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特技(女にもてる)

作者: 頭山怛朗

ヤフーブログに再投稿予定です。

「あんな男の何処がいいのだ」と、男が言った。

「分からないわ。彼の何処がいいのか、私にも分からない。でも、彼を愛してる」と、女が言った。

「あの男、背は百七十cmもないのに体重は七十kg。顔はイケメンには程遠い。わが社では珍しく大学が二流だし、仕事ができるわけでもない。そんな男の何処がいいのだ?! 」

「そんなこと、分かっている。でも、私、彼を愛しているの。結婚するとしたら、彼しか考えられない。あなたとは結婚できない」


 数分後、男の足元に女の死体があった。



「凄いわ」と女が言った。

「みんなこんなものだろう? 」と、ぼくは言った。

「いや、あなたは普通の男とは違うわ。時々でいいから私にあって欲しい」

「でも、ぼくも結構忙しいんだ」

「偶にでいいわ。逢って欲しい。あなたの車、大分、古くなっているわね。私、買ってあげる」

「車なら新しくする話が別にあるんだ! でも。PCとスマホの新しいのが欲しいのだけれど……」と、ぼくは少しおどけて言った。「買ってくれたらメールするよ」

「分かったわ! 買ってあげる! 」

 話が付いたらぼくの下半身の「それ」はたび元気になった。

「やっぱり、あなたは凄いわ」と、女が言った。

 ぼくはゆっくりと女の体の中に進入した。



「あなた、自分では分かっていないらしいけれど、うちの会社の女の子たちは皆、あなたに夢中よ」と、香織が言った。「五歳も年上のこんなおばちゃんを相手にしなくても、あなたから声をかけられるのを待っている女の子が大勢いるわ」

「でも、ぼくが愛しているのは香織さんあなたです」と、ぼく。

「本当に私でいいの? 」

「ぼくが愛しているひとはあなたしかいない」

 彼女が頷き、目を閉じた。ぼくは彼女の唇にぼくの唇を重ね、ブラウスのボタンに手をかけた。


 目覚めると横で寝ているはずの香織がいなかった。きっと、着替えのため家に帰ったのだろう。二十代の女が昨日と同じ服を着て出社するのは不味いと考えたのだろう。



 ぼくは背は百七十cmもないけれど体重は七十kg。顔はイケメンには程遠い。わが社では珍しく大学は二流だし、仕事ができるわけでもない。が、これを“特技”と言っていいのか分からないけれど、ぼくは“女にもてる”のだ。若い女は勿論、ぼくよりずっと年上の旦那がいる女まで皆ぼくに夢中だ。ぼくが原因で殺人事件がおきた事もあるし、婚約解消になった同僚やしっくり行かなくなった家族がいくつもある。

 ここまで女にもてると「罪」だ。


 あぁ、それから些細なことだけれど、一つ、言い忘れたことがある。ぼくは自分が見る“夢”を自由に操ることができる。登場人物、筋書きを思い通りにすることができるのだ。それも超リアルで夢かうつつか分からない。


 ひょっとしたら、これも“特技”と言えるかも知れない。


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