【第33話】洗脳魔法
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト 主人公。透明人間。
メアリー・フォレスト・レンズ 家庭教師。
シャル・マルマロン メアリーの教え子。
ハル・マルマロン シャルの母親。
ライカ 元山賊。
「――はい?」
私は理解できず聞き返す。
サイコロの出目は三回とも同じ1。メイトは"揃わない"と回答した、ならば負け。のはず。
「あれ? もしかしてまだ勘違いしてます?」
メイトは子供のような嫌味ったらしい声で言う。
「一回目の出目は5でしたよ?」
な、なんだと……?
「そ、そんなことはあり得ません! 確実に1でした!」
「そんなこと言われてもなぁ、ホントに5だったし……シーラさんが見間違えたのでは?」
そ、そんな……私が見間違い? 確かに一度目は魔法で干渉しなかったから可能性はないこともない……。
「――いや! あり得ません! 絶対に1でした!」
「いえいえ、そんなこと。だって俺はフォレストに推薦されたんですよ? 嘘なんかつきませんよ」
メイトは変わらず否定する。ここでふと、あることを思い出す。
待って……冷静に考えたらフォレストにまで推薦される人が、"動かす魔法しか使えない"?
あり得るわけない、そんなこと、なんで疑問を抱かなかったんだ。
そうだ、なら可能性はある。つまり『洗脳魔法』……!!
シーラは椅子に座り落ち着く。
もしかしたらメイトは"サイコロ"にではなく、"私自身"に魔法を、つまり私を洗脳していたなら、5を1と見せれた可能性はある。
しかし、それをジャッジする人もいない。こんなの、言ったもん勝ちッ……!
そもそもここに代理者がいないのは、サイコロに細工するかどうかを見る試験だからで、こんな裏技使ってくる人なんて……想定してない。
まぁ洗脳魔法で高確率でしょう、もしくは本当にただのハッタリか……。
「……あなた、もしかして私に洗脳魔法使いましたか?」
絶対否定されるのを自覚しながら口にする。しかしメイトは軽く答える。
「正解〜、俺はシーラさん自身に魔法をかけました」
「なっ!」
メイトは予想外の返事をした。
「それは完全に違反行為です! 反則です!」
「残念! 俺は"サイコロに何もしてはいけない"と聞いただけですー! あなたに魔法を使ってはダメと聞いてません!」
なんだこの男、確かにそう言ったが……。
「そうですが、それは分かるでしょう? そもそもこの審査員に対してそんな態度、褒められるものでしょうか?」
「…………」
するとメイトは沈黙した。
「いくら勝負とはいえ、今あなたは受験者で私は審査員、ここに絶対的な立場の差があります。あなたはこの勝敗にこだわりすぎて、大事なことを忘れていませんか?」
シーラさんが怒りを込めていうと、メイトは図星を突かれたように沈黙する。
「…………」
「あなたのことは分かりました、もう今日は良いのでお帰りください」
勝負にこだわりすぎる……幼稚――。シーラはそう考えていた。
「わ、分かりました……」
メイトはいきなり弱々しくなった。
「確かに俺は大事なものを忘れてました……出直してきたいと思います」
「……はい、では今送り返します――」
「待ってください!!」
メイトは止める。
「俺は確かにシーラさんを洗脳して5を1と見せました。それで勝てると思ってました。しかし、シーラさんは本当にサイコロに魔法は使ってないんですか? どうしても知りたいんです」
メイトは懇願するような声で言う。
「……分かりました、お教えします」
「ありがとうございます」
シーラは小さく深呼吸した後、呟く。
「はい、私は確かに、サイコロを魔法で1を出しました。そこはすみませ――――」
「はい、反則負け」
俺はシーラさんを指しながら言う。シーラさんはポカーンと呆ける。
「……へ?」
「シーラさん言いましたよね! 今魔法で1を出したと!! それはつまりサイコロに干渉したと言うこと! それはルール違反ですよね!!」
俺は机に身を乗り出して詰める。シーラさんは動揺しながら背もたれまで身を引く。
「へ? へ? いや、あなた、洗脳魔法を使ったんだから今更何を――」
「チッチッチ、俺はそんな魔法使ってませんよ、俺は動かす魔法以外使えないので」
シーラさんは理解不能そうに眉を寄せる。
「説明します」
俺は椅子に座り直して言う。
「まず、このゲームに正解はない。たぶん俺がどう答えようともそれが間違いであるようになる、それをシーラさんが魔法でする、という仮定にしました、するとこれはその''失敗する"という事実に対してどう動くかを見る試験だ、となる」
シーラさんは感心したように息を呑む。
「ならばあえてそれに乗って、noと答えた。ならシーラさんは一度目に出た目に残りの二回目三回目の目を魔法で合わせてくるはず、問題はどうやってそれを指摘するか」
「そもそも、このゲームには第三者がいない、よって言ったもん勝ち。俺が正しいお前が間違い、そう言えばゲームは終わらない、シーラさんが「魔法を使いましたね」と指摘してきたら使ってない証明ができない、だから何もできない。でもそれはお互いさま」
「一番良いのはシーラさん本人に自白してもらうこと、だから俺はなにもしなかった」
「シーラさんは予想通り魔法で出目を1に合わせてきた、よって俺は三回目で「一回目の目は5だった」と嘘をつく。すると第三者がいないからもちろんそれを調べる術はない、よって正解は分からない」
「そしてシーラさんは俺の「フォレストの推薦」という言葉から"『動かす魔法』以外使えない"ということに疑問を抱く、そして洗脳魔法の可能性に気がつく。それは許されないってことで俺を帰らせようとした」
「だから俺はあえてそれに乗って反省して帰ろうとする、するとシーラさんは慈悲の心で答えを教えたくなる。俺は同情を誘って答えを聞く」
俺はビシッとシーラさんを指して決める。
「そこでシーラさんが油断して俺に答えを教えてしまう、それはサイコロを魔法でいじること、それは先に言っていた、「私は何もしない」という約束を破ることになるから、反則負け」
俺は一通り説明を終えた。
す、すごい……そこまで読んでいたのか。
「すごいですね……」
「シーラさんに、つまり審査員に洗脳魔法なんて許されるわけがない、そんなことが許されるならこの世に受験失敗者はいないですから」
正直、シーラさんが俺の使える魔法に違和感を覚えてくれるのは賭けだったが、うまくいって良かった。
「つー訳で、俺の勝ちですね」
実質メイトは、相手の不正を暴き、勝ち申した。
「……頭が回るんですね」
シーラさんは感心しながら呟く。
「まぁ、たまたまですよ」
「メイトさん、魔法使いにとって、最も大事なことはなんだと思いますか?」
突然シーラさんは真剣な顔で質問してくる。
「大事なこと……"夢見る心"ですか?」
「……まぁそれも大事ですが、正解は違います」
シーラさんは一拍置いてから答える。
「"魔法の使い方"です」
「魔法の使い方?」
「どんな簡単な魔法でも、何かと組み合わせれば強大な何かになる。それは頭の柔軟さなどが求められるでしょう」
「はぁ……まぁ確かに」
メイトは自分に当てはめながら考える。
俺の動かす魔法も、使え方を変えて透明人間ってことにして使ってるから、全然間違っていない。
「あなたなら、この学校でも頑張れるでしょう」
「え?」
シーラはフッと微笑むと、メイトと視線を合わせようと前を見る。たまたまそこに顔があり、目が合った。
「メイトさん、あなたの入学を許可します」
メイトは衝撃で立ち上がり、机に手をつく。
「マジですか!?」
「と言ってもまだ決まった訳ではないですが、メイトさんは私が見てきた人たちで一番"何か"を感じさせたので……」
なんだそれカッコ良すぎる。これはいい。
「あ、ありがとうございます!」
「はい、では受験はこれで終了です。今送り――」
すると、シーラさんは眉を寄せて横を見て、片耳を抑える。
「どうしました?」
「いえ……ですから今は受験者と……は? いやそんな急に……後にしてください……はぁ、分かりましたよ……」
シーラさんは何やらボソボソ話す。無線的なやつなのか? それもロマンあるなぁ。
「すみません、急用ができて、今現実に戻るのでメイトさんを送り返すのはその後で良いですか?」
「え? はい、いいですけど」
「すみません……はぁ」
するとシーラさんは指を鳴らした。
まるで眠りから覚めるように微睡から覚醒する。
「ハッ!!」
ガタッと椅子を鳴らしながら顔を上げる。
「あれ、気づいたら……」
そこは社長室のような部屋で、両側には本棚、目の前には大きな机。
そして大きな回転椅子に座る女性。
部屋着のような薄い服、ボサボサの髪、大きく暗い目元の隈。
そしてその人は俺を見た。
「驚きました? これがほんとの私です」
「し、シーラさん?」
先ほどの美人で清楚な面影はなく、ずさんでズボラな女性がそこにはいた。
てかメガネないし……。
「はは、見せたくなかったんだけどなぁ」
シーラさんは自嘲気味に微笑んだ。
もしかしてこの人、ただ単に身なり整えるのがめんどくさいから仮想空間に……?
ずっと疑問だったことが一つ晴れて、すっきりした。
でも前世のネットもこんな感じか……だとしたら別になんとも感じない。むしろ本物が見れてなんか背徳感。
「さて……」
するとシーラさんは机の隅に置いてあった水晶を手前に持ってくる。
そして手をかざす、すると水晶の内側が黄色に淡く光る。
「もしもし、お電話代わりました、シーラです」
あれ電話なのか……意外とでかいんだな。あれならスマホのほうがマシだな、まぁ俺には電話する相手なんていなかったけどな。
すると、電話の向こう側から声が聞こえた。
『受験したいんですが、いいでしょうか?』
低い声音、まるで意図的に変えているような違和感。こんなことする意味……それにこのタイミングで受験なんて……。
メイトはフッと笑った。
「は? あいえ、あの受験は一昨日なんですが……」
なんで今年は受験終わった後に受けようとする人が二人もいるんだ、こんなのすごく稀だろう...。
『……知っています、しかし他に誰か受験した方いらっしゃいますよね?』
「え? それは――――」
「――よぉ」
俺は水晶に向かって声を出した。シーラさんは驚いて声を止める。
『……こんにちは』
「わざわざ声まで変えてきたってことは、俺がいることが分かってたのか?」
『まぁ、あなたの性格を考えた時に多分すぐ行動に移すタイプだし、何よりそこの人の未来を見た時、あなたの受験の審査員しているのが見えたからね』
嘘である。実際シーラの顔は見ていないので未来を見ることはできない。
ここは嘘でも未来は見えることを言っておかなければ、という考えである。
「なるほどな、その力ほんとチートだな」
『それより良いんですか? あなたは変声してないようですが、不利になりますよ』
「心配ありがとう、でもあんたも声音は変えてるけどイントネーションとか口調はだいぶ女の子っぽいよなぁ」
メイトはニヤと嫌ったらしい顔で言う。電話の向こう側は沈黙する。
『……まぁ良いです、それより受験の方、お願いしますね』
すると、水晶の光はゆっくり消えた。
「……切りましたね、なんて無責任な……というかメイトさん知り合いなんですか?」
「まぁあるゲーム相手で、すみません、どうか彼女の合格を認めてあげれませんか?」
まぁまだ女か確定した訳ではないけど。
「いやーそれは流石に……」
シーラさんは唸る。俺はピコーんと思いつく。
「なら俺が彼女を推薦します、これなら問題ありませんよね?」
「な、なぜそこまで?」
シーラさんは少し俺に猜疑心を抱く。
「ま、ちょっとした約束なので……」
「約束……」
シーラさんは考えるように呟く。
約束を果たすために、そこまでするだろうか。不思議な人だ。
「ま、分かりました、では掛け合ってみますね。あ、受験者選定の責任者って私か……」
シーラさんは長い髪をいじりながら横を見てめんどくさそうな顔をする。
「お願いします」
「まぁそれは置いといて、送り返しますね?」
シーラさんはチラッと確認するように言う。
「はい、お願いします」
「では、後々合否通知が送られますので」
「分かりました」
するとシーラさんは俺を手を向ける。すると俺は光に包まれる。
俺は優しく包む光に身を委ね、目を閉じた――――。
ご精読ありがとうございました!
不定期で投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




