うるせえな。ぶち殺すぞ。俺は静かな女が好きなんだよ。
「ふざけてんの?」
こいつはそういった。
「ねえ、ふざけてるでしょ?」
「どういうつもりなの?」
うるさいなあ、僕の勝手だろ。ふざけてないし。
俺がちょっといなくなったぐらいでそんなうろたえんなよ。
「はやく帰ってきて!!」
「いい加減にして。怒るわよ?」
怒るなよ。怖いじゃんか。
「早くしてよ! 何してるの?」
「どういうつもり?」
「ねぇ、聞いてる?」
聞いてるけどさ。別にいいだろ。ちょっとぐらい無視してもさ。
「ふざけてないで早くして?」
「ちょっと!!返事して?」
うるさいなぁ、こいつはいつもそうだ。
僕がちょっと無視したら『聞いてる?』だの『無視しないで』だの。
そんなにかまってほしいのかよ…
「あんたが聞いてないんなら、あんたの悪口いっぱい言ってやるわよ! バーーーカ!!」
「あんた、結構嫌われてるわよーー!!」
「変な顔だし」
うるせぇな!! ぶっ殺されたいのかこの女……
「てかあんたなんでそこにいんの?」
「なんでそんなとこにいんのよ」
「いつまでそこにいんの?」
いい加減黙れ。飽きた。
「聞いてる?」
「消えるなら、電気ぐらいつけてから消えなさいよね。暗い」
「早くしてよーー! ドラマ見たいんだけど」
ドラマ? そんなのどうでもいいだろ。今は。
まったく、こいつはいっつもドラマばっかり……
「いつになったら戻ってくんの?」
「メールぐらいしてくれても良かったじゃない」
「一回ぐらい返事しなさいよ!」
「何も言わないでどっか行くとか最低だし」
「聞こえてんなら返事してよ」
うるさいなあ。
「聞いてんの??」
「おーーーい!!」
なんで近頃の若い女は、ちょっと無視しただけでヒステリックを起こすのか。
もっと冷静になれば平常心を保てるだろうに。
そんなんじゃ苦労するぞ。これから。
「ねぇ、」
「ねーーー!」
おい。うるさいぞ。ここどこだと思ってんだ。
夜も遅いし。
静かにしろよ。
「いい? 次私があんたの名前を呼んで返事しなかったら、わかってんでしょうね?」
「ブチギレるわよ! いい?」
なんなんだよこいつは、勝手にベラベラ喋って。
好きにしてろよ。
「アキトーーーーー!!」
こいつは俺の名前を呼んだ。
「返事しなさいよ!!」
「アキト……!」
「返事してよ。ねぇ」
「ちょっと……」
「返事してよ……」
「あんた、いつまでそうしてんの………?」
「早く…」
「アキト………………」
こいつは涙を流し、俺の亡骸に泣き崩れた。
そしていつもの様に静かになった。