バス
春、ぼくは、この町に引っ越してきた。
ぼくママとパパは仕事でいつも家にいない。
だから、ぼくは毎日貰えるおやつ代の100円を使いおばあちゃんちに行く。
家からおばあちゃんちに行くにはバスを使う。おばあちゃんちは山の反対側なのだ。
バス停を目指して家を出た。バス停は家の近くにあることをママから教わった。
そのバス停に着くと、バス停には女の子がいた。
ぼくと同じぐらいの女の子。ぼくはその子の隣に座ってバスを待つことにした。
「ぺろぺろぺろ」
女の子はキャンディーを舐めていた。でも色が変だった。緑、紫、ピンクの色が渦を巻いている。
「ぺろぺろぺろ」
それでもそのキャンディーを女の子は舐め続ける。
ぼくも欲しくなったけど100円を使っちゃうとおばあちゃんちにいけなくなっちゃうから我慢した。
しばらくしてバスが来た。
女の子もキャンディーを袋にしまってかばんに入れるとバスに乗った。
ぼくもバスに乗って運転手さんに100円を渡して一番出口に近い席に座った。
女の子は一番後ろの席の一番端っこの席に座っていた。
ほかのお客さんは居なくて運転手さんとぼくと女の子しか居なかったから車内が広く寂しく感じた。
ぼくの降りるバス停まで五つのバス停に止まる。降りるのは六つ目のバス停
そのことはママから教えてもらった。
そして時間は過ぎて四つ目のバス停を過ぎたころ女の子が席を立った。
どうやら次で降りるらしい。ぼくは降りていく女の子を見ながら「明日も会えるかな」とおもった。
そして女の子が降りたバス停が遠くなっていくのを見てて少し悲しくなった。
次の日も同じ時間にいくと女の子が居た。
いつも通りキャンディーを舐めてバスを待っていた。
ぼくは少しだけうれしかった。
次の日はキャンディーじゃなくてガムを噛んでいた。時々膨らましてはしぼませる起用な女の子の一面だった。
次の日もガムだったけど、昨日のピンク色のガムじゃなくて、赤い色だった。おんなじ味だと飽きちゃうのかなと、明日はどんな色だろう?といろいろと考えながらバスに揺られた。
来る日も来る日も女の子はぼくの気を引くようなものを食べていた。
バスの中でも一番後ろの席にまでたどり着くことができた。だけど季節は五月が終わろうとしていた。
六月に入りじめじめとした日が続いた。外は雨が降っていたけど女の子に会えるならと。ぼくはかさを指して100円をポッケに入れてバス停に向かった。
いつも通り女の子が居ただけどいつもと様子がおかしかった。
横に座りようやく気がついた。
何も食べていない。
女の子がおかしを食べていないでバス停に居る姿はとても不思議だった。
そしてなぜか不機嫌そうだった。
しばらくしてバスが来てぼくと女の子はバスに乗った。
相変わらずバスの中にはぼくたちしか居ない。
そしてようやく座れるようになった女の子と同じ席に並んで座る。
いつもはもうちょっと離れているのに今日はいつもより近い。ぼくはちょっとだけうれしかった。
そして、バスに揺られていると窓の外の雨脚が強くなってきた。
バスもいつも以上にゆっくりだ。
するとゴロゴロ……と窓の外で音がした。
ぼくは雷には慣れていて怖くなかったが、女の子は今にも泣き出しそうな表情をしていた。
ぼくが女の子に声をかけようとした瞬間外が一瞬明るくなった。
結構近いところに落ちたのか音もすごかった。
気づくと女の子がぼくの腕にしがみついていた。
ぼくは心臓が締め付けられる錯覚にとらわれた。
だけど深呼吸してそっと女の子の頭を優しくなでたら女の子がつかんでいた腕の圧迫感が消えて女の子がまた同じ位置に戻って行った。その横顔は少し赤かった気がした。
そんな事件も過ぎ。季節は変わり……。
夏。
夏の女の子はアイスの食べている率が多かった。
秋。
お菓子類じゃないときもあって、お芋や果物のときもあった。
冬。
あったかい食べ物のときもあったけど、缶の飲み物のほうが多かった気がする。
そんなこんなでぼくは女の子に会いたい、会ってお話がしたい、食べているものがどんな味なのか、どこで買っているのとか他愛もない話がしたくて通ったバス停。
だけど今日で最後
お父さんの転勤先が決まった。
だから最後に……最初で最後にお話がしたかった。
だからいつもと同じ時間にあのバス停に行った。
だけど女の子は居なかった。
君はいつもと同じ場所でいつもみたいにお菓子をてべていると。
だけど君は居なかった。そしてぼくはあの町から引っ越した。
~十年後~
田舎のおばあちゃんが死んだ。95歳、大往生だとみんなは言っていた。
そして葬儀のため田舎に一時帰ることになった。春先の出来事なので気乗りはしなっかた。俺は高校生になったばかりで新しい学校生活にウキウキしていた時だったのでなおさら。
まぁ幼少期にお世話になっていたから線香の一つでもあげなきゃ罰が当たるってものだ。
俺はしぶしぶ承諾し、おばあちゃんちに向かった住んでるところからは二時間もかかる田舎町、目的地に着くとの町の駅に降ろしてもらった。どうやら、いろいろと買うものがあるらしい。俺はあきらめ、バスでおばあちゃんちに行くことにした。
前住んでた家は駅からそう遠くないのでその近くにあったバス停を目指すことにした。
しばらくすると見覚えのあるバス停が見えてきた。トタンでできた小さな小屋みたいなバス停。
バス停に人影が一つあった。女の人だった。
ふと、昔の記憶がよみがえった。
すると、女の人は俺を見てやさしく微笑み――
「キャンディー食べる?」
出された、ピンクやら紫色が渦を巻いているキャンディーを見てもちろんぼくはこう答えた。
「いただきます」
いやぁ急に物語が浮かんできて即効で書いてしまいました。
誤字脱字はあしからず(笑)