【第34話】大人 子供
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト 主人公。透明人間。
メアリー・フォレスト・レンズ 家庭教師。
シャル・マルマロン メアリーの教え子。
ハル・マルマロン シャルの母親。
ライカ 元山賊。
ミル ライカの監視役。ナース。
俺の魔法学校試験も終わり、村に帰ってきてから数日が経過した。
あれから特に何かある訳でもなく、シャルは着々と家を出る準備を進めながらタラタラ受験から解放されたことによる『暇』を感じているこの頃、俺はと言うと、今もこうしてライカの元に手合わせをお願いしにきているほどに、同じく暇を持て余していた。
「――てな感じで、俺この村もうすぐ出ていくわ」
「なんだそのゴミみたいな試験」
ライカは俺の作り出した透明人間と殴り合っていた。今まで俺の作る透明人間は触ることはできなかったが、ライカから殴られる箇所を意識することでライカは透明人間に攻撃できるようになった。
しかしっ! これはだいぶ辛い!
ライカの動きを見ながら透明人間を創造しなければならないのでなかなか考えることが多い。
そして今、ライカと透明人間による殴り合いは3000戦目に到達した。
「一度に六人から十人同時に戦って、今のところ負けなしか……強すぎる」
ライカは一時間戦い続けても立っていた時があった。普通に化け物である。
「その試験て魔法学校の試験なんだろ? 試験なのに魔法を使わないなんてふざけてんのか?」
俺の囁く言葉は聞こえなかったライカは、少し呆れたように言う。
「まぁ確かにな、でもおもろいから俺的に全然オケだったわ」
「俺から伝授された戦術もお前の特技の透明人間戦法も見せてねぇだろ、ふざけんな」
「なに怒ってんだよ……」
「俺は憤怒している、お前の全てを引き出せない学校の試験にな、バカバカしい」
「別に良いよ、多分受かってると思うし」
すると、ライカはバン!! と、空を切る。
おっと、今のは強かったな、これで通算3001勝だな。
俺は一人透明人間を消す。
すぐに後ろから違う透明人間で攻めようとするが、ライカは動かない。
「ん? どした、休憩?」
「俺は今夜、この村を出ていくぞ、山賊に戻る」
「え?」
俺はいきなりの予想外の言葉に反射的に透明人間を消す。
「……またいきなりだな……そうか――」
「言っておくが、絶対人に迷惑はかけない。山賊と言いながらも人助けの旅にしようと思う、これは俺の『贖罪』の旅だ」
それを語るライカは、寂しそうにどこかを見つめるような瞳で、俺を見ていた。
「……ついていきたいくらいだけど、俺にはやるべきことがあるから、まぁ頑張ろうな」
「頑張る? ハッ、頑張ることなんてないだろ、俺だぜ? お前と話しててだいぶ人との接し方も心得てる、戦いに関しても問題ないだろ」
「フッ、そうだーたな」
俺は苦笑ながら言い返した。
まったく、そういうことで言ったんだじゃないんだけどな――――。
「それにお前も、頑張ることなんてないだろ」
「あえ?」
「――お前は今まで通り、ただ楽しく生きればいい」
俺は心に常に持っていたことを予想外のライカに言われ、驚いた。
後、俺は笑った。
「……フッ、そーだな」
俺が言うとライカは本気の目になり、構える。
かかってこいってことか……。
多分これが最後だろう、ライカと手を合わせることも、顔も見ることも話すことも。
だか、俺は絶対忘れないだろう。この透明人間戦法が続く限り。
だからこそ、俺は何も言わずに、特別なんてない、いつも通りの俺で。
バン!!
ライカの顔面を殴った――――。
ライカは自分の動きを完璧にマスターしたメイトに感謝をしながら、そのまま後ろに倒れた。
――――――――――――――――――――
「ライカ!!」
自分の服や小刀、病院から頂戴した数日分の食料などを持ち、旅立とうとするライカ。病院を出て、すぐ後に呼び止められる。
ライカは振り返ると、ずっとライカの監視役でありながら話し相手になってくれていた赤髪のナース、ミルだった。
「どうした、こんな夜中に」
すでに漆黒に染まり、星明かりがシャンシャンと輝く夜空の下で、ミルは走ってライカを追いかけていた。
「はぁ、はぁ……いや、なんのお別れもなく、いっちゃうから……」
「あぁー、悪かった」
「……ふぅ。ほんとに行っちゃうんだね」
ミルは乱れた髪を整えながらライカに呟く。
「あぁ、ミルにも迷惑かけて悪かったな、楽しかったぜ」
「――――う、うん……私も」
ミルは顔を赤くして答える。
メイトが初めてライカの顔を見た時に言ったことは言い得て妙であった。
実在ライカは人並みに生きていたら、人よりもモテるような美貌であった。が、本人は自覚はない。
「あの――ライカ」
ミルは意を決したように顔を上げて微笑む。
「私、ライカのこと好きだったよ」
ライカは言われたことの意味を理解はできなかった、そんな感情とは無縁の野生で生きてきたからである。――が、それは喜ばしいことだとは分かっていた。
「俺も――――」
「――だからさ!」
ミルはライカの言葉を遮り続ける。
「忘れないでね! 私のこと!」
「……! あぁ、もちろん、忘れねぇよ」
「約束、だからね!」
ミルはそう言ってライカの一歩近づいた。ライカは反射的に後ろに下がろうとするが、手を掴まれた。
「――!」
ミルはライカにキスをした。身長の高いライカの頬に届くように背伸びをしながら。
「……ん……――――じゃぁね」
ミルはそういうと、その場から逃げるように病院に戻って行った。
ライカは自分の頬を触りながら、遠ざかっていくミルの背中を眺めていた。
「……忘れるわけねぇだろ」
ライカはそう呟いて、森の中に進んで行った。
誰もいなくなった病室、でもそこにはライカが寝ている姿がありありと浮かぶ。
ミルはライカの病室で、いつもの椅子に座っていた。
スッとベットを撫でて、微笑んだ。そしてその後、ライカの言葉が蘇る。
「――俺も――」
あの時、ライカの言葉を遮ったのは、それ以上聞いてしまったら、多分決意が変わっちゃうから。
「『俺も』……か……」
ミルは椅子から落ちて、ベットに顔を埋める。
「――っ……うぅん」
気がつくと、涙が溢れていた。後悔と疑問が溢れて心が崩壊した。
「うぅライカぁ……」
もう会えないだろう。
この毎日一緒にいた、心を寄せていた人物の消失による喪失感が、彼女のことを蝕んでいた。
しかし、それでも彼女は大人だから。
泣くのはダメ、人はいつか別れるものだから。もっと一緒にいて欲しかったけど、それを拒んだらダメなんだ。
「ぐすっ……ライカ、死なないでね」
ミルはもう届かない、どこかに行ってしまったライカに向けて、呟いた。
きっと人は成長する生き物だ、だから出逢って別れてを繰り返す。
新しい何かに挑戦するとこ、それが成長の一歩目である。
そして他人はそれに干渉することは、きっと許されないのだろう。
だから妥協し、我慢をしながら関わるのだ。
それが後悔となるとしても、その人のためになるなら、自分を抑えて応援するのが、"大人"である。
ならば、『我儘』は"子供"だろうか。
答えは否。
我儘とは、我儘こそが、本質であり、本物である。
それは、虚偽と虚構で固められた美しい建前で、その内側の汚い真実と真理を、より際立てる。
だからこそ、"心"はいつも、美しいのである。
――――――――――――――――――――
「…………」
メイトはマルマロン家にて、自分の部屋で窓を開けて黄昏ていた。
優しく頬を撫でる夜風が、部屋に流れ込んでカーテンを揺らす。
春風であるそれは、春麗や静寂と共に、多くの感慨を運んできていた。
「……」
メアリーは寝ようとしたところに、メイトの雰囲気に気がつく。
「どうしました?」
「ん? いや、もうそろそろかなって」
「そろそろ?」
ライカはもう、この村を出ただろうか。
ほんと、別れってのは感慨深いな...。
「……さてと! 悪いな待たせて、じゃ寝るか」
「ふぁ……ぁ、はい」
メアリーは欠伸しながらベットに横になる。俺も部屋の明かりを消した後、ベットに潜り込む。
メアリーと俺は、横並びに寝る。
透明人間であるメイトは瞼を閉じても透明なので意味がない。
メイトは天井を眺めて、ふと、真顔で言う。
「こうやって、並んで寝んのも、あと数回だな」
「……そうですね」
少しの静寂の後、メアリーは囁くように答えた。
「こう考えると、なんで俺たちこんな小さいベットで寝てんだろな? 男女でこんな小さいベット、何も起こらない訳もなく……なんて思ってたけど、マジでなんもなかったな」
俺は苦笑しながら言う。メアリーは寝返りを打ち、俺に顔を向けた。
布が擦れる音がよく聞こえてなんだかこそばゆい。
俺もふと、横を見ると、メアリーと目が合った。
「話があります」
「……ん」
メアリーは意を決した顔で、言った。
ご精読ありがとうございました!
不定期で投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




