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3-1 空から降ってきた

馬鹿は恐れず前へ行く

満身創痍で前へ行く

何を求めて進むのか 何を求めて彷徨うのか

そこにあるのは希望か それとも絶望か


答えは未だ見つからず

馬鹿はただただ進むのみ

「う、うぅぅぅぅぅぅッ!」


 身体に刻み込まれたダメージは深いらしく、戦闘が終わって緊張感が薄れてきたとき、痛みで狂うかと思った。

 近くにある木々によろめいて手をつく。立つのも辛い。これほどまでにボロボロになるまでに俺は踏ん張っていたのかと思うと誇らしい。倒れちまえよ、と俺の中の弱さが囁いてくる。倒れてたまるか、と俺の中の強さが叫んでいる。

 ギリギリ、と歯を軋ませるように耐えて、耐えて、何とか踏ん張ってみる。

 ボギャッ、と何かが破裂する音が手からした。力を加減することができず、木の幹を握り潰してしまったらしい。


「ハハ、ハハハ、痛ぇ――痛ぇよ。たまんなく痛ぇ」


 確認するのも億劫だが、長年に渡って戦闘ばかり繰り返したせいで、自己の身体の状態を分析するということが既に習慣になってしまっている。

 現状認識を正しくした結果、わかったことは“俺の身体は結構ギリギリだ”ということだ。さっきの戦いで無理やり力を強化し、かなり無茶をしたので筋肉の繊維がボロボロだ。断裂しているところもある。骨だって皹だらけだ。一歩足を踏み出すたびに痛みで目がチカチカするし、右手に関しては既に神経が域届いていないのか、動きはするが痛覚はない。たまらなく不安になるが、自分の決めた道だ。後悔だけはしたくねぇ。

 森の中を進むにつれ激戦の傷跡が見え隠れしている。

 ミノタウロスなどの魔獣は自分の縄張りだと主張するために木に傷をつけたりするが、傷と表現するには生易しすぎる亀裂がそこかしこにある。

 飛び散った血肉もあるし、鎧の残骸もある。べっとりと何かがついた骨だって転がっている。おそらく――


「チッ」


 情報を流したのは俺だ。だから、これは俺のせいでもある。責任は俺にもある。結局は森に挑戦したこいつらの自己責任だろうし、俺は微塵も悪くないんだが、センチメンタルな気分にさせられるのは仕方のないことなのだろうか。

 引き摺って運ぶカイゼル・フォルヴァーを見る。もともとは綺麗な白銀だった刀身は血に塗れて赤黒く滲み、魔剣らしく禍々しいオーラを放っている。すっかり手にも馴染み、武器にこだわらない俺でもこの剣なら一生を遂げてもいいと思えてしまうほどだ。


「らしくねぇな。カシム。俺は俺だ。迷う必要なんざねぇんだ」


 先に進むしかねぇんだ――呟き、俺は更に前へと進んで行く――行こうとしたんだが、空が翳ったのを不審に思い、空を見上げた。

 頭上に立ち上る燦々と降り注ぐ太陽は元気いっぱいに輝いていて、それ自体に不思議なことはなにもないのだが、一瞬だけ日光が遮られたのだ。

 遮ったものは空を飛ぶ黒い影。大きな蜥蜴に翼を生やしたような影だ。

 そこから不思議な声が聞こえてくる。


「待って!止まりなさい!死ぬ!落ちる!振り落とされる!シュリファ!私の言う事が聞けないの?!聞いて!耳を傾けてェェェェ!」


 というかなり切迫した甲高い少女の声に返事するかのように、クギャア、とその大きな蜥蜴は答えているようだ。

 大きな蜥蜴――あんな生物はドラゴン以外にありえない。もしくはワイバーンだろうか。しかし、ワイバーンは成体となってもあそこまで大きくなりはしない。

いくらブルッシュリウムの森といえども、ドラゴンが住んでいるなんていう話など聞いたことはない。

 ここから見える大きさだけではいまいち全容が掴めはしないが、未だに成長しきっていない幼竜のように思える。それか、もしくは成体がかなり小さいドラゴンパピーなのだろうか。

 それは何なのかは知らないが、果たして――喚いていた少女は空から降ってきたようだ。


「ぁぁぁぁぁぁあああああああああ!」


 劈くような悲鳴。まさに真上から聞こえてきて、避けるにしても俺の身体は言う事をきかず、格好よく助けるわけにもいかず、ただただ頭上を注視するしかなかった。

 近くなるにつれ見えてきたものは、俺と同じく、ここらでは珍しい黒髪の、涙やら鼻水やらを流しながら叫び続ける少女だった。

 頭から地面に落ちてきている。地面と接触したら間違いなく逝くだろう。

 ――助けるしかないのか、と少しばかり逡巡する。

 俺の身体はボロボロで、歩くのも辛い。それなのに無理に受け止めるというのはかなりの激痛が走りそうだ。だけど、少女を見捨てるというのは性に合わない。

 だから、泣きそうになるほどの激痛が身を襲う覚悟を完了させてから、俺は少女を受け止めた。


「――ッ!」


 受け止めた衝撃によって俺の全身に――まずは強烈な電流が流れた。

 そして、一瞬の静寂――後に迸る激痛!重力によって加速度的に上乗せされた体重を両手で受け止めた代償は重く、腕は悲鳴を上げ、足はガクガクと震えており、全身から嫌な汗が噴き出してくる。

 格好よく受け止めることなどできるはずもなく、俺の身体はただただ“休息”を求めるばかりだ。

 痛みを我慢して震える俺はギュッと目を瞑って、歯を食い縛り、がっしりと少女を抱きとめていた。そこにエロイ欲求などなく、完全に不可抗力でしかなかった。


「あ、あの――?」


 腕の中で先程受け止めた少女が困惑気味に声をかけてくる。

 でも、返事をすることができない。口を開いたら弱音を叫びそうだ。弱音を叫ぶ――?俺の頭は今、かなりおかしい状況にある。冷静に考える事すらできない。だが、ん、これは――!


「あの――ッ!」


 痛みがやわらぐ感触が手に広がっていく。

 むにゅむにゅとした柔らかい物体が確かに手の中にある。目を見開くと俺の手は確かに少女のケツを撫で回していた。

 フリーダムに動き回る俺の右手は先程まで感覚がなかったはずなのにも関わらず、今は癒しを求めて動き回る。感覚は復活していた。俺の右手は進化を遂げ、神速の域に達するほどの動きを体現していた。


「受け止めてくれたことは感謝します――ですけど、やめてくださいませんかっ!!」


 聞く耳持たず、という言葉は確かにこのときに使うのが相応しいのだろう。

 未知の感触に酔い痴れた俺の多幸感は決して止められることはなく――


「やめてくださいって言ってるでしょうがっ!」

 

 再三の忠告を俺の耳は聞き流した。

 それ故か――名も知らぬ黒髪の少女はいきなり武器を取りだした。

 何も持っていなかったはずの右手にはいきなり小振りの槍――パイクが出現し、俺の首元に突き付けてきた。


「感謝していますので、最後の忠告です。離してはもらえませんか?」

「嫌だ」


 迷わず言った俺は思いっきりパイクの柄でどつかれた。




 聖ブリュナーゲルの王家直属の親衛部隊――聖竜騎士団。

 英雄譚でしばしば出てくる庶民の憧れ。騎士の最高峰。絶対的な正義の象徴。

 単純な戦闘能力も、魔法能力もあり、何より著しく高い空間把握能力がないと絶対になれないと言われている。まさに騎士の中の騎士、エリートの中のエリートがなるのが聖竜騎士団だ。

 聖竜騎士団のみ白銀の鎧を纏うことは許されており、胸元には紋章である紅十字が刻まれている。

 目の前の少女は白銀のパイクを手に持ち、白銀の鎧を纏って自慢げに語る。


「私は新入りではありますが、聖竜騎士団の末席に名を連ねる者ですっ!」


 誇らしげに張られた胸元は、銀竜騎士団特有の少しばかり薄い白銀の鎧を纏ってはいるが、膨らんだ胸元を見る限り、それなりに発育が良いということが窺える。

 さて、まずは胸を見た後に顔を見るのが俺のポリシーなのでしっかりと顔を凝視してみた。

 俺と同じ黒髪ではあるが、ろくに手入れしていない俺とは違って艶やかな髪は後ろで束ねられて可愛らしいポニーテールとなっている。

 肌は外での修練の賜物か、健康的に日に焼けた小麦色。にっかりと笑うその姿はまさに健康優良児といったものだ。これを見てまず俺は、元気そうだな、活発そうだな、といった印象を持った。

 身長は平均よりも高いのだろう、俺より頭一つ分小さいくらいではあるが、俺がかなりの高身長なので、女にしてはかなりのものだと思う。よく鍛えられているのか、背筋もピンと張っており、鍛え抜かれた肢体がそこかしこから覗き見える。

 覗き見えるというのはアレだ。騎士のわりにはこの少女はなんというか――露出度が高いのだ。白銀の鎧は今まで見たことのある騎士と同じような形状――鎧というより俺と同じく胸当てのようなものだが――ではあるが、下半身が防御力皆無であった。太股すら満足に隠せないような短さの紺青のプリーツスカート。そこから垣間見える美脚は俺の視線を釘付けにした。


「先程の無礼は許しましょう。上空から落ちてきた私のほうがかなり失礼だと思いますし」


 言うなり目の前の少女はパイクを一振りし――消し去った。

 消えた手――右手の中指に残ったのは先程まではなかった小さな赤い宝石を宿す指輪だった。

 なるほど、そういう系統の武器というわけか。

 世の中には魔剣やら聖剣やらがいろいろな伝説とともに保管されている。それらの共通点は”人ならざる者の手で造られた”というものだ。

 しかし、この少女の持っているものは違う。持ち運びに便利なように”人の手で造られた”ものだ。こういうものを名剣という。この少女の持つものは槍なので名槍になるのだろうか。


「ところで、自己紹介がまだでしたね」


 踵をつけて少女は引き締まった表情を作り、まるで騎士のような礼儀作法をした――つか、自分で騎士って言ってたし。

 そんなことを思っている間にもはきはきとした口調で少女の口頭は続く。


「私の名前はミハエル=エウレ=ラスベルグ。聖竜騎士団の末席に名を連ねる騎士です」


「俺の名前はカシム。ただの冒険者だ」


「カシム?聞き覚えのある名前ですね……」


 そのまま少し黙り込むミハエルではあるが、うん、あまり思い出すな。聖竜騎士団相手に揉め事を起こしたことは数知れない。

 こいつが新入りで良かった。もし顔見知りだったらいきなり斬りかかられる恐れすらある。

 依頼があれば俺は誰とでも事を構えるからな。うん。よく揉めたよ。本当に――。

 だから、正直に言うのも面倒なので、それに俺は今戦える状態じゃないので誤魔化すことにした。


「人違いだろうよ」


「でしょうね。私の聞いたことのあるカシムという人物像では他人を助けるような博愛精神はありません。人違いでしょう」


 否定はしねえけどよ。初対面の奴に言われるとなんつーか、ムカツクな。「貴方はきっとエッチな人でしょうけど、助けてくれたので善い人です」とか言われても複雑な気持ちになるだけだぜ。


「ところで、なんでこんなところでいるのですか?」


「道に迷ったんだよ。人生という名の道にな……」


「は、はぁ。そうですか。それは大変そうですね。迷ったのならこんな森に来られずに教会で祈りを捧げることをお勧めしますが?」


「祈るべき神には「手遅れです」と言われてるんだよ」


「神に見捨てられるとは――どんな人生を送ってこられたのですか?!どうやって神と会われたのですか?!」


「まぁ人生いろいろっつーことで。ところでアンタはなんでこんなところに?」


「初任務に遅刻――いえ、寝過して急いでシュリファ――先程のドラゴンですが。乗って来たのですが、朝ごはんをあげるのを忘れてたから怒っちゃって、まぁ落されました。ちなみに初任務というのは――」


「ブルッシュリウムの秘湯の防衛か?」


「まぁ、そんなところです。あぁ、ただでさえ遅刻なのに、今日中に辿り着けるかどうかすらわからなくなりました。どうしましょうか……」


 とりあえず思ったことがある。こいつかなりのドジだ。仕事に遅れるなんて冒険者ですら許されねーよ……。信用第一の家業だから時間は絶対厳守だ。騎士も同じのはずなのだが――なんとなくわかることもある。

 ミハエルはブルッシュリウムの森に落されたにも関わらず、心配しているのは任務のことについてだけだ。ブルッシュリウムの魔獣を全く恐れていない――腕にかなりの自信がないとこんな態度はとれない。ドジ成分を補ってあまりある実力で聖竜騎士団に入団できたのだろうか?

 立ち居振る舞いを見る限り、強いのはわかるが、そこまで圧倒的というほどでもないように思える。


「あの――じろじろ見ないでくれませんか?」ともじもじと身体をよじるミハエル。

 おっと、いつの間にか脚に目がいっていたようだ。セックスアピールすぎるだろう。俺は悪くない。悪いのは見せつける女のほうだ!けど、なぜか世界は男がエロイから悪いということになる。俺はこのことについて異議を唱えたい。

 まぁ、そんなことはどうでもいいとして――。


「気づいてるか?囲まれてるぞ」


 あれだけ大きな金切り声をあげたのだ。魔獣に取り囲まれるのは当たり前というか何というか。

 周囲に林立した樹木の隙間からは獰猛な視線が突き刺さる。

 先程まで闘ったりしたミノタウロスやらオーガ。それに上空にはワイバーンがいる。

 俺――もう終わったかな、なんて諦めの言葉が口から洩れるが、ミハエルはそうでもないらしく、余裕の体でパイクを取りだしていた。


「魔獣掃討の任は受けていないのですが、身の安全を図るためなら致し方ありませんね」


 などと言いながらパイクを構え、舌舐めずりしている。明らかにバトルジャンキーだ――。今まで見たことのないタイプの異性を見て俺は戸惑うしかない。


「怪我人の貴方は下がっててください。こいつら程度、私一人で十分です」


 言うなりミハエルは魔獣の群れに飛び掛かっていった。

 飛び掛かるのはいいが、上空から飛来するワイバーンには気づいていないようで、仕方なく俺は相手をすることにした。


「痛ぇ」


 ぼやく。

 上空からワイバーンは【火炎の吐息ファイアブレス】を放ってくる。その数は二つ。つまり二匹のワイバーンがいるということ。

 計二つの攻撃を俺は半身を反らすだけでぎりぎり回避し――ぎりぎりすぎて火の粉が当たって腕が少し焦げた――空に舞う――ときに魔剣を地上に忘れた。なんてこった!

 近くに可愛らしい女の子がいるので醜態を晒すわけにはいかず、武器もない状況だし、即座にお家に帰って枕を濡らしたい気持ちでいっぱいなほどの激痛を無視して無理やりに身体を駆動する。


 ――ケギャアッ!


 滞空する俺に一匹のワイバーンが牙を剥いて襲いかかってくるが、大きく開いた口の中に手を突っ込んで舌を思いっきり引きぬく。

 ギャアア!と絶叫をあげるワイバーンは涙目になりながら俺を睨むが、俺だって涙目なんだ。これくらい許せ、と考える。

 その間にも後ろから別のワイバーンが迫ってくるが、今相手している奴の鼻っ柱を思いっきり足蹴にして跳躍する。

 俺を狙った奴は勢い止まらず、開かれた口はカヂン、と硬質な音を立てて閉じられた。噛まれたのはワイバーン。噛んだのはワイバーン。これこそが共食いというものか。


「せいやっ!」


 空から見下ろす地上では男らしい掛け声とともにパイクが突き出されていた。

 突き出された先にはミノタウロスの巨躯。


 ――グォォォォ!


と悲鳴を上げている。

だけど、たった一度の刺突では息絶えなかったようで、怒りに満ち溢れた一撃をやり返しているが、全てを流麗な動きでミハエルは回避していく。

木々を上手く使いながら、かわし、いなし、受け流している。それはまさに軽戦士の教本そのままの戦い方だった。これほどまでにハイレベルな動きを体得しているとは――天才というものだろうか。

自分より大きく、強い敵と戦うというのは勇気がいるものだ。

見る限り、ミハエルはミノタウロスやオーガの3体に囲まれている。

手助けをしてやりたいとは思うが――


 ――ケギャアッ!


 ミハエルの動きに見惚れている間にワイバーン二匹は再起動したようで、怒り狂った様相で俺を睨みつけていた。

 片方は俺に【火炎の吐息ファイアブレス】を放ち、片方は俺が落ちていく先で待ち構えている。

 俺は滞空するための体勢から素早く降下するための体勢にシフトし――つまりは頭を下にして【火炎の吐息ファイアブレス】が来る前に落ちた。

 俺の足元を不吉な炎が通りさっていくが、しかし、目の前には口をカパッと開けた憎々しいトカゲ野郎。


「学習しろ」


 言いながら俺は手を口の中に入れようとすると、サッと口を閉じた。

 かかった!と思う。

 手を噛まれないように引いて、その顔面に手を置き、体重が全て乗るように勢いよく膝蹴りをぶち込んだ。

 苦しそうに呻くワイバーンはもうかなりの涙目で、悲鳴をあげているが、そんなものは聞こえないふりをして背中に飛び乗った。そして、首を絞めた。

 助けようともう一匹が駆け寄ってくるが、その前に首の骨を折る。ゴキッ、という骨が折れるとき特有の残酷な音が流れた。


 ――ギャアア!


 てめぇ、よくも!と人間なら言っているのだろうな、と思う。

 仲間を殺されて本気で怒り狂っているようだ。

 勢いそのまま俺に向かって口を開けているが、本当に学習しない奴らだ。顔真っ赤なんだろうか。

 死体となった落ちていくワイバーンの背を蹴ってもう一匹にすんなりと飛び乗って――そいつの骨も叩き折る。

 魔剣がなくてもどうにかなるもんだな、と不意に思ったが、今考えるべきは着地をどうするかだ。

 正直なところもう全身いろんなところがやばいので、これ以上無理はしたくない。だから、ワイバーン二匹をクッションにするように折り畳んで、そのまま地面へと落下した。

 ゴギュッと肉が潰れる音が木霊する。


「えげつない戦い方ですね……」


 その間に既にミハエルは戦闘を終えていたようで、死体が三体ほど並ぶだけだ。

 全身穴だらけのこいつらも結構可哀そうな死に方だとは思うが――。


「武器を地面に忘れたんだ。仕方ないだろ」


 言うなり俺は地面に落ちていた魔剣を背に担いだ。

 魔獣を素手で仕留めるなんて――と凄く不審な目で俺を見てくるが、どういう意味だ。それ。

 しかも、なんか吐きそうになってるし。首を折るのは人間相手にも有効な戦術だろうが。


「いえ、戦い方は自由ですよね。それにしてもお強いのですね。こんなところでなければ、こんな状況でなければ手合わせ願いたいものです」


「そうかい。俺は遠慮しときたいもんだ。面倒臭いしな」


「そうですか――ところで、カシムさんと仰いましたっけ?このままどこへ進むのですか?」


「あぁ、ここを真っすぐ進むつもりだ」


 指差す方角はブルッシュリウムの秘湯への行き道。


「何故そっちなんですか?出口は反対でしょうに。そちらは森の中心地ですよ」


「人生という名の旅路は困難な道を行かなければならないものなんだよ」


「はぁ、よくわかりませんが、行くというのなら一緒に行きませんか?目的地は同じようですし、カシムさんは強いので一緒にいると心強いです」


「あぁ、いいぜ」


 そんなこんなで臨時のパーティを組むことになった。

 考えれば聖竜騎士団の奴と一緒に組むってのは初めてのことかもしれん。


「よろしくお願いしますね」


 まぁ、最後には敵になるんだろうけども。

 その時の対処策を考えながら、俺は「よろしくな」と言って右手を差し出した。

 女との握手はこれが二回目のことだった。

 


( ゜д゜)v-~~~~~~~~

( ゜д゜ )v-~~~~~~~~

(#゜д゜ )v-~~~~~~~~こっちみんな!




注:作者であるビビはドMです。

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