【第29話】返す言葉
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト 主人公。透明人間。
メアリー・フォレスト・レンズ 家庭教師。
シャル・マルマロン メアリーの教え子。
ハル・マルマロン シャルの母親。
ライカ 元山賊。
俺はメアリーの頬を伝う涙を指で拭う。
「うん、メアリーの負け」
「私なんだか、すごく軽くなった気がします」
できないことはあってはならない。そんな期待が彼女を押しつぶし続けた幼少期、それから逃げ、今こうなった。
「私、メイトに出会えて本当に良かった」
メアリーはメイトの手を握りながら呟いた。メイトはメアリーの頬に手を当てた。
「俺も、メアリーに逢えてよかったよ」
俺たちを称賛するように、草は太陽に照らされ輝き、そよ風は舞い踊る。
「……ありがとう……」
メアリーはそう呟いた。メイトは手を下げる。
「そんで言いたいことあるんだ」
「……? なんですか?」
メアリーは涙を拭きながら思い出す。
そういえば、初めてメイトと戦うことが決まって日に「言い方ことがある」なんて言っていた。
「なんであの時、反撃魔法をかけてなかったんだ?」
メアリーは目をパチパチした後、首を捻る。
「あの時?」
「あぁ、まず俺が一番最初に違和感があったのは、俺と初めて会った夜。俺がメアリーの馬車に乗り込んだ時に反撃魔法も防御魔法もなかった……メアリーなら容易だったろ? なんでしなかったんだ?」
そんな昔の話、よく覚えているものだ。そして、的確に痛いところを突いてくる。
「それは……別に良かったからです、襲われても、何もなくても。何か起きたとしても、その何かが自分を変えてくれるのなら良かったんです。まぁ結果事実になりましたけど」
メイトと出会った変われた、気がする。
「だからあの時、それでもいいみたいなこと言ったのか……なぜ?」
「どうでも良かったんです、自分がどうなろうと……どうせ何も予定なんてなくのうのうと生きていくだけだったんですから」
メイトは過去一迷った挙句、優しく喋る。
「……メアリーはやりたいことないの?」
「やりたいこと……」
メアリーは答えを出せず、沈黙する。
「……ま、別になくてもいいけど、いつかは持つものだから、その時にちゃんとできればいいんだよ」
「は、はぁ……」
「フッ、いいか? こういう言葉がある」
「なんですか?」
俺はニヤと笑いながら指を立てる。
「『夢は大変で現実は綺麗』ってな、だから忘れないで欲しい」
「……」
俺は立ち上がりメアリーに手を差し出す。
「メアリーの今も過去も全て、綺麗な現実なんだよ。そんな中だから夢は叶えるのは大変なんだ、だけどそれを乗り超えた時、もっと美しくなるんだよ」
メイトは言い終わってから気づく。
あ、俺、透明だから手出しても意味ないか。
俺は手を引っ込めようとする。が、メアリーは俺の手を掴んだ。
「……ホント、恥ずかしい人ですね……」
メアリーは下からジト目で俺を見た。俺は手を引っ張りメアリーを立たせる。
「こういう場面でカッコつけるのが漢だよ」
「カッコいいかは分かりませんけどねっ」
メアリーは今まで見たことのない、楽しそうな顔で微笑んで見せた。
俺は手を離し、歩き出す。その後ろをメアリーが付いてくる。
家に戻る、そう解釈したメアリーだったが、メイトが声を出した。
「んで、本題に入るな」
「え?」
メイトは振り返り言う。メアリーは半目で俺を見る。
白い肌に青い瞳、長い白髪で童顔。その全てが――。
「好きだよ」
メアリーは暫し固まり、考えた後、何を言われたかを理解した。顔がみるみるうちに赤く染まっていく。
「はっ、え? えぇ??」
「初めて会った時からだと思う。自分でもそういう感情がなんなのか分からないからなんとも言えないけど、とにかく言葉にするなら、好き」
「えぇーー??」
メアリーは脳の処理が追いつかず、変な声しか出ない。
「ま、っても別に何かする訳でもないんだけどな」
俺は頭をかきながら言う。メアリーは頬を紅潮させたまま固まる。
「帰ろうか」
俺はそう呟いた後、メアリーに微笑みかけながら家に戻った。メアリーは目をしばたたかせたあと、ハッと我に帰り、呟いた。
「えぇーー……」
――――――――――――――――――――
いつか言ったように、時間は平等に与えられるものだ。
「――――うん、いい朝」
再び時間は流れ、メアリーに告白してから早半年が経過した。
夏が過ぎて秋が来て冬を越し、春。この世界にも四季は存在するらしい。
俺は窓から太陽を見ながら呟いた。素晴らしい世界に感動する。
「さて……メアリー、いい朝だな!」
俺は腰を回しならメアリーの呼びかける。メアリーは欠伸をしながらベットに座ってる。
「ふぁ……そうぇすね……」
ぽけーと呆けるメアリー。
なにこいつクソかわなんですけど!
メアリーは沈黙する俺にジロッと視線を向ける。
「なんだか変な目で見られてる気がします……」
メアリーは手で顔を隠した。隙間から照れた顔が見える。
「今日も可愛いなー……おし! しっかり送りださねぇとな! シャルのこと!」
「あ、そうですね」
そう、今日はついにシャルの入学試験当日である。
「んで、どこだっけ? ファー?」
「ファーフェル魔法学校です、結構この辺りじゃ有名ですよ」
「ほーん」
俺はチラッと視線を時計に送る。まだだいぶ早朝。
部屋の中には朝特有の静けさが漂い、ついボーとしてしまう。
「ふ……」
メアリーは目覚めのため息を吐いた後、ベットから降りて部屋を出て行った。
部屋に残された俺、ベットを転がりメアリーの枕に顔を埋める。
「……すううううううううう……」
極限まで鼻からメアリーの匂いを摂取する。
「よしっ!!」
元気溌剌!!! 今日も一日がんばるぞい!!
「……ちょっとキモいか」
――――――――――――――――――――
「あれ? シャルもう起きてたのか?」
俺はメアリーの香気を存分に吸引した後、階段を降りてリビングに来た。リビングではすでにシャルが朝ごはんを食べていた
「あ、メイトおはよ」
「おはようメイト君」
「おはようございますハルさん、シャルもおはー」
俺はとりあえずソファーに腰を下ろす。
「緊張で全然寝れなくて……あはは」
シャルは頬をぽりぽりかきながら微笑んだ。
「すげぇなよな、俺がシャルぐらいと歳の時なんて何してたと思う?」
「何してたの?」
「何もしてないさ〜♪」
はぁ、もう前世の楽曲を聴けないとなると、寂しいなぁ……でもないものはない、諦めろ。だから僕は音楽をやめた。
「……はぁー緊張してきたー!」
シャルは俺の自己満ギャグを無視して、机に項垂れる。
「大丈夫よ、シャルは自慢の子だからきっと上手くいくわ。メイト君ご飯」
ハルさんは料理を並べながらシャルを励ます。シャルは「うん……」と頷く。
俺はスタスタ机に座ろうとしたとき、扉が開いた。
「あ、メアリーちゃんおはよう」
「おはようございます」
メアリーはキョロキョロ部屋の中を見渡す。
「どうしたの?」
シャルは椅子の背もたれに手をかけながら聞く。
「この前学校から届いた紙、どこにあるか分かりますか?」
「へ? 紙?」
シャルは振り返りハルさんを見る。
「え? 髪?」
どっちも知らないのかよ……ハルさんはもはや聞いてなかっただろ。
「それがどうかしたのか?」
「あれがないと受験会場に行けないので……」
部屋の空気が下がった。
「え……お母さんどこにしまったの?」
「え? えーと……たしか大事だからってあそこの棚に……いや? あっち? あれ2階だっけ? あの変な模様あるやつでしょ?」
ハルさんは額に手を当てながら考える。
え? もしかしてヤバいんじゃないの?
「ちょっと探しましょ! 無くしたならマジでヤバいですよ!」
俺は食べるのやめて立ち上がる。
「こんなに頑張ってきて、紙をなくして行けないなんて可哀想すぎますよ!」
「うん! 今探してくるから!!」
俺とハルさんは部屋を出て行こうとする。
「あーないなら別にいいです」
メアリーは手を挙げて止める。俺とハルさんは上がっていた熱が冷める。
「一応の確認のために欲しかっただけで、多分書けるので」
「書ける?」
「庭にどうぞ」
そう言ってメアリーは庭に出て行った。俺たちもその後を追う。
――――――――――――――――――――
メアリーは庭に出て、真ん中に立ち地面を見ていた。
「何してんの?」
俺とシャル、ハルさんは端っこでメアリーを見ている。
「ここにゲートを書きます、あの紙に書いていた変な模様がゲートです」
「へー」
確か紙には入学試験の承認の言葉と下半分は変な円形の模様が描かれていたが……バーコードみたいな感じで全く覚えていない。
「普通はあれを見ながら書くんですが……私がいたから良かったです」
するとメアリーは目を閉じて腕を広げる。すると地面が光り、削れていく。
周りから中心に向かってどんどん描かれていく。
そしてほんの数十秒で描き終わった。メアリーはフワッとスカートを翻しながらジャンプし、五メートルほど飛んだ。
「できました」
俺たち三人はポカーンと眺めていた。
「これであっち側とこっち側が繋がるゲートの完成です、あとは時間になればシャルはここから試験会場に行けますよ」
「へ、へ〜……」
「ま、まぁつってもまだ時間あるし、ゆっくりするか」
俺はそう言って家に戻った。
するとハルさんとシャルがメアリーに近づく。
「で!? そろそろ言った!?」
ハルさんは小声でメアリーに聞く。シャルも目をキラキラさせメアリーを見る。
「え? いや、まだですけど……」
「えー? もう半年だよ!? 半年あってあんな近くにいてまだ返事してないの!?」
メアリーはメイトに告白されてから、未だ返事は言えていなかった。
「す、すみません……」
「謝るのはメイトにだよ〜待たせすぎでしょ〜」
実際、メアリーはメイトのことが好きだが、なかなかそれを言えずにいた。
「メアリー先生! いつまでもメイトが一緒にいるとは限りませんよ? いついなくなるのか分からないんですからね! そもそもメイトの気が変わるかも知れないし……」
しかし、メイトが言っていた通り、特別なにか変わることはなかった。今まで通り、ダラダラくだらない話をするような仲だった。
「ま、まぁ頑張ります……」
メアリーはそうはぐらかした。
――――――――――――――――――――
庭にて――――。
「頑張ってくださいね」
「頑張って!」
「オレは信じるぜ。シャルの奇跡ってヤツを……」
ついに時は来て、シャルはメアリーが描いた光る魔法陣の上に立っていた。これから試験会場に向かう。
「うん! 行ってきます!」
シャルはそう言うと手を振り笑って見せた。メアリーとハルさんは手を振りかえす。
「まぁ奇跡なんて低確率なものじゃなくて、もはや確定したもんだけどな」
俺の最後の言葉を聞きながらシャルは眩い光に包まれた。
光が収まってくると、シャルの姿はなくなっていた。
「無事行けたようですね」
メアリーはそう言うと魔法陣に近寄る。
「さて、あとは帰りを待つだけですね」
「そうだね、あー大丈夫かなぁ?」
「問題ないでしょう、メアリーの雷魔法があれば特別合格なんてのもあるかもしれません」
「すげ」
試験は全員共通の魔法の試験で行われるが、何かに特別に秀でている生徒に関しては、そこが加味され合格されやすくなる。
ハルさんはひと足先に家に戻った。メアリーは魔法陣が崩れないように固定魔法をかける。
メアリーはしゃがみ込み、魔法陣に手をかざすと魔法陣は淡く光った。
「さて、戻りますか――――」
「んだな……」
メアリーは部屋に戻ろうとした時、その途中まで出した足を止めた。
「どした?」
「……」
メアリーはこめかみを抑えながら振り返る。目が開かれ、だいぶ動揺しているようだ。
「大丈夫か?」
メアリーはゆっくりこちらを見る。
「悪魔から返事が来ました」
俺は一瞬、理解できなかったが、すぐに察した。
「……ハッ……」
俺は口で笑う。
「やっと返してきたか――」
あれは九ヶ月前、ライカを襲ったシロツメが言っていたラプラスの悪魔である。
そいつは『Don’t kill』と俺しか知らないはずの言語を使った。
つまり、そいつは地球人の可能性が高い。
「なんて返ってきたんだ?」
するとメアリーは地面に手を向ける。地面は削れて文字が書かれていく。
『はい、喋れます』
――日本語……! 確かあの時送ったのは『貴殿は日本語が大丈夫ですか?』だった。
貴殿が伝わるなんて相当日本語を勉強してる外国人か日本人、混乱しやすい大丈夫ですか? という問いかけにも「喋れます」で返してきた……。
日本人の可能性が高い。
「これは、早急に話さないとな……」
「では、私たちの部屋でゆっくり話しましょう」
「おう!」
そうして、やっと悪魔と話せることになった。
ご精読ありがとうございました!
不定期で投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




