臭いものにはなんとやら
藤堂「芹沢を斬ったのは土方さん、山南さん、原田さん、そして沖田らしい・・・何考えてるんだよ、沖田のやつ」
永倉「沖田・・・大丈夫かな・・・」
藤堂「最近みんな、おかしいよ。なんで、仲間同士で斬り合ってるんだよ・・・」
永倉「藤堂、落ち着け」
藤堂「永倉は・・・俺のこと、斬らないよね?」
永倉「馬鹿か、なんでお前を斬らなきゃいけないんだよ」
藤堂「だよな・・・ハハッ、悪い。変なこと聞いたわ」
永倉「けど、近藤さんと土方さんは最近は道場に顔すら見せなくなったな・・・」
藤堂「あの二人は新撰組を大きくしたいんだよ」
永倉「大きくして一体どおする」
藤堂「そうすれば、侍として認められると思ってるんだ」
永倉「え?近藤さんは武家だろ?」
藤堂「近藤さんは養子だよ。あの二人は農民の出だからな。侍に憧れを抱いてるんだ」
永倉「侍に憧れね・・・」
山南「武士よりも武士らしく。彼等は皆のお手本として振る舞おうとしてるんじゃないかな?」
永倉「山南さん」
山南「武士としての立ち振舞い、それが芹沢からは見受けられなかった。だから、彼を斬ったのではないかと私は考えてるよ」
永倉「・・・」
藤堂「だからって仲間内で斬り合うかよ普通・・・」
山南「そうだね・・・」
永倉「山南さんはなんでそこに参加したんです?」
山南「・・・彼は武士としての心を持ち合わせていなかった」
永倉「けど、実力はあった!結果だって出てる!」
山南「実力だけで語れぬ!それが!侍の世界だ!!」
藤堂「・・・」
山南「・・・だから芹沢は死んだんだよ。それから、芹沢の襲撃した犯人は不明だ。以後、こんな堂々と語らないようにね」
沖田「・・・」
永倉「沖田」
沖田「・・・永倉さん」
永倉「久々に試合やらないか?」
沖田「・・・やりたくありません」
永倉「そうか・・・」
沖田「・・・」
永倉「まぁ今度こそ、お前を一方的に倒してやるからな!そうならないようにちゃんと練習しとけよ?」
沖田「・・・」
永倉「じゃぁなー」ヒラヒラ
沖田「・・・なんで?」
永倉「ん?」
沖田「なんで、僕を責めないんです?」
永倉「責める?なんで?」
沖田「僕が芹沢さんを斬ったから・・・永倉さん、親しかったし・・・」
永倉「んー・・・」ボリボリ
沖田「それなのに・・・永倉さん、責めるどころか、僕の事ばかり気にかけるし・・・なんでなんだよ」グスッ
永倉「そんだけ、思い詰めてる奴を責めれる訳ないだろ」
沖田「だって・・・」
永倉「お前は近藤さんの指示に従っただけだ。お前は悪くない」
沖田「・・・」
永倉「お前は近藤さんの言うことは絶対に聞く奴だって知ってる。逆らえない奴だって知ってる。だから、それを責めるつもりはねーよ」
沖田「・・・永倉さんって凄いよね」
永倉「何が?」
沖田「自分の意見をしっかり持ってる。僕は羨ましいよ・・・」
永倉「俺はただの剣術馬鹿だよ。お前だってそうだろ?」
沖田「僕は・・・そうなのかな?」
永倉「だからこその一番隊組長だろ?・・・なんで俺が二番なんだよ・・・」
沖田「・・・そこは責めるんだ(笑)」
永倉「そりゃそうだろ。沖田が一番で二番が俺って、お前に負けた様な感じじゃん!そこは気に入らん!」
沖田「実際に僕より弱いじゃん」
永倉「負けてねーし!!」
沖田「負けを認めてないだけじゃん」
永倉「だから負けてねーし!!」
沖田「いい加減、負けを認めろよなー・・・もぅ!白黒はっきりさせてやるから、早く練習しよ!」
永倉「おう!今度こそ負かしてやる!!」
沖田「・・・ありがとう」ボソッ
永倉「あー?なんの事だかわかんねーなー!!」
沖田「聞こえてんじゃん!バーカ!」
永倉「うるせぇ!知るか!!バーカ!」
坂本「だから、下関戦争はやめておけって言っただろうが、ヅラ」
桂「ヅラじゃ・・・もぅいい、その流れはあきた」
坂本「奇兵隊を立ち上げたらしいの」
桂「あぁ、高杉の元で攘夷浪士を集めた。これで、長州は完全に幕府とは対立関係となる」
坂本「まぁ止めはせんよ。止めても無駄だって知ってるからな」
桂「・・・俺ってそんなに頑固に見えるか?」
坂本「はい?またなんでそんな事を聞く」
桂「いや、この前同じような事を他の人間にも言われたんだよ」
坂本「ほぉ!?主の知的(笑)な仮面を剥ぎ取った奴がワシ意外にもおるのか!」
桂「なんだよ、その知的(笑)ってどういう事だよ!!」
坂本「主は初対面の人間には本性を見せないからの。無理にでも剥ぎ取らにゃ、本性が見えてこぬ」
桂「・・・あー、なるほどね」
坂本「それは一体誰じゃ?」
桂「・・・言わねーよ」
坂本「なんじゃ、つまらん」
お龍「坂本さーん、お茶入ったよー・・・って、桂さんじゃーん。おひさー」
桂「お、久々だな。未来人」
坂本「なんじゃ?どういう風の吹き廻しだ?未来人なんか否定的じゃったのに」
桂「んー、俺も未来ってのが気になり始めたってことさ・・・目の前だけじゃなく、この先の事もな」
坂本「お龍、桂が珍しく臭い台詞を吐いておるぞ」
お龍「はーい、換気するねー」
桂「そう言う臭いって意味じゃねーし!!」
割愛
桂「・・・まぁいい。先の事は置いておいて、まずは目の前の事からだ。邪魔したな」
坂本「なんじゃ?もぅ行くのか?」
桂「あ、そうだ。坂本、しばらくの間、守護職の辺りはうろつかない方がいいぞ?」
坂本「ん?どうして?」
桂「フン、知ってるくせに。未来人から聞いてないのか?」
お龍「えっ?このあと、何かやったっけ?知らなーい」
桂「・・・そうなのか?」
お龍「んー、私も詳しくは覚えてないんだよねー。この頃、活躍するのは新撰組でしょ?」
桂「新撰組・・・」
坂本「その新撰組と言うのは、お龍が言うような大層な活躍なんてしておらんぞ?」
桂「人斬り集団って名は有名だがな(笑)」
お龍「あれー?おかしいな・・・なんかの一件で超有名になるんだけどなー」
桂「・・・そのなんかとは?」
お龍「んー・・・なんだっけ?どこかの宿泊施設のはずなんだけど」
桂「まぁいい。思い出したら教えてくれ・・・下手したら俺がそこで死んでしまうかも知れないからな」
坂本「捕まるんじゃないぞ?」
桂「そう簡単に俺は捕まらんよ・・・じゃぁな」
坂本「お龍、このあとの事、本当に知らぬのか?」
お龍「だから知らないってば。守護職って京都守護職の事でしょ?」
坂本「あぁ噂では焼き討ちをし混乱に乗じて徳川慶喜、松平慶永の暗殺。そして天皇の身柄を確保する計画らしい」
お龍「えー?なにそれ、知らなーい」
坂本「ってことは、失敗するかの?しかし、準備も最終段階まで来ておる。桂の今回の会合は恐らく決行日を決めると言ったところか」
お龍「んー、そんな大それた出来事なら教科書とかに乗ってると思うんだけどなー」
坂本「わからんのー」
お龍「わかんなーい」
永倉「はぁ?守護職を焼き討ち!?」
土方「あぁ、捕らえていた浪士がようやく口をわった」
近藤「それは事実なのか?」
土方「あぁ間違いない。浪士の家から出てきた武器や火薬の量。すべて辻褄が合う」
藤堂「んで?いつなの?」
土方「そこまではわからん。浪士もそこまでは知らないと言っていた」
山南「しかし、武器や火薬がすでに準備されていると言うことは計画も最終段階に来てるのでは?」
土方「恐らくな。今、事が起きてもおかしくないと言うことだ」
永倉「それってヤバイんじゃ・・・」
土方「とにかく、俺と近藤さんでこの事を守護職に伝えに行ってくる。残りは総長の山南さんを中心に部隊を整えいつでも出れるように準備しておいてくれ」
永倉「わ、わかった・・・」
松平「何故、守護職の人間は動かんのだ!!!!」
役人「今回の一件。事が重大な上、どの人間が関わっているのかわからない故、下手に手を出せないのです」
松平「重大だからこそ動くべきなんじゃないのか!?帝の命に関わる問題だぞ!!」
役人「しかし・・・もしも長州以外の藩が関わっているとしたら我々の責任では負いかねます・・・」
松平「それこそ、そいつ等の藩が謀反を犯したという証拠だろうが!!」
役人「松平様!!しばし、しばしの辛抱を!!今、守護職の者達で協議を行っております故」
松平「ならばそこに俺を連れていけ!!俺が説得する!!」
役人「なりませぬ!松平様!もしも、松平様がここで動けば松平様が全責任を負う羽目になります!」
松平「構わん!そこに連れて行け!!」
役人「なりませぬ!!・・・慶喜様から松平様を出すなとのご指示でございます!!」
松平「慶喜さんが?・・・一体、何故」
役人「それは・・・お答えできませぬ」
松平「ならいい。直接聞く」
役人「んな!松平様!!松平様ー!!」
松平「慶喜さん!!慶喜さんはどこだー!!」
役人「松平様ー!!お待ちを!どうかお待ちを!!」
徳川「何やら騒がしいの」
勝「ええ、そのようで」
松平「慶喜さん!!ここに居ましたか!!」
役人「松平様!!よ、慶喜様!申し訳ありませぬ!今、松平様は拙者が連れて行く故」
徳川「よい、下がれ」
役人「し、しかし・・・」
徳川「構わぬと言っているのだ。下がれ・・・二度三度とは言わぬぞ」
役人「・・・し、失礼いたします」ペコリ
勝「これはこれは、松平様。お久しゅうございます」
松平「勝海舟・・・お前の入れ知恵か」ギロリ
勝「はて?なんの事やら」
松平「とぼけるな!!※下関の一件、忘れたとは言わせぬぞ!!」
※下関戦争では英国への賠償請求は幕府にあると長州に言われ幕府は莫大な金額を支払っている
勝「あれは長州を守るための代償です。もしも、そこで支払わなければ長州の地を英国に侵略される恐れがありました」
勝「それに経緯はどうであれ、幕府が長州に指示した事も事実。あれが丁度いい落とし所でございます」
松平「では、今回の一件はなんだ!!幕府が長州の代わりに代償を払い!その結果がこの焼き討ちの計画ではないのか!!」
松平「恩を仇で返すいい例えなんじゃないのか!!」
勝「私は今回の一件と前回の一件が同じとは思いませぬ。そして、もしもその浪士の中に長州以外の藩がいた場合、そこの藩との関係が崩れる可能性がある」
勝「だからこそ、守護職の人間は下手に動くべきなんじゃと慶喜様に進言しに来たのです」
松平「俺をここに留まらせる様に仕向けたのもか・・・」
勝「松平様は何をそんなに慌ててるのでござるか?元々、松平様は帝に対し否定的な方でござろう?」
松平「それとこれとは別の話だろ!」
勝「別の話?・・・まさかとは思いますが、新撰組の中に知り合いがいるからそんなに慌ててるのでござるか?」
松平「なんだと!?俺が公私混同してると言うのか!?」
勝「その通りでござる。政治は私ではなく公で行うべき。今の発言では私と捉えられても致し方ないと思いますが?」
松平「この、キツネ野郎が・・・」
徳川「慶永、落ち着け」
松平「慶喜さん!!」
徳川「落ち着けと言っているのだ!!慶永、お前の言いたいこともわかる。今回の一件、早急に対象しなければならない」
松平「だったら!!」
徳川「しかし!勝の言っている事もわかる!!勝の言い分が今回は勝った。俺が判断した!!」
松平「・・・」
勝「今回の一件、見つけたのが新撰組でよかった。もしも彼等が武功を挙げることが出来ればその名を広める絶好の機会」
勝「そして、もしも他の藩が携わっていたとしても新撰組が勝手にやったこと。我々はなんの痛みもない」
勝「ノーリスク、ハイリターン。win-winだ」
松平「!?(未来言葉!!)」
勝「では、これで私は帰らせて頂きます」
徳川「今の言葉、聞いたか?」
松平「未来言葉・・・」
徳川「慶永の知り合いが言っていた未来人がもう一人いるという話。真実かも知れないな・・・」
松平「慶喜さん・・」
徳川「幕府が終わる・・・しかも、俺の代か・・・」
松平「何を弱腰になってるんですか!!」
徳川「んお!?」
松平「慶喜さんは徳川とこの国を守りたいと言ってたじゃないですか!!未来がどうかじゃない!!今、貴方がやるべき事を見失わないで下さい!!」
徳川「そ、そうだな。すまん、まさかお前にムチ打たれる日が来るとはな(笑)」
松平「いえ、俺もさっきは熱くなりすぎました。すみません」
徳川「いいさ、勝がいなければ俺も慶永と同じ判断をしたと思う」
松平「勝海舟・・・頭は切れるが気に入らない奴だ」
徳川「そう言うな。彼がいるから幕府はまだ続いていると言っても過言ではないのだ。ただし、幕府に忠義を尽くしてるのではなく勝の場合、国に忠義を尽くしてると言ったところか」
松平「つまり、見切りが付いたら?」
徳川「恐らく、幕府を潰しにかかるだろうな」
永倉「守護職の奴等は動かない!?」
藤堂「なに考えてんだよ!幕府の奴等は!!」
山南「事が重大過ぎるからね・・・責任を負いたく無いんじゃないかな」
永倉(なに考えてんだよ、松平の奴・・・)
近藤「幕府は動けぬ。しかし、我等は動ける。・・・これは好機だ」
土方「その通りだ。俺達の名を広める絶好の機会だ。俺達だけでやろう」
藤堂「あの、ちなみに応援は?来ないんですか?」
近藤「来るのは明日かららしい」
藤堂「遅っ!」
近藤「二手に別れてしらみ潰しに回るぞ」
新撰組は応援が来ないことを承知で部隊を二つに別け京都の街を練り歩いた。
新撰組大志「近藤さん、見つけました」
近藤「どこだ」
大志「・・・※池田屋です」
※池田屋事件
池田屋
浪士「敵に捕縛された仲間を助けに行くべきなのでは?」
浪士「いや、拷問に掛けられ口を割る恐れもある!その前に計画を実行すべきだ!」
桂「・・・」
お龍『この頃活躍するのは新撰組でしょ?』
桂「・・・まさかな」
浪士「桂殿!どうかご指示を!!」
桂「・・・計画を中止しよう」
浪士「「!!!!」」
桂「捕縛された仲間が口を割るのも時間の問題だ。相手は鬼の副長と呼ばれる土方だ。すでに口を割ってると考えるのが妥当たろう」
浪士「ならばすぐにでも計画を!!」
桂「今回の計画は強襲でなければならない。敵がそれを知っているとなると火に飛び込む虫は我々ということになる」
浪士「桂殿!!臆されたでござるか!!」
桂「総合的に考え、判断したまでだ。俺は帰る」
浪士「桂殿!!」
浪士「この腑抜けが!!」
桂「なんとでも呼べ。俺は逃げの小五郎、目先の事より先を見据える男だ。とりあえず、俺は降りる」
桂「ふー、やはり外の空気はうまい」
大志「近藤さん、見つけました」
近藤「どこだ」
桂「あれは・・・」コソコソ
大志「池田屋です」
永倉 沖田
桂「ゲッ、永倉新八かよ・・・」
永倉「ん?」
桂「ヤベッ」ササッ
沖田「永倉さん?どうかしました?」
永倉「いや、何か物陰にいたような・・・」
藤堂「どうせ、猫だろ。放っておけよ。それよりも池田屋に向かうぞ」
永倉「あぁ、そうだな」
桂「」ドキドキ
桂「お龍の言っている事、やはり事実なのか・・・」