北の女神
この町に来て初めての冬を迎えようとしていた。空気は冷えてきたがまだ雪は降っていない。故郷がこの地よりも南にあるため寒いのは体に応えるが、生まれて初めて雪がみれるのでは内心ははしゃいでいた。
「町の人が言うのは雪が降り始めるタイミングはわかりやすいと言っていたが、あれはいったい」
ぽつりと呟いて帰り道を進んで行く。耳が赤くなり吐く息が白い。冬だ。
ふと、遠くの方で犬の鳴き声が聞こえた。鋭く寒空のよく響く遠吠えだ。散歩だろうかと周りを見渡すも、犬をつれている人どころか人っ子ひとりいない。
また鳴き声が聞こえる。はっと思い、空を見上げるとそこに犬達がいた。犬ぞりを引いた二頭の犬が空を駆けていた。そりの上には肌も服も真っ白い女性が手綱を引き、そりが通ったあとの空気にはきらきらとした何かが漂っている。
その異質で不思議、それでいて美しさを感じる光景に見ほれていると、頬に冷たい何かが当たり、空から雪が降ってきていたことに気がついた。
なるほど。あれがわかりやすいもの、冬の女神か。私は未知のものに触れたことと美しい雪空に心を躍らせながら再び歩みを進めた。
ファンタジー不足だったのでむりくり「犬2匹」というテーマをむりくりファンタジーにしました。後悔はしていない。