一日目 夢の始まり
―――小さい頃から、好きな人が居た。
それは憧れでもあり、自分もそうありたいと思う一種の願望からくる感情だったのかもしれない。
彼女はいつも明るく健気で、周囲の人間から期待されるような、そんな人だった。
人は人を愛したり、そうじゃなかったり。むしろ人を恨む事で生きている人だってきっといるのだろう。
生きる意味や形をどういったものとしてみるかなんて一人一人きっと考え方は違う。僕にとっての人生は、たった一人の少女に憧れて、彼女のそばに居たかった、これが自分の人生の意味だと確信もしていたし、彼女の明るさに少しでも近づきたくて、いろんな努力もしてきたつもりだ。
「アルっ!おはようっ」
だから、そんな彼女に出会うことが出来た僕はきっと――とても幸福なのだと思う。
☆
「おはよう、リラ。朝から元気だね。」
「当たり前じゃないっ、今日から私達は、一緒に居られるんだもんっ」
「・・・あぁ、そうだね」
朗らかな笑顔をみせ、明らかに嬉々とした表情でこちらをのぞいてくる彼女の名前はリラ。
僕とリラが幼い頃から親が知り合いで、よく一緒に遊んでいた。いや、遊んでいたというと語弊があるだろう、正確に言うなら、活発に遊ぶ彼女に連れられていたのだ。
「もうっ、アルったら元気ないよ?」
そっぽを向く自分の顔が、少しの熱を帯びているのを感じながら、彼女の顔を見れずにいた。
「ん、僕のことは置いといて、リラ。今日から始めるんだよね?アレ。」
「・・・うん、やるよ、もちろん。私とアルフの、大切な約束だもん、聖域の神殿攻略っ」
『聖域』、神様たちの気まぐれで裂かれた大地に繁栄した種族に割り振られた宝石とそれを守護、監視する精霊が眠る神殿のことだ。
ずっとずっと昔、神様が作ったその神殿に眠る精霊と宝石に謁見できた時には、なんでもひとつ、願い事が叶う、そんな伝説のある神殿。
神が星を創り、大地を創り、その大地を裂き、裂いたその先に生物を繁栄させ、神殿と宝石を各地に与えた場所が『聖域』。人類はその聖域にある神殿に幾度となく挑戦してきた。しかし、成功した者が居たという例は、一人の例外なく記録に残されていない。それでも、叶えたい夢とか欲望とか、そんなものを求めて僕たち人は聖域の神殿に挑む人たちは後を絶えないのだ。
そして、他でもないリラと僕も、そんな挑戦者なのである。
「子供の頃した約束をずっと覚えてるリラは変わり者だね。」
「それをいったらアルだって、ずっと約束覚えてるんだから同じだし・・・!」
拗ねたように視線を背けて抗議するような言い方で少しだけ頬を膨らませる彼女の仕草をみて、つい口許を緩めそうになる。
「それよりリラ、そろそろ行かないと時間、間に合わなくなるよ、行こう?」
「わ、ほんとだ。急ごう、アルっ」
僕の手を取り、駆け出す彼女に釣られて僕も走り出す、聖域を攻略して、夢を叶える為に・・・