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もつなべ

作者: 幸田遥


昼ごはんは食堂 夜ご飯も食堂


毎日同じことの繰り返し



せめて朝ごはんは家で食べよう


これが 最後の自尊心


だから 朝ご飯は 家で食べていた



毎日 毎日 ひたすら実験


こき使われるというか


やらないと仕方ないというか



怒鳴られるのが嫌で


コケにされるのも嫌で


とりあえず成果を出すことに必死で


毎日 毎日 ひたすら働いた




毎日というのは 土日も含む


土日もちゃんと食堂は開いている


ありがたい




月に休めるのは1日くらい


月休一日制


笑っちゃうくらい いい言葉だ



別に 休んだからといって用事はない


お昼に起きて 古本屋で立ち読みするくらい




だって 何かをすると 疲れるから


だって 何かをするのに 疲れたから




先輩も 同期も 後輩も みんな辞めていった


残ったのは数人 でも もう それを気にしてる余裕もない




私は辞めます!




退職願を提出してからは 楽だった


最後の日が 希望 だった


その日になれば 解放される


ゴールテープが そこに見えたから




最後の日の 帰り道 久しぶりの まともな食事



高そうな もつ鍋屋で もつなべ


いつもの食堂の10倍くらいの値段だけど



いいんだ


最後だし






うまかった



長い戦いが終わった




何のために戦ったの?


何のために我慢したの?


何がしたかったの?



わからない




得たものは 無い


ただ 時間を失った


ただ 若さを 失った


お金は残った だって 使う暇が無かったから




死んでいった友もいる


消えていった友もいる



私も楽になりたかった



でも! 私は絶対に自殺はしない!


そう心に決めていた



自殺した友人の葬式で 泣き崩れる その祖母


孫を失う 悲しみが 心にグサリと刺さった



順番は守ろう


少なくとも 祖母より先には逝くまい


できるなら 両親より先にも逝くまい



生きねば


どんなに辛くとも





もう あのもつ鍋は 食べれないだろう


もう あのもつ鍋の味を 超えるものには 出会わないだろう





まぁ とりあえず 生きててよかった


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― 新着の感想 ―
[良い点] 働くことに疲れ、人生に目標を見出だせない、それでも生きていくことを心に決め、美味しかった食べ物を、想い出の食堂を忘れない。 共感してしまいますね❤(^ω^) 休みの日も開いている食堂に、あ…
[一言] モツ鍋じゃないですが近いうちに「もつ煮込み」やるつもりです。 よろしければ見に来てください。
[一言] とりあえず生きて埋め合わせ出来るか試そうと思いますね 生きてりゃチャンスあるんだろ?って
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