俺達は侍だ
永倉「坂本龍馬が暗殺された!?」
土方「ああ、山崎の話では町中がその話で持ちきりだそうだ」
永倉「くそっ、止めれなかったか・・・」
土方「それとしばらくの間、制服の着用を禁ずる」
永倉「なんで?」
土方「坂本龍馬を暗殺したのは新撰組。そういわれている」
永倉「馬鹿な!この期に及んで、なんで殺す必要がある!!」
土方「だが、殺そうとしていたのは事実だ。それはお前が一番知っているだろう?」
永倉「・・・くそっ」
土方「とにかく、必要最低限の外出はするな。浪士だけでなく、土佐も新撰組を討とうと動いている。町中に敵がいると思え」
永倉「・・・わかった」
土方「それと、勝海舟が呼んでいた」
永倉「俺を?・・・一体、何故?」
土方「わからん。だが、どうも緊迫した様な雰囲気だった」
永倉「わかった。ちょっと、顔を出しに行ってくる」
土方「ああ、気を付けろよ?」
勝「・・・来たか、未来人」
永倉「・・・未来人としての俺を所望か」
勝「単刀直入に聞く。坂本と中岡をやったのはお前か?」
永倉「期待に応えられなくてすまないが、俺じゃない」
勝「そうか・・・」
永倉「簡単に引くんだな」
勝「いや、オメーさんは、友である未来人を殺してまで坂本を討とうとする奴では無いってのは最初から知ってたんでな」
永倉「・・・なんの話だ?」
勝「本題なのは、ここからだ。永倉新八、心して聞け」
永倉「・・・」
勝「お龍が死んだ」
永倉「・・・馬鹿な!!」
勝「正確には死んじゃいない。だが、オメーさんの知ってるお龍は、もういない」
永倉「どーいうことだ!!」
勝「オメーさんには説明してもわからんだろ。百聞は一見のなんとやらだ」
永倉「・・・ここにいるのか?」
勝「会う覚悟はあるかい?」
永倉「もちろんだ」
勝「そうかい。・・・こっちだ」
お龍「・・・」
勝「あれだ」
永倉「生きてるじゃないか」
勝「・・・そう思うなら、声を掛けてみな」
永倉「・・・お龍」
お龍「・・・どちらさんどすか?」
永倉「!!」
お龍「あ、もしかして坂本はんのお知り合いですか?申し訳ありません、私ここ最近の記憶が曖昧でして・・・お名前をお聞かせ頂いてもよろしいですか?」
永倉「・・・永倉、新八だ」
お龍「永倉さん・・・やっぱり駄目ですなー。出てきませんね。勝さんのお知り合いですか?」
勝「いいや、いいんだ。気にしないでくれ」
お龍「でもー・・・」
勝「お龍さんよ。呼び止めたりして悪かったな。そろそろ寺田屋も落ち着いた頃だろうし、帰っても大丈夫だろう」
お龍「そうですか・・・では、これで帰らせて頂きます」
勝「ああ、気を付けてな」
永倉「・・・」
勝「見ての通りだ。未来人としての記憶がなくなっている」
永倉「なんでだ。一体何があった?」
勝「坂本龍馬暗殺を止めようとした。その結果だ」
永倉「・・・」
勝「止めようとしたのは、お龍だけじゃない。もう一人、松平慶永」
永倉「松平は無事なのか!!」
勝「・・・今のところ消息が掴めてない」
永倉「・・・」
勝「お龍があの調子だ。・・・覚悟はしておけ。オメーさんにはいの一番で伝えておきたかった」
永倉「・・・わかった。わざわざ、すまなかった。礼を言う」
勝「気にするな。そして、気を落とすなよ?」
永倉「ああ、わかってる」
勝「そもそも未来の記憶を持っていること事態が異質だったんだ。元ある場所へ戻った。そう考えるのが妥当だろうよ」
永倉「・・・ああ、そうだな」
境内
永倉(・・・なんで、こんなところに来てんだ?俺は)
二人はいなくなった。
だが、境内で月に一度会う。その習慣に体が勝手に動いてしまっていた。
勝手に動いたのか?それとも二人が生きていてここに現れるのではないかと淡い希望を抱いたのか?理由はわからない。
一つ言えるのはここに二人は来ない事だけは確かだった。
??「・・・永倉新八だな」
永倉「誰だ!!」シャキ
??「止せ、争いに来たのではない。ここに来れば慶永の友に会えると思ってな」
永倉「松平の知り合いか・・・知り合いが来たと言うことは」
??「ああ、未来人としての慶永はもういない。長州と薩摩の方へ行けと言ったのにその記憶を飛ばしてしまい、ノコノコと城へ帰ってきたのでな。身柄は預からせてもらっている」
永倉「・・・あんたは?」
徳川「徳川慶喜だ」
永倉「・・・将軍様!?」ササッ
徳川「止せ、頭など下げるな。今は慶永の友としてここに来ている。それに今は将軍ではない」
永倉「・・・松平の身柄は?」
徳川「安心しろ。あとで私の方で長州へ引き渡す」
永倉「そう、ですか・・・」
徳川「・・・もう一人の未来人は?」
永倉「松平と同じです」
徳川「そうか・・・」
永倉「・・・」
徳川「何故、俺だけ残った?なんて下手な考えは起こすでないぞ?」
永倉「わかっています」
徳川「ならばいい。もしも、困ったことがあれば、私を頼るといい。慶永の友として出来る限り、協力することは約束する」
永倉「はい、ありがとうございます・・・」
永倉「・・・」
島田「やべー、永倉さん完全に魂抜けちゃってね?」コソコソ
近藤「無理もない、古くからの知り合いを二人も無くしたのだ」コソコソ
土方「しかし、こう長くも腑抜けになられても他の大志に示しがつかん。島田、行ってこい」
島田「いやいやいやいや!無理っすよ!なんて声を掛けたらいいんですか!」
土方「お前は永倉の弟子であろう。何とかしろ」
近藤「骨は拾ってやる」
島田「それ言ったら、二人は試衛館の仲間でしょ!・・・ってか、俺死ぬ前提!?」
永倉「おい、聞こえてんぞ。馬鹿三人」
土方「なっ・・・近藤さんはともかく俺を馬鹿呼ばわりだと!?」
近藤「俺はいいのかよ!」
島田「わーい、二人と同じ学力だって言われたー」
土方「ふざけるな!貴様の様な怪力化物と一緒にするな!」
近藤「こんな阿呆と一緒にするな!」
島田「(´・ω・`)」
永倉「すまない。もうすぐ立ち直るから・・・ちょっと待っててくれ」
島田「永倉さん・・・」
近藤「おい、永倉。無理はするな」
永倉「立ち止まってる暇は無いんだ・・・」
土方「いい心がけだ。ついでを言うと今後の新撰組のあり方を相談」
ボコッ!
土方「痛っ!何をする!」
近藤「馬鹿かお前は!無理してるに決まってるだろ!殴るぞ!」
土方「すでに殴ってるだろ!」
島田「鬼だ!土方さんの鬼!!」
土方「化物に鬼呼ばわりされる筋合いはないわ!」
島田「・・・って、あれ?永倉さんは?」
沖田「・・・で?僕の部屋に来たと」
永倉「悪いな。周りが騒がしくて」
沖田「別に構わないけど・・・」
永倉「・・・」
沖田「・・・」
永倉「そんなに心配そうに見つめるな。大丈夫、大丈夫なんだ・・・」
沖田「・・・馬鹿」
永倉「えっ?」
沖田「今まで落ち込んでる僕を無理くり、立ち直らせてたのに自分で立ち直る方法も知らないの?」
永倉「ああ、そうだったな・・・すまない」
沖田「忘れちゃったのなら、教えてあげるよ」スタスタ
永倉「沖田?」
沖田「僕達は侍だ。滅び行く運命なのかも知れないけど、死ぬまで侍だ。死ぬことに美学を追い求める愚か者だ」ガサゴソ
永倉「・・・」
沖田「その美学を完成させるにも、僕達はやらなければやらなければいけない事がある」ヒョイ
永倉「・・・」パシッ
沖田「それは己の技術を磨くこと。僕達、武士は戦うことしか能がない」
永倉「沖田・・・」
沖田「嫁入り修業は今日はお休み。久々に稽古してあげますよ。永倉さん」
永倉「・・・フッ、そうだったな。やべーよ、沖田。今のは惚れてしまいそうだ」
沖田「えっ?本当?」
永倉「ああ、本当にいい嫁さんだ。お前を貰える婿は幸せもんだぜ」
沖田「んー!!そうじゃないのに!!」
土方「おいおい、どこかへ消えたかと思えば早速稽古か?剣術馬鹿共め。俺も混ぜろ」
近藤「うむ!久々に俺も皆と汗を流すか!」
島田「なんだかよくわかんねーっすけど、永倉さんを袋叩きにすればいいんですね!俺もやります!」
永倉「・・・上等だ。お前ら全員叩きのめしてやる!!」
松平「!!」ガバッ
松平「あれ?・・・どこも斬られてない・・・って、あれ?」キョロキョロ
見慣れたはずの部屋ではない。
だが、どこか見たことがある。懐かしくも感じる。
自分が今、座っているのは今の時代には不釣り合いな椅子。そして不釣り合いな机に突っ伏したまま寝ていたらしい。
机の回りには大量の参考書が散りばめられていた。
松平「・・・」
壁には時計が掛けられ、アナログタイプの秒針がカチカチと音をたてながら動いている。
松平「・・・ん?」
思わず机に置かれている携帯を手に取り今の時間を確認する。
松平「・・・2017年!?」
机から跳ね上がり、辺りを見渡す。
松平「俺の部屋だ・・・帰って・・・きたのか?」
母親「慶永ー?お友達が来たわよー?」
下の階から母親が声をかけてきている。
松平「母さん!今、西暦何年?」
母親「なに馬鹿なこと言ってるの。いいから、友達が待ってるわよ」
松平「友達?」
母親「あんたには縁もゆかりもないものと諦めてたけどねー」
松平「??」
玄関
ギャル「ヤバーッ、生きてる!」
松平「・・・誰?」
ギャル「ハー?マジあり得んティーだし!!」
松平「ん?その口調どこかで聞いた事あるな・・・」
ギャル「お龍だよ!!」
松平「はぁ?お龍?嘘つけ、いつもの黒髪のお団子頭じゃねーじゃんか」
ギャル「元々染めてて、パーマあててたんだよ!!」
松平「あれ?ちょっと待て・・・会話が成立してるってことはさっきまでのは・・・夢じゃない?」
ギャル「うん、私等は斬られた」
松平「江戸時代にいた」
ギャル「私等、二人は戻ってこれた」
松平「二人・・・永倉!永倉はどうなった!!」
ギャル「・・・」
松平「どうした?」
ギャル「さっき、クラスのグループラインで流れてたんだけど、学校の階段で転げ落ちて意識不明だって・・・」
松平「!!」
ギャル「・・・まだ帰ってきてない」
松平「なんで俺等だけ・・・」
ギャル「どうしよう・・・このまま、永倉だけ江戸時代に」
松平「止めろ!変なこと言うな!!」
ギャル「でも・・・どうしよう・・・このままだと戦争が・・・」
松平「・・・境内だ」
ギャル「えっ?」
松平「俺達は月一で境内に集まっていた。来れないときは言伝てを残す!」
ギャル「永倉が言伝てを残していれば、足取りが掴める!」
松平「京都に行く・・・母さん!金貸して!今から京都に行く!」
母親「はぁ?」
ギャル「私も行く!」
松平「二人分貸して!!」
母親「はぁ!?」
境内(現代)
ギャル「・・・すっご」
松平「江戸時代から形が変わってない・・・」
ギャル「なんかさっきまでいたのに、懐かしい感じがするね」
松平「・・・ってか、来たはいいけどどうやって確認するんだ?」
ギャル「・・・わかんない」
松平「とりあえず、聞いてみるか」
坊さん「・・・えっ?」
松平「あの、ええっと・・・文とか残ってないですか?」
坊さん「文?」
ギャル「文じゃなくて・・・あ!手紙!手紙とか無いですか?慶応3年くらいの!」
坊さん「け、慶応??」
松平「馬鹿、そんなんで通じるか!ええっと、西暦で言うと・・・1867年!永倉新八から手紙預かってないですか?」
坊さん「????」
坊さん2「おい、もしかしてあれの事か?」
坊さん「あれって?」
坊さん2「君達、もしかして松平君とお龍さん?」
松平「はい、そうです」
坊さん「えっ!?嘘!!」
坊さん2「うわ、スゲー!マジかよ」
坊さん「言伝てだろ?預かってるぞ!」
松平「!!」
ギャル「キター!!永倉ナイス!!」
坊さん2「ちょっと待ってな。倉に保管されてるはずだ」
坊さん「おい!この賭けは俺の勝ちでいいんだよな?」
坊さん2「ふざけるな!お前、俺が気付かなかったら追い返してただろ!俺の勝ちだ!」
坊さん2「待たせたな。お前たちに向けられて書かれた言伝てはこれで全部だ」
松平「竹の巻物か・・・あいつも考えたな」
ギャル「200年も後だからね。紙だと傷むと思ったんじゃない?」
坊さん「と、言うか君達読めるのこれ?」
松平とお龍へ
お前達が二人が未来の記憶を無くしてから幾日か過ぎた。
死んだのではなく、未来へ戻ったことを願い言伝てをここに書き記す。
書くと言っても二人がいなくなってからどのような事が起きたのかを書けるまで書く予定だ。
ギャル「書けるまで書く?」
松平「どういう事だろうな・・・続けるぞ」
二人はすでに知っているかもしれないが、坂本龍馬、中岡慎太郎は死んだ。
犯人は不明だが、街中では新撰組が殺したと言われている。
坂本龍馬、中岡慎太郎が殺された三日後、二人が俺に言っていた事が起きた。
油小路事件だ。
新撰組と御陵衛士の戦闘。
俺はそこで江戸から苦楽を共にしてきた藤堂平助を斬ることとなった。
まずはそこから書き記そうと思う。
その日は近藤勇と伊東甲子太郎が会合を開き、新撰組が御陵衛士の運用資金を与する段取りが執り行われていた。
夜も更け、会合はお開きとなった後に事件が起きた。
護衛も付けず伊東さんは暗い夜道を歩いていた。
伊東「・・・」
??「伊東さん」
伊東「!!・・・なんだ、君か驚かさないでくれ」
??「・・・」
伊東「どうしたんだね?」
??「すみません」
ズバッ!
伊東「グハッ・・・何故、君が・・・」ドサッ
??「こうするしか・・・なかったんです・・・」
伊東「私も・・・つくづく運がない・・・永倉君に忠告した事が、私に跳ね返ってくるとは・・・」
??「・・・何か言い残したことは?」
伊東「ありま、せんよ・・・私のような裏切り者はこんな裏路地で雨に打たれのたれ死ぬのがお似合いで・・・す」
??「・・・・」
伊東甲子太郎 享年33歳。
暗殺された伊東の遺体はそのまま放置された。
藤堂「伊東さんが!?」
大志「今しがた、役所の方が見えて・・・伊東さんが殺されたって・・・」
藤堂「泣くな!話が聞けないぞ!!・・・伊東さんの遺体は?」
大志「それが・・・道端に置いてあると、景観が損なわれるから・・・回収しに来いって・・・」グッ・・・
大志2「俺達の死体は、犬と同じ扱いかよ・・・クソッ・・」
藤堂「・・・俺が回収しに行ってくる」
大志2「止せ!!これは罠だ!!」
大志「新撰組の連中が待ち構えてるに決まってる・・・」
大志2「きっと情報が漏れてたんだ・・・あいつ等・・・」
藤堂「・・・斎藤は?」
大志2「わかんね・・・どこに行ったのやら・・・」
※この頃、斎藤一は新撰組に戻ります
藤堂「あの野郎・・・」
大志2「とにかく、夜に行くのは危険だ。伊東さんには悪いが一夜をそこで過ごしてもらおう」
大志「でも・・・」
大志2「死んだものよりも、生きているものを優先すべきだ」
藤堂「・・・」トコトコ
大志2「おい、藤堂。どこへ行く」
藤堂「・・・俺達は伊東さんに導かれてここへ来たはずだ」
大志2「・・・」
藤堂「その伊東さんが雨に打たれ、のたれ死んでる姿なんて晒したくない。例え罠だとしても伊東さんが可哀想だ・・・」
大志「藤堂さん・・・」
藤堂「俺一人で行く。皆はここで待っててくれ」
大志「待っててくれ!俺も行く!一人じゃ伊東さんは運べないだろ」
藤堂「・・・わかった」
大志2「待った!!ならば全員で行こう!!罠だとしても人数がいれば返り討ちに出来る!!」
藤堂「わかった。ならば皆で伊東さんを迎えに行こう」
伊東甲子太郎の死は新撰組にも伝えられた。
永倉「伊東さんが!?」
土方「ああ、役所の人間が伝えに来た。だが、情報が不確かで真意はわからん」
永倉「・・・わかった。俺が行こう」
土方「待て、お前一人で行くな。罠の可能性が高い」
永倉「罠?・・・御陵衛士のか?」
土方「それだけではない。今や薩摩に土佐も我等の敵の可能性がある」
永倉「・・・まさか、新撰組の人間と勘違いされて殺された?」
土方「その可能性もあると言うことだ。その場合、客を最後まで送り届けなかった我々の責任になりかねん」
永倉「・・・なんで送り届けなかった。まさかとは思うが」
土方「そんな顔をするな。断られたのだよ・・・それにあの人の実力はよく知っているだろう」
永倉「つまり・・・暗殺者は伊東さんを殺せるほどの実力者」
土方「その通りだ。確認をするにしても一人では行くな」
永倉「・・・わかった。俺の隊を連れていく」
土方「死ぬなよ?」
永倉「ああ・・・」
油小路
新撰組と御陵衛士が鉢合わせするのは必然だった。
怒り心頭の御陵衛士には何を言っても信じては貰えなかった。
永倉「伊東さんを殺ったのは俺達じゃない!!」
藤堂「ふざけんな!・・・永倉さん、俺はあんたを見損なったよ。こんな汚い手を使ってでも俺達を殺そうとするのか!!」
永倉「藤堂!何を言っても信じて貰えないかも知れないが!今はお互いのために引こう!」
藤堂「そうやって今度は誰を奇襲するつもりだ?殺れるものなら殺ってみろ!!」シャキン!!
永倉「止せ!!藤堂!」
藤堂「御陵衛士の実力をしかと見せてやる!!・・・構えろ!!」
衛士「おぅ!!!!」シャキン!!
大志「永倉さん!!どうします!?」
永倉「クソッ、馬鹿野郎が・・・」
捕縛を試みたが人数がほぼ互角だった。
こんなところで新撰組の大志を失うわけにはいかなかった。
仲間を守るため、俺は非情になった。
永倉「眼前の敵を切り捨てろ!!!!」
大志「おぅ!!!!」
油小路には幾人もの怒号と金属の交わる音、空気が斬れる音が鳴り響いた。
戦況は人数も実力も勝っていた新撰組に傾いていた。
戦闘で入り乱れる中、俺はこちらを睨む藤堂を見つけた。
永倉「藤堂・・・止せ・・・」
藤堂「永倉さん、俺を斬るのが怖いか?・・・なら好都合だ!!」
ガキィン!!
永倉「藤堂!止めろ!!」
キンキン!!
藤堂「あんたは非情になると決めたはずだ!!山南さんに誓ったはずだ!!」ブン!!
永倉「!!」ガキィン!!
藤堂「山南さんとの約束を果たせ、永倉新八」ギギギッ
永倉「藤堂・・・お前・・・」
キン!
永倉「お前・・・死ぬつもりか・・・」
藤堂「永倉ぁぁぁぁぁぁ!!」ブン!!
永倉「クソッ!」チャキ
大志「新撰組の恥さらしがぁぁぁぁぁぁ!!」ビュン
ズバッ!
藤堂「グハッ・・・」ドサッ
永倉「藤堂!!」
衛士「藤堂さん!!テメェェェェェ!!」
大志「くそ野郎がぁぁぁぁぁぁ!!」ガキィン!!
永倉「藤堂!!しっかりしろ!!」ガバッ
藤堂「・・・ハハッ、敵に情けを見せるなんてらしくないぜ。剣豪永倉新八」
永倉「藤堂・・・お前ならあの場を引き返すことも出来たはずだ。お前・・・死地を求めたな?」
藤堂「さぁな、どうだか?・・・けど、これで皆を斬らずに済みそうだ・・・」
永倉「・・・」
藤堂「知ってたんだろ?近藤勇暗殺計画・・・」
永倉「・・・ああ、知ってた」
藤堂「くそ、斎藤か・・・」
永倉「斎藤じゃない。俺は未来人だぞ?」
藤堂「・・・ああ、そうだったな。忘れてたよ」
永倉「傷口抑えて待ってろ。医者を呼んで・・・」
藤堂「この傷じゃ無理だよ・・・。わかってんだろ?」
永倉「・・・」
藤堂「お願いだ・・・永倉さん、俺を斬ってくれ」
永倉「嫌だ」
藤堂「頼むよ・・・見ず知らずの奴に斬られて死ぬのなんてイヤだ・・・俺は永倉新八、あんたと戦って死んだ。伊東さんにそう言いたい」
永倉「・・・」
藤堂「こんな負け戦で犬死になんてイヤだ・・・お願いだ」
永倉「・・・」
藤堂「お願いだ・・・永倉・・・さん」
命の灯火が消える。
辺りは未だに乱戦の声が響き渡る。
その乱戦の声をかき消すよう、斬りたくないと言う気持ちと楽にしてやろうと言う気持ちの葛藤をかき消すよう俺は叫んだ。
人の声とは程遠く、悲しみと悔しさを言葉にならない声で叫んだ。
そして、消え行く灯火に止めをさした。
灯火が消え落ち、遠くを見据える藤堂は最後に俺にたいしてこう言った。
藤堂「・・・ありがとう」
藤堂平助 享年23歳。




