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【完結】異世界唯一の透明人間、好き放題生きていく。  作者: 秋田
【第1章】マルマロン家編

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【第20話】殴り合い

暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!

「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!


メイト            主人公。透明人間。

メアリー・フォレスト・レンズ 家庭教師。

シャル・マルマロン      メアリーの教え子。

ハル・マルマロン       シャルの母親。

ライカ            元山賊。

シロツメ・クローバー     ライカを殺したい貴族

 部屋に静寂が流れる。ライカとシロツメはお互い睨み合ったまま動かない。 

 うわ〜、こういう刀を向け合ってジリジリするやつってホントにするんだ、アニメとかでしか見たことなかっけど、実際真剣でやられると緊張感がやばい。

 しかし、ライカは左腕が斬られた状態だ。刀で戦うなら圧倒的に不利。

「その刀……」

 その時、静寂を破り言葉を発したのはライカだった。

「……?」

 シロツメはライカから視線を外さずに眉を寄せる。ライカはギロっとシロツメの目から刀に視線をずらす。

「その刀だけは邪魔だ」

 次の瞬間、ライカが動く。刹那の一瞬でライカの小刀は振られており、シロツメの刀の先を折っていた。

 シロツメの刃先が切り落とされる、ライカはさらに刀を振り戻し二度刀を斬る。

 刀はさらに折れ、どんどん刃長が短くなっていく。

 この間およそ瞬きの半分の時間。

 ここでやっとシロツメはライカのしていることが脳に届く。シロツメは急いで小刀を避ける。

 武器破壊!!!! なんで刀が折れるんだ!!!

 しかしシロツメの回避は間に合わず、刀の鍔に触れる部分からライカによって切り落とされた。

 これでシロツメの刀は完全に刀として終わった。シロツメの手元に残ったのは刀を持つ部分の柄だけ。

 シロツメはライカを蹴り上げる。しかしライカは後ろに飛び避ける。

「それで、刀は無くなったな」

 ライカは右腕だけとは思えない刀捌きで一瞬でシロツメの武器を無力化した。

「……まだ理解していないようだが、俺は逆行魔法があるんだ、いくら破壊してもすぐに直せるんだ」

 逆行魔法、それがある限りどれだけやっても攻撃は無意味。それはライカも理解していた。

「知ってるよ、だがな……お前も不本意だと思うからな」

「? なんの話だ」

 シロツメは柄を見た後ライカを睨む。

「俺は、殴り合いの方が得意なんだ」

 シロツメは目を見開き固まった後、憎たらしく口角をあげる。

「斬り合うじゃなくて、殴り合おうぜ」

 ライカは右腕を前に出し、シロツメに下から上に手を振る。かかってこい、ということだ。

「へぇ、いいだろう」

 シロツメはライカの挑発に乗った。柄を地面に置き、腕捲りをする。

 ライカの狙い通り。


 こいつは俺を完全に負けさせたい、そしてプライドが高い。ならば俺の得意分野と言えば殴り合いに乗る。


 シロツメは手首を解しながら息を吐く。


 ライカは左腕がない重傷、俺は怪我一つないし、なんなら絶好調……完全にこっちに部がある。さらに言えばライカはさっきの俺の斬撃を避け続けた時の疲労が残っているはずだ。


 シロツメは確信する。

 ――――勝った、殺せる。

 ライカは小刀を木製の床に突き刺した。

 えぇ……突き刺す必要あった? 俺が持ってましょうか? なんていう暇もなく刺したよこの人、しかし片腕ないけど痛くないのか? 血とか大丈夫なのか?

「ふむ……」

 ライカはシロツメのファイテェングポーズを見ながら、前に踏み出た。

 シロツメと腕を伸ばせば届く距離で立ち止まる。二人とも高身長で睨み合う姿は、二人より低身長な俺には入り難い雰囲気だ。

 シロツメはニヤとライカを見下しながら笑うと、ライカは興味なさげに下から睨む。

 これが命の取り合い、本気のマジバトル。でも相手のやつ……。

「復讐心か……」


――――――――――――――――――――


 シロツメは考える。

 だか俺だって馬鹿ではない。正直、ライカのスピードは俺の上だ。俺はライカに殴られた時、おそらく避けられない。ならば先手、不意打ちを狙うしかない。

「そういやお前――」

 シロツメは「あ」と言った後、手を少し下げてライカに呟く。ライカはシロツメの言葉に耳を傾ける。

 次の瞬間、シロツメは拳を出した。

 ――が、刹那の一瞬でライカに殴られた。

 シロツメは左頬を強打されよろめく。ライカは平然と腕を戻す。

 は、早い……カウンターのレベルじゃない!

 ライカはシロツメが殴ろうとしたのを見た後、それが自分に到達する前に拳を出しシロツメを殴った。

 無理、俺が殴ろうと腕を動かした瞬間殴られた。ライカが動いたと理解する頃には殴られていた。

 シロツメは床に手をつき脚を上げる。弧を描きライカの顔を狙う。

 手でダメなら脚で――――!

 気がつくと顔面をライカに蹴られていた。

 シロツメは吹っ飛び壁に背中から当たる。

 早すぎる。回避不可能だ。なぜこんなにも差がある? 俺はバフを自分にかけてるのだから生身の人間に負けるわけがない。

 シロツメは跳ね起き、間髪入れず殴りにかかる。ライカは素早く反応して同じく殴りかかる。

 メイトはライカの動きしか見ていなかった。ライカとのあの授業で、ライカの速さは目だけだったら追いつけるようになっていた。

「そう、こう……あー肘か、逆手、脚、フェイント――――」  

 見れば見るほど、まるで手に取るようにわかる。

 いやこれは……――。

 メイトは予想通りの動きをするライカを見ながら考える。

 これは授業……?

 ライカは俺を待っていたと言った。それは『本物の初手』を見せるためとか言ってたが、それだけじゃない? これを俺に見せるため?

 俺の背中にゾクゾクと高揚感が駆け上がる。場違いながら俺は笑った。

 分かる、予測できる、相手を圧倒するライカの動きを予測できることに喜びを感じていた。

 

 クソっ! なぜ当たらない!! 相手は片腕ないんだぞ!?

 シロツメは絶対に攻撃を避けるライカに怒りが止まらなかった。

 一般人にとってすれば、まるで異次元の殴り合い。動きを見ることさえままならない、かろうじて場所が分かるだけで、何をしているのかは理解できない。

 シロツメは殴り合いでも負けたことはなかった。普段相手はその速さについてこれず負ける。それが普通だったのに――。

 ――――避ける! この男は当たり前のように避ける! 最初から命の危機なんてないようなスカした顔で俺を殴る!

 殴り合い始めてまだ一分ほど、しかしその場にいた彼らにとって、この一分は一瞬に感じられ、無限の時のようだった。

 すでにシロツメが殴られたり蹴られたりした回数は百回以上、ライカは一度も殴られていなかった。

 ライカは生まれつき持っていた"何か"を感じる"感覚"だけでなく、野生を生き抜く上で身につけた相手の行動パターンを読み取る能力に長けていた。

 先制攻撃の速さに評価が行きがちだが、その能力は、随一のものだった。つまりライカは戦えば戦うほど強くなる。

  

 見たい、もっとすごいものが見たい。左腕があればライカはもっと強かったのか。


 シロツメは怒りを表面に出しながら、心中冷静だった。

 お前が教えてくれたんだよ、初手だってな――。俺は最終手段としての隠し魔法がある。お前が当たれば確実に死ぬ、これをぶち当ててやる。さぁ、隙を見せろ。

「このっ! 野郎!!!」

 シロツメは隠し球を悟られないようにあえて怒る。ライカは無表情で顔面を殴る。

 

 入りてぇ! あの間に入りてぇ!!


 ライカは一瞬止まる。シロツメは察する。

 来た、やっと来た!! チャンスだ!!

 シロツメはすかさずライカに手をかざし、魔法を発動する。


 ――その空いたスペース、俺が埋めていいよな。


 ――できねぇようなカスじゃねぇよな。


 俺は好奇心に抗えず、ライカに手を向けた。それと同時にライカは肩を引いた。

 今は無き、左腕を引くように。

「――――!?」

 シロツメは突然の行動に驚く。

 なんだ、何をしようとしている?なぜ左を引いた? ……まぁいい! この魔法で終いだ!!

 最大級衝撃魔法――。

「ラストインパクト――」

 突如、空中に円形の魔法陣が浮かぶ、真ん中に大きな円、それを挟むように小さい円が前後に二つずつ。

 え、なにそれクソかっこいいんだが。

 ライカは魔法を一切見ずに、左腕を出した。

 次の瞬間、シロツメの出した魔法を貫通してシロツメの頬は殴られた。ライカが殴るよりも重い力が頬に当たり、シロツメは吹っ飛ばされ棚に突っ込む。ガラスが床に散らばる。


 さすが、吸収力の天才。今までの俺の殴り方を見て俺の攻撃の仕方を理解して俺に合わせた、やはり天才。


「……! ……?」

 シロツメは突然の痛みに対処できず頬を触りながら混乱する。衝撃魔法は解かれる。

 なんだ? 何に殴られた? まさか見えないほどの速さ? そんなわけない、今まで見えてた。そして左側、左から殴ったのか? 左腕ないんだぞ!?

 シロツメは立とうとするが足に力が入らない、視界が回る。

 顎だ。いいとこをやられた、脳が揺れる。

 シロツメはギロとライカを睨む。

 ライカは感心してた。

 この腕を触った感覚、まるで本当にあるみたいだ。メイトが作った透明の腕、筋肉や骨、肌の質感、全てが今まで共に生きてきた俺の腕と同じだ。

「……ほんとにすごいな」

 メアリーが俺に授業しろと言ってきた意味が分かった。

 メイトは間違いなく才能がある。

 ライカは初めて他人のことを心から誉めた。

 しかし、そんなことは後でだ。今はこの男を――。


 シロツメはハッと気がつく。

 あの透明人間!! あいつが魔法でやったんだ! 透明魔法が使えるなら衝撃魔法でもなんでも使えるはず、それをライカの動きに合わせ、あたかもライカがやったように見せただけだ。

「悪人の、協力をするか。メイトとやら」

「……ん? 俺? しないが?」

 なんだこいつ……用心深いのか透明魔法は解かない、それにしても軽い声音、本当に強いのか?なにも感じない。

「どうでもいい……シロツメ、お前は俺を殺そうとした、お前は俺の嫌いなタイプだ、死ね」

 ライカは床に突き刺していた小刀を抜き、シロツメに向ける。

「……」

 シロツメはジロと下からライカを睨む。

 ――――もう、あの禁忌を犯すしか……。

「あばよ」

 そしてライカは躊躇いなく、刀を振り上げた――。

ご精読ありがとうございました!

不定期で投稿してくので次回もぜひ読んでください!

シャス!

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