表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/167

信じるものは朽ちることはないし、消えることもまた、ない

読んでくれると嬉しいです!

 神崎真理亜は、文字通り自分の現実というものに、未来というべき場所に戻ってきた。

 三年前と何ら変わらない町並み。変わったといえば、大きなビルがちらほら見えるくらいで、その他に変化は見られない。

 それは、同時に未来が何も変わっていないということを指す。

 それを知って、神崎は自分の行動に意味がなかったことに気がついた。


「はあ……」


 自ずと溜息が漏れる。

 何も変わらなかった未来。大切な人を亡くしてしまった、何もない世界。

 もう、顧みることもできない過去の残像を、幻を思い描き再びため息を漏らす。


「やっと帰ってきたの? 遅いよ、真理亜ちゃん」

「……綺羅さん? どうして、そんなに明るいんですか?」

「え? なんでって、なんで?」


 頓珍漢な事を言う綺羅に、とうとう頭がイカレタと解釈した神崎。

 しかし、それは早とちりというものだった。

 なぜなら、目の前には生死の境目を彷徨っていたクロエがいて、そのほかにも仲間たちが勢ぞろいしていたからだった。

 その中に、見知った。あるいは、忘れかけていた残像が、幻と化した人物が目に入る。


「せん、ぱい?」


 神崎は目の前の状況に理解が追いつかず、ただ頭に浮かんだ言葉を口にした。

 すると、その残像がこちらを向く。

 ありえない。だって、先輩は……。

 だが、神崎の考えを覆すかのように目の前に現れたのは、紛れもなく御門恭介その人だった。


「おいおい。そんな呼び方はやめろよ、真理亜」

「せん、ぱい……いえ、恭介さん!」


 神崎は自然と流れ落ちる涙をぶつけるかのように体ごと恭介に勢いよく抱きついた。

 恭介もそれを嫌がらずに受け止める。

 優しく頭を撫でられ、これが幻じゃないことに確信を持つ。


「恭介さん。恭介さん……」

「あはは。ホント、真理亜は俺のこと大好きなのな」

「はい。……はい」

「いやいや、断ってくれないと反応に困るんだけど? おーい。真理亜さん?」


 いつものように、または懐かしさのように恭介の言葉が耳を潤して、同時に心までも潤していく感覚に陥る。

 神崎はひと思いに抱きつき、泣いたあと恭介の顔を初めてしっかりと見る。

 そこには、確かに三年前と同じ顔だった。一箇所を除いては。


「恭介さん。右目が……」

「あ? ああ、ちょっとな。まあ、左があるし不便はないっしょ?」

「代償、ですか?」

「まあ、そんな感じだ。……なぁーに悲しそうな顔してんだよ。右目が見えないだけでお前を嫌いになるような理不尽なことはしねぇよ」

「恭介、さん」


 神崎は恭介の了承も得ずに眼帯をつけている右目に優しく触れる。

 眼帯の下には、きっと眼球はないのだろう。詳しいことは知らずとも、その程度神崎は理解した。

 大事なものを無くしても朗らかな笑みを浮かべながら、微笑む恭介に再び神崎は涙する。


「また、無茶をして……目が見えなくなって、そこまでして私たちの傍にいるべきですか?」

「ああ、いるべきだ。綺羅は廃人になるかもしれないし、クロエは死んじまう。お前は、自分を悔やんで過去まで飛ぶ始末だ。ホント、お前ら俺がいないとダメダメだな」

「記憶は、継続しているんですか?」

「だろうな。どうだった、過去の俺は? かっこよかっただろ?」

「……ホント、馬鹿なんですから」


 神崎は、茶化しを避け恭介の胸に額をくっつける。

 そういう行動をしているのは神崎だけではない。綺羅は恭介の腕に、クロエは背中によじ登って恭介を感じ、自身を感じてもらっていた。

 恭介はそういった好意を受け、神崎に聞く。


「真理亜。もう一度、俺の言葉を言ってくれ。三年前、俺が馬鹿なゾンビに宛てた、伝言を」

「『テメェの女に心配させんじゃねぇ』と、過去の馬鹿なゾンビが言ってましたよ?」


 それを聞いて、恭介は笑い、大きく頷いた。

 それが意図することは、三年という年月の中で十分に理解させられてきたこと。

 つまり、


「さあ、行くぞ。馬鹿(過去の俺)が成し遂げたんだ。大馬鹿(今の俺)が負けることは許されねぇ」


 反撃の合図だ。

 恭介の後ろに、三年という年月の中で培われてきた膨大な、強力な仲間たちとともに地面を踏み、空を駆ける。


「反撃の狼煙を上げろ。やられた分はやり返す。面倒事を終わらせて、さっさと遊ぶぞテメェら!!!!!」


 こうして、過去の面倒は終わり、未来の面倒も幕を下げる準備は済んだ。

 終わらない物語がないように、終わらない事件もまた、存在しない。

 ゆえに、御門恭介はもう、止まらない。

まさかの普通な女の子!? ――「私、あなたの許嫁なんです……」

またしても、変な女??――「ちょっと下半身とハッスルさせてくれれば、ぐへへ」

衝撃な父親!――「おう。帰ったぞ! ついでに可愛い子も連れてきた!」

暴走に暴走を繰り返すヒロイン達と、それに巻き込まれる御門恭介。

前途多難な中で、新たに事件は起こされる。


次章、『ハーレムって嬉しいものじゃないの? めっちゃ悲しいよ?編』

Coming soon...

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ