表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神堕としの復讐譚  作者: 蒼井志伸
第1章 偽りの太陽編
13/35

Episode12:対峙


 「なっ………!?」



 一瞬の出来事に目を大きく見開き、驚きを隠せないでいるイェフダ。今まで見下していた紅髪の少年がこれ程の力を隠し持っていた事に。仮にも❝能力向上❞で強化された仲間を何の抵抗も無くあっという間にと赤黒い炎で覆いつくした。


 

 空気中の水分が一気に蒸発し、地面から建物、壁と至る場所が猛々しい業火の渦によって溶けていく。


 普通とは違う、悍ましい色をした、炎。



 放たれた炎の勢いが収まるとそこには攻めて来ていた敵複数が服や皮膚を黒焦げにされた状態で地に伏せていた。



 「………本当だったら跡形もなく消し炭にしてやりたかったが、生憎と今しがた俺の相棒に怒られちゃったのでな。この位で勘弁してやるよ」



 呆気にとられて身動きが取れない周囲の敵とは傍らに苦笑いを浮かべ、がら空きとなった前方の路地を突っ切るように走り出した。コンマ数秒後、イェフダは我に返り、オゼルが走り出した方角に目を向ける。このまま進めば自分たちのアジトがある貧民街に辿り着いてしまう事に気付く。


 

 「………っ!? 何をしていますか!早くあの男を仕留めなさい!!!」



 冷静が保てなくなったのか、不意を突かれたイェフダは額に冷や汗をかきながら他の仲間に荒げた声で指令を飛ばす。それに応じ、遅れて屋上にいるボウガン、弓矢を番えた敵がオゼルに標準を定める。



 「撃ェ!!」



 掛け声と共に一斉に矢、銃弾、鋭利な石が雨のようにオゼルに降り注がれる。彼はそれでも避けようとせず只管前に向かって走っている。イェフダ含め確実に殺したと、誰もがそう思った。



 「………❝普通の攻撃❞じゃあ、アイツは傷一つつかないよ―――」



 タミルの一言によって、目を疑うような光景が再び。



 ❝一斉に降り注がれた数多の攻撃がオゼルの身体をすり抜けた❞のだ。

 路地や建物、壁などに全てが落ち、そこから舞い上がる砂埃は黄褐色で霧の如く地上の凡てを掩いかつ包む。肉体に限らず、身に付けている服装までもすり抜ける現象に、敵一同は更に驚きを隠せないでいる。



 しかし一方でイェフダは眉間にくっきりと皺を寄せて、彼の身に起きている不可解な現象にどこか頭の中で音がするように思い当たる節のパズルを組み立てていた。



 「まさか、あれは………」



 おもむろに口が開き、夜目にも砂埃を巻いて出るのを確認すると、片手の水晶玉をオゼルに狙いを定めるように差し出す。すると今度は黄色い光が輝きを帯び、放電音がバチバチと鳴り響かせる。



 「………このままボスに会わせてはならない。ここで私が始末する」



 陶器に割れ目が入るように稲妻が素早く走る電気の球体を発射させようとモーションに移る直前、



 「よそ見してる暇がある?」



 背後から三本の苦無が飛んでくる。イェフダは小さく顔を仰け反らせる様にして、苦無を躱す。飛ばしてきた方向に身体を向けると、タミルが両手に苦無を持ちながら口元は歪ませて此方を睨み付けていた。



 「貴方から私に告白しといて、直ぐに他の人に浮気するなんて最低な男じゃない?女々しいったらこの上ない」



 「ふふ、そうですね。例えるなら地味だと思ってた子が喋ると魅力的だったと感じてしまったみたいな感じですかね。あの紅髪の子、まさかの収穫といったところでしょうか」



 「………もしかしてそっちの毛あるの?」



 「くす、どうでしょう」



 オゼルが聞いてたらきっと背筋が凍る話題だろう。彼がこの場に居なくて良かったなと心の底から安心したタミルであった。



 「まあ、貴女を直ぐに斃して、あの男を追う事にしましょう。それにしても、貴女一人で斃せるとでも思っているのですか?今この場に居るのは私たち百名程。全精鋭が集まっています。仮に分身をたくさん作ったとしても、この数相手にどうするつもりなのか、楽しみですね」



 ゾロゾロ、と。殺意の籠もった眼差しを灯し、下卑た薄ら笑いを口の端に浮かべて、連中が包囲をせばめてきた。❝能力向上❞によって強化された白ローブ。対し影分身を多量に出現させ、神経も磨り減らした為に疲労のかげが見えていた。



 それでも、彼女は一切笑みを崩さない。



 「こんなか弱い女の子一人に対して百人程で襲って来るなんて。貴方たち随分と腰抜けね」



 ビキッ、と。彼女の軽い挑発に、幾人かは額に青筋を浮き立てる。舐められたとそう判断しより一層連中は殺気立てる。



 「この女、自分の立場分かってないようだな」


 「決めたぞ、嬲り殺しにした後、オレタチのオモチャにしてやる………!」


 「そうだ、それが良いィ………」


 「よく見るとかなり可愛いじゃねえか、楽しもうぜオジサンたちとよォ………?!」


 「ヒャッハー!!」



 あちらこちらから激昂、狂気、悦喜の声。それは己の欲望を満たさんと人間の悪い本能だけで働く邪宗の徒。それが、❝日輪教❞だとこの場で改めて肌で感じる。



 「アンタたちとは長くまで遊んでられないのよ―――」



 そして、行間詰めに多く書かれた❝お札❞を柄尻に紐を通した苦無六本を両指の間に挟み、それらを白ローブたちが居る足元に一本ずつ飛ばす。自分たちに飛んで来なかった事に首を傾げる連中は、どこ狙ってるんだと嘲笑う声が飛び交う。


 が、それもほんの一瞬だけ。



 「―――爆ぜよ、❝暗術・爆蓮華❞」



 唱えるとそれぞれに突き刺さった苦無から吊るされているお札が赤く発光し始めその直後、爆発音。



 地を轟かせる程の威力は油断していた白ローブの連中は至る所に吹き飛ばされていく。視界を奪うように爆発によって飛び散る破片と砂埃が出来上がり、静かな夜の空気を振動させる。



 後方で取り残された仲間は唐突過ぎて状況が飲み込めない為に混乱が発生している。これに空中に浮いているイェフダは白い無精髭を弄りながら、感嘆する。



 「………成る程、貴女も見た目に寄らず、ですね。随分と派手にやってくれましたね」



 「私が分身しか使えない能無しだと思ったら大間違いよ。どっちかというと、❝こっち❞の方が得意なのよね」



 腰元から再びお札が吊るされている苦無を一本取り出し、イェフダに切っ先を向ける。



 「アンタのその澄まし顔を汚い地べたに叩きつけてあげるわ」



 「くすっ………良いでしょう」



 答えるように水晶玉をタミルに向ける。二人の間に冷たい夜風が吹き通り、黒髪と青髪を靡かせる。それぞれが浮かべている微笑みが交差し、対峙する事となる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ