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神堕としの復讐譚  作者: 蒼井志伸
第1章 偽りの太陽編
5/35

Episode4:依頼内容


 ――――――

 ―――――

 ――――



 応接間に入るとステンドグラスで出来た大きな窓がまず目に入る。次に部屋の中央に大きな楕円形のテーブルを挟んでソファが四つ。レトロな家具とは対照的に天井から吊るされるシャンデリア。


 そんな荘厳な雰囲気を醸し出している応接間だがどうやら誰も居ない。受付嬢に言われた通りにソファに座り込み、待機する。



 暫くしていると扉のノック音が三回。




 「失礼する。君たちがこの依頼を受けてくれる者たちかね」




 入ってくるは白髪が少し入った中肉中背の初老。胸には他の従業員とは少し色が違うエンブレム。たぶんこの人が宿屋で偉いのかも。




 「初めまして。私はここの宿屋兼ギルドの支配人であるラーヒズヤだ。見たところ君たちは………この国所属の者ではないな」



 ラーヒズヤと名乗る支配人は俺たちを見てからそう問いかけ、歩み寄る。



 「はい、俺たちは旅をしてまして、この町もつい最近寄ったばかりで―――」



 「いや、敬語はいい。普通に話してくれて構わない」



 話の途中で手を制すと俺たちが座ってる向かい側のソファに体を沈める。少しピリッとした空気が流れ、お互いを見つめ合う形でまた、話を続ける。



 「この依頼について知りたいっと、そこのお嬢さんかね」



 「ええそうよ。見たところ物騒な問題事を抱えていると思って、気になったのよ」



 そうタミルが答えるとふうっと溜め息を溢し、一拍置いて、



 「………これは他の依頼とは違って命に大きく関わる。決して生半可な気持ちで受けて欲しくはない」



 深刻な顔で、重みを持った声で俺たちに問いかける。



 「困っている人たちを見ては見ぬフリはしたくない質なのよ。それに、私達はそこらの傭兵や憲兵なんかと一緒にされたくないわ」



 彼女の強い、確固たる決意を込めた眼差しと返事に感化されたのか、ラーヒズヤはまた再び溜め息を溢すが今度は少し笑みを浮かべる。



 「失礼した。いやなに、この依頼を受けに来る者には必ずこのような問答はする。最近の受けに来る者は目先の報奨金にばかり興味を持ってしまい、先走っては返り討ちにされているからな。君たちみたいな誠実で真っ直ぐな子がいるなんてな。嬉しいよ」

 


 ちょっと厳しめな印象が一変した瞬間だった。おじいちゃんの笑顔っていいな、なんてつい思ってしまった。



 「―――さて、と」



 テーブルに件の依頼書を見えやすいように俺たちに提示し、説明を始める。



 「今までの被害状況から参照するとここ一週間で約三十一件も反社会組織の連中に襲われている。狙われた対象は憲兵から民間人まで範囲が広い。戦力からすればこの国の憲兵に対しても難なく斃す事が出来るくらいだ」



 説明を聞きながら記されている依頼書と被害報告書を一通り目を通す。王国首都から遠く離れた地域、そして人目もつかない貧民街といった疎らと各地で被っている。一見何も考え無しに暴れ回っているようにも捉えられるし、法則性が見つからない。仮に金銭目的で暴れ回るとしたら貴族や富裕層が集まる地域を重点的に狙うのなら納得がいくのだけど。



 

 「しかも厄介なのは、連中は個々の戦力が一段と高い。これによって多くの受注者が返り討ちにされた。時刻は夕方から夜明けにかけて行動に移すんだが―――」



 「質問良いか?」



 一つ気になる事があり、挙手する。敬語使わなくていいって言われたし、楽だな。タミルはずっとため口だったけど。



 「話を聞いてる限りだと相手は結構の手練れらしいし、一般の傭兵ぐらいじゃあ太刀打ち出来ないとなると、軍隊に任せるとかは無理なのか? そんな宿屋の掲示板で出すレベルの容易さではないし、かなり危険だと思うのだが………」

 

 「私も一度大臣にも相談したんだが、今はそれどころではないと一蹴されてしまったんだ。君たちは外から来たから分からないと思うのだが、実はこう見えて隣国との冷戦が続いててな、軍隊もそちらの方に全部まわってしまった」


 「それで仕方なく宿屋に掲示して募ってはいるが、相手が思ったよりも強く手こずってしまい現在に至る、と―――」


 そう俺が付け加えるように答えると、彼は縦に頷く。この国の隣国となると、確か北方にある「ぺルン大国」だったか。軍事力が世界でも三本指に入る軍事国家。何でもあの世界大戦後に一気に勢力を伸ばしたらしい。


 

 「反社会組織の連中は見た目はどんな感じだ? それさえ分かればある程度対処出来る」



 「見た目は白ローブを纏い、口元を小汚い布切れで隠してる。これは対峙し、苦しくも帰還した受注者全員が口揃えて教えてくれたから間違いない。あとそうだな、連中にはあるマークが刻まれているんだが―――」



 すると、ラーヒズヤは依頼紙の裏にスラスラと絵を描き始めた。



 「―――こんなマークが一人ひとりの身体の何処かに刻まれている」



 そう言うと、描き終えた絵を俺たちに見せる。



 「………❝太陽❞?」



 そこには丸い紋章の中に猛々しくも燃え上がるような太陽が描かれていた。

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