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【第17話】因果

暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!

「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!


メイト            主人公。透明人間。

メアリー・フォレスト・レンズ 家庭教師。

シャル・マルマロン      メアリーの教え子。

ハル・マルマロン       シャルの母親。

ライカ            元山賊。

 俺は藁製の椅子に腰掛けていた。ここは銭湯の脱衣所を抜けたところにある、髪を乾かしたりマッサージ機があったりテレビがあったりするところだ。

 最悪、前世にあった娯楽施設や器具で儲けて生活しようなんて考えてたが、この世界はどうやら意外とこういう娯楽はちゃんとあるらしい。

 化学より魔法の方が簡単だし、発達が早いのかな? まぁこの世界ができてからどれくらいなのかも知らんけど。

「ふぅ……」

 するとライカが首にタオルをかけたまま俺の隣に座る。

「どうだった、初めてのお湯風呂は」

「悪くなかった」

 ライカはそういうと瓶を開け、茶色の液体を飲む。

「フッ、そうか、でなにそれ」

「これはコーヒー牛乳とかなんとか、さっきの女にお前の分だって言ったらタダでくれた」

「おいサラッとサランに嘘つくなよ……じゃそれ俺のだろ」

 ライカは俺を無視して飲む。

 コーヒー牛乳…々飲みてー! 今は無きコーヒー牛乳飲みてぇ!

 ぐぬぬ、と唸る俺を横目にライカは一気飲みした。俺は話しかける。

「一つ質問いいか」

 なんとなく、銭湯に入ってから血行が良くなっていつもの不気味さがない。

「あ? んだよ」

「お前ってメアリーのこと好き?」

 ライカは俺のことをチラッと見た後、前を見て答える。

「いや、好きじゃない」

 それを聞いて俺はドキッとする。

「マ? ……そうか、そうか」

 俺は足を伸ばして壁に寄りかかる。

 ライカはメアリーのことが好きじゃない、か。となると……メアリーの片想いってことに……。

「人生、楽じゃないってことか……」

「は?」

 全部自分に都合のいいように進むわけじゃない。しかしまだ終わってない、これから好きになるかもしれんし。

「フッ、もう少しメアリーのことちゃんと見てやれよ」

 俺ができるのは、彼女らを陰で応援することだけ。これで幸せになってくれたら――――。

「あ? それってあいつが俺を好きってことか?」

「――」

 分かってんじゃねぇか。

「知ってんならなんで好きじゃないんだよ……」

「あいつが好きなのはお前だろ」

 ライカはいつもより穏やかな視線で言う。俺は一瞬固まった後、口を開く。

「いやいや、それはないだろ。俺も色々考えたけど、言動から得られた情報だとメアリーはライカのことが好きだよ」

 俺が言うと、ライカは納得いかないようで立ち上がる。

「……んなら聞いてくるか」

「え?」

 ライカは俺の前を通ってスタスタ歩いていく。俺はその後ろを急いでついていく。

「お、おい! 聞いてくるって――」

 ライカが扉を開けてホールに出る。するとそこにはこれから帰るとこのメアリーがいた。

 黒いマントに長いスカート、髪は白く美しく靡く。ほんのり染まる頬にドキッとしてしまう。

 え、なんか可愛くね? いつも可愛いけど格段に可愛いくね?あれか、修学旅行で女子の風呂上がりの姿見れたらなんか嬉しくなるあれか。

「ようメアリー」

「ライカ、あなたもいたんですか、彼は?」

 メアリーは少し焦った様子でライカの後ろを見る。ライカは手でメアリーを止める。

「その前に質問に答えろ」

「はぁ……なんでしょうか、あと気安く命令しないでください――」

「お前メイトのこと好きなのか?」

「フッぁ!!??」

 メアリーは裏返った声で驚く。一瞬で顔が真っ赤に染まる。汗汗しながら答える。

「そ、それは――っいえまずなんでそれをあなたに言わなければいけないんですか!」

 メアリーはライカのことをビシッと指して言い返す。

「好きじゃないのか」

「あいや、え……えと……」

 メアリーは歯切れが悪く、モジモジ手をいじる。

「好きなんだな」

「――――」

 メアリーはライカに簡単に言われてさらに赤くなり俯く。

「……」

 ライカはやれやれとため息を吐きながら振り返る。そして俺の目を見る。

 

 ほら見ろ。


 ライカは優しい瞳で俺を見た。俺は葛藤していた。

 分からない。メアリーは俺のことが好きなのか? なぜ照れる? なぜ戸惑う? 恥ずかしい?

 この男、恋には疎いクソ鈍感だった。

「ま、どうでもいいけどな」

 ライカはそうメアリーに呟く。するとメアリーはキッとライカを睨んだあと、いそいそ銭湯から出て行った。

「な、あの女お前が好きだぜ」

「? 今の反応で分かったか? いきなり変なこと言われて戸惑ってただけだろ」

「……このクソが」

 ライカは怒りに暴言を吐く。俺はそれを聞いて少し腹が立つ。

「んだよ、分からんのだよ本当に! 自慢じゃないが俺は他人の情に関しては全く分からん!」

「ホントに自慢じゃねぇな! むしろ悪癖だろ! じゃ聞くがよ!? お前は好きなのかあいつのこと!」

 俺はそれにすぐに答えられなかった。何か言おうと思うが声は出ず、口をパクパクさせるだけだ。

「他人のことわかんねぇならメアリーが俺のことを好きなのかも分からんだろ、なんでお前はそれは分かるんだ」

「そ、それは反応的に……」

「今だって完全にお前のことを聞いての反応だろ、メアリーは百パーお前に気がある! 気づけこの鈍感馬鹿!」

 カッチーン!

「てめぇ言わせておけばなんか女の子の気持ち分かってる風に語りやがって、お前だって女子と関わったことあんのかよ!」

「ないな! 俺は山賊だったからな!! でも今回は俺の方が正しいね!」

「いーや違うね! 俺の方が正しい!」

 実際はメイトも女の子と仲良くなったことはなかった。

「なんだとゴミ!」

「ゴミ!? やんのか?!?」

 俺とライカはどんどんヒートアップしていく。

「じゃぁいいぜ!! これじゃらちが明かねぇ! こうなったら第三者に決めてもらおうぜ!」

 ライカは手を振りながら言う。

「あぁいいぜもう! 勝手しろ!」

「じゃぁ明日の朝俺の病室来いよ、いつもいるあの女に聞いてやる」

 いつもいるあの女……あの赤髪のナースか。

「いいだろう、その代わりお前が間違ってたとしても何も言うなよ!」

「それはお前だ」

 ライカはそう言って、舌を出して俺を煽りながら銭湯から出ていった。


 俺は怒りでしばらくその場に固まった後、声を出す。

「はぁ……なぁサランはどう思う?」

「……えー……」

 俺はずっと俺たちの会話を聞いていた番台の女の子、サランに声をかけた。

 サランは汗が垂らして悩む。

 ど、どうでもいい……てか入口でやらないでほしい。

 というのが本心だが、サランは考えてからしゃべる。

「でもすごいよね、よくあの人と関われるよね」

「……まぁ、今は山賊じゃないし、意外といい奴だから」

「それもあるけどさ」

 サランはメイトに心配の視線を向けながら呟く。

「あいつ、人殺しって噂あるんだよね――」

 俺は、不覚にも固まってしまった。


――――――――――――――――――――


「て、ことがあったんだよ」

 翌朝、ライカはベットに寝っ転がりながら赤髪のナースにメイトとあったことを話していた。

「ふーん……で、私にジャッジしてほしいと」

「あぁ、あいつ相当の馬鹿だからな、説得してくれ」

「ふーん」

 ライカは腕を頭の後ろに組む。

 もうすぐ、いつもメイトが病院に来る時間だ。昨日の話し合いの決着をつけてやる。

 すると、コンコン、と病室の扉が優しく叩かれた。

 ノックがあった際、ライカの監査役のナースが出迎える。いつも通り赤髪のナースがこの時も立ち上がった。

「はーい」

 椅子から立ち上がり、スタスタ扉へ向かう。

 昨日と同じ風景、ここ一週間このルーティーンだ。違和感はない。むしろ昨日のこともあり、早く会いたいと思っていた。

 ナースはなんの躊躇いもなく、ドアを開ける。

 

 そこには誰もいない。正確には見えないだけで、絶対いる。


「や、ライカから話聞いた――――」

竜斗(りゅうと)一閃(いっせん)


 次の瞬間、風を切る高い音が聞こえた。ナースは唐突に衝撃により押される。その強さに横に飛ばされ壁に当たる。

 そして次ナースが見えたのは、飛び散る血液だった。

「あ――――」

 それは、ライカの腕だった。床に落ちているそれは、今までライカの"モノ"であったはずの左腕だった。

「――――」

 意識がはっきりしてくると、自分がライカに守られたことがわかる。ライカは一瞬でベットで寝ていた状態から跳ね起き五メートルほど移動し自分を守ったのだ。

 ライカの顔を見ると、いつも通り平然とした顔でベットを見ていた。

 ナースがベットを見ると、ベットに穴が空いていた。まるで刀が刺さったような形である。

「……人を守るか。ライカ」

 すると無からゆらゆら色が生まれ、形になる。それは透明化魔法が解かれたということである。

 黒髪で赤い瞳。貴族のような服装だ。そいつはベットに片方の足を立て、もう片方をベットにつけて座っていた。手には長い刀が持たれていた。

 その男は体を動かさず、視線だけでライカとナースを見る。

「……」

 ライカは思い当たりがあるようで、その男を睨んだまま口を塞ぐ。その左肩から血液がダラダラ溢れて地面を汚す。

「人を守るか……ライカ!!」

 男は声を荒らげながら刀をベットから抜き、ライカに向ける。

 ライカは立ち上がる。

「おい俺の刀を持ってこい……」

 ライカは小声でナースに話す。ナースは驚きと恐怖で腰が抜けて動けない。

「お前を殺す、俺の流儀で」

 またもやナースには予測不能の速さでライカに切り掛かる。ライカも同じ速さで反応する。

 気がつくとライカはナースを右腕に担いだ状態で、男の刀を避けていた。

「――――」

 ライカは無くした腕の痛みで顔を強張らず。男に注意しながらナースを下ろす。

「ちょっ、ライカ――」

「頼むミル」

 あ、私の名前……。

 ナースは突然名前を言われ、自覚する。ライカは私をちゃんと守ってくれたことを。

「うん!」

 ナースは震える足を無理矢理動かして走り出す。

「行かせない――」

 男は瞬時にナースに狙いを定め、刀を振りかぶる。

「一般人だろ」

 するとライカは地面に落ちていた自分の腕を投げる。男はぶつかる前に避ける。そのうちにナースは部屋から出ていった。

「チッ……まぁいい。まずはお前からだ」

「…々俺を殺そうとするのはいいが、なぜあの女を殺す? 関係ないだろ」

「お前に協力する人間など生きてても無価値。人殺しの仲間も含めて皆殺しだ」

 ライカは昔を思い出しながら問う。

「また、『依頼』か?」

「……そうだ。五年前と同じやつから「お前を殺せ」と依頼があった。これは因果だ。俺の両親を殺した男とまた巡り会えるなんて……」

 男は刃先をライカから離さずに、構える。

「シロツメ・クローバー……正義の名の下にお前を殺す」

 なんか名前を名乗ってきたんだが……ここは俺も名乗るべきなのか……。

「……殺せないだろ」

 悩んだ結果煽ることにした。嘲笑いながら言う。

 そうして、二人は狭い病室で対峙した。

ご精読ありがとうございました!

不定期で投稿してくので次回もぜひ読んでください!

シャス!

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