表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガンボウイ  作者: 松宮 奏
二章
15/16

しばしの別れ

エースは目前に捉えた王都の絶句した。


 まるで異世界か未来の世界にタイムスリップしたかのような。とにかく、自分がこれまで住んでいた町とは別の世界で、同じ国であるとは思えなかった。

 ブルームーンタウンの建物は木造で、せいぜい高くとも二階建ての建物だ。しかし、ここでは何十階建てだろうか。数える気にもならないほどに高い、白を基調とした、組積造の建物がいくつも建ち並んでいる。 


 一つの建物にブルームーンタウンの町人が全員収容できるのではないかとエースは思った。その建物は見渡す限り、奥まで続いている。丘へ登れば町全体を見渡せるブルームタウンの何倍、いや何十倍、何百倍あるのだろうか。

 見上げれば首が痛くなるような高い建物には建物と建物を繋ぐ、橋のようなものがかかり、そこを馬車や人が歩いている。 


 どうやらこの街では地に降り立たなくとも移動が出来るらしい。

 さらに異様だったのが、大きな鳥?いや、一度なにかの文献で見た、プテラノドンといった古代の恐竜に近いような大きな生き物が、その背に人を乗せて運んでいた。

 過ぎていく景色を何度も振り返り眺めているエースのリアクションを見てフフと笑った。


「ついた。おりるわよ」


 王都に入ってからはあっという間に感じた。

 あらゆる高い建物よりも、一番高く、広い建物の敷地に入ったところで馬車が泊まり、降りるよう、ルージュから施された。前を行っていた馬車から、ホーキンスや他の王族達も降りてきている。王宮の門の前では、召使か執事と思しき服装の男女が、王族達を迎えていた。


「ここが王宮…。つまりここは庭ってこと?」


 エースは建物の前にある、一面緑の、芝が綺麗に植えられた空間を指指して言った。


「ここは王宮ではないわ。この門をくぐってさらに進んだところに王宮はあるのよ」

 ルージュはやはり、エースのリアクションを見て楽しんでいる。


「長旅お疲れ様でした。ルージュ王女、エース殿。王都の景色はどうですか?」

「何というか…。言葉が出ません」


 ぽかんと口を開けたままいうエースにルージュとホーキンスと王族一同は声を出して笑った。それは決して嫌な意味ではなく、純粋に自分のリアクションを見ての笑いだとエースは分かっていた。


「さあ。貴方と私達はここでお別れです」

 ホーキンスは仕切り直すように寄れた肩のエースの服装を手で直しながら言った。


「貴方はこれからそこにいるジードと共に訓練兵達の住む屋敷へと向かって貰います」

 ホーキンスが門の前に立つ、白いキトンを身に纏った腰の曲がった老人を指差すと、その老人が頭を下げた。

 ホーキンスは片膝を着いて、エースと目線を合わせた。


「エース。伝説のガンボウイへの道は辛く厳しいものだ。それだけではなく、これから君には、他の人なら味合わなくて済む、苦しい試練もいくつも訪れるだろう。だが、君なら全て乗り越えられると信じている。そして、誰よりも強くなると。王女もそれを願っていることでしょう」


 ホーキンスは大きな手で、エースの肩を強く叩くと「さあ。いきましょう」と言って颯爽と馬車に乗り込んだ。


「ここにいれば、きっとまた会えるわ。成長した貴方の姿を楽しみにしてる」

 エースより少し背の高いルージュは少しだけ屈んで、エースの右頬っぺにキスをした。


 顔を真っ赤にしたエースにフフと微笑んで、「じゃあね」と手を振り、馬車に乗ってあっという間に行ってしまった。


 エースはキスされたほっぺを右手で押さえながら、ぼうっとした表情で手を振り返した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ