【第32話】運ゲー
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト 主人公。透明人間。
メアリー・フォレスト・レンズ 家庭教師。
シャル・マルマロン メアリーの教え子。
ハル・マルマロン シャルの母親。
ライカ 元山賊。
――――気がつくと、椅子に座っていた。
一寸先は闇、という言葉通り、周りは暗闇で何も見えない。
あれ……? 俺何してたんだっけ?
手元を見ると、特に拘束されてるわけでもなく、何の変哲もない木製の椅子を触りながら思い出す。
「あ、受験会場に飛ばされたのか」
なにやら意識が朦朧としていた。俺は頭を振って脳を覚醒させる。
パッと顔を上げると、目の前に机があった。縁だけは木製で真ん中は一段下がっており、緑色の布が敷いたあった。
なんだ? カジノみたいな……。
そして、その机の向こう側に、人がいた。
「……」
俺は突然のことすぎて理解できず、その人を観察する。
誰だ? スーツ姿……あ、審査員?
「あの、こんにちは」
とりあえず挨拶しておく。
その人はハッと目を開ける。
「え? いるんですか?」
どうやら俺のことは気づいてなかったらしい。
「はぁ、一応透明人間と書いてあったと思うんですが……」
「えぇ分かります、けど本当に透明人間なんて……驚きました」
「そうですか」
やはり透明人間は珍しいものらしい、くぅ〜、悪くない!
「本日は特別受験ということで、ここに来てもらいました」
「はい」
「あ、失礼。私はシーラという者です。本日メイトさんの受験の審査をさせて頂きます」
シーラさんは慇懃に頭を下げる。俺は合わせて頭を下げる。
「あ、よろしくお願いします」
ふむ、二十代だろうか、可愛い。眼鏡っ子ってやつか。
シーラさんの目元にはメガネがかけられている。
「では、早速始めます」
「あ、はい!」
シーラさんは俺の視線には気づかず、紙を取り出す。
まぁ普通の人は俺の視線に気づかないわな、むしろ気づくほうがおかしい、わかるかなライカ君。
「ではまずこちらに記入お願いします」
「はい」
俺は紙とペンを受け取り、スラスラ書いていく。
名前に出身……良かったー用意しといて……てか字の勉強しといて良かった……。
俺はハルさんに感謝しながら書き進めていく。そこでふと、ある項目が目に止まる。
――使用可能な魔法?
「すいません、この使用可能な魔法って――」
「それはメイトさんが使える魔法を書いてください、なるべく難しい魔法を書いてください」
なるほど、終わった。
「俺、『動かす魔法』しか使えませんが、いいですか?」
「……?」
俺が控えめにいうと、シーラさんは眉を寄せて首を傾げる。
「『動かす魔法』しかできないと?」
「はぁ……」
シーラさんは心中驚いていた。
大丈夫かこの子、動かす魔法なんて初期の初期、基礎の基礎の魔法。アカデミー出てたら誰でも使える魔法だろう。
「……ま、まぁそれだけでも構いませんが……」
「ういっす」
俺は五行ほどある空欄に『動かす魔法』とだけ書いて次に進んだ。
――――――――――――――――――――
「はい、ありがとうございました」
数分後、俺は紙の項目全て書き終わり、シーラさんに渡した。
「では……これから受験を始めます」
シーラさんはその紙を受け取ると、その紙は微粒子レベルに分解され、闇に消えていった。
やば……どういう魔法?
「あ、忘れていましたが、ここは仮想空間なので現実ではありません」
「そうなんですか」
だからこんな宇宙みたいな空間なのか……。
「それで試験ですが……」
シーラさんは前置きを置いてから手を膝の上に揃えて言う。
「メイトさんは特例なので、普通とは違う試験です」
「え、それっていいんですか? 公平さとかは?」
「あら、間違えないでください」
シーラさんは嫌味に笑う。
「普通の方が簡単です、つまりあなたは普通の人よりも受かりにくいということです」
「なるほど……分かりました」
なるほどね、俺は一日遅れての受験なんだから、これくらいは全然許容範囲内だろう。
「何より、"これ"には解法がありませんから――――」
すると、シーラさんは手を机の上に出し、手のひらを開く。
ころっと机の窪んだ空間に転がったのは正四角形の物体。
「サイコロ……?」
それには一面には丸が一つ、他の面には丸が二つなど、完全に前世で見たサイコロだ。
「はい、こちらを使用して試験を行います」
「な、なるほど……」
そんなことより、解法がない……とはどういうことか。
「今から私はこのサイコロを振ります」
「はぁ……」
シーラさんは落としたサイコロを持ち上げ、人差し指と親指で挟み俺に見せる。
「三回振り、全て同じ"目"が出る。yes or no?」
シーラさんは指でサイコロをクリクリ動かしながら聞いてくる。
俺は完全に予想外の問題に、戸惑う。
「え? どうゆーことですか?」
「今から私がこのサイコロを、三回、振ります。その時、三回とも同じ目が"出る"か"出ない"か、どちらか当てる試験です」
「はぁ……」
なんて、なんて……なんて面白い試験なんだ!!
メイトは透明という特権を生かして失礼にも片足を椅子に乗っける。
……単純に考えれば、noだ。
確率論ならばサイコロを三回振った時の出目は216通り。そしてそのうち出目が同じになるのは6通り、216分の6は36分の1……つまり36回同じ試験をやったらやっと同じ目が出るということ。
それならやはりnoが妥当。
俺はシーラさんを見る。
俺の答えを待つように、目を閉じて動かない。情報は得れないということ。
……しかし、シーラさんは解法はないと言った。
運などと言う不確定要素の問題は、事前に答えを用意することはできない、つまり解法はない、ということか?
そもこの問題は、誰かが答えを見なければ答えはない。つまりあれだ、シュレディンガーの猫だ。
ならそもそもこれは何を図る試験なんだ?
これで分かるのなんて「君運いいね」ぐらいだろう。
……いや、ここは異世界、魔法があるんだ。魔法学校の試験なら尚更、ならば魔法をどう使うか。
そもシーラさんが俺の解を聞いた後に任意でサイコロの出目をいじれてしまうなら……。
俺はフッと苦笑する。
――この思考と過程も全て意味はない。
待てよ? もしあっちがサイコロに細工するなら、こちらも何かして良いのではないか?
「あの、これってサイコロに何かしてもいいんですか?」
「……いいえ、あなたはこのサイコロに何もしてはいけません」
……そう来ますか……。
何もしてはいけない、これはルールか。
「そのサイコロってすでに何かしてる、もしくはシーラさんが投げる時、細工しますか?」
俺が聞くと、シーラさんは真顔で止まった後、答える。
「しません」
「なるほど……サイコロに細工は禁止ってことですね」
「はい」
信頼できない。なんの証拠はない。口約束は簡単に裏切れてしまうからな。魔法があれば簡単に出目なんていじれる。
さて〜? 困ったな、どうしたものか。
俺は背もたれに寄りかかり上を仰ぐ。
しかし、サイコロに介入不可となると、もう手出しできない……な……あっちは介入するかもしれない……か。
「……」
少し強引だが、これしかないか……。
――――――――――――――――――――
――――困っているようですね透明人間。
瞳を閉じたまま考える審査員のシーラ。
そろそろこの問題の不条理さに気がついたかしら? そう、これには解はない。
実際、メイトの答えがyesでもnoでも、関係ない。私が行う行為に対してどう対処するかが重要、つまりこの考える時間は無駄。
さっさと答え出してくれないかな。
メイトがyesと答えた場合。私はサイコロを魔法でいじり、違う出目にする。
noと答えた場合もサイコロをいじり、同じ目にする。
問題は、それに対してメイトがどうするか――。
私の言いつけを守り、手を出さず見ているだけで勝負に負ける。
もしくは私の言いつけを破り、手を出して勝負に勝つ。
前者の場合は、勝敗を無視してでも約束を守る人格、しかしいざと言う時が今かもしれないにも関わらず約束を守り通すことは正しいとは言えない。
後者の場合、言いつけや約束を無視して勝ちにこだわる。いざという時は正しい判断だけど同時にいざと言うのときは破ってもいいと言う思考回路の持ち主。
どちらにしても、言い方によっては否定できる。
さて、どう出る――――。
「あの、俺の解出ました」
するとメイトが声を出した。私は目を開けて答える。
「そうですか、では答えは?」
メイトは少しの間の後、力強く答える。
「"no"です」
ほう、確率を信じたか……いや、私が細工することを理解して適当の解か? まぁ別に良いけど。
「分かりました、では振らせて頂きます」
私はサイコロに魔法をかけないで振る。
サイコロは机に落ちると、コロコロ転がり、やがてサイコロは止まる。
出目は1。
「出目は1です。では二回目を振らせて頂きます」
シーラはサイコロを持ち上げてもう一度振る。
no、つまり揃わないと答えを出したと言うことは私は出目を残り二回、同じにすればいい。
シーラは今度はサイコロに魔法をかけた後、振る。
サイコロは変わらず回転しながら壁に当たり止まる。
出目は1。シーラが魔法で1にした。
シーラは小さく眉を寄せる。
何もしない? いや、それが分かるのは三回目か。しかし相手が透明だとやりにくい……。
「出目は1です。では三回目を――」
「シーラさん」
「――は、はい?」
いきなりメイトが声を出した。シーラは内心ドキッとしながら平然と返事をする。
「この勝負、不正発覚は反則負けですよね?」
それは相手の腹の底を探るような深い声音。シーラは困惑しながら答える。
「は、はい、そうですが……」
「ありがとうございます」
シーラはメイトの座っているであろう椅子に懐疑的な視線を向けながらサイコロを振った。
さぁ、どうなる……。
サイコロは回転しながら、角で立つ。
さぁ、メイト! 魔法で干渉してくるか……!
ポト……と、サイコロは目を出す。それは――――。
「……1……ですね」
まごうことなき1。
シーラは落胆した。
はぁ、フォレストの推薦で透明人間。どうなるかと思えば普通の人と同じ……か。
見込みなし――――。
「三回目は1。これであなたの答えはハズレ――」
「よっしゃ! ――俺の勝ち!!」
いきなりメイトが大きな声で言った。
「――はい?」
気がつくと反射的に聞き返していた。
ご精読ありがとうございました!
不定期で投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




