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神堕としの復讐譚  作者: 蒼井志伸
第2章 古代剣闘国家編
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Epidode24:到着

2019年12月4日

お久しぶりです!最近落ち着いてきたので投稿頑張りたいと思います!

たくさん見て下さった皆さん、ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!


 「おい、見つかったか!?」



 「駄目だ! こっちにも居なかったぞ!」



 「隈なく探すんだ! まだそう遠くまで逃げてはいない筈だ!」




 甲冑を纏った憲兵たちが擦れる音と足音を並列に立てながら、舗道を駆け抜ける。

 数はそう多くはない。しかし、今この場でコッソリと隠れてやり過ごすのはあまり得策ではないと考え、狭い路地裏で周囲を警戒しつつ、走り抜ける。



 細い路地が幾重にも入り交じり、まるで迷路だ。それに昼下がりにも関わらず太陽光は差し込まず、暗い道で足元が最悪でありながらも、俺は構わず進む。



 初めて訪れた国であるが為に土地勘に非常に乏しい俺は、何となくの感覚で只管に走るが、



 「見つけたぞ! 追えー!」



 出会い頭に憲兵の一人が声を上げると一斉に他の憲兵が後に続くように此方に向かってくる。土地勘が優れている向こう側の方が火を見るよりも明らか。流石の俺もこれ以上逃げ切れるかなんてぶっちゃけ自信ない。

 


 「なあなあアンタ、意外と大胆なのねえ」



 ………最も。俺一人だけならともかく、こいつがいないプラス先導出来てたら話は別だったんだがな。


 今どういう状況なのかを簡単に説明しますと、奴らの目的であるこいつを俺がお姫様抱っこして、走り回っていると言えば、何となく想像は出来るであろうか。


 「この先左行けば振り切れるか?」



 「分からないわあ」



 「くそ! とりあえず進むぞ!」



 「なあなあ、黒髪の少女と蒼髪の美少女、選ぶんだったらどっちが好きい?」



 「それ今答えなきゃいけない質問?!」



 「答えなかったら自動的に私になりますう。やったねオゼルちゃん、こんな可愛い美少女と駆け落ちできちゃうわよお」



 「一旦黙ってくれますかね?!」



 あまりにもマイペース過ぎる彼女に突っ込みをかまし、逆に清々しいくらい危機感のない彼女を抱えながら必死に逃げ続ける。何やら「いけずう」と猫撫で声が下から聞こえた気がしたが気のせいだ。うん、きっと気のせいだ。



 予想は正直ついてた。ここまで連れ出す前からそういう反応ばかりで俺の話を一切聞いてくれない。いうなれば、頭の中がお花畑残念系美少女とでも呼称しておくとしよう。


 まあでも、彼女は自分で美少女と大きく言っているが、実際のところ間違ってはいない。くりくりとした目をして、アメジスト並みに深い紫色の瞳に吸い込まれてしまいそうになり、肩ほどある蒼穹を彷彿する髪を揺らしている。


 しかし服装は砂や泥で汚れており、ヨレヨレでみすぼらしいと綺麗な面貌とはかわって対称的に映し出されている。



 背後から複数の足音が俺らを追ってきているのがわかり、足を止めてはならないと自分を鼓舞し、懸命に足を動かす。



 ニコニコと笑う彼女。



 ―――なんでこうなってしまったんだろう。



 息を切らせ、冷たい空気を肺で感じさせながら、今日までに起きた一連の流れを思い出していく。



 ―――そう、あれは今から一週間前。ちょうどこの国に到着したくらいか。





 ――――――――――――――――――

 ――――――――――――――

 ――――――――――




 ―――クベラ大国を出航し、暫く進んでいけば突然の荒波や大嵐の襲来と幾度重なるイベントに俺らは常に周囲を警戒して過ごす事、三日は経過した。



 今までの長旅の中でもこういったハプニングに遭遇するのも慣れっこだった。中には俺たちみたいな傭兵が臨機に対応して、後に交流を深める事でお互いの情報交換に繋がるなど、悪い話だけではなかった。特に海賊の襲撃には協力し合って容易に撃退する事だって出来た。



 海賊と言えば、だな。世界大戦以前の話だとこの海域には交易、植民を繰り返す略奪経済、そして農民や漁民を生業としていた海賊がたくさんいたそうだ。

 特にこの周辺の列島は交易路であった為に船に乗る人々は主に富裕層が多かった事もあって、海賊の間では通商路にしていた。



 海賊が跋扈する黄金期を迎えていたが世界大戦終結後には海賊の存在も過去の文化と一緒に消えてなくなった。しかし、戦後の俺たちの時代に移行すると息を吹き返したように各海域に海賊の姿を現し、それもこの時代ならではで、拳銃やサーベルだけを武器にして戦っていた旧海賊とは違い、魔法も使用するようになった。

 


 結果として、世界大戦以前の文化が根強く残っている国は魔法を使用する海賊に手を焼いている羽目になっている。

 


 そもそも戦後になって少なからずだが魔法が各地で使用されるようになったのは一体何がきっかけでそうなったのかは未だに不明のままでいる。幾つかの諸説を照らし合わせてみても、旧文明の遺産に眠っていた技術を復活させたとか、不老不死の賢者が伝えてきたとか、どれも確証が得られない。


 

 まあ、いずれにせよ、これらに対処しきれるのは数少ない者だけって事は確かだな。






 なんて、そうこう考え事をしながら船首の手摺に肘を置き、全体重を乗せる。

 快晴の空に生温い潮風を全身に浴びながら遠い水平線を眺めてると、



 「ここにいたのね」



 背後から聞き慣れた女性の声。呼びかけに振り返らずに頭をそのままで応じる。



 「何だタミル。まだ目的地は見えないぞ」



 黒装束で白のマフラーが特徴的のくのいち―――タミル。長旅の相棒は俺の返答に一回鼻で笑う。



 「あんたじゃないんだから。一時間刻みで外に出てはまだかな、まだかな、てそわそわしちゃって。まるで子どもみたいね」



 「おいおい、それは勘違いしてるようだけど、俺はいつ如何なる時も外に出ては警らしてるだけだぞ。むしろ褒めて欲しいくらいだ」



 「って、言ってる割には随分と目があの世に逝ってたけどね」



 「そんな事ないぞ?! たまたまだ! そう、たまたま!」



 「そもそも私の影分身が常に警らしてるから、て結構前に伝えてた筈だけど覚えてないの?」



 「………あれ、そうだっけ?」



 「はあ………」



 身の覚えのない事実に過去の会話でそんな話してたようなないような微妙な記憶を辿ってみる傍らで呆れた声で溜め息を洩らす彼女。

 この上ない恥を曝して頭を垂れていると周囲にいた二人組の船客の声が耳に入って来る。



 「おい聞いたか、クベラ大国が遂にぺルン大国に攻め入るってよ」



 「まじかよ。あの状況でよくそんな判断したな」



 「なんでも日輪教の件で汚名返上しようと躍起になった大臣が独断で決めたらしく、案の定兵士もまともに募らなかったみたいでそれでも強行したそうだ。結果は目に見えてるのにな」



 「国民の気持ちも知らないでやるとは、地に落ちたもんだ」



 「他国との交易も暫くはストップってところだな。残念だけど」



 「そうだな」




 「………」



 遂に起きてしまった最悪の事態。俺たちが収束させた日輪教との戦いで国民に与えた大臣の事実の改ざんによる不信感を残したまま冷戦中のぺルン大国との戦争。



 まさか三十年も続いた平和もこういう形で壊されてしまうとは正直考えもしなかった。クベラ大国は戦争に特化した軍事力はないが代わりに数多くの国とのパイプを誇る貿易国家だ。対してぺルン大国は世界屈指の軍事力で他国を牽制して平和を保っていたがクベラ大国から宣戦布告されては黙ってもいない。徹底的に潰していくに違いない。

 


 あの国にいる国民がどうなるのか。ラーヒズヤはこちらの問題と言ってはいたが、それでも俺は矢張り………。




 「あの国が心配?」




 ふと、隣からタミルが声を掛けてきた。反射的に顔をそちらに向けると彼女の顔は正面を向けたままでいた。まるで自分の気持ちを代弁したような問い掛けに俺はコクリと縦に頷く。



 「そりゃあな、心配はするだろ普通は。あんな事があった後だし」



 「そうね、日輪教の件であれだけ放置していたくせに追い打ち掛けるように戦争吹っ掛けるなんて、正気の沙汰じゃない。更に国民の不安煽ってどうするのよあのクソ大臣は」



 傲慢不遜と言動し続けている大臣にこめかみに指をあてて怒りを少しだけ露わにしてる。どうやらタミルも同じ気持ちみたいだ。


 

 だが、だからといって今から戻ってどうすればいいのだろうか。俺たちが出来る事は限りなく狭まれている。仮に戦争に加担してクベラ大国に勝鬨を上げ、それから国民に信頼を与えていく事で不安も全て取り除くのも可能かもしれない。


 だけど、放浪者である俺らが奔走して一つ一つ解決していったとして。それでは向こうの………クベラ大国に生まれた国民にとってこの行いが果たして良いものだろうか、と。



 ………駄目だな、いろいろと考え過ぎて頭ン中パンクしそう。

 とりあえず深呼吸して落ち着かせようとすると、



 「―――でも、何もしなくて良いのかもね」



 「タミル?」



 ぽとりと雫が落ちたような呟きを溢す。

 それはどういう意味だ、と言い返そうとする前に彼女の言葉は俺の疑問の答えを告げる。




 「ラーヒズヤのオジサンの顔を思い出したら、何かそう思ってきちゃってさ。きっと、何とかする筈よ。仮にもギルドマスターという肩書きを持ってて、王国の中でもそれなりの地位はあるんだし。だから、さ。私たちが信じてあげなきゃ。ね、そうでしょオゼル」



 「信じる、か………」




 彼女に言われた事をそのまま口に出して復唱する。

 ❝信じる❞と言った類の言葉はどうも弱い。ていうのも、俺が彼女に言われてきた言葉でもあるし、それを同じように俺も彼女に使ってきた言葉でもある。


 

 すーっとその言葉が心の内側に溶け込むと急に気恥ずかしさを覚え、紛らわそうと後頭部を掻いてしまう。そしてふと、ラーヒズヤの別れ際に放った言葉の数々と決心を固めた鋭い眼差しを思い出すと手の動きが自然と止まる。



 彼と握手した際に差し出した掌を見詰める。無意識にぎゅっと握り締めると彼女ではなく、再び正面を向く。

 


 「そうだな。ラーヒズヤを………クベラ大国の皆を信じてみる。最初からそういう約束でもあるもんな」



 自嘲気味に小さく笑う。そして、彼女も俺の笑いに釣られて口元が綻ぶ。互いが笑い合っていると大きな汽笛が鳴り響く。

 


 ―――そして、船内にアナウンスが流れる。内容はもうすぐ目的地に到着するという連絡事項であった。それによって外に出てた船客は自分たちの部屋に戻って降りる準備に取り掛かる。



 「………見えてきたな」



 前方に先程まで何もなかった島がぼんやりと見え始めてきたのが分かる。漁港はまだ先なのにも関わらず船が近づいていくにつれて、ここら周辺の海域に浮かぶ漁船や貿易船がたくさん入り交じってくる。



 クベラ大国に停泊してた幾つかの船の大きさと比較してみてもその巨大さは一目瞭然。まるで砦みたいだ。それらがここの海を蔓延っていると思うと、凄い圧迫感を覚える。



 「あれが、私たちの次の目的地である国………」



 「そう、かつての世界大戦以前の文化をずっと絶えず続いている❝生きる旧文明国❞であり、世界の殆どの国を牛耳っているとも言われる国」



 ―――❝古代剣闘国家メディオラ帝国❞。



 ここが、俺たちの新たな舞台であり、新たな騒動の始まりとも呼べるだろうが、それに巻き込まれるとはこの時の俺は露知らずでいたのだった。

 

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