俺の許嫁(モンスター)は手に負えない
読んでくれると嬉しいです
部屋に戻ると、ケータイにメールが来ていることに気がつき急いで内容を確認した。
「げっ……」
メールしてきたのは綺羅だった。
しかも、メール内容は綺羅の言葉だけではない。ほかの三人も入っていた。
しかし、この内容は何だ? 街に怪物がいる? え? 俺のこと?
だが、俺はあいつらに会っていない。つまり、俺ではない。
「俺以外に怪物って……雷電?」
雷電はドラゴンだ。怪物といっていいだろう。だが、あいつが街をうろつくとは思えない。
じゃあ、何だ? う~ん。これって、もしかして面倒事?
え~。じゃあ、引き受けたくないなぁ。
そんなことをしていると、ケータイに着信が入った。
「……なんだよ、綺羅」
『メール見た!? 街がすごいことになってるんだけど!』
「あ~、うん。そうなんだー」
『棒読みはいいから! このままだと死んじゃうよ! 早く助けに来てよ!』
「……いやいや、お前らがそう簡単に死ぬわけないだろ? ほら、荒っぽいけどクロエとか真理亜とかいるわけだし? あいつらに勝てない奴はいないって」
『だから! その二人が押されてるの!!』
なんと。あのふたりが? 能力的に俺より数段上のあのふたりが? それはもう、俺の領分じゃないな。うん。
「すまん。それは俺が倒せる相手じゃないわ。じゃ」
『あ、ちょっと待って! 暴れてるのは、春――』
途中で電話を切って、ケータイを放り投げる。
そして、俺はベッドに寝転がり、一息入れて、
「さて、どうする御門恭介。相手の強さも分かっていない。敵がどんなやつなのかもわからない。わかっているのは、クロエや真理亜より強いやつで、しかもあいつらがピンチに陥っているってことだけだ」
目を瞑り、ニヤッと笑う。
ああ、いいぜ。そういうの。そういう奴がいるなら、諦めもつくだろう。
あいつらを見捨てるだけの諦めが……。
「でも、それを了承できないのが俺だ。じゃあどうする? こうするだろ?」
立ち上がり、ため息混じりに首を振りながら部屋のドアノブに手をかける。
そして、
「タナトス」
「何かなぁ~?」
「綺羅たちは、どこにいる?」
「商店街だよ」
「……そうか」
全力で走り出す。
あいつらを見捨てられるほど、俺は馬鹿じゃない。
あいつらを諦めるなんて、怪物の俺には出来はしない。
ならどうする。意地でも助け出す。たとえ、自分を犠牲にしたとしても。
「とは言ったけど……これは、本物の怪物の仕業だろ……」
目的地、商店街はすでに商店街みたいなものに変わっていた。
アスファルトには亀裂が生じ、建物はところどころ崩れている。
何? 台風でも来たんですか?
そう言いたくなるほどに、荒れているのだ。
「……えっと、今更だけど、帰っていいかな?」
俺は誰にともなくそう言って、振り返ろうとすると、
「恭ちゃん!」
おっと、見つかった。
「……人違いじゃ――ああ、ごめん! 謝るから包丁下げて――!!」
包丁を向けてニコニコと笑っている綺羅は、大変恐怖でございました。
「んで、みんなは?」
「いるよ。なんとかここまで逃げてきたんだけど……」
「そうだ。お前、敵を見たんだろ? どういうやつだった?」
「どういうって……聞いてなかったの? 今暴れてるのは春ちゃん、野々宮春だよ」
……ワッツ? それって……どゆこと?
首をかしげている俺に、現実は襲ってくる。
目の前に、尻尾を生やした露出度の高い服のまま荒廃した街を歩く春がいた。