犯人は――――お前だ!! (キリッ
ヒロイン募集~
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変態な駄天使を巻き、俺はやっとの思いで学校についた。
にしても、何だったんだあの変態は。マジで変態じゃないか。終始、俺の下半身見てたよ。恐怖だったよ。ああ、思い出したらムカムカしてきた!
そうやって、俺が如何にも不機嫌ですと言った顔で廊下を歩いていると、目の前にどこかで見た顔があった。
顔は朗らかで、柔らかそうな肢体、育ちに育った双丘。何者も浄化してしまう屈託のない笑みを見せながら、少女は友達と思しき人と話している。
……ちょっと待て。どこかで見たと思ったら、あいつ――――
「俺の家の窓割った張本人じゃねぇか!!」
そう、その顔を初めて見たのは今朝。俺が起きて、まだ頭が働き始めていないときに襲ってきたやつとまったく同じ顔だ。
俺はその少女のところにズンズンと歩いていき、
「おい、あんた。ちょっと話が――」
「はい?」
俺は、言葉に詰まってしまった。
その笑顔に、その美しい体に、見とれてしまっていた。
「あの……どうかしました?」
「へ? ……ああ、うん。なんでもない」
バカヤロォォォォおおおお!! なんでもなくないだろうが!! 何見とれてんの、俺ぇぇぇぇえええええ!!
しかしながら、あの可愛さで、しかもあんなエロい体をしている美少女に声を普通にかけられるだろうか? 否! 俺もただのゾンビ学生だ、無理なんだ!!
俺は回れ右をして、来た道をゆっくりと帰っていった。
顔だけ少し振り返って少女を見ると、そこにはなぜか俺を睨む少女の強ばった顔が見えた。
それからの授業は特に何もなく進んだ。まあ、いつも通りつまらなかったが。
それでも、ダンプが突っ込んで来て、死ぬというよりはマシだろう?
四時間目が終わり、飯の時間。俺は机の背もたれに凭れかけ、低く唸った。
「あ~。やっと終わった~」
「もう。何してるの?」
「あ? ……ああ、綺羅か」
「誰だと思ったの? そもそも、恭ちゃんに話しかける人なんて私くらいだよ」
「……ねえ? ひどくない? それってめちゃくちゃひどくない?」
いや、当たってるけどさ! そうだよ! 学校で話しかけてくるのは綺羅くらいだよ! なんで、こんな寂しいことを公開しなくちゃいけないんだよ!!
俺は元々くすんでいた心が、さらにくすみ錆びるような音を感じた。
「で? 何?」
「はい。お弁当忘れたんでしょ?」
「え? ……ああ、そういえば忘れたな。てか、今日はお前が作ってくれなかっただけじゃねぇか」
俺と綺羅がそんな話をしていると、誰かの椅子が倒れる音がする。いや、かなりの数の椅子が倒れたみたいだ。
何事かと思いそちらに視線を向けると、そこにはクラスの男子全員が呆然とした顔でこちらを見ていた。
「な、何だ?」
「「「「「「「な、なん……だと?」」」」」」」
「へ?」
「「「「「「「お弁当を、綺羅様に作ってもらってるの、か?」」」」」」」
……えっと。これは一体何だろう? みんなして、俺と綺羅を見て。
思い当たる節など見当たらない。というか、また綺羅が何かしたんだろう?
「おい、綺羅。今のうちに謝れよ。どうせ、お前が何かしたんだろう?」
「え? ええ!? わ、私!? ……ご、ごめんなさい」
ぺこりと頭を下げて謝る綺羅。俺は綺羅が用意してくれた弁当を開きパクパクと食べ始めた。
うん。うまい。この卵なんて冷めてるのにまだとろとろだ。
幼馴染が作った弁当を味わっていると、教室中が静まった。
「「「「「「「き、き、ききき、綺羅様……てめぇぇぇぇぇぇえええええええ!!!!!」」」」」」」
「はい!? 俺は何もしてねぇだろうが!!」
「「「「「「「このリア充が!!」」」」」」」
「誰だよ!! てか、怒るとこそこかよ!!」
意味分かんねぇよ! なんだよこいつら!
俺は男子が怒る意味が分からず、叫びを上げるしかなかった。
「はいはい。そこのバカ男子たち~。少しストップね~。御門恭介く~ん、お客さん」
「え? お、俺?」
「そうそう、君。聖女様がお呼だよ」
「せ、聖女だなんて……恥ずかしいですよ……」
「あははは。そう恥ずかしがらないで。ほら、御門恭介、早く来た」
俺は呼ばれる意味も分からずに、委員長、真部里美のところに行く。
真部のところには聖女(?)と呼ばれた少女も一緒にいて、どうやら俺はその子に呼ばれたらしい。
一体誰だ? そう思ってその子の顔を見ると、
「……ああ!」
「はい?」
その顔は見覚えがありました! はい、私の家の窓をぶち破って槍を投げ込んで来た人です!
俺は目の前の少女を指差して、叫んでいた。
でも、どういうことだ? もしかしてこの場で襲撃でもする気か?
俺が身構えていると、
「そ、そう身構えないでください。その、朝はすみませんでした。せ、先輩だとは思わないで、あんな態度を取ってしまって……」
「……朝の態度? ああ、朝あった時のことか」
「ええ。わ、私、その時……」
「? どうかしたのか?」
「だ、だからですね、その……ほ、放課後、体育館裏で待ってます!」
「は? え? ちょ、何?」
少女は俺にそれだけ伝えて走っていってしまった。
何だったんだ、今のは。てか、体育館裏?
俺が首をかしげていると、背後からとてつもないさっきを感じた。
「「「「「「「き、貴様ぁぁぁぁああああ!! 聖女様まで手を出したのか!!!!」」」」」」」
「はい!? もう! お前ら何なんだよ!!」
クラスの男子、マジ意味わからん! なんで襲ってくるわけ!?
俺が逃げようと、すると目の前を何か光り物が通った気がした。
ゆっくりと、壁の方を見てみると、そこにはよく研がれた包丁が――――
「包丁!?」
「恭ちゃん。今の、何?」
「こっちのセリフだ! この包丁は何だ――――ああ、もう、メンドくせぇなぁ!!」
幼馴染の黒化がなぜか起きて、俺は包丁を投げられながら俺の昼休みは終わった。
てか、なんでみんな綺羅が黒化したら素早く教室から出て行くの? ねえ、俺を一人にしないで?
放課後、俺は言われたように体育館裏に来ていた。
……若干、男子たちの追い回しに耐えながら。
「さて、一体何が起きようとしているんだ?」
「おや、君にしては勘がいいじゃないか。何かが起きる前に何かが起きると予感できるとはね」
「タナトスか。仕事は終わったのか?」
「ああ、可愛い女の子のパンツはいいものだね」
「……」
そう、授業中にコイツがいなかった理由はコイツが仕事があるって言ったからなんだが……まさか、女子のパンツを見に言っていたとは。神の名が泣くぞマジで。
しかし、何かが起きるとつぶやいてみたものの本当に起きるとタナトスのお墨付きをもらってしまった。ホント、厄介だな。
俺はあの少女が早く来ないかと周りをキョロキョロしていると、
「がっ」
背中から腹に向かって熱いものを感じ、自身の腹を見てみる。
そこには朝、俺の部屋に投擲された槍が突き刺さっていた。
腹からは大量の血が流れ、口からも血を吐き出す。
「クッソ。なんだよ……これ」
俺が痛みに耐えていると、次弾、三弾と次々に槍を突き刺さってくる。
俺は衝撃に耐えられず、地面に倒れてしまった。
何なんだよ……これ。マジで、イテェじゃねぇかよ。
薄れゆく意識の中、俺が最後に見たものは、
「魔を打ち払う聖なる槍よ。この巫女たる我が身に、永劫の光を灯し給え。魔の怪物どもを打ち払う聖なる力を与え給え!」
悲しそうな顔をした、ムッチムチの美少女だった。