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死んでしまうとはなさけない!!

読んでくれると嬉しいです

 意識はすぐに取り戻した。しかし、状況は芳しくない。

 どうやら、俺は襲撃を受けたみたいだが、反撃をしようにも体に力が入らない。

 まだ、傷が癒えていないということか……?

 ゾンビである俺は、死ねない。故に、傷のことを心配することは必要ないのだが、体が動かないと人間としての本能が恐怖してしまう。


「この季節、まだまだ肌寒いなぁ」


 俺はその恐怖を振り払うために、なんてことのないことを言う。

 すると、誰かが俺のことに近づき、俺の顔を覗き込んでくる。


「まだ死ねないんですね。まったく。これだから契約者は」

「何を言っているかわからないけど。とりあえず、お前がしたってことでいいんだな?」

「ええ。如何にも私がしましたけど、なにか? 先輩」


 先輩。ということは年下なのだろう。

 ムチムチと柔らかそうな双丘を揺らして、美少女が俺の顔を見る。

 そして、


「があああ!!」

「騒がないでください。結界を張っていると言っても勘付く人は勘付くんですから」

「じゃあ、心臓をえぐるのやめてくれる!?」

「嫌です」


 そう言って、美少女は俺の心臓に槍を突き立てながら無表情でグリグリとしてくる。

 マジで、痛い。ホント、言葉にできないくらい痛いんですけど、これ!

 俺の体から吹き出す大量の血を浴びながら美少女は悲しそうな顔で作業を続ける。

 コンクリートに血がつこうが、自身の制服に俺の血がへばりつこうが、少女はやめなかった。


「はあ。やっと、死にましたか」

「……いや、死ねないんだよ、こちとら」

「まったく、しつこい人ですね。嫌われますよ?」

「人に槍を突き立てる方が嫌われると思うが?」

「あなたが忘れればいいことです。まあ、死ぬからその心配は、いりませんけどね!」


 言って、再び槍を突き刺してくる。

 あああ!! いてぇ! マジでいてぇって!!

 少女が槍を薙ぎると、俺の肉片が飛び散り、体育館の壁にへばり付く。


「はあ……はあ……これで流石に――――」

「だから、死ねねぇんだよ」

「くっ!」


 今度は首を飛ばされた。

 痛いどころの話ではない。感覚すらなくなっている。

 しかし、


「なっ……再生した?」

「人をトカゲみたいに言うんじゃねぇよ。生えてねぇだろうが、くっついたんだよ」

「同じじゃないですか!」

「同じじゃねぇよ! 生えるとくっつくじゃ、くっつく方が進化してんだろうが!」


 まあ、実際突っ込むのはそこじゃないのだが、流石に何回も殺されているので頭にきていたのだ。

 俺は立ち上がり、少女の腕を掴むと、


「ちょっとお兄さん頭にきちゃったよ。いけない子にはお仕置きだよね?」

「いや! なんか目が怖いです! 私、犯されちゃいますよ!!」

「犯さねぇよ! いいから話聞けよ!」

「嫌です! なんで私がこんないやらしい先輩と話をしなくちゃいけないんですか!」

「いやら……言いすぎだろ、それ!」


 どこがいやらしいんだよ! お前のその体のほうがいやらしいだろうが!

 俺はため息を着いてから、近くに腰掛けた。

 そして、なぜか泣き目の少女にも隣に座るように命じた。


「まあ、言い訳くらい聞いてやるから、安心しろって」

「嫌です。死んでください」

「……ねえ? 扱いひどくない?」

「死んでください」


 泣き目で訴えてくる少女。

 泣きたいのはこっちだって。なんで、槍で突き刺されなきゃいけないんだよ。

 俺は少女が落ち着いてきたのを見計らって、話をした。


「なあ。なんで俺を襲った? 朝のもお前だろ?」

「はい。私がしました」

「なんでだよ? お前と俺とに関係なんてないだろ? 実質、朝お前は俺を見て何も感じなかった」

「そうですね。関係性と言うなら、あなたが今いることが私とあなたをつないでいます」

「はい?」


 全然意味わかんないんだけど。俺が生きてるから関係している? この子……もしかして頭がアレな子なの? いい精神科を紹介しようか? 知らないけど。

 しかし、少女は嘘を言っているようには見えない。ということは、答えは二つのうちどちらかか。この子の言っていることが本当で、何か関係がある。もしくは、本当にこの子の頭がイっちゃってる。


「関係性とかいうのはちょっと意味がわからないんだけど、説明もらえる?」

「嫌です。殺しますよ?」

「なんでそんなに好戦的なんだよ!」

「うぅ……近寄らないでください! 生臭いです」

「これ全部、お前がしたんですけど!?」


 ダメだ。一向に話が進まない。

 俺が困っていると、タナトスが現れニヤリと笑った。


「久々な聖の光だと思ったら、君だったのか。アマテラス」

「は? アマテラス? 日本神話最高の?」


 タナトスがそんなことを言うと、少女の背後から光が現れ、一人の美女が現れた。

 着物を着こなし、髪を結、多少の化粧をした美女は、まさしく神に相応しい神々しさを持っていた。

 が、しかし、


「なんだ、タナトスか。何の用じゃ、今、彼氏とデート中なのじゃが」


 この一言でぶち壊しである。

 なんだよ、彼氏って! デートって! このリア充神が! 爆発すればいいんだ!!

 俺が心の中で唸っていると、


「またゲームの話かい? 君も飽きないねぇ。ゲームの男の子とデートするなんて。神の名がなくよ?」


 それをお前が言うか? てか、ゲームかい!


「ふん。ゲームを馬鹿にするな。あれはすごいぞ。私の思った通りにカレが動いてくれるのじゃ。マジで面白いんじゃぞ?」

「はいはい。ゲームの話はいいよ。くだらない」

「なっ……貴様! ゲームを馬鹿にするのか!? 今すぐ撤回しろ! そして、私と一緒にゲームをしよう!」

「いいよ、僕は。君みたいに彼氏ができなくて、一生神社に引きこもるような気力はないからね」

「………………」


 なんでだろう。涙が出てきた。

 どうやら、少女の方も同じように呆れているのか、顔を真っ赤にしていた。

 俺は近づき、少女の肩を叩いて、


「お前も……苦労してるんだな」

「あなたにだけはわかって欲しくなかったです……」

「うん。まずはその毒舌をどうにかしようね? でないと、流石にお兄さん泣いちゃうよ?」

「自分でお兄さんとか呼ぶのやめてください。ひどく鳥肌が立ちますから」

「……」


 ああ。俺に居場所をください。

 切実な思いを胸に、俺は少女から離れてタナトスたちの話をやめさせに行った。


「私は悪くない私は悪くない私は悪くない。すべて世の男子が悪いのじゃ……」

「あははははは! アマテラスもここまで来ると、可愛そうだよね!」

「何やってんだよ、このバカどもが!!」


 こっちはこっちでダメな神様たちの話に花が咲いていた?

 しかし、ホントに神様ってのはこんなのしかいないのか? 世も末だな。

 俺はアマテラスを少女のもとに返し、タナトスを捕まえていた。


「ほら、そいつ連れて早く帰れよ」

「か、神に対して、なんという無礼を! 大丈夫でしたか、天照大神様」

「うぅ……今日は一杯行くぞ! こういうのは酒で忘れるのが一番じゃ!」

「天照大神様!? わ、私はまだ未成年ですのでそういうのは、ちょっと……」

「なにぃ!? 私と酒が飲めんのか!? この裏切り者め! 貴様も私と一緒に一生独り身でいると決意した中ではないか!」

「わ、私はそんな決意はしていませんよ……」


 ああ、あっちはあっちで大変なんだな。うん。同情するよ。

 俺は生暖かい目でそんな二人を見送り、俺も帰ろうとすると、


「御門恭介」

「……まだ何か?」

「私はあなたの存在を認めません。これからも、変な行動をしたらその場で槍で突き刺します」

「はいはい。お好きにどうぞ。ただ、むやみに槍で刺さないでくれ。マジで痛いから」

「そ、それと……」


 煮え切らない言葉が飛んできたので、振り返ってみると、そこにはモジモジと顔を真っ赤にした少女の姿があって、


「わ、私の名前は神崎真理亜(かんざき まりあ)です」


 急に自己紹介をされて、俺は驚きを隠せないでいた。


「べ、別に、あなたに名前を覚えてもらおうとか、そういうんじゃありません! ただ、死んで行く人にも私の名前を覚えていてもらいたくて。それと、あなたは私が殺します……」

「最後の一言、マジでいらないから。それと俺、死ねないから」

「そ、そうだとしても!!」

「あー、わかったわかった。じゃあな、神崎」


 そう言って、俺は無理やりこの場から去った。

 なんだか、嫌な予感がしたから。その予感が当たることを、今の俺は知らない。

 それは、神のみぞ知る、いたずらだ。

天照さん、マジぱねぇっす

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