乙女(?)心と元日
「そら大変だぜーお前、女と付き合うのなんて」
女に飢えた事など片時も、刹那の時すら無い、校内屈指のモテ男、中学生で童貞を卒業したエロ王のニシダはそう言っていた。
あと、アイカワとサネムラと、ケンシンとイッチーと、親友のコースケも言っていた。
そうですか。
ふーーん。
左様ですか。
……。
…………。
………………。
バカか!
なんだ、お前ら自分が望む時に女と付き合えるチン軽男どもの目は節穴、ガラス玉か! 真正のバカなのか!
ソレはアレだろ、潤い過ぎて水害が起きる地帯での話だろ! 俺は日照り続きの地帯なの! 万年干ばつだから清流だろうと泥水だろうと、水は水で一緒くた、見つけたら即座に一気飲みなの!
付き合った後の話なんかしてないの、コッチは付き合うまでにマリアナ海溝より深~い広~い溝があるの!
なんだお前ら「俺たちは俺たちで苦労あるんだぜ」アピールか! 自慢か、形を変えた自慢だろうがソレは!
どっちも辛いなら、せめて潤いたいの! 俺は!
女性と付き合った場合、それはもう大変は大変だろう、何しろ相手に不快な思いはさせたくないし、なるべくなら幸せを感じて欲しいし、傷ついた時はその痛みをわかる事はできなくても傷口に寄り添いたいとは思うから。
では、カメと付き合った時はどうしたら良いんだろう。
ていうか「カメと付き合う」って何。
どんな東京ラブストーリーなの。
芥川の『河童』よりよほど重症の病棟だよ。
もし、小町が人間のままでいたら、出会った時から最後まで人間だったら、俺は何のためらいもなく一線を越えて二線も三線も、虹の彼方まで行っていたと思う。
だけど、コマチが俺が飼ってたむっつりとした顔のカメで、人間になったらなったで気安く人に包丁をブン投げてくるような奴じゃなかったら、きっと俺はこんな風に普通に話せなかったし、変な方向にばかり気取られて、言葉を交わしたとしても彼女が望まない話、変な自慢とか無駄な自己主張ばかりしてしまったのではないか思うと、何だか分からなくなる。
12月31日、午後十一時五十九分五十九秒、年越しの瞬間はレジを打って過ごした。
元日は家族サービスに費やすと言って先に上がった店長がコレ、夜食に。と差し入れしてくれたのはカップたぬきそばで、これで年越しそばの気分を味わってほしいと言う心遣いが憎い。ありがたいが、嬉し泣きでは無い涙が出そうだった。
そして涙の元日フルタイムシフトを終え、家に帰ると、小町が玄関前で正座して俺の帰りを待っていた。
えー!
いつから待ってたの、その姿勢で?!
引きつった顔の俺がドアを閉めるや「明けましておめでとうございます、タクミ様」と言うやスルリと手を床について頭を床につけた。
へ、返礼、し、しないと。
「あ、あ、あけおめ」
俺のダサさに底はないのか。
せめて小町に和装くらい、させてあげたかった。ごめんな、セール品のジーンズとセーターで。
「あ、あのさ、こ、小町、は、初詣、行こうか? 年末、約束したし」玄関にへたり込んでしまってから、罪悪感でふと思い出して、そう言ってみた。小町は俺のダウンを脱がそうと肩に手を置いていたが、その手の動きをふと止め、言った。
「あら、覚えていて下さったのですか? 童貞なのに珍しいですね?」それは絶対に記憶力と関係ない。「嬉しい……はい、ぜひ行きたいです。でもタクミ様、お仕事終わりでお疲れでしょう? 暖かい御雑煮も、出来ていますよ」
「あー、いや、疲れは、良いよ、何か。でもそっか、御雑煮、食べよっか。その後、行こう」
「はい。さあ、おあがり下さい」
柔らかな笑顔でそう答えてから、珍しく浮足立って俺のダウンをクロークに仕舞うと、鼻歌交じりにご飯の支度をし始めた。
無性に可愛く思えてしまった。
新年から爬虫類に揺らされ放題、俺の価値観。
おそらく道中で干からびる小町の為に、二リットルのペットボトルを三本、リュックに詰めて初詣に行く支度をした。
実は小町は俺の留守の間に食材を買うなど、買い物に外出しており、本人いわく「二キロ歩くくらいで一リットルは飲み物を飲まないと具合が悪くなる」という、誠に高燃費な事実を教えて貰った。言っても、水だけど。
合計で六リットルもあれば近所の神社に初詣行くくらいはできるだろうし、万が一足りなくなっても現代には自動販売機と言う文明の利器が、道路二百メートルに一つくらいは備えてくれている。
小町と外出するときは、この装備が常備品になるのか、たとえ超高級ホテルにディナーだとか夜景が美しい高台の公園に言ったとしても、世界のどこであれ、背中にリュックが標準装備か。まるで俺が亀になったみたいだ。そんな事を道すがら考えていたら、思わず吹き出してしまった。
「どうかなさいました? あの、私……何かおかしい事、してしまいましたか?」横を歩いていた小町が、少し不安げな顔をしてこちらを覗きこんで尋ねて来る。
「あ、いや、なんでもない。そろそろ飲むか、水?」
「え、ええ、いただきます」
答えられて俺は背中のリュックを降ろし、中からボトルを出して手渡す。「ほい。日本の水は安全で良かったな」
「はい」首元が苦しいと、一旦マフラーをほどいた小町の小さな喉が、水を飲む度にせわしく上下に動いている。
「ですが、私の主として、水道水で満足されていては困りますね」
「へ」
「六甲の岩清水、ミネラルたっぷりのカルキなど混じっていない、清らかなお水の常備は当然、あるいは必然では?」
「そういうことを言う奴に限って、困った時は泥水でもがぶがぶ飲むんですぅ」
「まぁ、気持ち悪い言い方」批評が真っ直ぐすぎて辛い。「ですが、たしかに仰るとおりですね、現に私は自分の排泄物の混じった飲み水を常飲しておりましたし」
「え」
「特に昨年の夏、タクミ様がアルバイト先で酷い叱責など受けて無駄に落ち込んだ日には、亀の姿だった私は一週間以上も水槽の掃除をしてもらえず、高温により日々腐敗していく水を飲む事を強要され、ああ、恥辱の日々を過ごす辱めを」
「すみませんすみませんすみませんすみません」舌がねじ切れる勢いの謝罪連呼である。大人とはこういうことさ。「本当にすみません、二度とそう言ったマネは致しませんので、道端で誤解を招く発言やめて、ダメ、絶対」
小町の言葉を区切るためにハイテンションの大きめボイスで謝った。
「やだ、冗談ですよ。ふふ、困った顔のタクミ様、可愛らしいです」
嬉しくない事、この上ない。
元日だけれども、俺の住居の近隣は過疎でも起きているのか、神社はまるっきり人気がせず、参道の周辺に植えられたコナラやケヤキは葉を落としており、大層寒々しい景色が広がっていた。
何はともあれ賽銭箱にお賽銭を入れ、やる気無くぶら下がった縄を引っ張って鈴を鳴らして手を合わせ、特に願う事も無く眼を閉じると横に立つ小町は手でマフラーを弄んでは白い息を吐くだけで、ただホケーと突っ立っている。
「あれ、小町、お参りしないの?」
「いえ、私、異国の血を引く者の末裔ですから」
「何、その中二病っていうか闇の使者みたいな言い方」
「私の故郷、ミシシッピではですね」
「え、お前、生まれたの日本だろ? 俺、生まれたてのお前を拾ったよ?」
スムーズに脇腹を殴られた。
なんなんだ、ちょくちょく理不尽な言論統制や鉄拳制裁を強いてくる、このサディスティックアカミミガメは。
「私は異国より無理矢理この国へ運び込まれた、そう、悲劇の乙女なのです、その点も鑑みて、どうぞ今後はより一層のご寵愛を、タクミ様」
何その、取って付けた設定。日本語しゃべれる外国人どころか、超弩級の日本人顔と居住まいのクセに。
ところどころで面倒なかまってちゃんになるの、やめてもらえませんかね。
「しかし、主人に従順な私は、言われるがままにお参りを致しましょう、全人類と亀に幸あれ、と」
「十円のお賽銭でずいぶんデカい願い事だなぁ」
「仏様の宿願は、全人類の救済でしょう?」
「でた、他力本願」
「うるさいですよ。本当に文句が多いですね、これだから農耕民族は」
「お前、日本人全員を敵に回す気か?」
「タクミ様、憚りながら申し上げますと、女性に対して『お前』と呼ぶのは無意識に上から目線で話しており、ジェンダー意識からも大変に失礼に当たりますよ」
「お前カメじゃん!」と反射的に突っ込んだが、確かにペットに対してもお前、と呼ぶのは自分が主人だから上から目線なことに間違いはないし、今この姿の小町にお前呼ばわりは良くない気がするし、また中身はカメの相手からそれを指摘されるのも腹が立つ、しかしカメでも確かに見た目は人間の女性であるし……。
いかん、新年早々ウダウダと出口のない悩みに陥りそうだ。
問題があったら解決し、間違いがあって、修正できるならするべきだ。
それはたぶん、悪くない事だと思う。
「ごめん。小町、『きみ』の言う通りだ」
「はい。申し出を聞き入れてくださり、小町はとても嬉しく思います」
素直に笑顔を見せられると、なにやら嬉しい様な、恥ずかしい様な気分だった。
え、おい、ちょっと待て。
さっきから小町を人として可愛いと思ったり、反応を見て嬉しいと感じたり、俺、どうかしてるんじゃないのか?
でも、俺は何を頑固一徹にこだわっているんだ、なんて思う自分もいて、うぐぐ、価値観、基準が蜃気楼のように揺れている……。
「あ、タクミ様、甘酒など、いかがですか?」先に立って歩いていた小町が、ほとんどシャッターを降ろしている商店街の中でポツネンと開いていた露店を見つけ、俺のコートの袖口を軽く引っ張りながら聞いてきた。
「おあ、甘酒かぁ。行事ごととは無関係に生きてきたから、なんかすっごい久しぶりだな」
「縁起ものですから」
「そういうの、本当は大切なのかもなぁ。でも、俺、酒に弱くて」
「あら、勘違いなさらないで下さい」俺の足を軽く蹴ってきた。「私が飲みたいのです。無下になさりませんよね? 優しいご主人様は」表情一つ変えずに言い切った。
「ナチュラルに脅さないでもらえますか」
「ザル」と言う言葉がピタリ当てはまる、何杯飲んでも頬に赤みも射さない酒豪トータス・小町に付きあって俺も飲み、少しだけ酔った帰り道、電信柱の裏側で倒れて動かない仔猫がいた。
側に寄って屈み込み、「おい、どうした?」と首元を撫でてみても、何の反応も示さない。閉じられた目が、いやに辛そうに見えた。
病気か?
見ると、首輪も何もつけていない。
辺りに親猫の姿もなく、人通りもない。
参ったな、と思いつつ抱き抱えようとした手を小町が制するように掴んだ。驚いて見つめた顔には眉間にしわが寄った硬い表情が張り付いてた。
「え、なに、小町」
「帰りましょう、タクミ様、そろそろ横になられませんと、お疲れが」
「帰りましょう、って、いやいやいや、何言ってんの、無理でしょ、放っておいたらこの子」
「良いじゃないですか」
「え?」
「タクミ様にはもう既に、私がいる。なのに、なんでその子まで抱えようとなさるのですか?」
「そういう問題じゃ」
「愛は、ちっぽけな人間には一つしかありません」小町は俺の言葉を遮って喋った。「無報酬の愛を捧げられる相手は、一人につき一人だけです。タクミ様、私を見て下さい。私だけを。あなたには私の全てを差し上げます、だからあなたに私以外を見ないで欲しいんです」めちゃくちゃだ、と思ったが小町の口調は必死そのものだった。
何処かで、花火の鳴る音が聞こえた。
元日を祝ってでもいるのか、二、三度音が聞こえた真昼の花火は、見上げてもけっして見えない。音だけの花火。
「小町が、そう、いうなら」俺は掴まれた手を取って握り返し、立ち上がる。
小町は強張った顔を緩めて、立ち上がった俺の肩に気持ちよさそうに顔をもたせかけてきた。
でも小町、それは変だよ。
生きたり死んだりする事に、正しい、間違い、なんてのは無いんだよ。
小町は人間の姿を得て以来、ちょこちょことネットや俺が稀に買っていた生活情報誌などから様々な家庭料理を覚えていた。
どうやらカメの頃から俺がたまに料理をする様を見て学んでいたらしいが、悔しい事に俺より断然、腕が良い。
なんだろう、腕の良い後輩に仕事を取られる先輩社員の敗北感ってこんな感じか。
ところがこのトータス、黙ってレシピ通り、というか基本に忠実な料理を作ってくれれば家庭の味なのにコクもキレもある、食べていて楽しくなる食事を作ってくれるのだが、時々、プロ野球の一流打者の打率くらいの確率で開拓精神を発して食べ物が食べ物の限界でいるような、不味いを超えた不味い料理を作っては俺を窮地に陥れて来る。
俺は飼い主、且つ給仕相手兼、毒味役というトリプルフェイスを持つ男さ。男はつらいよ。
調理はきみにとって化学実験なのかと疑いたくなるくらい、不味すぎてトロピカル色に見える味噌汁などを出して笑顔で食すことを強要する。
一度、ダシに漢方薬を使ったんじゃないかなどと思える煮物、例えるならゲテモノを出してきた際に素直に「コレはないわ、激烈に不味い」と言ったら本気で泣いてしまったことがある。
泣かれると猛烈に弱い俺は女の涙に耐性のある男を尊敬する。
女の涙に完封負けを喫して以来、舌が不味さを感知すると笑顔の仮面を作る術を身に付けた。
「元日ですから、腕によりをかけてみました」と出された、見た目こそクリームシチューだったナニカは不吉な異臭を発し、口に入れた瞬間に己の周辺を見回してしまうほど不気味な味がした。
連敗街道人生に特に抗いもしなかった俺への懲罰か、このグロテスクな煮物は。
「どう、ですか?」と、不安げに俺の顔を見つめるミュータントタートルに、決死の覚悟で作った笑顔を向けると途端、安堵の表情に変わって、それから俺の腕に抱きついてきた。
衝撃で吐きそうだった。
俺は俺を褒めた。久しぶりに良い仕事したぜ。俺スゲー。
代償として、おかわりさせられたけど。しかも二杯。
夜が更けた。
小町が人の姿になって以来、寝るときは折り畳み式座卓を部屋の真ん中に置いて、部屋を二つに仕切るようにしている。時々、小町は俺の布団に潜り込もうとしてくるのでゲラウフロムヒアー、となぜか片言の英語を発して叩き出す。
ともあれ、今夜はそんな事もなく、向こう側の布団で小町が小さな寝息を立てて眠っているのを確かめると、俺は足音を立てずにタンスからタオルを、流し台から小皿を取り出し部屋を出、そっと玄関のドアを開けて忍者のように閉め、コンビニでおつまみ品として売っていた煮干しと鰹節、それと低脂肪乳を買った。
小走りで神社の通りに出た。
子猫は昼間と全く変わらない位置で横になっていた。
いや、これは、倒れているんだ。
持ってきたタオルで身体を包む。幸い、電信柱についた蛍光灯のおかげで、俺は手元に戸惑わない。だが、あまりに軽い、その子の体重に驚く。けれど声はあげない。
「こんなこと、きっと無駄で、自己満足だとしても」新春の夜風に身震いしながら煮干しの封を切り、仔猫の口元にあてがう。口は、開かない。
少し頭を持ち上げ、今度は低脂肪乳を口元に運んだ。濡らすように、口周りに牛乳をそっと塗る。
僅かに、仔猫の唇が動き、口元の牛乳をなめとった。弱々しいが、確かに動き出した。
小皿にも低脂肪乳を注いだ。眼を開けずとも、舌を出して舐めはじめた。
うん。そうだ。いいぞ。お乳とはいかなくて申し訳ないけれど、俺からの新年のお祝いだ。
本当はさ、と俺は猫に語りかける。離乳前の猫には牛乳、人間用の牛乳は与えちゃダメなんだけど、さ。
だからキミ、キミが離乳後だって、俺は祈るよ。
生き延びてくれよ、と思う。
明日もまた、来るからさ。
たぶんキミは捨て猫で、だけど俺はキミより先に小町と出会ってしまったから、キミの全てを引き受ける事はできない。
でも、生きて欲しい。だから、出来る限りは、させてもらう。本当に身勝手な願いだけど、袖振り合うのも多生の縁だ。
「あぁん、誰だぁ、こぉんなぁ、夜中にぃ?」
「うひっ」
呂律の回っていない、酔っ払った男の声が背後からした。子猫に気を取られていて、誰かが背後に近寄って来たのに気がつかなかった。振り返ると、よれよれのコートをまとった中肉中背の男が、膝を若干カクカクさせながら立っていた。
「さぁては、痴漢かぁ、このやろぉ」
仕事は外回りだろうか、髪は短め、肩幅が広く若い頃は運動系の部活動をやっていた風の酔っ払いは、電信柱の灯りが届かない位置にいるので表情は分からない。が、面倒な時に面倒な奴が面倒な絡み方をしてきた。
たまにいるよ、こういう、眼が座った赤面の千鳥足の客。こっちの説明とか理屈を一切聞かない類の。
めんどくさいなぁ。
「んん……あぁん、何だ、お前、ヨシムーじゃねぇかぁ?」
「は?」
俺の事を「ヨシムー」などと呼ぶ人間は世界にそんなに大勢は存在しない。訝しんでいると、酔っ払いはよろよろとこちらに近づいてきた。
「ど、どちら様で、て、お前」相手が灯りの中に入って来て、俺は酔っ払いの顔をようやく見る事が出来た。
「俺だよぉ、へっへ、コースケぇ、ヒシムラコースケェ。久しぶりだなぁ、あけましておめっとぉ」
かつての級友、俺に散々、付き合った女の自慢を語っていたコースケがヘベレケの飲兵衛になって、突っ立っていた。
「うわ、マジでか、何年ぶりだよ、あけましておめでとう。つかナニ、コースケ、何でこんなとこいるの? 全然知らなかったし」懐かしげに肩を小突いた。
「いっやさぁ、こっち住んでるダチがいてさぁ、飲んでたのぉ。でも家、帰んないとよぉ、ツレがうっさいからよぉ」へらへらと笑いながら、指で下品な形を作って見せてきた。
「え、ツレって、何ちゃんだっけか」
「あ、お前知らない子だよ、仕事先ロロ」
「ろろ?」
何言ってんだよ酔っ払い、と思ったコンマ数秒後、コースケは俺の背後の電信柱に向けて嘔吐しようとし、子猫を庇おうと間に入った俺は、嘔吐物を全身で浴びる事になった。
酸っぱい臭いが全身を包んだ。
去年、一人でしょっぱく迎えた新年が今年は酸っぱく始まった。
宇宙の果てで爆発四散したくなった。