決意
「……ここは?」頭が痛い……あれ?痛くない。
「お目覚めですか!」
「……お前は……さっきの女!」
さっきの白い服の女といっぱいの騎士。
「ここは……病院かなにかか?」
「はい、その通りでございます、勇者様」
「……戻れないんだよな……。」
「はい、それに、この国の民は皆、私も王も勇者様を待っていました
そのために生贄となられた人も多くいます。」
「生贄……。」
「はい、ですので、犠牲となった方の為にも、どうか!
この国を、世界を救って欲しいのです!」
「……ふざけるな……なんだよ、生贄って!
誰が望んでここに来た!?
なんで俺が!……なんで……なんで俺にそんなにも重荷を背負わせたがるんだ!?
無理だ!悪いけれど拒否させてもらうよ!」
「そんな!どうかお願いします!
それに、あなたがここを出ても住める場所は無いのですよ!?」
「なんだ?脅しか?」
「っ!違っ」
「そんなもの関係ないね!
俺は生まれてこの方人と喧嘩すらした事の無い人間なんだぞ?
そんな奴が世界を救えるわけがないだろうが!」
「ですが……魔王はあまりに強力です!」
「そんなこと知るかって言ってるだろうが!
お前達も自分の事じゃないからって無理難題押し付けやがって!
滅ぶのならお前達が弱いからだろ!
弱者は淘汰される!そうやって絶滅するものだ!
なのに自分の世界を他の世界のやつに助けて貰うなんて虫がいいにも程がある!
魔王?勇者?世界の危機?そんなもの俺の知ったことじゃない!」
感情のままに吐き捨てた。
「……確かにその通りだな。」
「そうだろ!?……え?」
振り向いた先には騎士でもなくあの女でもなく。
黒い黒い……闇を纏うというのだろうか?
そんな雰囲気の角の生えた女がいた。
真っ黒の闇を連想させる髪。
血のように赤い目。
「魔王!?」
「こいつが?」
「異世界からやってきた勇者よ、名前をなんという?」
「……お前たちに名乗る名前なんて無いね
それに、俺は勇者になんてなりたくない。」
お前『たち』この女も魔王?も含めてだ。
「……それはすまない、なら、異世界から来た者よ、そう言わずに、教えてくれないか?」
魔王の癖に随分と低姿勢なやつだ。
威圧感も無いし、おかしな奴だ。
だけど、本名は知られたくない。
「……わかった……ココア、ココアだ。」
ネットの名前を使うことにした。
「ココア……ココア……覚えたぞ
そうだな、私としてはお前と戦い勝利してこそ、世界を手にしたと言える気がするのだ
人間に同調する訳では無いが、戦ってはくれまいか?」
「……無理だ、俺の目的は元の世界に帰ることなんだから。」
「ふむ、なら、面白い話をしよう。」
「?なんだ?」
「ココア、お前は召喚されたみたいだな。」
「……そうだ。」
「なら、逆に送る魔法の一つや二つあってもいいはずだが。」
「魔法?……それよりも、そんな魔法があるのか?」
聞きなれない単語があったが、それよりも気になる話があった。
「いや、わからない
今のところそんなことをしたがる物好きはいなかったからな。
それに、それ相応に強くなければまず、無理だろうな
だが、ありそうな話だろう?」
「……そうだな。」
「ふむ、この話に乗るか?」
「あぁ、強くなって、元の世界に帰ってやる。」
「よし、交渉成功と言ったところか?」
「……あぁ、お前を倒して、平和になった世界でその魔法を見つけるよ。」
「くははっ!よし、ならば、私も本腰を入れて世界征服を目論もう
……5年だ、5年やる
その間に強くなれ
そして、5年後、私は今の所から進軍を再開する」
「なぜ、そんなことを?自分が不利になるぞ?」
「魔族とは元来楽しいことを好むものだ
私は、強者との戦いを最も好む、故に
お前という原石と戦いたいのだ。」
「……そうか、なぁ、女、俺はこの魔王を倒すことに決めたぞ。」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「ふふっ、それでは私は帰るとする
さらばだ勇者よ
次に会う時は、玉座の前でだ。」
「……あぁ、覚悟しろよ。」