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助けるためには今、どうすればいいか

読んでくれると嬉しいです

 バカみたいに命を賭ける巫女と、俺のために口を絶対に割らなかったアホな美少女。

 どっちもどっちで、素晴らしい。

 その素晴らしい奴らを助けるためには何をすればいい? 今、俺はどういう行動をとればいい?

 俺は強く握ったメダルを宙に弾く。


「俺、御門恭介が願い奪う。逆境を切り抜け、希望を叶える力を。誰もが笑い合える黄金のような楽園を。今、俺の元に来い、勝利を約束された剣!!」


 瞬間、世界は黄金色に包まれ、俺を取り巻くように黄金の剣が地面から、空中から現れる。

 俺はその剣の中から二本の剣を手に取り構えた。


「なあ、薫」

「……何ですか?」

「お前、生きてて楽しいか?」

「はい?」

「俺は……楽しいぜ。決して普通とは言えない生活も。異常しかない世界も。みんなみんな、楽しくてしょうがない。お前は、どうだ?」

「なんで、そんなことを聞くんですか? ぶっちゃけ恭介先輩には関係ないと思いますけど?」

「ああ、それもそうだな」


 剣の柄を握って、俺は切先をインドラに向ける。

 俺はゾンビだ。決して死ぬことのできない上級ゾンビだ。そして、どうしてかみんなを助けてしまいたくなっちまうハイスペックゾンビだ。

 だから、こんな俺だから戦う。戦って、もう一度楽しい生活に戻る。

 誰ひとり欠けさせない。誰ひとりだって無駄だとは思わせない。

 なあ、薫。人ってのは、泣いてもいいんだぜ?


「インドラ。俺はお前を許せない。許さないんじゃなく、許せない。お前は、英雄の皮を被った悪魔だ」

「ふふん。中々いいことを言うね。まあ、その余裕もいつまで持つかな?」


 インドラは手を振る。すると、周りにいた英雄たちが一斉に俺に襲いかかってくる。

 俺も手を振る。すると、宙に浮いていた剣が一斉に英雄たちに向かって突進していく。

 さあ、始めよう。俺たちの戦争を。


「――遅いですよ」

「いや、これでいい」


 剣戟の中流れるような動きでベーオウルフは俺の懐まで飛んできて鋭い刃を突き立てる。

 ベーオウルフの剣が俺の腹に突き刺さった。だが、突き刺さった剣を俺は素手で掴み離さない。

 そうだ。これでいい。これで、速いやつの動きは止めた。


「なっ!」

「すまねぇな」


 俺は生涯初めて、女性の顔を蹴り上げた。

 剣を掴まれていたベーオウルフは顎を蹴り上げられ、剣を掴んでいた手を離してしまう。

 だが、ベーオウルフの剣は一本ではない。2本目の剣が俺の腹に向かって来る。

 俺は地面を軽く蹴って地面から剣を数本呼び出し、それを盾にしてベーオウルフの攻撃を防いだ。


「くっ、小賢しい!」

「こっちも切羽詰まってるんでな」


 俺とベーオウルフの視線がぶつかる。

 しかし、


「素晴らしい! 素晴らしいよ、御門恭介くん! だが、足りない!」


 俺が作り出した世界はインドラの手をひと振りされるだけで消え去った。

 俺は小さく舌打ちする。だが、すぐに次のメダルを手に取り、宙に弾く。


「俺、御門恭介が願い奪う。凶悪で傲慢な鬼の力を。月夜に輝く銀色の雄々しい狼の力を。今、俺のもとに来い、神殺しの牙!!」


 体に力が宿り、全身を震わせる。同時に意識を失わせるほどの強烈な頭痛が俺を襲う。

 しかし、こんなところで理性を失っている暇はない。

 コンクリートが割れる勢いで地面を蹴り、インドラに突進する。


「おっと。ここから先は行かせないぜ?」

「邪魔だぁぁぁぁああああ!!!!」


 振り下ろされる凶悪なバスターソードを俺は直感と感覚だけで躱し、ジークフリートの懐に強烈な一撃を加えた。

 すると、ジークフリートは苦しがることをせず、笑って次々と攻撃をしてくる。

 これ、正しく狂戦士。純粋に戦いを楽しむ異常者。俺が最も不得意とする部類の一つだ。

 戦いを求めるやつには和解は存在しない。つまり、完膚なきまでに叩きぶさないといけないってわけだ。


「いいぜ! お前、中々強ぇじゃねぇか!」

「嬉しくないね、そんなこと言われても!」


 剣と拳の乱舞が始まる。

 交差するたびに嫌な予感と汗をかき、一瞬でも気を抜くと意識を持って行かれそうになる状況下で俺は全ての攻撃を避け、攻撃をよけられている。


「相手はジークフリートだけではないですよ? ――射抜け、一閃の名のもとに」


 ペルセウスが放った青光りする矢が光速で俺の足を射抜いた。

 体のバランスが崩れ、俺はコンクリートに崩れ落ちる。

 そこを見逃さないジークフリート。俺を真二つにするためにバスターソードを振り下げた。

 このままでは真二つだ。俺は考える暇もなく感覚で立地、状況、時間を全て把握、理解、出来ることのすべてを検索した。

 そして、剣が俺に降りかかる寸前、俺はコンクリートを思いっきり叩き床を崩した。

 ここはこの街で一番高いビルの最上階。つまり、下の階が存在する。

 床を壊したことで俺は下の階に背中から落ちていき、背中を強打する。しかし、まだ動ける範囲で生きている。これなら、まだ戦うことだってできる。

 俺は痛む足を無視して立ち上がろうとすると、バキバキと俺の下の床が音を上げた。


「御門恭介くん。君は知らないだろうけど――」


 インドラの声を遮るように床から手が二本飛び出し、俺を掴んだ。


「ヘラクレスくんはここから落ちた程度じゃ傷一つ付かないんだ」


 ……マジかよ。

 驚愕する俺を床ごともう一つ下の階に叩きつけるヘラクレス。

 ありえない。このビルは四十階だぞ? 頼むから骨折くらいしてくれよ。

 叩きつけられどうやら背骨を砕かれたみたいだ。全身に力が入らない。

 そんな俺に、


「いい、運動、だ」


 大木ほどもある腕が俺の腹を叩き、ビルを倒壊させた。

 ホント、化け物だよ、こいつら。

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