面白き事も無き世もまた面白い
永倉「坂本龍馬。お前に恨みは無いがこれは国の為だ。悪いが死んでくれ」チャキ
坂本「まったく、未来人のくせに侍らしい事言いおるわ。しかし、ワシもまだ死ぬわけにはいかん。お龍には悪いが、主をここで倒しておくべきだな」スッ
永倉「・・・リボルバーか」
坂本「おうともよ。主等の方がこれは見覚えがあるみたいじゃの?刀と鉄砲、どちらに武があるかはわかるじゃろ?」
永倉「試してみるか?」
坂本「世迷い言を・・・強がっておるのか?」
永倉「そう思うか?」
坂本「・・・死んでも知らんぞ!!」
バァン!!
坂本「なに!?」
永倉「どうした?早く撃てよ」
バァン!!バァン!!
坂本「おまんは・・・弾が見えてるのか?」
永倉「弾は見えちゃいねーさ。ただ、あんたの銃口、引き金にかけてる指を見て弾道を予測してるだけだ。これ、漫画の謳い文句だ。まさか、出来るとは思わなかった」
坂本「・・・ちっ、未来人の方がピストルに関して知識は上か」
永倉「そして、あんたのリボルバーは全部で5発。寺田屋で2発、今ので3発。・・・弾切れだ」
坂本「・・・おまんの言う通りじゃ」
永倉「どちらに武があるか、試せてよかったな?」
坂本「くっ!」
永倉「行くぞ!!」ダッ
坂本 ニヤリ
永倉「!!」
バァン!!
坂本「ほぉ!避けたか!見事じゃ!誰も一丁しか持ってないと言っておらんじゃろ」
永倉「ちっ、二丁持ってたか」
坂本「一丁だけなら弾切れを起こせばただの鉄の塊。二丁持てばその間に弾込めも出来るちゅう寸法よ!」
坂本「ほらほら!避けきれるものなら避けてみんしゃい!永倉新八!!」
バァン!!バァン!!
永倉「くそっ!!」ダッ
坂本「今の時代、刀なんぞに頼るのは古いのじゃ!この街のように袋小路に入ってしまえば長物は振り回せん!脇差しが役に立つ!」
坂本「しかし、脇差しよりも役に立つ物はこのピストルじゃ!刀に頼る侍は未来に必要としないんじゃ!!」
坂本「幕府と共に散れ!!侍!!」
永倉「お喋りは舌を噛むぜ?坂本龍馬!!」ブン!!
坂本「酒樽!?こやつ、怪力か!!」ダッ
永倉「ドォォォォリァァァァァ!!」ビュオ!
坂本「くっ、酒樽と共に飛び出しおったか!」
永倉「貰ったぁ!!」
ズバッ!
坂本「アアアアアアア!!手が!!」
永倉「鉄砲は指を斬られたら最後。刀なら口に加えてでも食らいついてやるぜ」チャキ
坂本「くっそ・・・ワシが死んでも未来は変わらんぞ」
永倉「その時は根源をまた殺しに来てやるよ。覚悟!!」
坂本「くっ」グッ
ガキン!!
坂本「!!」
永倉「・・・高杉」ギギギギッ
高杉「こいつを殺されたら困る。永倉新八」ガキン!!
永倉「チッ!」
坂本「高杉!!」
高杉「行け!中岡は薩摩藩邸に連れていった。あとはお前だけだ」
坂本「しかし!」
高杉「貴様を守って心中など真っ平御免蒙る。ここは俺に任せろ」
永倉「邪魔をするな、高杉」
高杉「フッ、愛嬌が無くなり鬼となったか永倉新八。鬼となった貴様を斬るのもまた面白い!」ビュン!
永倉「高杉ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」ブン!
キン!ガキン!!
坂本「高杉!今、援護を!!」
高杉「邪魔をするな!!」ビュオ!
坂本「おわっ、何をする!!」
高杉「貴様の言う通りだ。これは滅び行く侍の最後の戦いだ。意地と意地のぶつかり合い。この場に水を差す輩は坂本、貴様とて斬るぞ」
永倉「よそ見をしてんじゃねぇぇぇぇ!!」ビュン
高杉「ちぃ!・・・坂本!とっとと逃げろ!!」ガキン!
坂本「・・・くそっ、死ぬなよ!高杉!」タタタタッ
永倉「あーあ、行っちまったよ」
高杉「フッ、わざと逃がしたのではないか?」
永倉「さぁな。せっかく、お前が現れたんだ。邪魔者はとっとと消したかっただけだ」
高杉「ククククッ、お前も侍らしくなってきたではないか」
永倉「俺は元々そのつもりだ」
高杉「いいや、違う。お前は今まで時の流れにそった生き方をしてただけだ」
高杉「しかし、流れに逆らい貴様は鬼となった。護るものが出来たな?永倉よ」
永倉「・・・さぁな。お前には関係のない事だろ」
高杉「我が身を棄て、守り抜く。これこそ真の侍よ。貴様は今までで一番強い、そんな貴様を俺は斬ってみたい」
永倉「殺れるものならやってみろ、高杉晋作!」
キン!キンキン!!
高杉「ククククッ、良い!とても良い!これだ!これこそ、武士の戦いだ!」
永倉「いつにもなく上機嫌じゃねーか!!」ビュン!
ガキン!
高杉「貴様は違うのか!?永倉ぁ!」ブン
永倉「血が高揚するってのはこう言う事を言うんだと実感してるさ!!」ガキン!
ギギギギッ
高杉「貴様には感謝しているのだ!俺をここまで高ぶらせてくれるのは貴様だけだ!だが、それも今日で終わると思うと寂しい気もするな!」
永倉「ああ!その通りだ!ここでテメーを斬らなきゃ未来は変わらねぇ!!」ガキン!
永倉「高杉ぃ!!」ガバッ
高杉「・・・ゲフッ」
ビシャビシャ
永倉「!?」
高杉「ゴホッ・・・ゲフッ・・・くそっ、体が持たぬか」
永倉「吐血?・・・高杉、お前まさか」
高杉「時の流れとは、残酷だ。・・・結核だそうだ」
永倉「嘘だろ。お前までも」
高杉「クッ・・・」ガクッ
永倉「高杉!」
高杉「斬れ・・・貴様の勝ちだ」
永倉「・・・ふざけるな」
高杉「なに?」
永倉「今のお前なんぞ、斬っても何の自慢にもならん!やめだ!やめ!」シャキン
高杉「フッ・・・まったく、貴様と言うやつは」
高杉「坂本の言っている事は正しい」
永倉「はぁ?突然どうした?」
高杉「坂本が死んだとしても、倒幕という時の流れを塞き止めることは出来ん」
永倉「・・・」
高杉「長州の衰退を止めようと試みたが、止めることは出来なんだ。長州一つ止めることが出来なくて、日本全体を揺るがす倒幕と言う流れを貴様一人で塞き止めれると本気で思っているのか?」
永倉「必ず止めてみせるさ」
高杉「・・・フッ、お前らしい答えだ」
高杉「残念だが、俺の体はもう持たん。残りの余生は長州の為に使わせて貰う。貴様との戦いも今日で最後だ」
永倉「・・・そうか」
高杉「永倉、貴様が未来を変えることが出来たかは、あの世でしっかりと見させて貰う」
永倉「出来てなかったら三途の川で追い返してくれ」
高杉「それは無理だ。お前との決着がついてない。あの世で白黒つけようぞ・・・いや、共に地獄へ行くのだ。一緒に鬼退治でもしようじゃないか」
永倉「ハハッ、そいつはいいな」
高杉「では、ここらで帰らせて頂こう。残りの話はあの世で語らおうぞ」
永倉「高杉」
高杉「なんだ?」
永倉「お前、想い人とかいねーのか?最後に想いの一つ告げるくらいの時間はあるだろ」
高杉「・・・いいや、いい」
永倉「なんで?」
高杉「散るとわかった者からの想いなど、重みにしかならぬ。それに」
高杉「思うように事が進まぬ。だからこそ、この世は面白いのだ」
高杉晋作 享年27歳
その後、長州の防衛体制の強化に尽力し、第二次長州征伐で幕府軍を敗走させるほどの活躍を見せる。
結核によりこの世を去る。
後に桂の働きかけにより、靖国神社に祀られる。
中岡「坂本!無事だったか!」
坂本「無事とは言えぬがのぉ、なんとか生き延びたわい」
中岡「手を斬られたか、指は動くか?」
坂本「恐らく健をやられた。治ったにしても上手くは動くまい・・・」
※寺田屋事件で坂本龍馬は両手を斬られそれ以降、写真では腕を隠す様に写っている。
坂本「・・・永倉新八。あやつは化け物よ」
中岡「っ!!奴に斬られたのか」
坂本「お龍にはこの事は伏せておけ」
中岡「何故だ」
坂本「下手な心配事など、お龍には不要じゃ」
寺田屋事件を逃げ延びた二人は薩摩藩邸へと逃れる。
幕府は二人の身柄を渡すよう働きかけるが、薩摩は知らぬ存ぜぬを貫き通す。
その後、坂本龍馬とお龍は怪我の治療を兼ねて、各地の温泉巡りを行う。
これを日本で初めて新婚旅行を行ったと後に語り継がれることとなる。
永倉「すまん。取り逃がした」
松平「みたいだな」
永倉「あと、お龍からお土産、温泉まんじゅうだとさ」
松平「あー、これが日本で初めて新婚旅行をした時の物か」
永倉「なんだそりゃ?」
松平「知らないのか?坂本龍馬が日本で初めて新婚旅行をした人間だ」
永倉「へー、知らなかった」モグモグ
松平「・・・くそっ、やはりこれも史実通りってことか」ギリッ
永倉「すまなかった。俺が取り逃がしたばかりに・・・」
松平「いや、気にするな。高杉が現れたんだろ?なら、仕方がないさ」
松平「ダメ元で二人の身柄を要求したが、案の定跳ね返された。薩摩、そして長州。同盟が結ばれるのも時間の問題か・・・」
永倉「時の流れを塞き止めることは出来ない」
松平「突然なんだ?」
永倉「高杉が言っていた。俺も寺田屋事件を目の前にしてその通りだと感じた」
松平「・・・止めることは不可能なのか」
永倉「川の流れを変えるには一石を投じても意味はない。土台ごとひっくり返す必要がある」
永倉「・・・なぁ、薩摩や長州は幕府を倒したあとどうする?」
松平「どうするって、天皇のもと新たな組織を作り。侍ではない、新たな富国強兵を作る」
永倉「それを先に作ってしまうってのはどうだ?新しく武器を揃え、新たな戦法を作ってしまうんだ」
松平「・・・それだ。そもそもが井伊直弼の言っていた富国強兵を明治で行う事となる」
永倉「排斥運動を行ってた奴等のくせにな」
松平「日米条約とかは井伊直弼の時代で条約は結んでるんだ。あとはあとは天皇からの勅命さえ貰えればいい。そうすれば武器の輸入は堂々と行える。よし、それでいこう!」
徳川「なるほど、つまりは開国を堂々とし兵力を高めると寸法か」
松平「ええ!そうすれば薩摩と武力衝突しても対等に戦える!」
徳川「よし、喜永。貴殿の案を飲もうではないか。物資の運搬、製造も兼ねてどの港を開港するのが良いか考えておいてくれ」
松平「わかりました!」
徳川「私はその間に天皇からの勅命を貰えるよう出向いてくる」
徳川慶喜は第一次長州征伐のあと、日米修好通商条約を含んだその他国との条約(安政5カ国条約)の勅命を得るために自ら天皇のもとへ出向き交渉を行う。
そして、勅命を得ることに成功し、港を開港するが京都に近い神戸港は駄目と言われ、再び足かせをつける形となる。
西郷「幕府の連中は随分と忙しく動いとるの」
坂本「あれは恐らく、松平喜永の戦略じゃろ。ワシ等よりも早く強くなるつもりじゃ」
西郷「ふん、小賢しい奴じゃ。いっそ殺してしまおうか」
坂本「それは駄目じゃ、あの方は勝さんと一緒、未来に目を向けちょる方だ。必ずや日本を元気にしてくれる」
西郷「下らん。世迷い言じゃ、妄言じゃ」
坂本「何故、そう思うに」
西郷「この世の理じゃ。取るか取られるか、喰うか喰われるか」
坂本「そんなことはなか!」
西郷「では、今の世はなんじゃ?徳川がこの世を喰らっておるのではないか?我等はそれに搾取され続けておる」
坂本「あかん、西郷さん。それは間違った考えじゃ。恨み辛みを幕府に向けてる場合ではなか」
西郷「この国で争っていたら、諸外国からの搾取に対応しきれぬと?」
坂本「その通りじゃ」
西郷「構わん」
坂本「なに!?」
西郷「力に屈するならば、力を蓄えればいい。蓄えた力で屈していた諸外国を打ち払えばいい」
坂本「・・・」
西郷「天下分け目の関ヶ原。我等はそこから力を蓄えた。何百年かかろうともてっぺん取るまで諦めなかった者が必ず勝つ」
坂本「それが西郷さんの考えか」
西郷「その通りじゃ。それを貫くならば、賛同し共に歩もうと志す者も出てくる。・・・のう?そうは思わんか?伊東はん」
伊東「ええ、私も同じ考えです。この世の理は弱肉強食。強者に順ずるは世の定めです」
坂本「伊東さん、あんたもか・・・」
伊東「坂本さん。貴方や勝さんの言いたいことは理解できてます。ですが、それは理想の空論。絵空事でございます」
伊東「もしも互いに手を取り合う事が出来たのであれば、歴史に秦の三國時代。日本の戦国時代は存在することは無かったでしょう」
西郷「互いに理解など出来ん。出来ぬのならば強者となり恭順させればいいのだ」
坂本「・・・てっぺんを夢見る輩が争い事を起こしておるのではないか!」
西郷「その通り。そしてその争い事を修めることが出来るのも、てっぺんを夢見る輩じゃ。だからこそ、ワシと長州を手を組ませようとしておるのじゃろ?坂本はん」
坂本「・・・くっ、その通りじゃ。じゃが、ワシは!おまんらの様な恨みを憎しみで買うような解決策以外を必ず見つけ出して見せる!必ずだ!!」
西郷「・・・坂本龍馬。邪魔な奴よのう」
伊東「ええ、そうですね」
坂本「畜生め!!」ガチャン!!
勝「おいおい、突然押し掛けて何を暴れだしてやがる」
坂本「あんなのが!あんなのが!!国のてっぺんに立つじゃと!?そんな事は何がなんでもさせちゃいかん!!」
勝「・・・西郷か?」
坂本「勝さんの言ってた通りじゃ、恐ろしい男じゃ。奴を突き動かす原動力。それを垣間見た気がする」
勝「ほお?坂本、お前の目には西郷はどう見えた?聞かせてくれ」
坂本「・・・欲じゃ、どん欲じゃ。底知れぬ欲が奴の原動力じゃ」
勝「ふむ、いい例えだ」
坂本「勝さん!何をそんなに流暢に聞き流しちょるに!奴は危険じゃ!それなのに、長州を手を組ませるのが本当にいいのか?」
勝「ああ、問題ない」
坂本「何故じゃ!何故、そう勝さんは言い切れるんじゃ!」
勝「坂本、ハンムラビ法典って知ってるか?」
坂本「たしか、目には目を歯には歯をと言うやつじゃったか?」
勝「その通り。殺したものは殺されても文句は言えない。目には目を、欲には欲だ。欲にまみれる者は欲に負けるんだよ」
坂本「勝さん?」
勝「そして、奴さんは強者が現れれば恭順な態度を示す」
勝「つまりだ。俺っちは西郷なんかよりも、どん欲なんだよ」ニヤリ




