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ネスコーの魔女《『ネスコー地方の民話』1818年刊より》
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二つの満月が輝く夜は、魔法の力が高まるのだと誰かが言った。
魔物や魔女、悪魔たちが騒ぐからと、せっかく美しい月なのに、人間たちはみな、家々でなりを潜める。
見つかりませんように、連れて行かれませんように。
ネスコーの魔女は、美しい少年が好き。
だから特に、男の子は外に出てはいけません。
黒い髪、黒い瞳、黒い衣を纏った魔女は、美しい少年の使い魔を連れて、月の下を歩くのだ。
魔女は人間を喰うという。
見つかったら最後、もうお家には帰れない。
怖い怖い。
さぁ、よい子は早く眠りにつきましょう――……
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