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常闇の英雄たち

読んでくれると嬉しいです。

 時間は夜。あたりは言うまでもなく暗く、街頭と街の灯りによって彩られている。

 その中で、俺はある場所に向かって歩いていた。

 そこは、この街で一番高いビルの最上階への階段。俺の仲間がいるであろう場所。

 最後の階段を上り終え、ドアを開けると風が一気に入り込み俺の髪を揺らす。


「本当に来るとは思わなかったよ。君って本当は馬鹿なのかな?」

「断っておくが、俺は馬鹿でも阿呆でもない。ただの怪物だ」


 言い捨てて、俺は辺りを見回す。

 すると、その意図を感じ取ったインドラがクスリと笑って指差す。

 その先に目を向け、俺は驚愕する。


「君の探し物は、あそこだろう?」

「……!」


 指で差された場所には確かに真理亜がいた。ただし、正常ではなかった。

 服は脱がされて白い肌が露出している。そして、真理亜の体には剣で切られたような切り傷が無数存在し、そこから流れ出す血液が真理亜の肌を汚していた。

 それを見て、俺は何も言えなくなってしまった。

 こいつらは、一体何をしたんだ? こいつらは、なんでこんなことをしたんだ?

 疑問が疑問を呼び寄せる。解消できない不満が、俺の頭をおかしくしそうだった。


「君のことを話さないから、ちょっと虐めてみたんだ。いい絵になっただろう?」


 ニヤニヤと笑うインドラを見て、俺は首をかしげた。

 こいつらのどこが英雄なんだよ。こんなの、英雄のすることじゃないだろう? なんで……なんで!!

 俺はキツく歯を食いしばる。

 だが、その怒りも次の瞬間には消えていた。

 俺はふわっと笑って、インドラに言う。


「囚われの姫を、救いに来たんだ。さあ、返してもらうぞ、ク○パ」

「……? 君はこの状況が理解できないのかい?」

「理解? それはお前たちの方だろう?」

「?」


 すっと息を吸い込み、俺は鎮めていた全ての感情を吐き出す。


「俺はとっくに、頭の線がブチギレてんだよ!!」


 ポケットに手を突っ込み、一枚のメダルを宙に弾く。


「俺、御門恭介が願い奪う。信念を突き通し、偽善を破壊し、自身の力を困難という名の壁を破壊し続ける最強の力を。今、俺のもとに来い、真実を貫く拳!」


 全身に痛みとその分の力が入ってくるのがわかる。

 インドラは片手を挙げ、巨人ヘラクレスに無言の命令を下す。

 すると、ヘラクレスは巨人とは思えない速さで飛び出し、俺のもとにやってきた。


「お前、もう、いい」

「ああ、俺もお前は飽きたな」


 片腕に全ての力を込めて、突進してくるヘラクレスに放つ。それに合わせてヘラクレスも手を出してきた。

 バキバキと嫌な音を上げながら俺の腕が粉砕されていくのがわかった。だが、その代わりにヘラクレスはインドラの横を通って下に落ちていった。

 つまり、俺は勝ったのだ。代償を払って英雄一人に勝利した。


「……どうなっているのかな?」

「はっ。どうもこうもねぇよ。これが実力だ」


 俺は片手で粉砕された腕を支えながら笑いながらそういった。

 すると、インドラは驚くこともせずに腹を抱えて笑いだした。


「く、くくく。あっはっははははは! なんだい、そのデタラメは! いいねぇ、いいねぇ、最高だね!! これだから戦いは面白い!!」


 心底嬉しそうに笑うインドラ。だが、俺がそれに付き合う必要性は皆無。故に、俺はインドラ本人に攻撃を仕掛けた。

 常人では反応ができない速さで動き、インドラの懐に入ると拳を作り、殴りかかろうとする。

 しかし、それは阻まれた。


「残念ですね。インドラ様に攻撃を加えたければ、光の速さ以上に動かねば我々を翻弄することはできない」

「なっ……!」


 殴ろうとしていた腕は綺麗に切り落とされ、残ってい腕も骨が完全に回復しきっていないため動かせない。一旦退くために俺は大きくジャンプした。

 俺の腕を切り落とした二刀流の少女、確かベーオウルフと呼ばれた少女を睨み、俺は舌打ちする。

 ベーオウルフは剣についた俺の血液を振り払ってインドラを守る体制で剣を構えた。


「いやぁ。君には正直驚かされてばかりだ。一度は負けた君が、まさかヘラクレス君を吹き飛ばすことができるとは、そして、なによりこの人数を見てもなお怖気付かないとはね。いやはや、君は素晴らしい。素晴らしいほどに阿呆だ」

「言ったろ、俺は阿呆じゃない」


 ダラダラと蛇口から流れる血液を若干回復した手で押さえ、俺は荒い息を整える。

 だが、次の瞬間インドラから笑みが消えた。


「でも、これで君はおしまいだ。楽しませてもらったよ。あとは、馬鹿どもに期待しよう。ペルセウス」

「わかったわよ。――射抜け、光の如く疾く速く」


 ペルセウスと呼ばれた女性は弓を天にかざし、青く光る矢を放つ。すると、矢は天高く飛んでいき、数百という数に分かれて落ちてくる。

 逃げ場はない。避ける時間も、気力も、力も残っていない。


「がっ」


 ただ呆然と、俺は無数の矢に体を貫かれていった。

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