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死後も現世でゾンビやってます  ―三種の神器をもらってハイスペックゾンビな俺―  作者: 七詩のなめ
ハーレムって嬉しいものじゃないの? めっちゃ悲しいよ?編
64/167

放課後に不幸少女は真実を語る

レッツ、シリアス回!


読んでくれると嬉しいです

 放課後、約束通り俺は春に学校案内をしていた。

 そして、粗方し終えた末に、屋上に来ていた。


「どうだ? 授業とかで使う施設や教室は案内したけど、他に行きたいところとかないか?」

「うん。もう今日は、ここでいいよ。それにしても、夕焼けが綺麗だね」

「そうか? いつも見てるからそう思わないけど……」

「綺麗だよ、とっても。本当に、ここに来れて良かった」


 俺はその発言に眉をひそめる。

 なんだよ、その言葉。まるで明日には自分が死んじまうような言い方しやがって。

 俺は自販で買っておいたコーヒーを一口飲み、夕焼けを眺めている春を見ていた。


「ねえ、恭介くん」

「あ? なんだよ」

「不幸って、なんだろうね」

「……は?」


 なんだろう。この子そんなに残念な子だったっけ? もしかして、俺が思い違えてただけ?

 いやいや、そんなはずはない。そんなはずはない……よな?


「あはは。ごめんね。変だよね、こういうこと言うのって」

「別に? おかしいとは思ったけど、俺の周りの方がもっとおかしいし。それに比べたらどうってことない」

「そうかな? 綺羅さんたちはいい人だと思うけど」

「いい人? はっ、馬鹿言うなよ。あんな、異常者たちをいい人だって言えるかよ」

「それにしては、仲がいいように見えるけど?」

「そりゃ……まあ、仲が悪いわけじゃないけど……って、話逸らしてないか?」


 一瞬すごく困った末に、話が逸らされていることに気がついた。

 それがバレたのが恥ずかしいのか、春は俯く。

 そして、小さく春は話し始める。


「私ね。親が、死んじゃってるの。交通事故だって。家もね、燃えちゃってるんだ。放火だったみたい。そのほかにも、ね。いっぱい無くしてきたんだ」

「いきなり重いなぁ。まあ、普通じゃありえないよな」

「そうだよね。そう思うよね。私もね? 超能力者とか、占い師とかにも頼んで見てもらったんだよ? でもね、治らなかった。私に関わった人は、必ず死んじゃうの」

「おい、ちょっと待て。関わった人って、まさか――」

「うん。きっと、恭介くんも死んじゃうかも知れない」


 おいおい。マジかよ。俺死んじゃうの? マジ? まあ、俺の場合痛いだけで済むけど。

 そこまで考えて、俺はある事実に気が付く。

 春に関わった人全て、そう考えれば巻き込まれる人が出る。

 それはクラスメイトだったり、もしくは俺の仲間だったり……。

 まあ、親父はいっぺん死んだほうがいいかな。

 しかしながら、それを見す見す見逃すわけにも行かない。


「それは勘弁だなぁ。俺はいいけど、その理屈で言うと綺羅たちまで巻き添えだ。それはダメだな」

「……恭介くんは死んでもいいの?」

「バーカ。死んでいいやつなんていねぇよ。でもな、俺はある事情から死なねぇし。つまりだ。もし、お前が俺を殺そうとして近づいても、俺は死なねぇ」

「そ、そんなことしないよ……」

「もしもの話だ馬鹿。お前がそんなことできないことくらいわかってんだよ。目が、そういう目してんだよ」


 夕焼けに照らされ、制服が、髪が、顔が、赤く染まっている中、目だけが一切の濁りのない真っ暗な目をしていた。

 この目は、絶望を見てきた目だと、会った時に直ぐにわかった。

 そもそも、親父がただの高校生を許嫁にするわけがないとわかりきった上での判断だが、そもそも、昔のあいつの目に似てんだよ、コイツの目は。


「私、なんでこんなに不幸なんだろ。ホントは、もっと楽しく生活したいのに。私が楽しいと思ったらそれを壊すようにみんな死んでいっちゃう。もう、何が何だかわかんないよ」

「はっきり言う。お前の言っていることも、感じてることも、一切わからん。知りたいとも思わない。感じたいとも、思わない。でも、その目はやめろ。全てを諦めたようなその目だけは、やめろ。虫酸が走る」


 言い捨て、俺はコーヒーを飲む。

 あー。なんだろう。すっごいムカムカしてきた。きっとあれだ。コイツの目を見ていたからだ。

 コイツの目。ホンット、昔の綺羅の目に似てやがる。

 綺羅の両親は生きてはいない。今の家は、祖父母の家らしい。詳しいことは知らないが、綺羅の両親は綺羅が物心付いた時には死んでいた。それも、不幸な事故で。

 俺が初めて綺羅に会った時。綺羅は、公園でただ砂に向かってスコップを突き刺すだけの、子供にしては明らかに興味関心がない状態だった。

 そのせいか、公園に来ていたほかの子供にも相手にされず、ひとり黙々と、恨みをぶつけるかのごとくスコップを突き刺していた。

 それを見た親父が、面白そうだという理由で話しかけ、俺を紹介した。そして、徐々にだが、綺羅は目に光を取り戻してきたというわけなのだが、そういうこともあって俺はああいった目が大嫌いなのだ。

 なぜか? 親父がまた面白そうという理由で俺で遊ぼうとするからだ。


「どうせ、お前の目を見て親父が連れてきたんだろ。今なら、親父の手口も丸わかりだ。あながち、お前にぴったりのお友達を紹介しようとか言ったんだろ?」

「う、うん」

「あのクソ親父。そうやって俺が面倒を見るのが楽しみなんだよ。仕事しろよ仕事を。ったく」

「ご、ごめんね」

「何が? 別に、俺はお前を怒ってるわけじゃないぞ? 俺は、馬鹿で愚鈍でクズでどうしようもない親父を言葉で地に落とそうとしているだけだけど?」

「なんか、恭介くんってお義父さんのこと嫌いなの?」


 あっれ~? 今、お父さんのニュアンスが『お義父さん』に聞こえたのは俺だけかな~?

 こほん。とりあえずだ。答えよう。


「大っっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ嫌いですけど、何か?」

「そ、そこまで嫌わなくても……」

「馬鹿なの? 死ぬの? あんな親父好きになれるか。いいところなんてひとつもねぇよ」

「あはは……酷い言われようだね」

「とにかくだ。俺は親父が嫌いだし、お前のその全てを悲観的に見る目も嫌いだ。ただ、お前は嫌いじゃない。お前、笑ってる顔、可愛いしな」

「そ、そうかな?」

「ああ、そこだけは誇っていいぞ。むしろそこだけ誇れ」

「そこしか誇れないんだ……」


 こう言った冗談でも言わないと、ホントのこととか言えないわ。


「まあ、お前が自分は不幸ですって言うならそれでいい。ただ、俺はそれを否定し続けるだけだ。お前は不幸なんかじゃない。だって、不幸だったら、親父には会えなかった」

「え?」

「さっきも言ったけど、俺は親父が嫌いだ。でもな、あんな親父でも尊敬するところはある。人生に絶望していた奴を、絶対に見捨てないし、助け出す」


 昔、綺羅が俺と出会って明るくなったように、親父は人を救う天才だ。

 目の前の人に何を与えれば、幸福になるかを知っているかのように割り当てる。

 つまり、昔の綺羅にとって必要なのはずっと傍にいてくれる友達だったのだ。永遠に、別れることのない、絶対的な友達が。

 それが、俺だったということだ。そう、言わせてみればそれだけだ。


「だからさ。お前もいつまでもそういう目してんじゃねぇよ。言ったろ? お前は笑ってるほうが可愛いよ」

「……うん」

「お前は不幸なんかじゃない。世界がお前を不幸だといっても、否定しても、俺がそれを否定してやる。お前を守ってやるよ」

「そ、それって……」


 プロポーズ。そう言われればそうかもしれない。

 しかし、今の俺にそんな事は考えていなかった。勢いだったのだ。

 やばい。これって、後戻りできないものなんじゃ……。


「ま、まあ、許嫁だしな」


 夕焼けに染まりきった屋上。その中で夕焼けに負けず劣らず赤い太陽が二つ、屋上で漂う。

 御門恭介。青春真っ只中である。

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