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すごく短いです。
結論からいくと、我が学園普通校舎の音楽室には、それらしきもの(・・・・・・・)はいなかった。
もちろん、ピアノも異常無し。
後日判明することではあるが、実はある一定の期間、音楽教師が歌の伴奏のために教室の一部照明だけ点け、練習していたことがあるらしい。
それを遠目から、部活帰りの生徒が目撃したとかしないとか……。
という確実に脱力ものの後日談があるのだが、今の彼等には関係の無い話である。
話の最初から疑わしい内容ではあったため、音楽室に異常無しとわかると、全員の頭はすぐに次に向けて動き始めた。
なんせ、まだ一個目だ。物語としては序の口である。
次の目的地は校舎裏。もう使われてはいないものの、惰性で残っている旧焼却炉。
何も無いはずの場所から、動物のもののような鳴き声が聞こえてくるらしい。
また疑わしい話だ。いるとしても動物の低級霊だろうな、とわいわい騒ぎながら移動している生徒達の一番後ろを歩きつつ、何だかんだと状況を楽しんでいた卯木だったが、ふと僅かに意識に引っかかるもの感じ、歩みを止めた。
皆が通り過ぎた一つの教室。
誰もが気付かないほどの微かな違和感。
眉を潜めて中の様子を探ってみるも、しっかりとした手応えを感じないからこそ、卯木には酷く不気味に思えた。
「卯木さん、どうしました……?」
唐突に立ち止まった卯木に気付き、遥は後ろを振り返った。
「え? なになに?」
「どうしました? 卯木兄さん」
遥の問い掛けに反応した他の仲間達も、立ち止まり一つの教室の扉を睨みつけている卯木の様子に、何かを感じ自然と声も潜まる。
「この教室に何か……?」
不思議に思うものの、窓の開いていない風の通らない密室では、爽太と彼方の感知は使えない。
けれども、卯木と同じ土属性の遥には、卯木の気にする教室の中に違和感を感じることは出来なかった。
「……中に何か……、いる(・・)」
教室から一切目を離さない卯木から発された一言に、その意味を瞬時に理解したメンバーは、それぞれ息を飲み、手の中の呪具を握り直した。
何かとは何か。なんて、愚問。
例え、普通校舎と言っても、普段から自分達が過ごしている学園だ。
ましてや、卯木は教師。特別棟だけで無く、常からこの普通校舎まで行き来していると言うのに……。
その卯木が。感知に長けた槌永、その筆頭が、今の今まで気が付かなかったなんて(・・・・・・・・・・・)。
想定外もいい所だ。誰がそんなものが出てくると思うか。
ここにいる誰もが思い、保護者である卯木も唾を飲み込む。
けれども、かと言って、こんなモノ(・・)を放っておくことも出来ない。
本家に連絡をするにも、様子を見るにしても、一回確認しておかないと不味いだろう。
あくまでも退魔の力を持つ一族の嫡子達。
彼等に目配せをすると、各々頷くのが見えた。
卯木も一つ頷き、深呼吸をすると、そっと扉を開いた。