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死後も現世でゾンビやってます  ―三種の神器をもらってハイスペックゾンビな俺―  作者: 七詩のなめ
ハーレムって嬉しいものじゃないの? めっちゃ悲しいよ?編
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間違えられた道

読んでくれると嬉しいです

 目の前を歩くモンスター――もとい春を見て――俺は開いた口がふさがらない。

 なにあれ。あの子ってあんな子だったっけ?

 そんなわけがない。俺は言い切り、ほかの理由を考え出す。

 いや、にしても胸でかいですなぁ。


「恭ちゃん。ふざけてないで早く何とかして」

「ねえ。俺の心読むのやめてくれない? ねぇ、やめてくれない?」

「言っとくけど、あいつ半端ない強さよ、恭介」

「……はあ、見ればわかるよ。てか、お前は戦わなかったのかよ、クロエ」

「あ、アタシは……その、えっと……」


 まあ、あながち腰が引けたとかその程度の事だろう。

 俺は困っているクロエを置いて、再び頭を回転させる。

 あれが仮に春だとして、何が起きた? 少なくとも春はあんな素敵な変身……もとい、凶悪な変身は出来ない奴だと思う。

 この状況もあいつが作り出したようだし。これは何か秘密があるかな?

 俺は険しい顔をする綺羅たちに手でその場にいろとジェスチャーして、歩き出す。


「よお、春。奇遇だな、こんな場所で会うとは」

「……ほう。貴様は……くくく、なるほど。そういうことか」


 明らかに話している相手が違う。

 俺は一気に警戒を強め、ポケットに入っているメダルを手に掴む。


「無駄なことはやめておけ。この体は、野々宮春の体だろう?」

「……テメェ、誰だ?」

「我か? 我は、邪龍ヴリトラ。ありとあらゆる呪いを司る絶対の龍だよ、人間」


 ヴリトラ。春の体を操っている奴はそういった。

 なんか、その名前どっかで聞いた気がする。まあ、どうせいいことではないだろうが。

 にしても困った。精神の方を持ってかれているとなると、とてつもなくやりにくい。

 俺は頭を掻いて、ヴリトラに交渉なり、一応の話をする。


「なあ。そいつ俺の仲間なわけよ。そいつを操るの、やめてくんない?」

「ならぬ。貴様の言葉は信用も、了承もできないな」

「あ~。じゃあ、簡単に言うな? ……そいつから出ていきやがれ、駄龍」

「ふむ。駄龍ではない。邪龍だ」


 どっちでもいいよ。要は蛇だろ?

 俺は交渉が失敗したことによりため息を着く。

 穏便に、しかも何も壊さずに済ませたかったのに。

 俺はメダルを弾き、唱える。


「俺、御門恭介が願い乞う。理不尽を嫌い、日常を愛し、仲間を救う強い力を。黄金に輝きし英雄の剣を。来い、アーサーの意思を継ぎし剣、磯崎京介の力!!」


 俺の目の前に一本の剣は現れる。

 俺はその剣を手に取り、春に向かってこう言った。


「春。ごめんな」


 そして、俺は剣を春に突き刺した。


「ぐっ……ぎゃぁぁぁぁああああああああああ!!!!!!」


 絶叫とともに春はぐったりとして、俺に持たれる。

 俺はそんな春を受け取り、突き刺した剣を抜く。そこには一つとして傷は見られなかった。


『何だ……何なんだ、その剣は! その輝きは!!』


 春から抜け出した黒いスライムみたいなモノは絶叫とも思える声を上げながら問う。

 俺は冷徹の目を向け、


「アーサーの剣さ」

『エクス、エクスカリバーかぁぁぁぁぁあああああ!! 殺す。殺す殺す殺す殺す殺す殺す!! 行け、呪詛!!!!!』


 黒い何かから、気味の悪いモノが飛んでくるが、俺はそれを剣から出る輝きによって中和、消滅させた。

 それを見た黒い何かは悶えるように、怒り出す。

 いやね? 怒りたいのこっちだよ。


「テメェの行いで、こちとらど玉に来てんだよ! 消えてもらうぞ、駄龍ヴリトラ!!」


 剣を向け、久々にキレた俺は射殺せるような目を向けて叫ぶ。

 すると、


『消える? 何を言っている? 消えるのは貴様だ、人間。我を……我をヴリトラと知っての行動か!』


 黒い何かは、巨大化してだんだんドラゴンの姿になっていく。

 忘れてた。ドラゴンって形変えられるんだっけ? ほら、雷電とか普段は人だし。

 完全な誤算に苦しみながら、俺の胸の中で寝る春を見てため息を一つ。

 逃げられねぇよな。俺の考えが正しければ、あいつはコイツの苦しみの元凶。そいつを逃せば、こいつを苦しめていた奴がのうのうと次の悪行に手を染めるというわけだ。

 そんなの、絶対にダメだろ?


「ゾンビってのも、楽じゃないねぇ。こういうことは全部俺がしなくちゃいけないんだから。……まあでも、俺の行動で誰かが救えるのなら。誰かが笑ってくれるのなら――」


 ――俺も生きていて楽しいだろうな。

 春の頬を撫で、俺は微笑む。

 ああ、これだから俺は不幸なんだ。何でも助けなきゃいけないなんて。何も切り捨てられないなんて。だから俺は甘いんだ。

 自身のダメダメさに目眩がする。


「さて、悪夢から覚めようか。長い悪夢はつまらない。そろそろ、幸福な夢も見てもいいんじゃないか?」


 俺とヴリトラの戦いが、緩やかに始まった。

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