作戦タイムは隠密に
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俺が家に帰ると誰もいないので静けさが目立った。
俺はカバンをリビングのソファに投げ捨て、意識を集中させる。
今更だが、俺には三種の神器という如何にも必要のないものが存在する。その一つはこの死ぬことのない体。一つは他世界の主人公の力。一つは絶対服従の言霊。
そして、その中でも未解明なのが絶対服従の言霊だ。
これはどんな相手でも、どんなやつにでも仲間になるという契りを行わせるある種の呪い。だが、それだけなら服従などという物騒な言葉は使わなくてもいい。
もし、もしもの話だが。この能力は相手を仲間にするのではなく、本当に言う事を聞かせるものだとしたら、そんな恐ろしいことができるのなら、できるはずだ。
「来い。タナトス、雷電」
明確なイメージと意思を持って二人の名前を呼ぶ。
すると、目の前にそのふたりが現れた。
「……まさかその能力に気が付くとはねぇ」
「バカ野郎。これでも焦ってんだ。お前の話になんて聞く余裕は――」
「わかっているよ。神崎真理亜の事だろう? 話は天照から聞いたよ」
そう言って肩を竦めるタナトス。雷電も同じようで、リビングの椅子に座るとどこから出したのかコーヒーをに飲み始めた。
俺は頷いてから二人に俺の置かれている状況について話す。
「なるほど。なぜか相手は君のメアドを知っていたと?」
「いや、考えたけど、真理亜が俺のメアド持っていた可能性が高いな。それを盗まれたってとこだろう」
「にしても、君の周りは本当に飽きさせないねぇ。次から次へと面倒なことが起こっているんだから」
「タナトスにも面倒っていう感情があったんだな」
「馬鹿にしてないでくれないかい? 僕にだって面倒だと感じることだってあるさ。死者の魂運びとかね」
いや、それは面倒がっちゃいけないだろう?
俺は心の中でそんなツッコミをして、だからという顔をしている雷電に顔を向ける。
「雷電。何か、不満か?」
「いや。主様がそう考えるのはいいんだけどよぉ。結局、俺たちは何をすればいいんだぁ? ここに来た理由も、呼ばれる理由も明確じゃない。俺たちは一体、何のために呼ばれた?」
「……お前たちにはあいつらを、綺羅たちを抑えてもらいたい」
「ふふん。というと?」
「俺がいなくなれば綺羅たちはきっと事件が起きたのだと勘付く。そうしたら、あいつらは俺を探しに来かねない。それじゃあ、困るんだよ」
雷電から目を逸らしてそう言うと、雷電はさもつまらないという顔をしてコーヒーを一口含んだ。
そして、
「なあ、主様。主様にとって俺様たちはなんだ?」
「はあ? お前ってそういうキャラだっけ?」
「いいから。主様にとって、俺様たちってなんだ?」
「……仲間、だ」
「仲間か。じゃあ、主様は仲間を信じることもできないってことか」
「ああ? 何が言いたい?」
自分が信じる仲間という存在を馬鹿にされ、俺は少し怒りを覚え声が震える。
だが、雷電はそんな事お構いなしに話を続けた。それはもう、俺を馬鹿にするように。
「だってそうだろ? 主様は仲間が信じられないから抑えておきたい。自分が優位な位置を立ち回るために。自分以外誰も傷つけさせないために。それは、信じてないってことだろう? それとも、主様の言う仲間ってのはそういう抑えておかないと信じることにすら値しないほどの低能か?」
「ざけんなよ、この駄龍」
「おいおい。キレるなって。俺様だって自分を馬鹿にする程バカじゃない。でも、主様のしていることはそういうことだ」
わかった風なことを言うな。お前に何がわかる。
そんな言葉が腹の中で荒れ狂う。しかし、俺はそれを外には出すことはない。
その代わりに、俺は雷電を鋭く睨んだ。
「主様の言う仲間ってのは、助け合うものを言うんじゃないのか? 今の主様は、それを否定してるぞ?」
「だとしても、お前たちにはそうしてもらう。この事件は、俺のせいで起きたんだ。俺が対処しないでどうするんだよ」
「だから、一人で全部背負い込むなって。確かに、俺様の力は今回使いようのないもんだろうが、主様には心強い人達がいるじゃねぇか」
そう言って、雷電はリビングのドアの方を見る。すると、タナトスがニヤッと笑ってリビングのドアを開いた。すると、そこには薫を含む俺の仲間たちがいた。
俺は頭を抱え、深くため息を着いた。
なんで、ここにいるんだよ。
「あ、あははは。見つかっちゃった」
「全部アルの鼻息の粗さのせいだよね?」
「なっ……これでも抑えていたんですよ!?」
「あ、でも自覚はあるのね」
「恭介様、御一人で行かれるのですか?」
個人でああだこうだ言っている奴もいたが、全員の目には俺が写っている気がした。
マジか。俺は、こんな奴らを突き放そうとしていたわけか。……ホント、馬鹿だな。
ふぅと息を吐いてから、俺はみんなの顔を見た。
「俺は、真理亜を助けに行く。かなり危険なところにだ。何度死ぬかわかったもんじゃない。でも、必ず真理亜は助け出してくる。だから、だから……待っていてくれないか?」
「「「「「嫌だ」」」」」
「……ですよね~。まあ、わかっていたんだけど」
「ただ待つのは嫌だよ、恭ちゃん。もちろん、真理亜ちゃんを助けるのに参加するわけにもいかないから、行くことは絶対にできないけど、でも、それでもね。私たちは恭ちゃんの役に立ちたいんだよ。守られるだけじゃなくて、手伝いたい。戦うことができないのなら、せめて恭ちゃんの疲れだけでも取らせて?」
そう言って、女性陣(薫を除く)が俺のそばまでやってきて――
「――んっ」
キスをしてきた。
待って。こんなこと前にもありませんでした? いや、前は能力を使うために仕方なく……そうじゃなくて! どうしてこうなった!?
オーバーヒート寸前の頭では何も考えることができず、既に俺の体はやられるがままになっていた。
「恭ちゃん。舌、出してよ……」
「い、いや、ダメだろ……」
「綺羅ばっかりずるい!」
「ば、お前ら!」
トロンとした目を向けた女性陣。俺は床に倒され、体のあちこちを舐められる。
待って! マジで待って! なにこれ、マジ恥ずかしいんだけど!
季節は夏。時間は普通学校の授業。その中、俺と女性陣五人による真っピンクの行為により室温はどんどん増していく。
だがどうしてだろうか。不思議と体から力が抜け、リラックスしてきた。
さっきまでくすぐったかったところも、嫌がっていたキスも、やられるだけの行為を不思議と受け入れやる側になっている俺も、全部が全部おかしいと思えるが、それでもいいと思ってしまった。
「いやー。恭介先輩って変態だったんですね」
「うん。僕も今そう思ってたところだよ~」
「朝から、こういう行為をしろっていう言葉じゃなかったんだがな……まあ、主様が決めたことなら別にいいけどよ」
白目を向けてくる三人を無視して、俺と彼女たちの行為は次に俺ケータイに電話がなった時まで続いた。