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神堕としの復讐譚  作者: 蒼井志伸
第0章 全ての始まり
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Episode0:昔話

初めまして!蒼井志伸と申します。まずはこの作品を選んで頂き有難う御座います。

小説書くのがこの作品が初めてでして、どうか温かい目で読んでいって下さい。また、もし気に入って頂けましたら凄く励みになります!

それでは、どうぞお楽しみ下さいませ!



 ―――戦争は残酷だ。戦争は悲惨だ。戦争は不条理だ。




 確か、誰かがそんな事を言ってた気がする。たぶん、言ってたのかもしれない。いや、そんな事は正直どうでもいい。だってそうだろう? 叶いもしない夢物語を言い続ける者、希望に縋り付き綺麗事を並び続ける者、なかには戦争を食い止めようと各国に直談判しに走り続けた者などがいたが、一人ひとり多過ぎては如何にどうして語れようか。

 


 楯突く者全ては国家反逆の罪を課せられると地下牢へと監禁され、戦争に用いる生物兵器の実験体にされた。まあ、生き続ける為に、人間としての誇りや尊厳なんて掃き溜めに捨て、自分たちのエゴや私利私欲を尽くした結果がこの現状だ。地に堕ちた人間どもの末路の果てだ。



 世界中で起こっている暴動や内乱、そして他国への侵略行為。火種となったのは至って簡単、単純な理由。



 ―――『どの国が一番優れているのか』


 ―――『世界を支配するのはどこが一番相応しいのだろうか』、と。



 ポツリと何気なく呟いたその台詞がまるで水面に雫が落ちて、波紋がゆっくりと大きく広がるように世界各国の耳に入るとたちまち戦火となって広がっていった。



 あんなに蒼く澄んだ綺麗な空も何日も経たずに戦車の砲台や兵士の銃による硝煙が立ち上り、赤黒く染め上げる。人肉が焼け焦げたような匂いを含んだ空気と生物実験により生み出された破壊兵器によって焦土と化した街全体が終末を思わせる。

 今までの日常が、一瞬にして壊されてしまった。人々は思った。このままではいけない、と。この地獄のような世界から平和を取り戻そうと各国各地でレジスタンスを立ち上げ、抵抗し続けると勢力も一層と拡大し続け、一般市民は彼らに希望を委ねるようになる。


 

 一日でも早くこれ以上の被害が現れないように願い続けてもその想いは虚しく、争いは直ぐには終わらず何年にも続き、寧ろ過激さが増長していったのである。

 他国との戦争と一般市民の抵抗が重なり合い、不如意に伴っていく苛立ちが表面に浮き彫りにされると国はとうとう一般市民にも手を出すようになると邪魔する者は即座に排除される始末。


 それに怖気づいた一般市民は自分の身に危険を齎す存在を国に密告する者が現れるようになり、それに抵抗し続けていたレジスタンスも巻き込まれ、何日も経たずうちに全滅してしまった。



 世界が敵。味方なんて何処にもいない。救いの手など求めても誰も差し伸べてやくれない。取り戻そうと動いた仲間も消えていった。無念に怨嗟の声を上げ、この世を恨む嘆きの声を上げ、絶望を肌で感じながら怯え続けている。そんな恐怖に慄き、いつ自分が殺されるか分からない、孤独に生き続ける人間達はただ両手を重ね、天に祈りを捧げる。




 ―――どうか神様、私達をお助け下さい………。


 


 無力な人々の藁にも縋る思いで、存在するはずもないであろう「神」に向けて祈りを込める。



 この絶望の暗闇から、希望の光明が差す事を信じて。



 そして、その希望をも思わせる光明が差し込まれるまでにそこまで時間はかからなかったのだそうだ。



 地獄の底にも似た赤黒色に汚れた空の遥か上空から突如と一本の光明が降り注がれ、その中心に三体の人らしき❝神たち❞は現れ、その光景は世界中の人々に目撃された。


 

 天から現れた❝神たち❞は暫く滞空して世界中で起きている惨状を確認する。少し間を空け、真ん中に立っている❝神❞が手に持っていた細長い杖を指揮棒(タクト)のように振ると、世界中の上空から同じ光明が複数差され、そこから多くの甲冑を着た翼の生えた兵隊が一斉に戦争の根源を殲滅しにかかる。そこからは酷い断末魔の叫び声が絶え間なく続き、一瞬にして終わらせたのであった。


 

 残された人々はただ茫然と空に浮かぶ燦然と煌めく三体を見つめていた。平和を求め、祈りが通じた故に起きた❝奇跡❞。人間の常識から逸脱した❝神たち❞は、数多くの翼の生えた兵隊を引き連れて、遥か上空に颯爽と姿を消した。



 ―――こうして長年に渡る歴史上最悪の戦争である出来事を後に❝暗黒の世界大戦❞と呼ばれ、終止符が打たれた。



 全人口が三分の一にまで激減し、戦死していった多くの同志を埋葬し終わると各国の今後の方針を定める為に首脳会議を主催。もう二度とこのような過ちを犯してはならないと強く誓い合い、自国の再建のみならず他国と協力し合い、安定的な友好関係を築き上げると平和条約を締結。



 手を取り合って進んでいく姿勢が決まったが未だに多くの問題が取り残されている事に気付く。



 戦争により大打撃を受けた経済問題や所有権を巡る領土問題などと戦争以前からの課題は各国においても見捨て置けず、しかしそれらを順を追って解決していくしか方法がないのもまた頭を悩ませる答えでもあった。

 悪王が消えた今、新たにその王座に座る資格を得た人間による新たな政治活動に取り掛かるとそれに負けじと国民はそれぞれの復興に向けた準備に移るようになる。



 時間は掛かる。もう昔のように戻れない。途方にも思える復興はそれでも取り残された人間にとっては成し遂げなければならない責務だと感じ、明るい未来に向けてひたすら手を動かし続けていった。



 そんな戦争が終結してからだいぶ月日が経過すると、世界で突如と大変革が訪れる。



 かの天から舞い降りた❝神❞の影響もあって戦争以前に存在していた神々を崇め奉る風習が定着し、敬意を込めて国名まで神の名前を使う国が出現。神々の思想を尊重し、神々の奇跡を信じる者たちが集う宗教団体による啓蒙活動とこれまでになく顕著に、明瞭にと動きを見せる。

 また、不思議な事に特に何の前触れもなく❝魔法❞の概念が生まれ、使用する者が徐々に現れると魔法で溢れ返る国が建国されるなどと嘗ての世界からかけ離れるように変化し、成長を遂げるようになった。




 ―――これはつまり、新たな時代の幕開けとも呼べるだろう。

 

 

 生まれ変わった世界で取り残された人々は何を思い、未来へと継承していくのか。



 それは、今の私には分からない。



 それに戦争を止めてくれた❝神たち❞が何故助けてくれたのか、も。しかしその真意を知る由もない。人々は感謝する。我々を助けてくれた。それだけ分かればそれ以上は不必要だと。

 


 後日談として不思議な事に、戦争を止めた❝神たち❞は祈っていた際に脳裏に浮かんだ姿形が全員同じであったそうだ。そして、人々が畏敬の念を込めて、こう後世に伝えられた。



 ―――「三天神」と。

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