憩いの酒場
この作品は本日(2020.04.28)
ステキブンゲイにてランキングTOP10入りを果たした作品です(8位)
話数が進むにつれて面白くなっていきます笑
是非飽きずにお読みいただけると嬉しいです!
またブックマークやコメントなどもお待ちしています。
それでは作品の世界へどうぞ〜
ダン、ダン、ダンダンダンダン、ダン
金属の擦れる音が店内に響いたかと思うと、机の上に等間隔に並べられていた、十センチ四方の酒瓶のコルクが七つ、全て綺麗に倒れた。
「やるな。エース」
店内にいた十人ほどの男達から、割れんばかりの拍手や口笛、ラッパホーンやタンバリンなど。とにかく大袈裟に囃子立てる音が響く。
十センチ四方の酒瓶のコルクを、ゴム弾の入ったリボルバー銃で見事に打ち抜いた、エースと呼ばれたカウボーイハットの少年は、クールを装っている癖に、囃し立てられ、満更でもない表情が顔から滲み出てしまっている。
「おい。お前ら。あまりこいつを囃し立てるな。またガンボウイになりたいだとか、そんな馬鹿みたいなこと言い出すだろ」
無責任にエースを囃し立てる常連客達に向かって、右目に眼帯をしてた強面の大男が、カウンターの中から、低い声で言った。この酒場の店主のグレッグだ。
「うるせな。俺はなるんだよ。ガンボウイに。その為に毎日練習だってしてるんだ」
カウンターに一人座るエースは対面にいるグレックに向かって言い放った。
「いいじゃねえか。グレッグさん。男ってのは夢に生きるもんだよ。さっきの技見たろ?エースには才能だってある。きっといいガンボウイになるよ」
酒を呑んで気が大きくなった、街の商人である金髪をしたカムイの援護射撃に、エースは表情を明るくしたが「これ以上余計なことを言うとこの店で酒を飲ませなくするぞ」という意味を込めたグレッグのひと睨みで、咲きかけていた花が萎むようにションボリとなり、目を逸らした。
エースはその様子を見て落胆せざるを得なかった。
この町で唯一の酒場であり、憩いの場でもある常連客達にとって、その場所の店主であるグレッグは決して逆らえない絶対的な存在だった。
グレッグにもカムイを筆頭にした、常連客達の態度の変わりようにも嫌気がさしたエースは足の届かないカウンター席から飛び降りて、店の出口へと向かった。
「どこに行くんだ」
「どこでもいいだろ。今日は非番なんだ。どこへ行こうと自由なはずだ」
グレッグの問い掛けに背中で答えたエースはわざと大きな音を立てて扉を閉めて、店から出て行った。