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プロローグの前書きにて、テンパっていたため書き忘れておりましたが、予告なく視点コロコロ変わります。
苦手な方は、申し訳ありません!
あと、タグ部分にチート? を追加しました。
世間一般には、知られていないことながら、日本政府の中枢には遥か昔からその実権を握っている四つの一族があった。
時は平安、皇のおわす殿舎にまで遡り、御代の君主らから意見を求められ、助言する立場にいた、妖の力を持った一族立達。
すなわち、陰陽師。
この四家の陰陽師達は、現代へ至るにあたって、その時代に生まれ、時には派生し又、時には国の外から持ち込まれた流派を取り入れて来たことに寄って、もう『陰陽師』と呼ぶには独自の進化を遂げすぎてしまったかもしれないが、変わらないことが一つあった。
それは、異なる属性を持った神獣の加護を受けている、ということである。
四つの属性……すなわち地水火風の力を持った四匹の龍だ。
地の槌永。
水の廉条。
火の宝円。
風の翠仙寺。
彼の一族達は、龍神の加護の下、数多の時代を経て現代まで揺らぐことなく続いている。
本業としては対、妖というのは変わっていないものの、今はその姿を変え、表向きでは会社を興し、それぞれ大企業として存在していた。
そんなエリート中のエリート達が集められたクラスがここ。
吾都万学園高等科、特別クラスだ。
吾都万学園とは、幼、小、中、高、大と併設されている超エリートマンモス校だ。
一応、受験さえパスすれば誰でも入学出来る普通科があり、幼稚舎から中等部まで普通科で通い、高等科でそれぞれの特出に合わせて進学先を変えるのが普通だ。
吾都万学園高等科では、ごく一般的な授業を行う普通科。より、運動に力を入れたスポーツ科。大学進学に向けて専門的な授業を行う進学科。
さらに芸術活動を率先して行える芸術科。
そして、最後に学力、家柄、財力と全てに置いて一目置かれる選ばれた人間しか通う事が許されない“特別科”が存在する。
つまりこの『学力、家柄、財力』とそろっている生徒達というのが槌永、廉条、宝円、翠仙寺と、それにち連なるやんごとなき家々の御子息、御息女達となるのである。
『選ばれた人間』と表現するくらいだ。
もちろん学園内の格差も凄い。
普通科、スポーツ科、進学科、芸術科、一般生徒達とは、まず校舎からして場所が違う。
そう、『校舎』だ。クラスや教室なんてものでは無い。
建物そのものから違うのである。
一応、同じ敷地内にはあるものの、何せ幼から大まで一貫するマンモス校だ。
さすがに、幼、小、大は違う敷地にあるものの、中、高の校舎がる敷地は同じ。
普通科が六クラス。そしてそこにそれぞれの科が付き、計十クラスで一学年。
確かに考えてみれば、蝶よ花よと育てられた御家柄の方達がこんなにもごちゃごちゃとした所に通ってくるかと言われればNoかもしれない。
けれども、それで校舎まで建ててしまうのか、と考えてしまうと私的には『ねぇよ』と思う。
……思うのはやまやまなのだが、しかし日本を代表する名家の御曹司達なのは事実なのだしそれだけで、誘拐の危険性がぐんと跳ね上がる彼等にとっては、これぐらいは必要なのかもしれない。
だけど、私にとっては不便なのよね。この格差校舎。
二時間目の授業中真っ只中。
誰もいない普通校舎の屋上で、雨宮千世子は、一人不愉快そうに鼻を鳴らした。
◇◇◇
普通校舎の敷地から、特別科クラスの敷地へ行くには三通りある。
一つ目は正式に特別科校舎の正面の門から入ること。
二つ目は普通校舎の二階、渡り廊下から許可を得て特別クラスの扉をくぐること。
三つ目は高くそびえ立つ二つの校舎を区切る塀を、問答無用でよじ登って行くことである。
けれども、『選ばれた人間』である彼等を見るだけならば、上記三つ以外の幅が広がる。
その内の一つが、今まさに雨宮千世子がいるここ。
普通校舎の屋上なのである。
特別校舎を遠巻きに見詰められる場所は数あれど、生徒達に一番不人気なのもこの屋上だ。
理由は簡単。
この場所が、一番特別校舎から遠く『覗きをする理由』、つまり麗しの顔ばせを拝むにはどうにも不向きなのだ。
けれども、一番遠いからこそ人気も無く、特別校舎全体を万篇なく見下ろせるのもこの場所だった。
千世子は指先で輪を作り、その間にそれぞれ凸レンズと凹レンズになるように膜を張った即席望遠鏡を覗き込みながら、目的の人物の動向を見守った。
目的の人物……吾都万学園特別科の麗しの華。
四家の中に数えられる名門廉条家の直系の御令嬢。廉条滝津様のことである。
今、学園に通っておられる四家の御子息達の中で唯一の紅一点であり、その見目の麗しさ、又、性格、頭脳であってもこの学園で右に出る女子無しと謳われる御令嬢中の御令嬢で、千世子の唯一の負い目であった。
頭の後ろ、高い所で括られた黒髪は、遠目からでもツヤツヤのサラサラで、ここからでも豪奢に見える。揃えられた前髪の下にはきりりと引き締まった整った眉があり、びっしりと長いまつ毛に縁どられた双眸は、輝く黒曜石だ。
鼻は適度に高く、唇はぽってりと厚く酷く女らしい。
百六十センチを少し過ぎただけの身長は、高すぎず低すぎず女性として調度いいと言わざるを得ないだろう。
しかも、出るとこ出て引っ込むとこは引っ込んでいるのだ。
もう、誰もが認めざるを得無い、完璧な華。
それが彼女、廉条滝津という人物だった。
今日も、ウチの御姫様は完璧だ(ムフー)。