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【完結】異世界唯一の透明人間、好き放題生きていく。  作者: 秋田
【第2章】神聖アルディア魔法学校編
100/264

【第100話】勝利の激傷弾

暇で暇で仕方ない方はご視聴ください!

「なんかいまいち理解できない」など「話無理やりすぎだろ」など思うかも知れませんが、それはご愛嬌ということで!


メイト・マルマロン


スピネル

ゾイ

アイカ

アクロ・アイト

イト

「いいですか? まず私が八階以降を立ち入り禁止にしたす、その時、作戦通り進めば、『ニホンジン』が釣れるはず、そいつを"対象"と仮定して進めていきます」

 喉元に手を当てながら一人で囁くイトは八階へ向かう最中だった。

『はいはいなるほどなるほど、それに異議はないけど作戦は私が考えるから、ね?』

 ……子供。

「そうですね。その後は定期的な連絡で作戦を考えながらやりましょう」

『はいはいー……――あ、これから宜しくね!』

 向こう側はなんだか明るいとこにいるみたいだ、なんなら誰かと入学最初の挨拶を交わしていた。

 本当に分かっているのかこの人は。

「ちゃんと聞いてます? 作戦理解してます?」

『うんうん、私アクロ・アイト! これから宜しくね』

 ガン無視されたイトは、イラっと額に血管を浮かべながら通信を切った。

「……はぁ、じゃあ行きますよ、校長」

「まさか未来を見える人間がいるとはな……『ラプラスの悪魔』か……はてさてどんな代償を払ったのやら……」

 後ろにドボドボとついてくる幼女、この学校の校長である。入学式のゲームが終わった後、すぐにゲームを申し込み、一度の協力をさせている。

「にしても証拠を見つけるゲームか……随分楽しそうな"ゲーム"をしているのだな」

「楽しくありませんけどね……アクロは楽しんでるようですけど」

「……君たちが誰なのかは深く詮索しないがその代わり頼みがある、君たちのゲームに付き合わせてくれないか」

「……は」

 意外な言葉にボソッと声が漏れたイト。校長はニヤニヤと下からイトを見上げている。

「……もし、あなたが全面的に協力するというのなら……許可します」

「上からだな……良かろう、君を助けよう」

「上からなのはどっちですかね」

「いや私は校長だぞ? 偉いんだ」

「……ガキのくせに」

「今ボソッとなにを言ったのかね? ちょっと? 無視しないでくれるかねー?」

 校長はそれから無視を続けるイトの脇腹を突きながら八階へ上がった――。


「……」

 あぐらを描いて、ガラス製の机を前に座るメイトは、たった今見た"事実"に胸を抑える。

「二回戦も私の勝ちですね、では三回戦目を」

 余韻に浸る隙も与えずに次戦に入るイト。メイトは体を後ろに傾けて手を床につく。

 アクロは……イト側、分かっていたことだ――。

 片手で頭を抑えるメイトに、イトはローブの隙間からチラッと視線を送る。

 "対象"にはアクロが敵側ということはバレているはず、それなのにそんなに心が揺れたのか? いや、ここまで年密に練られた計画に驚いたのか? いやこれは自信過剰か?

「あ、あぁ……三回戦……だったな……――やろう」

 なぜか、自信に満ちた声音で言ったメイトに、些か猜疑的な視線を向けながら、イトは水晶に手を当てた。


――――――――――――――――――――


「まぁまぁまぁ、とりあえずどうする? やっぱ逃げ?」

 言い合うスピネルとアイカにゾイは愛想笑いしながら手を向けて制する。

 と、その時。

「やぁ、楽しそうでなにより」

 校長は音もなく教壇の上に立っていた、手を拳銃の形にして氷球を向けている。

「――ッ」

 ゾイは風魔法と爆発魔法を掛け合わせた魔法で当たりを吹っ飛ばす。校長の氷球は軌道がずれて地面に当たる。

 そこから放たれた時の大きさとは想像できないほど膨張した氷河、直撃すれば凍傷、なんなら凍死もあり得る。

 吹っ飛ばされたアイカとスピネルはすぐに体を起こして体勢を直す。

 三方向に飛んだ三人は一瞬目配せし合ってから声を出す。

「一旦離れよう!」

「了解」

「えマジ?」

 あ、とゾイは思い出す。アイカは魔法ができないんだった。参ったな。

「やっぱ解散はなし……!」

 が、作戦の撤廃をしたがすでにスピネルは窓から飛び降りていった。

 は、早い………。

 逃げ足の早いスピネルに苦笑しながら、アイカの元による。

「……いやー、どうしよっか」

「本当に危機」

 ノープランだった。

 目の前には不敵に笑う校長が立っている。ザワザワと周りの生徒が教室から逃げたり叫んだりしている。

「二人か一人か……ふむ、絶望を与えるなら一人を残す方が……いや、最初に死んだのが最強なら絶望するか」

 なんか凄いことボソボソ考えてるけど……とりあえずヤバそう。

「うむ……ゾイ、君から殺そうか」

「――ッ! まっ! 待ってください!!」

 ゾイはバッとアイカの前に立ち塞がり手を広げる。そして、流水のような仙人さながらの作法で、頭を下げた。

「おねぇちゃんから先にお願いします」

 完璧な土下座だった。

 何やってんのこの人……。

「フッ、あっはっはっはっは!!」

 と、愉快そうに腹を抱えて爆笑した校長、目尻に涙を浮かべながらヒーヒー息を整える。

 暫しひとしきり笑った後、落ち着いたのか涙を拭いながらゾイを見据える。

「よかろう、その曲芸に免じて認めてやろう」

 そういって校長はローブを翻しながら振り返り、スピネルが出ていった窓の外に飛び降りていった。

「骨は拾うからね……ごめんねおねぇちゃん……死後の世界でも達者で――」

 身体を起こし土下座から死者への合掌と化し静かに呟いた、一筋の涙を流して――。

「いや何言ってんの? 助けないの?」

「助けるよ? 私はおねぇちゃんを信頼しているからね」


――――――――――――――――――――


「よし、ここまで来れば撒くれたはず……しっかし酷いことになったわ、あの二人の骨はしっかり拾うわ」

 生徒が行き交う長い廊下を走り終えたスピネル。壁に手をついて息を整える。周りから変な視線で見られつつも周囲を確認する。

 校長はいない……でも、あの氷魔法……。

 速度や大きさ、いろんなことを鑑みても間違いなく私たちを殺す気だった。

 合理的に判断すれば、こちらも殺さなければいけない……でも、そんな殺すなんて軽いものではない。

 スピネルは自分の手を見る。

 人なんて、殺したことないし殺したくない、当たり前だ。

「それでも、そうしないといけないなら……やるしかないか……」

 まだ覚悟が決まらない中、スピネルは手を握りしめ口を一文字に結ぶ。

 メイトなら、殺せるだろうか……。

「ね、ねぇスピネルさん、どうしたの?」

 オドオドした男子生徒が話しかけてきた。スピネルは真顔でガン無視した。

 とりあえずアイカたちと合流しなくては、転移魔法は相手の場所が分からないと使えないし……仕方ない、隠れながら探そう。

「ちょ、ちょと?」

「外野は黙ってて」

「え」

 スピネルはピシャリと一介の男子生徒の優しさを投げ捨てた。男子生徒は真顔で固まる。

 が、その時。

 廊下の先に階段を登ってきて、ノソノソ歩く校長が視界に映る。校長はズルズルとブカブカのローブを引き摺り、地面につくほどの髪を地面につかない程度に束めている。

 傍から見れば、まるで新しいおもちゃを与えられ瞳を輝かせる幼女のようだが、これからすることを考えれば全くもってそんな生優しいものではない。

 校長はスピネルに手を向けて、魔法を使おうとする。

 スピネルはそれより早く魔法を使う。生み出した水を限界まで凝縮し回転、尖らせる。

「ほう」

 校長は魔法を使うのをやめ一直線に走り出す。ニヤニヤと醜悪に愉快に笑う校長に悪寒を感じつつ、水を放つ。

 人に当たらないように……うまく軌道をずらして――。

 速いし回転……尖っている、魔法防御せず当たれば傷では済まないな、人体に穴が開くほどだろうか。

 曲線を描き生徒たちを避ける水、空気を切る高い音が廊下に響く。

 一般生徒は何が起こっているのは分からずに、いつも通りの会談を交わしながらなんの気無しに生きていた。

 そんな中、鮮血が飛んだ。

 スピネルは目を見開いて口を可愛くぽっかり開けたまま固まる。

 水の一つが校長の喉を貫いた。大動脈である。校長は血が噴き出して醜悪な笑顔を浮かべたまま倒れた。

 噴き出した血は、まるで讃歌を奏でるオーケストラさながらで床や壁に飛び散る音は拍手のように、噴き出す音はグランドピアノのように、空中に飛び散る鮮血は紙吹雪のように、太陽光を輝かせながら、スピネルを賞賛している様だった。

ご精読ありがとうございました!

毎週平日の朝、投稿してくので次回もぜひ読んでください!

シャス!

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