最後に笑うのはきっとひたむきで真面目なやつだから……
ハイスペックゾンビが、ついに総合評価百ポイント突破!!
本当にありがとうございます!
読んでくれると嬉しいです
暴走状態の俺に、魂の俺が触れると、一気に惹かれるように体の中に取り込まれた。
すると、視界が暴走状態の俺になり、俺は静かに立ち上がる。
「ほほう。元に戻ったか」
「……ああ、お陰様でな」
「なぁに。意思を持っただけの人間が、英雄であり、神である我に勝てる可能性は万に一つもないがな。ガーッハッハッハッハ!」
「そのテンション、なんとかなんない?」
体に戻ったばかりの俺は、体の意外なダメージに立ちくらみを起こしそうになるが、後一歩というところでなんとか持ちこたえる。
ったく。なんで大事な時に体がダメになっちまうかな。まだ、相手はピンピンしてるっていうのによ。
「さあ! さあさあ! 死闘を繰り広げよう、人間!!」
「戦闘民族か、お前は。なんでそう、戦いにしか興味ないんだよ」
だが、その言葉に応えるように俺はポケットからメダルを取る。
そして、俺の背後で俺の服を摘んで引っ張る綺羅に振り返らずに告げる。
「お前、もしかして知ってた?」
「……勘だけど、わかってた」
「……はあ、そうかい。わかってて、俺に日常をくれてたわけか」
「ご、ごめんね?」
「何が?」
綺羅の意外な言葉に、俺は素で聞き返した。
「だって、こんなことに巻き込んじゃったし。なにより、恭ちゃんが傷つくこと、しちゃったし」
「ああ、それなら大丈夫だ」
綺羅が驚く間も与えずに、俺はスサノオを見据え、こう言った。
「今、その決着をつけるから」
「……」
「そこでお前に頼みがある」
「な、何?」
「難しいことじゃない。俺の、御門恭介のそばにずっといてくれ。どこにも行くんじゃねぇ。その代わりに、俺がお前に幸せを贈るから。だから、もうどこにも行こうとするな」
俺は恥ずかしさから、綺羅の顔を見られずにいた。
しかし、綺羅はギュッと服を強く引っ張って、思わず振り返ってしまった。
すると、
「え……?」
唇に柔らかい感触を覚え、俺は一瞬何が起きたのか分からずにその場に立ちつずける。
口元を手で押さえている綺羅を見て、俺はやっと自分が何をされたのか理解した。
おいおい。マジかよ。俺、キスしちまったよ。
「お、おおお、おま! 何してんの!?」
「えへ♪ 宣戦布告だよ♪」
「せ~ん~ぱ~い~!!」
「待って! これは不可抗力で……って、こんなことしてる場合じゃないだろう!?」
自分が今、どういう状況なのかを思い出し、俺はスサノオを見る。
スサノオは……頭に青筋を立たせて怒りを顕にしている。
「貴様。我の妃に、何をした?」
どうやら、自分の好きな人に目の前でキスされたのが相当頭にきたらしい。
スサノオは今にも襲ってきそうな勢いで質問してくる。
当然、俺はその質問には答えない。ただ、こう言った。
「知りたきゃ、俺を倒してみれば?」
「よかろう! 貴様を倒し、理由を聞いてから存分に消し去ってくれる!!」
「綺羅。下がってろ」
「う、うん」
俺は綺羅を手で下げ、ポケットからメダルを取り出す。
そして、強く握ってから宙に向けて弾く。
「俺、御門恭介が願い奪う。凶悪で傲慢な鬼の力を。月夜に輝く銀色の雄々しい狼の力を。今、俺のもとに来い、神殺しの牙!!」
「ふん! 遅いわ!!」
突進してくるスサノオ。
同時に、俺の体に大量の力と思考を焼き切るような痛みが走る。
しかし、俺はその痛みに屈しない。もう二度と、俺は暴走なんてしない。
俺なんかを守ってくれる後輩がいるから。
俺なんかを好きでいてくれる幼馴染がいるから。
守りたい世界が、目の前にあるのだから。
何も全ての神の敵に回すとは言わない。ただ、こんな俺を認めてくれる奴らを守りたい。そのためなら、どんな障害だろうと、たとえ森羅万象でもぶち壊してやる。
だから、テメェは黙って俺の力になりやがれ!!
「う、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
俺の咆哮が、アスファルトを剥がし、窓を割り、屋根を吹き飛ばす。スサノオもその衝撃には耐えられずに吹き飛ぶ。
一回一回の行動で意識が飛びそうになる。だが、飛ばしてはいけない。
気合という不確かなもので意識を繋ぎ、俺は吹き飛んだスサノオに向かって疾走する。
「なっ!」
起き上がったスサノオに俺のストレートが突き刺さる。
その行動で家がひとつ消えたがスサノオはまだ生きていた。
「がはっ」
続いて、俺の膝蹴りが炸裂する。
今度は何も壊れなかったが、その代わりに空に浮かぶ雲が散った。
だが、スサノオは倒れない。
さすが神で英雄というところか。でも、そろそろ倒れてくれよ?
そういう願いを込めて、俺は顎を蹴り上げる。
普通なら首の骨が折れて即死なのだが、スサノオは笑顔で俺を見ていた。
そこで、痛みに耐え兼ねた俺がぐらつく。それを見計らったようにスサノオの反撃が来る。
「ぶはっ」
顔を横殴りにされ、脳が揺れる。
ただでさえ痛みで意識が飛びそうだったのに、頭を揺らされた衝撃で意識をつなぎ止めるのが困難になり、とうとう俺の体は地面に倒れそうになる。
クソ。これで、ダメなのかよ……。
完全に意識が飛びそうになったとき、目に入った三つの影。
まるで倒れないでと言いたそうに、その三人の影が俺を見る。
今にも泣きそうな真理亜と綺羅。祈りを捧げる神崎。
ったくよぉ。負けらんねぇよ。
「ホント、負けらんねぇや……」
倒れゆく体を既で右足が支える。
小さく言葉をこぼす俺に、スサノオがブチギレた声で叫ぶ。
「ほざけ、死にぞこないの人間風情が!!」
「黙れよ、神風情が」
スサノオの振り下ろしの左拳と、俺の力の全てを注ぎ込んだ最後の右拳が宙で交差する。
しかし、
「そこまでじゃ!!!!」
試合終了の声は、唐突に掛けられた。