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【完結】異世界唯一の透明人間、好き放題生きていく。  作者: 秋田
【第3章】フォレスト・レンズ家編

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159/264

【第159話】透明ニンゲン

暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!

「なんかいまいち理解できない」など「話無理矢理すぎだろ」など思うかもしれませんが、そこはご愛嬌ということで!


メイト・マルマロン

アクロ・アイト

オリビエ・ペル

メアリー・フォレスト・レンズ

ライカ


ヨイ

ゼレン・フォレスト・レンズ

リメア・フォレスト・レンズ

 リメア救出後、合流したゼレンと共に騎士の元に戻ることにした。

 ゼレンは自信満々に入り組んだ路地を歩き、数分彷徨った挙句、迷った。結局道を覚えていたリメアが先を歩くことにした。ゼレンは不甲斐なさそうに落ち込んだ。

 狭い路地を抜けると、高い建物に囲まれた空間に出る。そこには貴族らしき少年、シンとその護衛である騎士二人が辺りを警戒した様子で待っていた。

「……! ぶ、無事だったんですか!!」

 顔の血を拭いてもらっていたシンがそのハンカチを退けつつ立ち上がり、ゼレンに駆け寄った。

「あぁお前も無事で良かった、ほいこいつ逃げた盗賊」

 そう言ってゼレンは肩に背負(しょ)って盗賊を地面に寝かせた。騎士達は一瞬呆然とした後、把握して盗賊に縄をかけながら聞いてくる。

「こいつは君が?」

「いや、そいつは俺の親友が」

「……」

 ヨイはコクっと頷く。その様子を見て騎士は不可解そうに眉を寄せた。

「君……、名前はなんて言うんだい?」

「俺はゼレン、こいつはヨイだけど……なにか?」

「いや、少し不思議な雰囲気だなって思っただけさ、ちょっと失礼」

 騎士は朗らかに微笑み、立ち上がる。これで盗賊全員お縄についた。すると騎士はその笑みを湛えたまま、グイッと鼻息が感じられるほどに顔を近づけた。

「……」

 ヨイは離れようとするが肩を掴まれ逃げようにも逃げられない。まぁ別に敵意はないから問題はないか。

「君は不思議だね、まるで透明だよ」

 朗らかな表情を崩さない騎士は、意味深に言った。その漆黒の瞳から何が見えたのか、本人にしか分からない。

「……」

 『心』がないことを悟ったということか……ニンゲンも侮れないな。

 すると騎士は肩から手を離し、ゼレンとリメアに向き直る。

「さて、詳しい話をお聞かせ願いたいな。どうして主人様(あるじさま)がこんなことに巻き込まれているのかを」

 それはゼレンが全て説明した。妹が誘拐されそうになっていたこと、自分が介入したこと、そこにシンが乱入してきたこと、弱くてボコられたこと。

 聞いた騎士は、うんうんと頷き納得した様子だった。もう一人の騎士は不甲斐なさそうにシンに謝っていた。

「すみません、私が目を離さなければ……こんなことには」

「謝るのは僕のほうだよ……、勝手にいなくってごめんなさい」

「いえいえ頭をお上げください! 貴方様を守るのが我々の責務、果たせなかった私たちに落ち度があります!!」

「いやいや、勝手に迷子になった僕の方が悪いから、謝らないで……」

「いえいえ!!」

「いやいや」

 二人がなんか責任の処遇で揉めてる他所でゼレンは騎士に話しかける。

「んで、あんたら何しに来たの? まさか観光な訳ねぇよなこんなところに」

「あぁそれは……私たちは国家直属の騎士団だ、そしてあそこにいるのは我が主人、シン様である。詳しいことは言えないが、まぁ貴族程度の認識でいてくれて良い。この街【アルディア】は今危機に瀕している。他国との戦争によって敵の爆撃予定地に指定されている」

「なんかすごい情報をサラッと言わなかった!?」

「色々ややこしくてね……一介(いっかい)の騎士に知らされていることはこれくらいなんだ。でも安心したまえ、爆撃予定地と言っても他にもたくさん指定されている、そもそもここを攻撃するメリットもない、ブラフだ」

「は、はぁ……、何言ってんのこいつ」

「さぁ? なかなかヤバめの人ね」

 理解できないゼレンは曖昧な相槌を打った後にリメアに聞いた。リメアは呆れたように首を捻っていた。それを見た騎士はフッと笑う。

「まぁ君達みたいな子供は気にしなくて良い、分からないなら別に良いさ、こういうのは大人に任せておけ」

 騎士はポンと優しくゼレンの頭を撫でた。ゼレンは照れくさそうに手を強めに払った。別に理解してないわけではない、ただそんな重大なことをここで初めて聞いたことに苛立っているのだ。

 この街が爆撃? なくなるかもしれない? 聞いてねぇよそんなこと。これだからお偉いさんは……。

「それで何しに来たんだよ」

「あぁそれはシン様がね、この街について決める時――」

「部屋の中からじゃ、『心』が分からないからね」

 騎士の言葉に割り込んできたのは噂をすればのシンであった。

「『心』?」

「うん、紙だけじゃこの街に住む人のことは分からないから。そもそもどこかの街が犠牲になって勝つなんて、本当の勝利じゃない。だから僕が見にきたんだよ、ここに住む人がどんな顔で生きているのかを……」

 覚悟に満ちた顔で言った。……そうか、御偉方(おえらがた)なりにちゃんと目的があったのか……てっきりこういうやつって「ぐへへ税金納めろ愚民ども我は部屋でダラダラ過ごすえぇ〜! 爆撃予定地の説明? そんなの意味ないぇ、その時はその時だえ〜!」みたいな感じかと思ってたぜ。

「ゔゔん……、失礼少し誤解してたみたいだ、すげぇ良いと思うぜ? その考え方」

「ありがとうございます!!」

 シンはペコッ頭を下げた。頭軽いなーこいつ、全く貴族には見えないな。

「あぁ、シン様そんなすぐに頭を下げられては尊厳がありませんよ」

「無礼だよディラさん。褒めてくれたなら感謝、間違ってる?」

「い、いえそんなことは……」

 若いのにちゃんと芯がある。まぁ嫌いなタイプではない……むしろ好む部類ではある……かなうん。ゼレンは考えを改めて頬をグーで殴った。隣からすごい引くような視線で見られたがまぁ良い。

「……だったら是非見て行ってくれこの街を、何もない街だけど。なんなら何もないがある街だけど」

「うん、絶対僕がこの街を犠牲にはさせないから」

 とりあえずは説明はついたようだ。ヨイは隣でそんな風景を眺めて考える。

 犠牲……確実にこの街は犠牲になる。ヨイには分かる。遠くない未来、ここは火と瓦礫と化す。しかし、それを知っているのは人間ではないので公言はしなかった。

「それと、今更だけど怪我を治してくれありがとう」

「あ、あぁいいよ、隙を見て治しただけだから別に手間でもなんでも……、回復魔法くらいなら流れ作業だし」

「回復魔法!? 君は回復魔法が使えるのか!?」

 シンの身体は確かにゼレンが治した。自己研究している回復魔法で傷だけは治していた。するとディラが驚いた様子で声を上げた。

「ま、まぁ使えるけどなにか?」

「い、いや、魔法が使える市民なんて珍しくてね。魔法の技術はまだ発展途上だから上級市民しか学ぶ機会がないから……一体どうやって習得したんだい?」

「ただなんとなくやってたらできただけだが」

「いやすごいな!? 発言が天才のソレだぞ!?」

「はぁ、どうも……俺の魔法ってそんな凄かったのか?」

 反応に困るゼレンはリメアに聞いてみる。リメアは首を捻ってから「そうなんじゃない?」と半信半疑で答えた。

「いやそれはともかく、本当に感謝する。君がいなかったらシン様がどうなっていたことか……」

「あははー確かに」

 まぁそいつ、いてもいなくても変わらなかったし正直いないで欲しかったけどね。でも漢気にはグッときましたけど。

「そうだ。ごめん、助けるの遅れて……」

 すると、シンは思い出したかのようにリメアの前に行くと、その軽いに定評がある頭を下げた。リメアは手を小さく振って愛想笑いを浮かべる。

「いいよいいよ〜、全然気にしてないから〜」

「さすが俺の妹、外向(そとむ)けの顔も使い分けられる……百点だ」

「お兄ちゃんは少し黙っててね。とにかく気にすることないからね?」

 ニンゲンは小難しい生物だ。異なる個体に対して多種多様な対応を見せる。人間関係の構築のため、得てして謙遜的な態度を装うことで距離感を保つ手段がある。身体全体でコミュニケーションを図るニンゲン特有の性質だ。

 それを(よわい)十年で習得しているのは、彼女の努力なのか自然に身につけたものなのか……。どちらにせよゼレンには間違いなく成せない芸当である。

「いえ、それでも僕は……――」

 シンが顔を上げた時、口をぽっかーん開けて固まった。

「ん? ここ汚れてるよ」

 リメアは呆けたシンの頬が汚れていることに気がつき、腕の袖で拭った。シンは硬直したまま頬がグジグジ拭かれる。

「よし……、あごめん勝手に……とにかく大丈夫だから、ね? って大丈夫?固まってるけど」

 リメアは最後の決め手として、フッと優しく微笑んだ。

 その瞬間、建物に囲まれたはずの路地の中に風が吹き、花びらが宙を舞い上がり、純白の鳩が蒼い空を羽ばたき、世界の騒音は二人を祝福するように消え去った、気がした。

「……ぁ……」

 その瞬間、シンは顔を真っ赤して言葉を詰まらせた。モゴモゴと口を動かすが、何かが邪魔をして声が出なかった。

「大丈夫? すっごく顔赤いよ?」

 メアリは心配してシンの額に触れた。

「――ッ!!」

 シンの顔は耳まで真っ赤になり、あぁあぁ言ってぐるぐる視線を巡らしている。リメアは「熱はないみたいだけど……」と言って手を離す。

「……ごめん、大丈夫だよ」

「そう? それならいいけど……」

 シンはリメアから視線を逸らしながら答えた。

 隣で見ていたゼレンは突然胸が締め付けられる感じがして眉を寄せた。隣のヨイは変わらず真顔だったが、内心感心していた。

 これが……。

「僕、君が好きだよ」

 恋とか愛だの、だ。

「……………、ふぇ?」

「シン様!?」

 ザワッと衝撃が空間に走る。

「ヒュー、シン様大胆だねー!」

「おまっ! し、シン様本気ですか?! あの、いや、え!?」

「え、え、……えーと」

 騎士達がわちゃわちゃして慌てている。リメアは指をクルクルして口籠る。そんなこと初めて言われどうして良いか分からず回答に戸惑っている。

「……」

「おいヨイ……ちょっと耳貸せ」

「……」

 ヨイが頷くとゼレンは肩を組んできて神妙な口調で耳打ちしてきた。

「あのゴミ殺すぞ」

「……」

 ヨイは頷いた。

「ダメだ、あのゴミなんかにリメアがとられたら俺は人でなくなっちまう……。あの世界の妹があのゴミに!? ジョーダンじゃない……」

 顔面蒼白にしてブツブツ語るゼレン。ヨイは黙って聞く。

「仕事すっぽかして俺の妹を好きになる……? ふざけんなあいつ何もしてなかったじゃねぇかなんでだよおい〜」

 グイグイ肩を揺らしてくるゼレン。ヨイは身を委ねて沈黙する。

「おち、おおお、落ち着け……リメアに限って承諾するなんてあるわけない、ないない」

 ちょっとイカれてる眼差しで振り返り、二人の経過を見る。そしてその願いは一瞬で砕け散った。

「嬉しい……、私もシンの気持ちに惚れたの。あの時逃げなかった、どれだけ嬉しかったことか……。本当に嬉しい!」

 満面の笑みで、シンと手を繋いでいた。

「……………………」

 ゼレンはただ、顎が外れるほど驚愕するだけだった。

ご精読ありがとうございました。

毎週平日の朝に投稿してくので次回もぜひ読んでください。

シャス。

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