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【完結】異世界唯一の透明人間、好き放題生きていく。  作者: 秋田
【第1章】マルマロン家編

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【第25話】知ってる言葉

暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!

「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!


メイト            主人公。透明人間。

メアリー・フォレスト・レンズ 家庭教師。

シャル・マルマロン      メアリーの教え子。

ハル・マルマロン       シャルの母親。

ライカ            元山賊。

シロツメ・クローバー     ライカを殺したい貴族

 何も見えない、何も聞こえない、何も感じない。

 まるで、無。

 何もない空間で無になるような感覚、考え続けなければ眠ってしまい、そのまま起きることはなく無になってしまう。

 精神攻撃耐性がない人であれば、精神は簡単に壊れてしまうだろう。耐性つけておいて良かった。

 おそらく外の世界では今、俺の処遇について話している状況だろう。現在俺がこの状態になってから千八百秒ほど、三十分ぐらいか。

 おそらく、最低でも三日はこの状態は続くかもしれない、覚悟が必要だ。

 しかし……現状詰みだ。ライカには勝てないしメイトとかいう透明人間も侮れないし、何よりメアリー様がいるならもう、できることはない。

 ――もう、死、しかないだろう。


「――――」

 次の瞬間、光が見えた。だんだんと目が慣れてくる。

「……」

 シロツメは現状を把握するために視線だけで辺りを見回す。

 警戒するナースと院長、興味なさげに自分を見るライカ、そして自分に手をかざすメアリー。

 目の前に長机があり、自分は座っているとすぐ理解する。拘束はされていない。

「精神は壊れてませんね」

 メアリーはシロツメを観察した後、自分の席に腰を下ろした。

「ここは……どこですか?」

 シロツメはつぶやいた。

「今お前の処遇について話し合ってたところだ、一応結論出たからお前に話そうと思ってさ」

 どこからともなく声がした。シロツメは一つの空席を見つける、そこに透明人間が座っていることも同時に理解する。

「な、なるほど……」

 まさか自分の処遇を決める場に自分が参加するとは思っていなかった……今頃牢屋などに監禁されているのだと……。

「それで、俺たちの結論なんどけど」

 俺はビシッとシロツメを指差しながら言う。

「ライカのいい噂を広める! これがお前の贖罪だ!」

 シロツメは固まった後、眉を寄せる。

「……殺さないのか?」

「俺はこの世に返せない罪はないと思う、大切なのは返そうとする誠意さ、だから殺さない。人が命を持って償わなければならないことなんて、ないんだよ。人が死んだら終わるだけなんだから、何も返せてない」

「死ぬことが誠意の表れだとしたら?」

「そういう考えもできるけど……正直、死ぬことから誠意は感じない。死ぬくらいなら、世界中の人から嫌われながら被害者に罪滅ぼしし続けたほうがいいと思う、被害者が望んでなくてもな」

 そもそも、シロツメがしたことは前世だったら全然死刑になるようなことではないんだよな。

「ちょっと論点ズレたけど、とにかく殺さない。お前には一生ライカのために生きてもらう」

 シロツメは恐怖した、あまりにも強引で大きな贖罪に。

「それが、いい噂を広めること?」

「そうだ『ライカは改心していた、もう襲う対象ではない』みたいなことを王都とかで広めてくれ、依頼主にも広めてその関係者にも広めてもらうんだ」

「それを、死ぬまでやれと……?」

 シロツメは顔を蒼くしながら呟く。俺はニッコリ笑って言う。

「そう」

 シロツメは絶句したまま固たる。

「シロツメ、これを拒否したらどうなるか分かりますよね?」

 それに発破をかけるようにメアリーが横から話しかける。シロツメはゆっくりメアリーを見る。

「……」

 メアリーは無言でシロツメを見る。その顔は笑ってるが、綺麗な瞳の奥底にある金青が威圧感を醸し出している。

「……分かりました……俺にはもともと拒否権なんてないので、従います」

 シロツメはメアリーから視線を逸らし、頭を下げた。

「おう! 頑張ってな!」

「だからなんで元気なの?」

 ミルのジト目を横目に俺は言う。

「結論! シロツメ・クローバーはこの村に接近禁止とライカの良い噂を流すことに一生を捧げる。ということで決着! あざした、礼ー!」

 俺が頭を下げて礼するが誰もついてこない。シロツメからは可哀想なものを見る視線が送られた。

「おいーもっと楽しくやらないか?」

「今は楽しむ場面じゃないでしょ……」

「じゃぁボチボチ解散でいいか? 俺疲れてるから眠いんだ」

 ライカは立ち上がり言う。

「あぁいいぜ、ゆっくり休んでこい」

 俺が言うと、ライカは息を吐いてから椅子の前から退いて退室しようとする。

 それを横目にシロツメが言う。

「あの、メアリー様、質問いいですか?」

「はい?」

 シロツメはずっと疑問だったことを聞く。

「メアリー様は逆行魔法使ってますよね?」

 メアリーはライカの治療も部屋の修復も逆行魔法で行った。

「そうですけど……」

「ではなぜ、『ペナルティー』を受けないんですか?」

 その言葉に興味を持ったライカはドアの前で立ち止まる。メアリーは小首を捻る。

「ペナルティーですか?」

「はい、私は二度目の逆行魔法の使用時にペナルティーが課せられ、魔法が一日使えなくなり怪我を治せませんでした、なぜメアリー様はそのペナルティーがないのですか?」

 メアリーは話を聞いてもピンとこずに反対に首を捻る。

「ペナルティー……二度目? あなたはどうやって逆行魔法を学びました?」

「えと、フォレストの館の禁書庫で……ダメだとは理解してたんですがどうしても抗えずに本を一冊手に取って、そこに逆行魔法について載ってたんです」

 シロツメが説明すると、メアリーは何個か思い出したようだ。

「禁書個……逆行魔法……ペナルティー……――あ」

 メアリーはブツブツ口にした後、口をパックリ開けて察する。

「あー……あーあれですか……」

「メアリー知ってんの?」

 俺が聞くと、メアリーは恥ずかしがるように髪を触りながら呟く。

「ま、まぁ、そ…………が…………した」

 メアリーはボソボソ呟く。

「なんて?」

「それは…………きました」

「それは形がキノコみたいでした?」

「全然違います!」

 なんだよ聞こえないよ。

「それは私が書きました!」

 メアリーはポッと赤く染まる頬を見られないように顔をみんなから反対に向ける。

 ホントに全然違った……え? 私が書きました? ってことは――――。

「メアリーって古代から生きてんの!!??」

 俺はバッと立ち上がり机を叩く。他のみんなも驚いたように開いた口が塞がらない。

「い、いえそうではなくて、あの恥ずかしいんですが……」

 メアリーは説明する。

「私が確か三歳の時、勝手にその書庫に入ったんです、その時に古代の本に白紙のページがあったのでそこに勝手に逆行魔法について書いたんです。当時は若かったのでその、イタズラの気持ちで、誰か引っかかるかなという軽い気持ちで書いたんです」

 メアリーは若い頃の話を恥ずかしそうに喋る。

「ちょ、ちょっと待って……じゃその古代の本は、なんでもなくて、ただ昔メアリーが書いたやつってこと?」

「は、はい。ちょうどその時に逆行魔法が独学でできるようになったので試しにと……」

 シロツメはまさかのことに絶句する。

「……」

 勝てるわけがない、逆行魔法を独学? あんなのを独りでできるようになるなんて、しかも三歳? 俺はおそらく三歳のメアリー様にすら勝てないだろう。

 それほどの、鬼才。

「結局消しに行くのも面倒でそのまま忘れました」

「やっぱり天才だなお前」

「そんな、子供の頃の話です。あの時は魔法で誰かを驚かせたいとばかり考えてましたから」

 俺はロリメアリーを想像する。


「誰か引っかからないかなぁ」(幼女)


 うんいい。

 満面の笑みで本にカキカキするメアリーのことを考えると今のギャップですごく萌える。

「メアリー様、もう一つ質問があるんですが……」

 すると、シロツメはもう一度の疑問だったことを言う。

「な、なんですか?」

 メアリーはこほんと咳払いしながら聞く。


「『ラプラスの悪魔』って知ってますか?」


 俺はなんとなく知っていた。確か前世で聞いたことがある。

「えぇ、過去の事象全て知っている、故に未来全てを予測できる、みたいな悪魔ですね。それがなにか?」

「私のペナルティーの時に、メアリー様は慈悲の心でその悪魔から最良の手を聞いて私に掲示してくださいました、しかしそれは私の知らない言語でして……なんと書いてあったのでしょうか?」

「? そんなことはないはずです、悪魔は相手に理解できる言語を使いますから」

「し、しかしホントに初めて見るものでして」

「それただあんたが無知なだけじゃないの?」

 ミルが横から割り込んでくる。

「い、いや、私はこれでも勉強してますので、ほとんどの言語は理解していますが……」

 なるほど、知らない言語ね……。

「分かりずらいな、どんな文字だったんだ?」

 俺が聞くとシロツメは目を閉じて思い出す。

「たとえば、大きな半月だったり、小さい円……普通の縦棒なんてありました、あとは十字架も……」

 それを聞いてもいまいち分からない。

「なんか書けるもんない? ペンと紙」

「あ、私持ってくるよ」

 ミルが立ち上がる。それをメアリーが止める。

「大丈夫です、シロツメ、できますよね?」

「はい」

 するとシロツメは空中を指差す。シロツメの指先が光る。俺はこれに見覚えがあった。メアリーの初めて会った翌日にメアリーが使っていた魔法だ。

「確かこういう……」

 シロツメが指を動かすと、空中に光が残る。俺は机を回ってシロツメの後ろにくる。

 シロツメは記憶の限り文字を書いていく。

 俺は信じられなくて、言葉を失った。

「……はい、確かにこう書いてありました」

 シロツメは書き終えると、メアリーに見せる。

「……? 確かに知らない言語ですね」

 メアリーも首を捻る。その横からミルや院長、ライカが覗き込んでくる。

「なにこれ? わかんない」

「ふむ、私も初めて見ますな……」

「……」

 ライカは何も言わないが、それは知らないと言う意味だろう。みんな知らない。

「となると、一層謎ですね……メイトも分かりませんよね?」

 メアリーは俺に聞く。俺は一瞬沈黙した後、答える。

「いや、俺は知ってる」

 俺の言葉にみんな俺の方向を見る。

「本当ですか? ではなんと?」

「これは――――」

 俺は空に浮かぶ光を読み上げた。


『Don’t kill 』


「ドントキル……『殺すな』って意味だ」

 カタコト。いやネイティブでもないし、むしろ英語苦手だし、そこはどうでもいいんだよ。

「殺すな、ですか……間違ったことは言ってませんね、でもどこでこの言語を?」

「どこで……生まれで」

 メアリーはジトーと俺を見る。

「だからあなたの生まれは知らないんですって、どこなんですか?」

 あーそういや言ってなかったな。どうする? いっそのこと異世界人だって言うか? し、しかしそれは異世界モノの御法度、な気がする。

「あー……まぁ言えないけど……この文字を使えるのは俺しかいないと思ってたけど、この世界に誰かいる?」

 俺は顎に手をやり考える。

 可能性としては当然俺以外の転生か転移者、もしくは俺の記憶から勝手に奪い使用、それか英語と全く同じ形の言語……。

 普通に考えれば一つ目が有力だが、他の可能性もないわけではない。ならば行動あるのみ。

「そのラプラスの悪魔と話せないかな?」

 俺がメアリーに聞くと、メアリーは首を傾げる。

「分かりません、やったことないので……」

「やってみよう」

「ちょ、ちょっと待って!」

 するとミルが止めに入る。

「どした?」

「とりあえず解散しようよ、外の様子も気になるしライカだって疲れてるんでしょ? 私も仕事あるから……」

 こんな緊急事態でも仕事なんて偉すぎる。でも確かにそうだ。

「そ、そうだな、焦りは禁物……よし、こっちは個人的にやるから各々テキトーに解散で」

 それから院長とナースは避難させた患者を見に行った。院長からは「危険なことはするな」と忠告された。

「じゃぁ、俺も寝るわ……」

 ライカは欠伸しながらドアに向かう。

「おう」

 すると、ドアの前で立ち止まった。

「……?」

 ライカは少し考えた後、顔半分をこちらに向けて言う。

「ちゃんとしてんじゃねぇか、やっぱ俺の勝ちだな」

 ライカはそう言い残して、部屋を出て行った。俺はなんのことかわからず首を捻る。

 メアリーは無関係にも関わらず、察する。

 私がメイトのことが好きなのことバレた!?

 メアリーは顔を真っ赤にし俯く。メイトは相変わらず首を曲げていた。

「そんなことよりだ!」

「そ、そうですね!」

 メイトはライカの意味深な言葉は無視することにした。メアリーは頷いて顔を上げる。

「あの、私はどうすれば……」

 ふと、隣に座ったままのシロツメが控えめに声を出した。

「あ、そっか……」

「……」

 メアリーは口を尖らせてシロツメをジトっと睨んだ後、ため息を吐いた。

「はぁ……先にあなたを送りますか……」

「……そうだな」

 そういうことで、悪魔と交信するのは遅れそうだ。

ご精読ありがとうございました!

不定期で投稿してくので次回もぜひ読んでください!

シャス!

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