未来人の三人。歴史を変えようとする。
松平「永倉、遅いな・・・」
お龍「そうだねー」
松平「と、言うよりも最近、来なくね?」
お龍「いやいや、なんかさ・・・言いにくいんだけど、新撰組最近ヤバくない?」
松平「何?何の話だ?」
お龍「その・・・仲間同士で斬りあってるとか、あまり、いい噂を聞いてなくて・・・」
松平「あぁ、その話か」
お龍「ねぇ、永倉は大丈夫なの?」
松平「それも含めて今日、聞こうと思ってたんだが・・・」
永倉「悪い、遅くなった」
お龍「!!」
松平「永倉!?・・・お前、なんだ。その姿は!血まみれじゃないか!!」
永倉「悪い、さっきまで仕事をしてたんだ。・・・だから遅れた」
お龍「仕事・・・」
永倉「あぁ・・・まだ京都に浪士がいたんでな」
お龍「ねぇ、永倉。もぅやめよう。こんなこと」
永倉「悪い・・・仲間を守るためなんだ」
お龍「そんなこと言っても・・・永倉が壊れちゃうよ」
永倉「悪い・・・今は仕事の話をしたくないんだ。二人の近況を教えてくれよ」
松平「そ、そうだな。俺の方は、永倉達の活躍もあって長州を完全に外に追い出しこれより、長州征伐に移ることとなったな」
お龍「私の方は相変わらずよ」
永倉「そうか・・・」
松平「なぁ、永倉。お前はどうなんだ?」
永倉「俺達は幕府様に見限られない様に活躍するだけだよ。長州征伐に行くんだろ?俺達も行くよ」
松平「いや、待て待て。征伐に行くとは言ってもまずは交渉からだ。お前達が活躍するのはあくまでも最終手段だ」
永倉「あ?何を呑気なことを言ってるんだよ。そんなんだから長州に舐められ良いようにやられてんだろうが」
永倉「後手に回るのはもう懲り懲りなんだよ」
松平「まずは俺達に任せてくれ!」
永倉「・・・そうだよな。所詮、俺達は幕府の人斬り包丁、尻拭いの道具だ。必要なくなれば棄てられる」
松平「俺はそんなことはしない!!」
永倉「お前はそうかもしれないが、他の奴等はそうだろ。・・・そんなことより、坂本龍馬って知ってるか?」
お龍「!!」
松平「坂本龍馬・・・っ!!しまった!!薩長同盟か!?」
永倉「奴が最近妙に活動を活発に行ってる。恐らく、薩長同盟が結ばれるのも時間の問題だ」
お龍「待って!待って!!二人はそれを止めようとしてるの!?」
松平「止めないと駄目だろ」
永倉「あいつはどうやってかはわからないが、薩摩とも長州ともコンタクトが取れる危険人物だ」
お龍「ねえ!それって歴史を変えるつもり!?私達、帰れなくなっちゃうよ!?私達の未来は?」
松平「それは・・・」
永倉「元々、帰れる保証なんてどこにもないだろ」
お龍「それは・・・そうだけど・・・」
永倉「俺は今いる時代を尊重したい。だからこそ、この国を殺そうとしてる奴を捕まえる」
松平「そうだな・・・永倉の言う通りだ」
お龍「そんなこと坂本さんはしようとしてない!!」
松平「お龍、お前まさか、一緒にいる人って・・・」
お龍「知らない!!言えない!!言いたくない!!」
永倉「・・・」
お龍「どーする?永倉。私のこと、捕まえる?それとも斬る?」
永倉「・・・そんなことしねーよ」
お龍「だったら、お願い。坂本さんも捕まえないで」
永倉「それは出来ない」
お龍「なんで・・・なんでよ!!」
永倉「俺が新撰組だからだ!!」
松平「二人とも落ち着け!!」
お龍「・・・」
永倉「・・・」
松平「今の話は無しだ。お互いの立場があるだろ?お互いの立場を尊重すべきだ」
永倉「そうだな・・・お龍、悪かった」
お龍「私も・・・ごめん」
永倉「悪い、そろそろ仕事に戻る」
お龍「もぅ行っちゃうの?」
永倉「俺が休むわけにはいかないんだ。また今度な」
松平「永倉!・・・来月もちゃんと来いよ?」
永倉「あぁ、死ななけりゃまた来るさ」
松平「あいつ、大丈夫なのか?」
お龍「ヤバイ、めっちゃ怖かった・・・」
松平「まるで鬼だ・・・」
お龍「ねぇ、本当に新撰組って大丈夫なの!?」
松平「・・・わからん」
お龍「このあとの、未来が本当に怖い・・・」
※実際、新撰組は京都での戦いにおいての戦死者は6名なのに対し、切腹や粛清での死者は40名程にもなる
永倉「・・・」バシャバシャ
沖田「永倉さん・・・新しい羽織、置いておくね?」
永倉「あぁ、すまない・・-」
沖田「永倉さん、少し休んだ方がいいんじゃない?」
永倉「俺は大丈夫だ。体は丈夫なんだよ」
※永倉新八は全ての戦闘に参加していたと言われています。
沖田「でも、永倉さんがこのままだと、壊れちゃうよ・・・」
永倉「その分の報酬は貰ってるさ」
沖田「・・・」
永倉「それより、最近、藤堂の様子はどうだ?」
沖田「藤堂さん?・・・そう言えば、最近見ないね」
永倉「・・・そうか」
斎藤「永倉さん、そろそろいいですか?」
永倉「おお、悪いな。待たせちまったな」
沖田「斎藤さん!永倉さんを一日くらい休ませてあげてよ!」
斎藤「しかし・・・土方さんの命令なので・・・」
永倉「大丈夫だよ。沖田・・・それじゃ、行ってくる。行くぞ、斎藤」
斎藤「・・・はい」
坂本「名を名乗るな?」
お龍「・・・うん」
坂本「まぁ、確かに・・・最近は物騒だからのぉ。しかし、なんで急に?」
お龍「・・・言ったら信じてくれる?」
坂本「ワシが今の今まで信じなかった事があるか、言ってみんしゃい」
お龍「・・・坂本龍馬は暗殺される」
坂本「・・・ワシが、死ぬ?」
お龍「後に京都見廻組の人間が捕まるんだけど、信憑性が曖昧でその人が本当に犯人なのかは不明。坂本龍馬は刀も抜くことなく即死。免許皆伝者である坂本が何故、剣を抜けなかったのか?それは顔見知りの犯行だったから、とも言われ、後の坂本の刀傷から犯人は左利きで」
坂本「ま、待て待て待て待て、そんなにいっぺんに言われてもわからん。ワシは死ぬ、のか?」
お龍「・・・うん。私の知ってる未来では殺されちゃう」
坂本「しかし、いったい誰に?」
お龍「わからない」
坂本「いつ?」
お龍「ごめん、そこまで覚えてない・・・けど、薩長同盟が結ばれた後のはず」
坂本「・・・と、言うことは幕府の犯行と言うことか」
お龍「犯人・・・私の知り合いかもしれない」
坂本「なに?」
お龍「永倉新八・・・あいつの家、厳しくて昔左利きだったのを無理矢理、右利きにしたって聞いたことがある」
坂本「新撰組の二番隊組長か・・・しかし、知り合いと言うのは未来人であろう?何故、ワシを殺す必要がある」
お龍「・・・新撰組だから。永倉はそう言っていた」
坂本「ふむ、確かに筋は通っておる。だが、安心せい。其奴は犯人ではない」
お龍「なんで?」
坂本「お龍の知り合いかもしれないが、ワシは其奴を知らん。高杉やお龍は顔見知りかも知れんが会ったことがない」
お龍「でも・・・」
坂本「安心せい。ワシはそう簡単には死なんよ」ナデナデ
お龍「・・・うん」
※実際、坂本龍馬は才谷梅太郎という変名を名乗っている。
徳川「薩長同盟?」
松平「すまん、長州の事で躍起になってすっかり忘れてた」
徳川「いやいや、慶永。それはさすがにあり得んて・・・今や朝敵となった長州に何故、薩摩が手を差し出すんだ」
松平「・・・到幕の為ですよ」
徳川「・・・」
松平「今までのことを思い返すと、全て最善を選択してた。でも、それは歴史をそのまま繰り返してたんだ」
徳川「つまり、薩長同盟は・・・」
松平「どんなマジックを使うかわからないが・・・恐らく、結ばれる」
徳川「そうか・・・」
松平「慶喜さん、判断は任せるよ・・・守るべきものを幕府か徳川か決めなきゃいけないと思う」
徳川「もしも、幕府を守ると言ったらどうなる?」
松平「その時は・・・歴史を変える」
徳川「しかし、そうなると慶永の未来はどうなる」
松平「・・・わからない。存在しない未来に俺がいなければ消えるかもしれない」
徳川「・・・」
松平「ただ、俺も今を守りたい。この時代を守りたいんだ。たとえ歴史を変えたとして、この時代を守れたなら俺は万々歳だ」
徳川「慶永・・・その言葉に嘘偽りは無いな?」
松平「あぁ、たとえ消えたとしても後悔はしない」
徳川「・・・わかった。主の気持ちを尊重しよう。兎に角、今は俺のやるべきことをするまでだ」
松平「薩長同盟を結ばせない」
徳川「そうだな」
松平「坂本龍馬の所在は掴めない。そして、薩長同盟のキーマン西郷隆盛は今はこっちにいる」
徳川「よし、ならば薩摩と長州。さらに仲違いを起こすよう考えなければな」
長州に向け出兵した幕府でしたが、交渉として八月十八日の変及び、禁門の変での責任とし主要人物の切腹と斬首を条件とし、さらにはすぐに行うようにと制限時間をも加えるのでした。
そんな無理難題を長州に押し付け、交渉人には禁門の変で活躍した薩摩の西郷隆盛を指名するのでした。
長州はこの条件を飲み、すぐさま主要人物の切腹及び斬首を執り行い。
その結果、幕府の恭順派が実権を握ることとなる。
だが、それを良しとしなかったのが高杉晋作でした。
高杉「恭順派の侍は武士に非ず!土百姓共に真の武士はなんたるかを教えてしんぜよう!!」
※功山寺挙兵
奇兵隊など様々な部隊をまとめあげ、高杉はクーデターを起こし、長州の実権を手に入れることとなりました。
クーデターに成功した高杉はすぐさま桂小太郎を呼び戻すのでした。
桂「・・・よぉ、待たせたな」
高杉「桂さん・・・待ってましたよ」
ボロボロになった長州でしたが、この時の事を伊藤博文は後に
「暗雲立ち込める長州に雲を切り裂く光と虹の如く光景だった」
と言葉を残す。
こうして、第一次長州征伐は直接戦闘を回避し終わるのでした。
勝「・・・はぁ!?坂本龍馬は暗殺される!?」
坂本「うむ!ワシは死ぬこととなるらしい」
勝「・・・ったく、オメーさんはまるで他人事のように重要な事を口にしやがって」
※中岡「・・・ふん、未来予知だかなんか知らんが、それで怖じ気付いたか?」
※中岡慎太郎 坂本同様に薩長同盟の為に奔走。後に坂本と共に暗殺される
坂本「んや?むしろ俄然やる気が出てきたわ」
勝「しかし、犯人は?」
坂本「それがわからんのじゃ。未来でも犯人は誰なのか研究されてるらしい」
中岡「十中八九、幕府であろう。今、我らの行っている事を思えば命を狙われてもおかしくはない」
勝「ちょいと待て、そりゃ俺っちが幕府にいることを知って言ってるんだよな?」
坂本「まぁワシもそう思う。勝さんは幕府の異端者じゃからのー」
勝「坂本、オメーまで言うか」
坂本「しかし、勝さんも犯人は幕府だと思わんかね?」
勝「まぁ・・・確かに」
勝「しかし、それならば俺にもその話は来るだろう。知っていれば未然に防ぐ事も出来るはずだ」
坂本「まぁだから二人にも話しておこうと思っての。ワシもまだ死にとうないのでな」
勝「・・・しかし待て。お龍さんは何故、その事を教えた?」
中岡「何を不思議がる。知り合いが死ぬとわかっていて教えぬ奴がおるか」
勝「違う違う。あの子は未来人だ。そんなことを教えたら彼女にとっては歴史を変えることとなるんじゃないのか?」
中岡「???」
勝「・・・つまりだ。俺達が坂本暗殺を防いだとしたらあの子の未来が無くなる」
坂本「お龍が消えるかもしれないの」
中岡「なんと!?」
坂本「しかし、お龍は馬鹿だからのー。そこまで見越してワシに伝えたのかどうだか・・・」ムムム
中岡「お龍は消えてもらっては困る。坂本、お主が死ね」
坂本「さらっと恐ろしいことを言うな、おまんは!」
勝「なんだい、中岡はお龍にお熱かい?」
中岡「あの子の作る味噌汁は絶品なのでな。それに、高杉が泣くぞ」
勝「あー・・・」
坂本「確かにそうだのー」
お龍「え?高杉さんがなんで泣くの?」
三人「!!」
坂本「お、お龍!!いつから聞いてた!!」
お龍「え?最初からだけど?」
勝「あー、まぁ仕方ない。しかし、お龍さんよ。坂本龍馬暗殺は俺達に教えてよかったんか?下手したらお龍さんが死ぬかもしれないぞ?」
お龍「んー、まぁいいんじゃない?言ったときはそんなことを考えてもなかったけど言っちゃったもんは仕方ないよねー」ウンウン
勝「なんと言うか」
坂本「軽いのー」
中岡「しかし、主の味噌汁が飲めなくなるのは困るのだが?」
お龍「多分、消えないよ」
勝「何故、そう言いきれる?」
お龍「皆が心配してるのは、タイムパラドックスが起こることを気にしてるんでしょ?」
勝「タイム?・・・パラドックス?」
お龍「けど、それを言っちゃうと私達が過去に来てる時点でおかしい訳じゃん。時代に関係のない私らが歩いてるときに小石を蹴ったりしただけで、未来は大きく変わるはずだもん」
お龍「だから、私はタイムパラドックスではなくて、平行世界に私らはいるんだと思うのよねー」
中岡「なぁ?何を言ってるか、わかるか?」
坂本「さっぱりわからん」
中岡「お龍殿って、実は頭がいいのか?」
お龍「だから、坂本龍馬が生きてる世界線があってもおかしくないと思うわけですよ」
勝「・・・あー、要するに消える事がないと確信してるから防いでもいいと?そう言うことかな?」
お龍「そうそう」
勝「なるほど・・・ならば、俺達は坂本を全力で守ることとしよう」
お龍「私も頑張る!」
中岡「それならば、私も全力で守ることとしよう。コーンなんちゃらと言う味噌汁が飲めなくなるのは困る」
お龍「ありがと!あ、忘れてたけど、中岡さんも坂本龍馬と一緒に殺されちゃうから気を付けてね」
中岡「ファッ!?」