【第35話】メイトの願い
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト 主人公。透明人間。
メアリー・フォレスト・レンズ 家庭教師。
シャル・マルマロン メアリーの教え子。
ハル・マルマロン シャルの母親。
隣で寝るメアリーは、スッと布団を持ち上げて顔の上まで引き上げた。
俺とメアリーは、布団という薄い壁の世界に二人きりになった気がした。
「お話って?」
俺が訊くと、メアリーは真剣な眼差しで口を開いた。
「私は、あなたにまだ返事をしてません」
「え? 返事?」
「あなたは私に好きと言ってくれたのに、私は何も言ってません」
あー、そのことか。
「ハハっ、随分長いこと待たされたな……あれ半年前ぐらいだろ」
「ごめんなさい」
「良いって、そんな急かすもんでもないだろうし」
急かして得た返事なんて、本物ではないだろうから。
メアリーはメイトに手を伸ばし、メイトの手を掴む。俺はドキッとしながら顔の横に握られた手を持ってくる。
メアリーの目の前に、透明なメイトの手を握る自分の手だけが見える。
「私は魔法が嫌いです。本当の私を覆い隠そうとするから」
魔法使いであるメアリー、誰も見えなかった、女の子であるメアリーの姿。それもメイトはその包容力や親しみやすさや感情で、それを眼前に露わにした。
「誰にも言わなかったことも、メイトには言える」
それはメイトが無意識下で思っていた、メアリーに魔法以外で自信を持って欲しいという願い。
「私は魔法以外取り柄がない、だから、それを見つけたい」
メアリーは目を輝かせ、呟く。
「私から魔法を取ったら何が残るのか、知りたい、だから私は家に帰る。そこで必ず"私"を見つけます……だから――」
メアリーはメイトの手を握る。
「だから、それまで待っていてください」
メアリーは微笑んで、メイトの手を強く握る。
届かないことは分かっている、だがそれでも、自分の想いが熱として、メイトに伝わることを願って握る。
「私が"私"を見つけられたら、必ず会いに行きます。だから返事はその時まで待っていて欲しいんです」
メアリーはメイトのことを想った最大級の言葉を選択して、願いを伝える。
メイトは握られた手の、強い感覚を感じながら、答える。
「別に来なくていい」
「……え?」
メアリーは驚愕して後、納得して、理解する。
「で、ですよね……待っててほしいなんて、めんどくさい女ですよね……」
メアリーは急激に熱は冷めて、代わりに燃えるような後悔が押し寄せる。
「ごめんなさい、私はまだまだ未熟なので、何も分からなくて――」
次の瞬間、手は強く握られる。
「――ッ」
「未熟じゃないだろ、優しいし可愛いし強いし、いつもクールぶってるけどたまにうぶなとこあるし、俺のボケでたまに笑ってくれるし、口下手だけどちゃんと伝えられるし、俺よりすごいこと山ほどあるだろ」
「……え?」
俺はメアリーの手を両手で握る。
「メアリーはゆっくり自分を探せばいい、見つけたらそれを大事にしていればいい」
メアリーは冷めた感情から、ゆっくり温かくなっていく。
「会いに行くから、いつか必ず。メアリーが世界のどこにいても、探し出して、必ず会いに行く――だからメアリーはそれまで、待っててくんないかな?」
「私が……待つ?」
「あぁ、どれだけかかるか分かんないけど、俺のやるべきことが終われば必ず会う。それまでにメアリーはメアリーのやるべきことをやっててよ」
「私が言わなきゃならないのに、私が待つんですか?」
メアリーは掠れる声で呟く。
「バカ、俺が聞きたいから聞きに行くんだよ、メアリーは今、言いたくないんだろ? なら、わざわざ俺んとこ来なくても、俺から行くからメアリーはゆっくりしてていいよってこと」
「そ、そんな……私、メイトを待たせてばっかりで……」
「そりゃめちゃくちゃ待ってるけど……フッ、別に苦じゃないし、何よりあれだ、俺、待ってるのも嫌いじゃないから。それにメアリーが迷ってるのに無理矢理訊くのも俺のポリシーに反するし、要するに、好きなやつのタメならなんでもしたいってこと」
メアリーは好きと言う言葉に顔を赤くする。
「まぁ、だから……全然問題ないから、メアリーは待っててくれ」
メアリーは顔を赤くしたままモゾモゾと動き、もう片方の手を出す。そして、俺の手を握る。
「待っています、ずっといつまでも。必ず会いに来てください」
「あぁ、必ず会いに行くさ――――」
そして俺たちは、月明かりが差し込む部屋で、手を握り合いながら、眠りについた。
――――――――――――――――――――
春は出会いと別れの季節。
「準備はいい? 鞄持った?」
「うん持ったよ、全部持ったから」
ハルさんは魔法陣の上に立つシャルの体をベタベタ触りながら訊く。シャルはうざったそうに言う。
「じゃねメアリー先生、メイトも楽しかったよ」
「えぇ、頑張ってくださいね」
「おう! 俺も数日間の妹を堪能できて良かったぜ!」
今日はシャルが家を発つ日、つまり学校初日である。今となっては恒例の庭の魔法陣で、これから学校に送られる。
俺は抱き合うメアリーとシャルを見ながら、ふと横を見る。
桜、のようなピンク色の花を咲かせる木が、そこには生えている。
春風が吹き、桜が舞う。それはシャルの門出を称賛するような美しさであった。
「フッ……」
俺はいつもの感嘆から漏れる笑い方で、シャルとメアリーに抱きついた。
「頑張れよ」
「うん!」
シャルは戸惑った後、すぐに俺にも手を回す。
そうして、俺とメアリーとシャル、その後に抱きついてきたハルさんは、数十秒抱き合っていた。
そして、シャル以外魔法陣から離れる。
「それではシャル、送ります」
「はい、お願いします」
メアリーは魔法陣に手をかざす、魔法陣は優しく光り、シャルを包んだ。
光が消えると、シャルはいなくなっていた。
「――では、戻りますか」
「んだな」
俺とメアリーとハルさんは、シャルのことを想いながら、それぞれのやるべきことをやり始めた。
――――――――――――――――――――
「メアリーちゃん、郵便受けに封筒届いてたよ」
俺とメアリーは部屋でダラダラしていると、ハルさんが一枚の封筒を持ってきた。
「ありがとうございます、多分メイトの学校からでしょうね」
「マジで!? つまりそれって……」
「合否通知……」
それを言われてドキッとする。
前世では高校受験に失敗した苦い思い出がある。それの二の舞にならなければいいが、と心から願うメイト。
「こわ! 緊張してきた!」
「うわ〜、シャルの時は全然怖くなかったけど、メイトくん大丈夫〜?」
「ま、どうせ受かっているでしょう」
メアリーは軽く封筒を開けると、中から折られた紙を取り出す。
「メイトの話を聞くにそこまで悪印象て訳でもなさそうなので……ね」
メアリーはバッと紙を広げる。
『合格』
一番最初の文字で感動した。
「よっしゃぁぁあーーー!!!」
俺は思いっきりガッツポーズを決め叫ぶ。
「勝った!! 不特定多数の誰かに勝った!!!!」
か〜! これこそ異世界モノの定番! ご都合主義の展開! まさか俺が主人公か?
「どれどれ、よく見せてみそ」
俺は固まるメアリーから紙を奪い取り読む。
『1/1000』
……? え? 千点中の……何点? 一点?
「はぁぁ!!?? 千点中一点!? あり得ないだろこんなの!!」
だってあんなにいい感じにいったのに、一点!?
「考えてみれば、普通とは違う試験を受けたんですよね」
メアリーは汗を垂らしながら言う。
「それってつまり、普通の人が受けた試験を受けてないってこと、同じ審査条件なら、実質メイトは0点です」
そうか、俺が受けたのは本来審査上にない試験。よってそれの成績がどうであれ、何も意味はない。
「だから一点なのか……てかなんの一点なの?」
俺は紙をよく読んで探す。
するとあるところに手書きで書かれた文字を発見する。
『私が人生一番の気合いで、なんとか一点つけて貰えたから、流石に零点の人を合格にするわけにもいきませんから シーラ』
シーラさん!! ありがとう!!
「しかし、神聖アルディアに一点で合格など、前代未聞です」
「俺マジでヤバかったのか」
ふと、もう一つ一番下に手書き文字を見つける。
『それと、メイトさんが推薦した女の子、合格しました』
「……フッ、良かった」
俺は相手のことを思ってではなく、ゲームができなくなると言う危機が去り、安堵した。
「まぁいいとして、これでメイトは無事アルディアに合格できた訳です」
「すごいわメイトくん!」
「ハッハ! 俺にかかれば造作もないことですよハッハ」
メイトは緊張が一気に吹っ飛びテンションが上がっている。
「アルディアが始まるのは今月末、あと二週間ほどです」
「はやっ! まぁいいか!」
というわけで、もうすぐ俺の学校生活は始まるらしい。
ご精読ありがとうございました!
不定期で投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




