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死後も現世でゾンビやってます  ―三種の神器をもらってハイスペックゾンビな俺―  作者: 七詩のなめ
ハーレムって嬉しいものじゃないの? めっちゃ悲しいよ?編
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動き出した黒光りする絶望

読んでくれると嬉しいです

 その街で一番大きいビルの最上階で、奴らは笑う。


「なるほどぉ。彼が今世紀の英雄かぁ。なんだか面白いね」

「あんな貧弱者、我らの仲間にする必要があるのですか?」


 凛々しい声とともに、射止めるように声をかけるものが一人。

 だが、声を掛けられた者は平然とそれを無視する。


「やめとけよ。そいつには何を言っても聞いちゃくれねぇ。それに、俺たちに決定権はない」

「そうよ。まず、その人は人の話を聞かない」


 驚く程大きいバスターソードを背にするガタイのでかい男は呆れるようにものを言って、細身の女性は言い捨てるように言葉を放つ。

 もうすぐ、日が暮れる。日が暮れれば、世界は闇に染まり人々が最も嫌う夜がやってくる。

 そして、彼らはその時間を待っていた。


「……日が、暮れた」


 表情という表情が存在しない巨漢が太陽が沈んでいくのを見ながら言う。

 ヘラヘラと笑って、背後に立つ者たちを見つめ、男は言う。


「ベーオウルフ。彼がそんなに弱いと本当に思うのかい?」

「ええ。非常に弱いと推測しますが……インドラ様は何かを感じ取ったと?」

「感じ取るなんて、そんなものじゃない。ありのまま、彼は強い」


 インドラと呼ばれた男はニヤニヤと笑いながら気を失ったと思える少年を見て言う。

 ベーオウルフと呼ばれた女は首を傾げ、その意図が読み取れないでいた。

 だが、さっきの言葉に意図など存在しない。深い意味も、いや意味なんて存在しないのだ。インドラは、ただ楽しそうという好奇心でさっきの言葉を吐き、そうして彼らを悩ませるのが非常に面白いと思っていた。

 

「インドラ。あまり時間に余裕はないぞ。俺たちにはやらなくちゃいけないことがあるんだからな」

「わかってるよ、ジークフリート。でもね、僕は彼がほしい。神を超越することができる力を持った彼が」


 インドラの目は、おもちゃを目の前にされた子供のように輝き、それを独占したいという感情によって突き動かされていた。

 そういったことが多々あったのか、彼の行動に呆れるものはいない。ただし、諦めたという人はいるが。

 

「ペルセウス。時間はあとどれくらいだい?」

「神話のバランスが崩れた今、目的のモノは刻一刻と近づいてきているけど……そうね、あと一ヶ月ってところかしら」


 ペルセウスと呼ばれた女性は空を見上げ、そういった。

 それを聞いて、インドラはうんうんと頷き、再び言う。


「時間としては十分だ。あとはそれの調整をすればいい。もしくは、もっと面白くするために、彼を巻き込むとかね」

「……あいつは、強い、のか?」

「まだ完璧じゃない分、隙も多いけど。完成した彼は最強といっていい。きっと、神を滅ぼすのに数刻もかからないだろうね。そして、彼の仲間も中々面白い。君を飽きさせることはないだろう、ヘラクレス」

「……それは、楽しみ、だ」


 ヘラクレスと呼ばれた巨漢は表情こそ変わらないが、嬉しがっているようだった。

 太陽が沈み、闇が辺りを支配する。それを見計らって彼らは動き出す。


「さあ、僕たちの物語をはじめよう。世界はいずれ、永遠に包まれる」


 インドラが言うやいなや、皆の表情が濁った真っ黒な笑みに変わる。

 だが、そんな濁った真っ黒な笑みも、極めれば純粋な笑みに変わり、最後はあたりの闇に消えていく。

 その中で、ひとつ声が聞こえた。


「おいで、御門恭介。邪龍ヴリトラを殺した英雄。僕たちの名前は、『ヴリトラを殺す者』だ」

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