【第27話】継いでいく居場所
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!
メイト 主人公。透明人間。
メアリー・フォレスト・レンズ 家庭教師。
シャル・マルマロン メアリーの教え子。
ハル・マルマロン シャルの母親。
ライカ 元山賊。
チビ デブ ライカと一緒にいた山賊
とある家の陰で、チビとデブは黙り込んでいた。ライカは決別を宣告したあと、「後はお前らに任せる」と、言うように笑った後、その場を去った。
「意味わかんねぇ……なにが起きてんだよ」
家の壁に背をつけ座るチビはイラつき、頭をかきながら呟く。
「ライカさんはなんであんなこと言ったんだよ……俺があんなガキに負けたからか? くそっ……」
それを横目で見る隣に座るデブは呟く。
「俺にはあのライカは、助けを求めているように見えた」
「あ? 助け?」
デブはニヤと笑う。
「あぁ、俺の推測だとおそらくライカは今洗脳させられている。つまりあれは本心ではない」
「せ、洗脳だと……!?」
「そうだ、おそらく俺たちが皆同時に目覚めれば対処できないと考えたあっち側はまずライカだけを起こし、洗脳した後俺たちに説得させる気なんだ、ライカは俺たちのボスだし力があるからな」
デブはペラペラ語る。チビは頷いて聞き入る。
「なるほど、確かにそれなら合点がいく……」
「だから、助けるんだ! 俺たちで!!」
デブはバッと立ち上がりチビに手を差し出す。
「俺たちで……助ける……?」
チビは首を傾け呟く。デブは微笑みながら大きな声で言う。
「今までライカに助けられてばっかりだった! だから今度は俺たちがライカを助ける番だ!!」
チビは息を呑んだ、その提案に感動したからである。
「あぁ! 俺たちで助けよう!!」
チビはデブの手を掴み立ち上がる。そして手を取り合った二人は笑いながら見つめ合った。それはこれからの決意の表れであった――――。
「ちょっといいか?」
「「うおっ!?」」
いきなり横から声がした。そこには誰もいない。
「あー俺は透明だからな? ちょっち聞かせてもらってたよ君たちの考察」
俺の存在を気づけなかった二人に説明を挟みながら言う。
「と、透明人間……!!」
デブは俺に近寄る。
「おっと! それ以上近づくと危ないぜ?」
「な、なんだと……?」
俺は持っていた透明化した棒を振る、と同時に魔法で地面に線を引く。
「これを超えたら、死ぬぜ?」
「うるせぇ!!」
バゴ!
「いったぁぁい!!??」
普通に殴られた。
おいこいつ分かってねぇわ、ダメだこいつ、お約束だろこれ? やりたかったんだよ。
「このっ! やろっ!」
デブはなんか知らんがブンブン腕を振る。
これを見るとライカの俺の位置を把握できる"感覚"はホントに凄いものだったんだと分かる。
「落ち着けっ!!」
俺は叫んでデブを止める。デブはピクっと動きを止めて俺の位置を探す。
「まず俺の一発ギャグを聞け!!!!」
俺は勢いよく続ける。
「うわぁぁぁぁ!! チョークが飛んできた!! 痛ぇぇぇ! デコに当たった痛ぇぇぇ!!!! ――――――超苦!」
「……」
「……」
俺は身振り手振りをしながら最大で渾身のギャグをかますが一切受けなかった。場に氷河期が到来した。
う、受けてねーー!! 俺が中三からあっためてきたギャグ滑ったーー!!
俺は息を吐いてから呟く。
「……お前らの考えは間違っている」
「なにしらねぇふりしてんだよ何だったんだよ今の!」
いや受けるかなと思って、なんならそこから仲良くなれるかなって……。
「と、とにかく! お前らは間違っている! ライカは洗脳なんてさせられていない! あいつの意思で言ったんだよ! 助けとか求めてないから!」
「し、信じられるか……」
デブは俯いて呟く、その声音には嫌悪か嫉妬か屈辱か、そんな感情がこもっていた。
「事実だ」
「……」
俺は力強く言う。デブはピクッと肩を跳ねさせて反応する。
「じゃ、聞くけど、お前らは山賊をやりたいのか?」
デブとチビは一瞬見つめ合った後、呟く。
「そんなわけないだろ……でも、俺たちにはこれしかないんだ」
「俺は人の感情とか読み取るの苦手だから分かんないけど、お前らの欲しいものはなんとなく分かるよ、『安定』だろ」
デブとチビは図星と言うように無言を返す。
「あの命をかけて生きる生活は、嫌なんだろ?」
すると、チビが口を開けた。
「あぁ、そうだ! ろくに腹を満たせない日もある! 魔獣に殺されそうな日もある! あんな生活もううんざりだ!」
チビが顔をひしゃげながら叫んだ。俺は頷く。
「だよな、そんなお前らに朗報」
「「あ?」」
二人揃って首を捻る。俺は指を立ててニヤつく。
「お前らに『役割』をプレゼント!」
二人は訳が分からずポカーンと呆ける。
「詳しく説明すると、俺は顔が広くてな、今この村で酒場とか銭湯とか全員の村人と顔見知りだ、顔透明だけど」
俺はビシッと二人を指す。
「その役割をお前らにあげる!」
デブは眉を寄せた後、俺に質問する。
「意味が分からん……じゃ俺たちは何をすれば良いんだ?」
「フッ、この村の人たちのお手伝いだな、無償で」
「そ、そんなこと……なぜ……それにどこに住むんだ」
「それなら問題なし、村の外れに最近取り壊される家がある。そこに住ませてもらえばいい」
そこまで言うと、デブが俺の肩を掴む。
「なんで俺たちがやらなきゃなんねぇんだそんなこと!!」
「……別にやらんくてもいい、俺はお前らのなんでもないんだから、これは俺の願望だよ」
「願望だと……なぜそんなことを望む?」
デブは困惑しながら聞く。後ろのチビも困惑し、デブを見つめていた。
「家があって役割もあったら、それが生きがいになるだろ、きっと……俺は誰も見捨てたくないんだよ、それに――――」
俺は考えに考えついた結論を、初めて口にする。
「俺はいつかこの村を発つから」
予定があるわけではないが、せっかくの異世界をこの村だけで終わらせるのは勿体無い。
「だから俺の後を継いでくれる人が欲しいんだ」
俺は頭を下げた。
「だから頼む、人のために生きてくれないか」
メイトの言葉に、二人のプライドが揺れ動いていた。相手は見えない透明人間、しかし声だけでも本気なのだと理解できる。それほど、誰かのためを思った声音。
こんな風に頼られたことなんて、あっただろうか……。
「……分かった……」
デブは悩んだ結果、同意した。俺は顔を上げる。
「俺たちでいいなら、お前の後を継ぐ……頼ってくれてありがとう」
人は頼られると嬉しいものだ、訳のわからない状況で手を差し伸べてくれたメイトに、今ではもはや感謝の念を抱いていた。
「やっぱり、良い人だったな」
この世に心から悪事をしたがる人はいない。きっと誰もが周りの環境や圧縮された選択の中で、折れてしまうのだろう。
だから、そこに手を伸ばせば、掴んでもらえるまで手を伸ばし続ければ、きっと変わってくれる。
この世界は、本当に好きだ。
「チビの方もいいよな?」
「チビって……! ま、まぁ良いけど……とりあえず腹減った」
するとチビの腹から音が鳴る。そうか、こいつら起きてすぐここに来たから何も食ってねぇのか……よし。
「フッ、なら飯行くか! 仲良くご飯つつこうの会開くか!」
「よっしゃぁ!」
チビは手を挙げて喜ぶ。
チビは意外と若いのか? 風貌でわかんなかったけど。
「俺も行く」
デブも賛成のようだ。よって、このまま三人で飯屋に行くことにした。
――――――――――――――――――――
時間というのは常に平等。
相対性理論などという小難しい話題で茶を濁そうにもそこまで詳しいわけでもなく、異世界に来てしまった以上今更調べ直すこともできないため、記憶の限りで言うと『人は楽しい間の時間は早く感じる』というものはある。
別に異を唱える訳でなく、ただ単に、そうだなぁ、と感慨に浸ってみるのも悪くないことだなだぁ、と二重の思考に浸っているだけの話である。
なんて、しょうもないことはどうでもよく。
結果から言えば。
俺がメアリーと喧嘩した日、シロツメが襲ってきた日、デブとチビと会談した日から、早いことに三ヶ月が、経過しようとしていた。
俺はというと特段変化はなく、基本的に村人の手伝い、空いた時間にライカからいろいろ戦術を教わっていた。
変化といえば、お手伝いの場にあのデブとチビが同行するようになったことだろう。
そして、ついに時は来た――。
俺はある朝、下に降りリビングに入る。
「メアリー、いるか?」
俺は見慣れた家の風景を見ながらメアリーを探す。メアリーはソファーでうたた寝していた。
「……んぁ……メイト、どうしました?」
メアリーは欠伸をしながら伸びをする。俺は横に立つ。
「今日だな」
「へ?」
「今日がメアリーと戦える最後の日、決めたからな」
メアリーは思い出し、「あー」と声を出す。
「そうでしたね、私は別にいつでも戦って良いのですが……」
「それは俺の縛りの意味がない、それに、こっちの方がいろいろ燃える」
「はぁ……」
俺はこの異世界に来てから六ヶ月、毎日メアリーに挑み続けていた。
晴れの日も雨の日も、毎日同じ原っぱで決闘し合っていた。
そして今日が、メアリーと戦える最後の日である。
「今日こそ勝つ」
「そうですね……」
そうして、いつも通りであり特別な決闘が、始まる。
ご精読ありがとうございました!
不定期で投稿してくので次回もぜひ読んでください!
シャス!




