頭ぶつけても、未来に帰れませんでした。
桜田門外の変から月日は流れ三年が経過した。
未来から来た三人は帰る手立てもなく、皆与えられた仕事を黙々とこなしこの世界に順応するようになっていた。
松平慶永は徳川慶喜と共に謹慎が解け、家茂の補佐として新たに新設された政事総裁職に就任
徳川慶喜は同じく家茂の補佐として将軍後見職に就任していた。
徳川「慶永ー、慶永はおるか!」
松平「なんです?慶喜さん、今忙しいんですけど」
徳川「お?なかなか板について来たではないか」
松平「そりゃ慶喜さんに揉みくちゃにされて、嫌でも慣れますよ」
徳川「うむ、関心だ。初めは点で使い物にもならなかったのにの」
松平「無理が多々って白髪でも生えたら労災請求してやる」
徳川「お、出たな?未来人発言」
松平「まぁ信じてもらえないの知ってるんで、そんな挑発乗らないですよ?」
徳川「なんじゃ、つまらん」
松平「けど、俺が言った通りの事が実際起きてるんですからいい加減信じてくれても・・・」
徳川「うむ、いい先見の目を持っておるの。総裁職に就くよう働き掛けて正解だったな」
松平「やっぱりそう言うか・・・」
松平「と、言うか慶喜さん。最近、京都の治安が悪くなってきてます」
徳川「何?※京都守護職の奴等は何をしている」
※京都守護職 将軍後見職、政事総裁職と共に新たに新設された役職
松平「ぶっちゃけ過激浪士が多すぎて手一杯。猫の手も借りたいくらいです」
徳川「そうか・・・」
松平「ってか、慶喜さんいい加減、将軍になってくださいよ!そうすりゃ天皇派のみんなも黙りするんだから」
徳川「やだ!」
松平「やだじゃねーし!」
徳川「将軍じゃないからこそ、好き勝手やれてるんだ。将軍なんかになったら縛りが多すぎるのだ」
松平「あー、まだ天皇さんから許可降りないんですか?」
※当時、天皇は鎖国派
徳川「そーなんだよ。この前、これ以上、外交に関して口挟むんならてめえ等でやれ!って言ったら怒られた」
松平「あんた、何してんの」
徳川「政治の細かい事は任せる。ただし、口出しもする。の一点張りだよ」
松平「まー、ですよねー」
徳川「未来言葉で言うところの無能な社長と言う奴だな」
松平「・・・なんだかんだで、慶喜さんって未来の事、結構気にかけてますよね」
徳川「勿論だ。身分が存在しない世界か・・・見てみたいものだな」
松平「でも、それって・・・幕府が無くなってしまいますよ?」
徳川「幕府にこれ以上の回復は見込めん。今や勢力は薩摩や長州に傾きかけておる」
徳川「私がやるべき事は徳川を守り、国を想う事だ」
松平「慶喜さん・・・」
徳川「よし、閃いたぞ。身分の無い世界。その先駆けを作ろう」
松平「えっ?」
徳川「京都守護職で浪士を集え、身分等は問わぬ。この国を守りたいと思う者を浪士組として向かい入れよう」
松平「浪士組・・・」
徳川慶喜と松平慶永は新たな役職を新設するなど、参勤交代の緩和や様々な改革を行います。世に言う文久の改革です。
試衛館
永倉「どぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁ!!」
沖田「うーわー、やーらーれーたー」(棒読み)
永倉「沖田!!お前、今の本気じゃないだろ!!」
沖田「だって永倉さん、本気出したら怒るし、僕に勝つまで続けるんだもん」ブスッ
永倉「喧しい!本気のお前を倒さなきゃつまらん!!もっと本気出せっ!!」
沖田「やだ!僕だって負けたくないもん!!」
永倉「負けろ!」
沖田「そっちこそ負けを認めろ!」
ギャーギャー
藤堂「あ~あ、二人とも意地っ張りだなー」
山南「もはや、あの二人の実力に届く者は早々でないでしょうね」
藤堂「沖田は元々として永倉は記憶を飛ばしてから剣も忘れてたのに身体は覚えてるってやつなのかな?」
山南「永倉君は武者修行で幾つもの流派を学び、時には師範代にまでなってます。沖田君は才能。永倉君は努力の賜物と言ったとこでしょうか」
藤堂「永倉も最近は変な発言しなくなったなー」
山南「未来人発言ですか?」
藤堂「そうそう。新撰組?とかを近藤さんが立ち上げ京都で浪士を取り締まるとか」
山南「そうですね」
藤堂「あり得ないって」
山南「そうでしょうか?徳川慶喜の文久の改革により、実際に京都守護職が出来、京都の治安を守る隊が出来てるのも事実」
藤堂「あり得る話だと?」
山南「どうでしょうねー」
土方「山南、藤堂。そこにいたか」
藤堂「あれ?近藤さんと清河八郎さんのところに行ってたんじゃ」
土方「至急皆を集めろ。まさかの永倉の未来人発言が現実化しそうだ」
藤堂「えっ!?」
土方「総司!永倉!いつまで騒いでる!!」
二人「「だってこいつが負けを認めないんだもん!」」
土方「お前らも皆を集めてこい!!」
近藤「皆、集まったな」
藤堂「近藤さん、今度は何です?」
土方「藤堂」
藤堂「はいはい、すみません。話を続けてください」
土方「・・・」
近藤「先ほど、清河八郎さんが京都守護職の任を得て、徳川家茂様が上洛の際、京都警護のため浪士を募っていた」
近藤「ここに我ら試衛館も近藤、土方、沖田、山南、※井上、藤堂、永倉、※原田。以上の8人でそこに参加しようと考えておる!」
※井上源三郎 後の新撰組六番隊組長
※原田佐之助 後の新撰組十番隊組長
近藤「これは我等にとって絶好の機会である!」
永倉「おお」
藤堂「遂に・・・」
近藤「有無は聞かぬ!共について参れ!!」
全員「「おおー!!」」
沖田「遂に来ましたね!」
藤堂「まさか、永倉の未来人発言が」
土方「我等の剣術を国のために使える日が来たな」
山南「とても楽しみですね」
土方「出立は二日後となる。皆、諸々の準備を済ませておけ」
藤堂「はーい」
永倉「まぁ準備とか言っても、俺荷物とかねーし、特にやることねーな」
山南「まぁ江戸が見納めになるかもしれない。町中を歩いて来たらどうだい?」
永倉「そうだなー、ちょっと出てくるわ」
沖田「あ、それじゃ僕も一緒に行く!」
永倉「オメーは近藤さんの※屋敷に荷物あんだろ。準備してこい」
沖田「はーい・・・」
※沖田総司の両親は他界し、近藤の屋敷に内弟子として住まわせてもらっている。
町中
永倉「しかし、江戸かー・・・ここがいずれはコンクリートとビルが立ち並ぶとは想像出来ないなー」
??「あれ?・・・永倉さん?」
永倉「ん?」
??「うわっ!やっぱり永倉さんだ!!お久しぶりです!!」
永倉「ええっと・・・」
??「あ、あれ?もしかして俺の事、忘れてます?」
永倉「あー、いやごめん!!ちょっと記憶を飛ばしてしまってて、三年前の事を殆ど覚えてないんだ」
??「記憶を!?大丈夫なんですか?」
永倉「まぁなんだかんだで三年も経過すれば慣れた」
??「そうなんですね。あ、そしたら自己紹介が必要ですね!」
島田「俺の名前は島田魁ッス。永倉さんが心形刀流で師範代を勤めてるときの門下生です」
※島田魁 後の新撰組二番隊伍長 身長180を越える巨人
永倉「門下生・・・って、事は俺の弟子!?」
島田「はい!!」
永倉「マジかよ。俺に弟子なんていたの?」
島田「むしろ、たくさんいますよ。自分も永倉さんを見習って剣術修行の旅の途中です」
永倉「はー、大したもんだ」
島田「いやいや、永倉さんもそうですからね」
永倉「あぁ、そうだった」
??「おぅ、邪魔だ。でけぇの二人」
島田「あー?何だって?」
??「道を塞ぐなっていってんだよ。邪魔だ」
島田「それが人に頼む態度か?小人が」
??「んだと?コノヤロー」
永倉「止せ止せ、あーすみませんね。どぞどぞ」
島田「ちょっと、永倉さーん」
??「・・・永倉?」
永倉「えっ?」
??「永倉新八・・・」
永倉「ええ、そうですよ」
??「うぉぉぉぉぉぉぉ!!永倉じゃねーか!!」
永倉「えっ?・・・えっ!?誰?」
??「あぁ!?俺の顔を忘れたってのか!?てめぇ!?」
永倉「えっ?えっ!?」
島田「止めろ!永倉さんは記憶を無くしてるんだ!無下にするな!」
??「何?・・・記憶を?」
永倉「ええ、ちょっと頭打っちゃって」
??「その割には元気じゃねーか」
永倉「いや、最初は戸惑ったけど剣術を覚えるのが面白くて」
??「ふふ、剣術好きは相変わらずだな」
永倉「え?ってことは、まさか俺の弟子?」
??「あー?誰がてめぇの弟子になんかなるかよ!」
芹沢「俺の名前は芹沢鴨!お前とは神道無念流道場で同じ門下生だったんだ!」
永倉「芹沢?」
島田「あ!芹沢鴨!!水戸の問題児!!」
芹沢「誰が問題児だ!ゴルァ!!」
永倉「水戸の?・・・って、なんで江戸に?」
芹沢「俺は※伊藤先生の勉学を受けに江戸に来たんだ」
※伊藤博文 後の初代内閣総理大臣
島田「鴨が勉学?どうせ伊藤の女癖に肖ろうとしてるだけだろ」
芹沢「・・・まぁ、違いねぇな」
※伊藤博文は女癖が酷く、日本人で初めて車内でS○Xをしたと言われてます
永倉「なんだよ。所詮女かよ」
芹沢「あぁ!?それのどこが悪い!!」
永倉「で?その伊藤先生ってのはどこにいんだよ」
芹沢「それが蘭学を学びに海外に出てしまっていた・・・」
永倉「それじゃ・・・女遊びは?」
芹沢「・・・言わずもがな」
永倉「まぁ、なんだ・・・ドンマイ」
芹沢「・・・が!しかしだ!そんな俺にも運が向いてきたと言うもの!俺は浪士組に入り、国に尽くす!」
永倉「え?お前も?」
芹沢「何?まさか永倉もか!」
島田「えっ?なにそれ?」
永倉「京都守護職が身分を問わず浪士を募ってるんだよ」
島田「本当ですか!?俺も行きたい!!」
芹沢「木偶の坊が来てんじゃねーよ」
島田「んだと!?」
芹沢「なんだよ。やんのか?あ?」
永倉「やめろよ。喧嘩なんてみっともねーぞ」
芹沢「・・・ちっ、まぁいい。浪士組に来るってなら、いずれは斬る機会もあるってんだ。いずれ斬ってやるよ」
島田「やれるものならやってみろ。ついでにネギも背負ってこい!」
芹沢「それじゃあな、永倉」
島田「あの、俺も後から浪士組に加わります!待っててくださいね!」
永倉「はいよ、待ってるよ」
島田「うわー、永倉さんとまた一緒に剣術学べるなんて楽しみッス!それじゃ、またお会いしましょう!」
永倉「俺って結構、顔広かったんだなー・・・」
町娘「私も京に連れていって下さい!」
永倉「ん?」コソコソ
沖田「駄目だよ。いつ死ぬかも帰ってこれるかもわからないんだ。連れていけないよ」
町娘「そんな・・・こんなにも貴方の事を好いていますのに・・・」
沖田「だからこそだよ。危険な所に連れていけないよ。それにまだ剣術修行をしてるんだ。うつつを抜かせないよ」
町娘「うう・・・そんな・・・」
沖田「ごめんね」
町娘「うう・・・失礼します!」ダッ
永倉「ゲッ!」 町娘「あっ」バッタリ
町娘「死ね!剣術馬鹿!!」ダッ
永倉「えっ!?」ガーン
沖田「もぅ永倉さん、何やってるんですかー」
永倉「い、いや、そんなつもりはなかったんだよ?居合わせたら不味いなと思って・・・」
沖田「結果的にそうなってるから駄目です」
永倉「いい娘じゃねーか、なんで断ったんだよ」
沖田「いいんだよ。僕の勝手だろ?」ブスッ
沖田「それに、僕なんかじゃ・・・」(ボソッ)
永倉「なんだって?」
沖田「なんでもない」
沖田「それより永倉さんはどうなんだよ」
永倉「なにが?」
沖田「ほら、明日には京に発つんだし・・・す、好きな人とか・・・」
永倉「あ?いねーよ」
沖田「え?ほんと?」
永倉「なんでムキになってるんだよ。そう言うお前はどうなんだよ」
沖田「えっ?」
永倉「あんな綺麗な娘を無下にしたんだ。それよりもいい娘がいるんじゃねーのか?」
沖田「僕?いないよ。それに僕よりも強いやつしか興味ないね」
永倉「オメーよりも強い娘なんていねーよ」
沖田「・・・本当に好きな人いないの?」
永倉「だから、いねーよ」
沖田「ふーん・・・そっか、そっかー、いないんだー、ふーん」
永倉「ま、いつかは俺が沖田を負かしてやるからな、覚悟しとけよ?」
沖田「フフ、楽しみにしてるよ」
土方「近藤さん?こんな夜中にどうしたんだ」
近藤「いやな、なんか沖田が部屋で鼻歌を口ずさみながら準備をしててな・・・なんだか恐ろしくて」
土方「・・・なんか良いことでもあったのか?」
受付会場
役人「では、流派をお教えください」
侍「あ、えっと・・・言うなれば自己流?でしょうか・・・」
役人「そうですか」ハァ
侍「えっ?やっぱりまずいんですか?」
役人「いいえ、大丈夫ですよ」ハァ
侍「あ、あの・・・給料はいつ支払われるのでしょうか?」
役人「後でお伝えします。はい、次の方ー」
役人「おいおい、なんで身分問わずなんて文言つけたんだよ」
役人「さっきの奴なんてどー見ても農民だろ。剣術も糞もあるか」
役人「所詮はただの給料目的の出稼ぎ浪人だよ」
芹沢「芹沢鴨だ」
役人「流派は何になります?」
芹沢「神道無念流、免許」
役人「えっ?・・・免許?」
芹沢「ああ」
役人「あ、はい。わかりました」
芹沢「オメーは?」
役人「えっ?」
芹沢「オメーはどこの流派だ」
役人「あ、あの・・・えっと・・・」
芹沢「ああ?人の流派聞いといてオメーは言えねーのか?」
役人「・・・北辰一刀流です」
芹沢「それだけか」
役人「あ、はい。まだ修行の身でして・・・」
芹沢「ちっ」
役人(怖っ!!)
役人「今、凄い人来ちゃったよ」
役人「免許皆伝者とか冗談だろ?」
役人「俺、流派なんてねーぞ?」
役人「俺なんか剣すら振れねーぞ」
近藤「近藤勇です」
役人「流派は?」
近藤「天然理心流、試衛館の四代目の道場主をやっております」
役人「おいおい、次は道場主来ちゃったよ」
役人「ってか、なんで道場主が浪士組に来るんだよ。普通、どっかの城の師範代とかだろ?」
役人「それが元々は農民の出らしくて、武家に養子で入ったらしいよ」
役人「あー、なるほどね。そりゃ役人だったら断るか」
役人「ま、俺らがその役人だけどな」
役人「確かに(笑)」
永倉「永倉新八です」
役人「流派は?」
永倉「えっ?」
役人「流派はどちらになります?」
永倉「えっと・・・(来歴を言えばいいのかな?確か)」
役人(どうせまた自己流だろーな)
永倉「元は神道無念流で剣術を学び、江戸の道場をいくつか修行で回り、心形刀流で師範代を務め、その後、試衛館の天然理心流を」
役人「あ!もういいです!大丈夫です!すみませんでした!」
永倉「え?」
役人「調子にのってました!ごめんなさい!はい!!次の人!!」
永倉「なんだよ・・・ったく」
??「永倉!!おい!!永倉新八!!!!」
永倉「んん?」
受付会場
松平「浪士組の集まりはどの程度ですか?」
役人「かなり集まってます。ただ、大半は剣もろくに振れないんじゃないかって言う奴等ばかりですね」
松平「そうですか・・・」
役人「ただ、中には師範代や免許皆伝の人材もおり、少数ではありますが戦力になるかと」
松平「それは良かった。視察に来たかいがあります」
役人「はい」
??「永倉新八です」
松平「ん?永倉?」
役人「調子にのってました!ごめんなさい!はい!!次の人!!」
永倉「なんだよ・・・ったく」
役人「松平様?」
松平「・・・嘘だろ」
役人「おーい、松平様ー?」
松平「永倉!!おい!永倉新八!!!!」ダッ
役人「ま、松平様!?」
永倉「んん?」
役人「松平様!!気を確かに!お止めください!!」
松平「喧しい!ちょっと待て!!永倉!!」
永倉「・・・嘘、松平?」
永倉「うぉぉぉぉぉぉぉ!!松平ーーーー!!」ダッ
役人「うわっ、こっちもかよ。こら!!やめろ!!止まれ!!」
永倉「おい!どけっ!!松平!!」
役人「松平様!!なりませぬ!!そのような行いはお止めください!!」
松平「知り合いに会うのに何が悪い!!」
役人「相手は浪人でございます!松平様の様な御方が浪人なんかと知り合いな訳ございません!!」
役人「松平様!!今一度!今一度、御自身のお立場をお考えください!!」
松平「・・・」
永倉「退けよ!向こうに知り合いがいるんだ!!」
役人「馬鹿者!!お前のような奴が知り合いな訳なかろう!!」
役人「あの御方を何方と心得る!!」
永倉「知らんよ。松平は松平だろ!」
役人「あの御方は政事総裁職の松平慶永様であられるぞ!!本来なら貴様のような輩はお目に掛かれるような方ではないわ!!」
役人「浪人風情がでしゃばった真似をするな!下がれ!!」
松平「永倉!!近くのカフェでゲームでもしようや!」
永倉(未来言葉!)
永倉「ええっと・・・り、りょ!」
松平「りょ・・って(笑)」
役人「松平様?」
松平「なんでもない。私の気のせいだった。・・・少し出てくる」
土方「おい、永倉。どうしたんだ?今のはなんだ」
永倉「なんでもない。悪いけど、少し出てくる」
茶菓子屋
永倉「カフェなんてねーしな。ここでいいのかな?」
店員「ご注文は?」
永倉「えぇっと・・・お茶と団子を一つ」
店員「はーい」
松平「永倉」
永倉「松平!・・・って、なんで壁の向こうにいるんだよ」
松平「悪いな。誰か役人にお前と一緒にいるのを見られるとまずい。このままで構わないか?」
永倉「いいさ。立場が違うんだ仕方ねーよ」
松平「ってか、本当に俺の知ってる時代の永倉か?」
永倉「2017年、俺達は高校三年。お前は勉学の為、学校をサボってた」
松平「・・・良かったよ。お前が別の時代の人間だったらどうしようかと思ってた」
永倉「お前、そーいや出席日数足りてるから大丈夫とか言ってたけど、体育が足んないとか先生言ってたぜ?」
松平「えっ!?マジか!そりゃヤバイな」
永倉「ハハッ、未来語がめっちゃ懐かしく感じるよ(笑)」
松平「俺もだ(笑)」
永倉「・・・と、言うかお前、何年前からこっちに来てる?」
松平「俺は桜田門外の変からだ」
永倉「同じだな・・・ってか、松平が政事総裁職って幕府のトップじゃねーかよ。スゲーな」
松平「聞いて驚くなよ?今、徳川慶喜と一緒に仕事してるんだぜ?」
永倉「俺だってスゲーぞ?近藤勇、土方歳三、沖田総司が一緒にいるんだぜ?これから新撰組になるんじゃねーかな?」
松平「何?まさかお前も新撰組に?」
永倉「どうだろうな。同じ試衛館だし多分、なるんじゃないかな?」
松平「やめておけ」
永倉「なんで?かの有名な新撰組だぜ?凄くね?」
松平「・・・お前、もしかして新撰組がどうなるか知らねーの?」
永倉「えっ?知らない」
松平「全滅するぞ。近藤勇は戦犯者として斬首。土方歳三は戦死、沖田総司は病死だ」
永倉「そうなの!?・・・ってか、お前もヤバイんじゃね?幕府ってなくなるんだろ?」
松平「まぁな・・・」
永倉「どうするんだよ・・・」
松平「俺、思うんだけどさ。それが未来に帰る手立てなんじゃないかなって・・」
永倉「未来に」
松平「仮にここで歴史を変えてしまったら帰る未来が無くなってしまうんじゃないかと思う」
永倉「まるでSFな話だな」
松平「俺達が過去に来てるんだ。SFも何もないだろ」
永倉「確かに・・・」
松平「だから、このまま歴史を進めていけばいいんじゃないかと」
永倉「それが未来に帰る鍵だと?」
松平「あぁ、松平慶永・永倉新八がどうなるのかわからん。ただ、最後まで続けることが正解な気がする」
永倉「そうか・・・」
松平「永倉、浪士組に入るってことは京都に来るんだろ?」
永倉「松平は?」
松平「俺の今の仕事場は京都だ」
永倉「なんとか会えるといいな」
松平「昔は携帯で連絡がとれてたのにな」
永倉「それ、過去じゃなくて未来だから(笑)」
松平「そこでだ。どこかの境内で月一で会って情報交換をしないか?来れない時は前もって言伝てを残しておく」
永倉「境内に言伝てね。昔はそんな言葉使わなかったな」
松平「昔じゃなくて未来だろ?」
永倉「そうだったな(笑)それで構わないよ」
松平「よし、なら決まりだ。日付は」
二人は集まる場所、日時を決め壁を挟み茶菓子を食べながら未来の思い出話で盛り上がっていた。
永倉「よし、そしたらそろそろ戻らないと」
松平「あぁ俺もそろそろ役人達が騒ぎだしそうだ」
永倉「じゃあな。また京の都で会おう」
松平「・・・永倉」
永倉「ん?」
松平「何て言うのかな?・・・過去に来てる人間が俺以外にもいて、その人間が永倉で良かったよ」
永倉「ハハッ、俺もだ。未来に戻ろうなんて諦めかけてたよ。ありがとな」
松平「死ぬなよ?」
永倉「そっちこそ」