【第161話】デート追跡
暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!
「なんかいまいち理解できない」など「話無理矢理すぎだろ」など思うかもしれませんが、そこはご愛嬌ということで!
メイト・マルマロン
アクロ・アイト
オリビエ・ペル
メアリー・フォレスト・レンズ
ライカ
ヨイ
ゼレン・フォレスト・レンズ
リメア・フォレスト・レンズ
シン
ディバルド
ディラ
『いいか? なるべくシンにエスコートさせろ、それでシンがお前に相応しいから判断してやる』
『は、はぁ……いいけどバレないようにね?』
『無論だ』
太陽もすっかり青い空に浮かぶ時間帯になった翌日。相変わらず地上では肌寒い秋風が吹いていた。
「あんなこと言ってたけど、お兄ちゃんデートの作法とか判断できるかなぁ。そもそもデートすらしたことないのにお兄ちゃん」
リメアは木枯らしが首元を駆け抜け、マフラーをグイッ持ち上げる。こんな寒くても少年たちはサッカーをしている。
リメアは横目で元気だなーなんて思いながら、枯れ葉が舞う広場にてシンを待っていた。
「か、可愛いぃ、なんだあの天使は」
それを建物の陰から身を出し遠目で眺める兄ゼレン。リメアの服装を見て顎をガクガク震わせる。ヨイもその隣で澄ました真顔でリメアを観察する。
貧相な我が家から引っ張り出したなるべくマシに見えそうな服装である。純白のワンピースにコート、チャームポイントは胸の花の刺繍である。一体どこで手に入れたのか本人も忘れたらしい。それとニット帽とマフラー。
「我ながら完璧すぎるコーディネート……天使さが倍増してやがる」
グッと噛み締めるように拳を作るゼレンはさておき、どうやら到着したようだ。
「ごめーーん!! 遅れた!!」
大きな謝罪声とともに走ってきたのはシンだった。動揺するリメアの前にズザザザと枯葉を滑り、立ち止まった。
「ほんっとごめん!! 悪気はないんだ! 僕が全面的に悪い! ごめん!!」
「い、いやッ! 気にしてないから! 私が早く来ただけだからシンは悪くないよ、だから頭あげて声抑えて周りの目が痛い」
「リメアのことを考えていたら全然寝れなくて……、僕はッ……何やってんだ……!」
「は、はぁ……、と、とにかく顔上げて……!」
シンは悔しそうに涙を流した。リメアは喜ぶべきなのか分からず生半可な返事を漏らした後、シンの頭を上げさせる。
「シンのやつなんでもう呼び捨てなんだよぉ……! ――落ち着け! まだ殺すのは早い!」
陰から覗くゼレンが怒りにより壁を強く握ると、ピシッとヒビが入った。少しは冷静になってほしい、リメアからウザがられる理由がわかる。
「ご、ごめん……――その服かわいいね、似合ってる。天使みたいにかわいい」
「は? あいつ何言ってんだ天使ってw、馬鹿かw?」
お前もさっき同じこと言ってただろ。
「え? あ、ありがと……、昨日急いで引っ張り出したんだ」
「わざわざ今日のために!? ありがとうすっごく嬉しいよ!」
「なんなのあいつ、自意識過剰すぎないか? なぁヨイ」
陰で愚痴愚痴言ってるお前より百倍マシだ。少しはシンを許してやれよ。
「……う、ううん……とにかく行こ? 街案内なんでしょ?」
「えぁ、う、うんお願い」
紅潮を誤魔化すように咳払いした後、ニパッと笑ったリメアはシンの手を引く。シンは触れられたことに失神しそうになりながらも、なんとかついて行く。
「お、歩き出したぞ。着いてこいヨイ、尾けるぞ」
屈んでコソコソついて行くゼレンがチョイチョイと指を振ってヨイを呼ぶ。ヨイはこんなこと無意味と感じながらも、一時の緩和に浸かることにした。
――――――――――――――――――――
「ここは?」
「この街はほとんど無法なんだよね、だからみんなテキトーに物売ってたりするの」
リメアが最初に連れてきた場所は、道端に並ぶなんともボロ臭い出店だった。すると店主が出てきた。
「お、らっしゃいリメアちゃん、今日もなんか買ってくかい? んと? 隣の坊主は……? 見たことない顔だけど」
「僕は貴族の―――」
「もー! 彼はここに遊びに来た知り合い! 私の彼氏だから!」
リメアは答えようとしたシンの右腕に抱きついた。シンはパキッと体を硬直させながらリメアに視線をやり、小声で聞く。
「なんで?」
「あんまり貴族って広めない方がいいでしょ? この街少なからず貴族に不満がある人いるから……、それにシンが貴族なのは私との秘密にしてほし〜な〜、なんて」
リメアは意地悪するようにヘラっと笑い、さらに腕にくっついた。しかし意外にもシンは真面目な顔で店を見つめていた。
「貴族に不満か……、それは心苦しいね……。うん分かったよ」
シンは哀しそうに眉を寄せた後、コクっと頷き同意した。
「僕はシンと言います。リメアの彼氏です。最近こっちに来たんですよ、出て行くまでは観光しようかなって」
「はぇ〜……ここを観光だなんて物好きだな〜、是非ともゆっくりして行ってくれ。しかしシン、い〜い人をゲットしましたなぁ、リメアはこの街で知らない人はいないレベルの上玉だ、家事ができて愛想があって甲斐性もいい、やるな兄ちゃん」
「えぇリメアは本当に可愛くて凄くて、本当僕なんかに勿体無いくらいで――」
リメアは横で絶賛されながら、街の人と仲良く話す様子を見て少し驚いていた。
「ふぅ〜ん…………意外としっかりしてるんだ……」
「え? 何か言った?」
「ううん、言ってないよ? それよりほら! なんか注文しよ? 食べたいものある? えぇーとメニュー表は……」
「悪いなリメアちゃん、ウチにメニュー表を作るほどのメニューはないんだよ、当店はケバブしかないぞ」
店主は自分の傍に置いてあるあの肉回す機械をポンポン叩いて言う。
「そうだったそうだった! たははー! 相変わらずメニュー少ないねー!」
「なぬ! はぁ、こう言うとこはアイツに似てるな……てかゼレンに伝えといてくれ、昨日仕事バックれやがって、減給だって」
「オッケ〜、伝えておかないね! じゃケバブ二つお願い」
「はいよ、ちょっとお待ち」
注文を受けた店主は慣れた手つきで肉を一口サイズに切っていく。リメアが完成を待っていると、シンが話しかけた。
「仲良いんだね」
「うん、まぁこの街の住人はほとんど顔見知りだよ、元々そんなに人いないし協力しないと大変だし」
「そういうのちょっと憧れるなぁ、街一体になる雰囲気、楽しそうだよね」
「そんなことないよ? 知らない人なら無視できるけど、顔見知りとはある程度会話して関係値保たないといけないから大変なんだよ?」
「そういうことはおっちゃんの聞こえないとこで言ってほしいな……ぐす」
店主は自分としていた会話は関係値保つためだけで、実際は疎まれていたと考えると泣けてくるのか、涙を流した。リメアは大して否定するわけでもなく「たははー」と誤魔化した。否定しないのかよ。
「なんかあいつらめちゃいい感じじゃねーか? さっきからひっつきやがってよー……、てか昨日午後から入ってたんだった〜、忘れてた〜……これは土下座足舐めコースだな……」
相変わらず陰から覗くゼレンは、もう鬼かと勘違いするくらい捻り曲がった顔でリメアとシンのカップリングを睨んでいた。
「お、歩き出した、おし行くぞ……。……おいヨイ?」
「……」
ゼレンは後ろを眺めていたヨイに声をかける。するとヨイはパッと顔を戻し、頷いた。相変わらずマイペースなやつだなーなんて考えながら、ゼレンは二人の後をつけた。
――――――――――――――――――――
それから数時間経った。時間が経過すると共に二人の仲は近づいていった気がする。もはや演技なのか判断がつかないくらいに、リメアはとてもいい顔で笑っていた。
「アハハハ!! 何それすごっー!」
「そんなに笑ってくれるなんて嬉しいよ」
街を一周して最初の公園に戻ってきた二人は、少年サッカー集団を眺めながら快談に花を咲かせていた。
「あー、リメアが俺に見せたことない顔で笑っちょる……あんな笑い声初めて聞いた……」
ずっと尾けていたゼレンとヨイ。意気消沈のゼレンを置いて、ヨイは観察する。
確かにゼレンの言う通り、リメアの理性の中にハニートラップ以上の感情が生まれている。言い表すなら尊敬や感心辺りだろうか。そしてもう一つ、理解不能な感情が……。
リメアの中に、貴族は排他的なものだという偏見を持っていたことは事実、だから騙すことで利用しようとしたんだ。しかし意外と貴族らしくないシンに戸惑っているようだ。そして人として感心している。
「はぁ、もう帰るか……あっちももうすぐ解散だろうし」
項垂れていたゼレンは、げっそりした様子で立ち上がった。フラフラした足取りで振り返る。リメアとシンとは逆方向の路地から出るようだ。
「こんなの……俺はどうしたらッ!!」
普通に我慢すればいいと思う。
「兄として大変そうだね、ゼレン君」
突然、ゼレンの目の前に立ち塞がった人がいた。その人は凛々しい背と爽やかな雰囲気を持ち合わせる男性で、知り合いだった。
「お前はッ……名も知らぬ騎士!!」
「ディバルドだ、名乗ってなかったな」
ディバルドと名乗った騎士は、昨日シンの護衛をしていた騎士の一人である。
「何の用だよお前、まさか俺たちをどうにかしようってわけじゃ……」
警戒の色を見せるゼレンは、一歩下がり剣を構えた。しかしディバルドはそれを手で軽く制してから話す。
「違うさ、僕はシン様の護衛だよ。一人で行くと仰られていたが、そう言うわけにもいかないからこうやって陰から見守っているのさ」
「なぁーんだ、それはお勤めご苦労様。じゃ俺たちはこれで帰るから、行こうぜヨイ」
安心したゼレンは胸を撫で下ろしつつ、ディバルドの横を通り過ぎようとする。
「あぁ、気をつけて帰れよゼレン君。あぁ安心したまえ、リメア君も俺がきっちり守るよ」
「へーへー勝手にやっといやそれはなんか嫌だ俺も守る」
急速で踵を返したゼレンはディバルドの肩を掴んだ。兄としてもプライドがあるらしい。ヨイはゆっくり振り返りゼレンのもとに歩く。
「ハッ……、俺、君みたいなやつ嫌いじゃないよ」
「あ〜?」
ディバルドは嬉しそうに声を上らせた。ゼレンは意味を問うように強めに相槌を打ったが、ディバルドは答えずにシンを確認するように路地から顔を出す。
「おい、さっきから思ってたけど子供扱いしてんなよ? ……おい聞いてんのか?」
ゼレンはディバルドに注意するように指差すが、ディバルドは公園を眺めたまま硬直している。不思議に思ったゼレンも、視線をディバルドから公園に移す。
「――……は?」
そこは相変わらず秋の色が鮮やかで、カラフルな枯れ葉の絨毯が広がっている。カラカラと枯れ葉が静かに転がる。サッカーをする少年たちの声だけが耳に届き、いつもの可愛い声が聞こえなかった。
「リメアはどこ行った」
そこにいたはずの二人の姿が消えていた。
ご精読ありがとうございました。
毎週平日に投稿してくので次回もぜひ読んでください。
シャス。




