広げる。するとハサっと服が垂れる。そしてその裾は地面についた。
「長すぎませんかこれ……」
これ着たら普通にずっと裾ずりながら歩くことになるぞ……。
「メイトさんは着ているものも透明になる、しかし一部が地面に触れていたら透明化しない。なのでメイトさんには自分の居場所を周りに示すためにわざと長い裾に作らせました」
なるほどね、俺の姿は見えないからその対処としてか、まぁいい。
「分かりました」
俺はすでに透明になったローブを一度机に置いてから、裾を地面から離さないように持ちながら着替える。
顔を通すと、違和感を感じる。
「おぉ……なつかしーこの感じ」
異世界に来てから約一年ぶりの、透明じゃない服であった。
「では、以上ですので、こちらから式場にお進みください」
女性は頭を下げ、隣の大きな建物を指しながら言う。俺はお礼を言ってから女性の前を立ち去った。
……さて、と。
俺はバサバサとブカブカのローブの袖を振りながら振り返る。
「あ、待っててくれたんですか? すみません」
先ほどの桃色の髪の少女、ハキマ・クォーツがトテトテ急足で駆け寄ってくる。彼女もローブを貰ったようで、今はそれを着ている。裾は地面についていない。
「いんや、ちょうど今終わったから」
「ふぅ、じゃ行きますか」
するとハキマはスタスタ俺の横を通って小走りで式場に向かう。
……ふむ。
「悪い、ちょと待ってて」
「え? ちょ――」
「すみません、少しいいですか?」
俺はハキマを置いて足を戻し、先ほどの女性に話しかける。
「はい、なんでしょうか?」
「俺以外に特殊な受験を受けた女の子いると思いますが、名前分かりますか?」
女性は少し視線を惑わせた後、口を開く――――が。
「早く行きましょ! 時間やばいですよ!」
いきなりハキマに腕を掴まれ引っ張られる。
こいつ、また俺の腕を……いや、今はローブ着てるから場所は分かるのか。しかし……。
「……まぁそうだな。すみません、やっぱりいいです」
俺は名前を聞くのは諦め、その場を立ち去った。
――――――――――――――――――――
広い前庭の、式場まで続く石道をハキマと並びながら歩く。
メイトは絶え間なく考えていた。
――可能性はある。
単純に、あんなタイミングで話を止めに入るだろうか、時間に追われてるとは言え、会話をあんなぶつ切り普通ではない。
ではなぜそんなことをしたか、それは『名前を知られると不都合』だからか。
となると、こいつ『ハキマ・クォーツ』が例の悪魔……『ラプラスの悪魔』……『イト』の可能性が高い。
『イト』とはメイトが考えやすくするために名付けた仮名である。英語のitから取った。
「メイトさんはどこから来たんですか?」
「いえ、名前もないような小さい村からですよ」
「そうなんですか! 私も片田舎出身で――」
俺はテキトーに会話しながら考える。
そもそもここに転移した瞬間背中に当たるなど、あり得るだろうか? 俺と関わりを持つためにわざと、なんてこともある。
『未来が見えるなら誰かの背中に当たるなんてあるわけがない』という俺の勘違いを狙った説もある。
実際、イトであるなら結構痛手、いきなり俺の特性を全て知られてしまった。
俺はハキマの顔を見る。
薄桃色で肩ほどまでで整えられた髪、子供のような輪郭で丸っこく、幼く見える。整った容姿で可愛い。
こんな優しい人がイトなのか?
そんな思考の後、思い出す。
いかん、俺はここに仲良しこよしの青春をしに来たんじゃ無い。
俺は"ゲーム"をしに来たんだ。
ここは単なるゲーム会場。それ以上でもそれ以下でもない。
疑え、ただ疑え。それしかない。このゲームは疑って初めて始まる。
観察と考察、それを確証を得るまで繰り返すまで――――まぁ、そう急ぐことでもないか。
俺は深呼吸して落ち着く。
「俺、メイト・マルマロン、これからよろしく」
俺は隣を歩くハキマに言う。ハキマは慌てたように言う。
「あ! よろしくです〜、私はハキマ・クォーツです!」
「うん、よろしく」
間違えるなよ? いくらゲームと言っても他人は利用しない。
利用できるモンはなんでも――なんてしない。そんな打算的で利己的な考え方はしない。
俺がするのは"疑うだけ"。そんなことをしてしまえば楽しむことは忘れてしまう気がするから。
――楽しむことは勝つことと同じくらいの大切なのだから。
『楽しんだモン勝ち』ならぬ『楽しんで勝ったモン勝ち』である。
「……フッ、まーテキトーに楽しくやってこうな」
「へ? ああそうですね! 楽しくやりたいです!!」
ハキマは胸あたりでグッと拳を作る。俺はローブのポッケに手を突っ込んで、式場に向かった。
ご精読ありがとうございまた!
毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




