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回り道は近道。あれはうそだ。

読んでくれると嬉しいです

 屋上。落ちる体制に入った神崎に、俺の苦しい叫びが響く。


「まさか、落ちる気じゃないだろうな?」

「だって、このままだと――」

「落ちたら、俺も落ちてお前の下敷きなるからな? 恨むぞ? めっちゃ恨むからな? 何をしてでもお前を生き残らせて、あとで本気で殴るからな?」

「……先輩」

「なんだよ。バカ巫女」

「最後の忠告です。私の手を離してください」

「俺ができると思うか?」

「先輩には、私よりも助けなくちゃいけない人がいるはずですよ?」


 その言葉に、俺は奥歯を噛み締めた。

 助けなくちゃいけない人? ふざけるなよ。この変態ボディ巫女が。


「人に……優劣なんてねぇよ」

「はい?」

「人には、上も下もいないんだよ!! 目の前にいるお前も! 綺羅も! 俺にとっちゃどっちも大切な奴なんだよ! 俺は、二人共助けてみせる!!」


 俺はポケットに左手を突っ込み、一枚のメダルを手に取る。

 決意がどうこうとか面倒なことは無しだ!! 俺に全て渡しやがれ、この主人公(役立たず共)が!!!!

 メダルを宙に弾き、詠唱していく。


「俺、御門恭介が願い奪う。信念を突き通し、偽善を破壊し、自身の力を困難という名の壁を破壊し続ける最強の力を。今、俺のもとに来い、真実を貫く拳!」


 メダルをキャッチし、全身に回る痛みある最強の力を荒っぽく振り回し馬鹿な巫女を屋上に戻す。


「きゃっ」


 乱暴に床に落とされた神崎は痛みのためか小さくはない悲鳴を上げた。

 それを、俺は見下しながら言う。


「死のうとするな。昔、俺はそう言うことを言ったつもりだったけど、わかってなかったのか?」

「それは……私に言ったのではなく、この時代の私に――」

「ならもう一度言う。死ぬな。たとえ、圧倒的不利な状況でも、死ぬな。確定された死でも、死ぬな。お前は俺の仲間だ。死ぬことは、許さない」

「そんなワガママ、通ると思ってますか?」

「ああ思うね」


 言うと、神崎はびっくりして目を丸くしていた。

 俺は構わず続ける。


「馬鹿なお前のことだ。未だに自分はこの街を守るために生まれて、いつかはこの町のために死にたいとか考えてるんだろ? 馬鹿馬鹿しい」

「ば、馬鹿馬鹿しいって言い方はないですよね!?」

「馬鹿馬鹿しいわ、バカ。 こんな街を守ったところで、お前を褒めるやつなんているか? いるわけないだろうが。 そもそも、この町の何パーセントがお前を知っている? 一パーセント行くか? 行くわけないだろ?」

「……それは、その……」

「褒められもしない。気づかれることすらない人生に、何の意味がある? お前は、無駄死にするところだったんだ」


 俺は神崎のもとに近寄り、神崎の顔を少し持ち上げ、覗き込むように見る。


「わかるか? お前がしたことは、何の意味もない。ただの無駄死にだ」


 どうしていいのかわからない神崎は、目に涙を浮かべることしかできないでいた。そんな神崎に、俺は現実を突きつける。

 そして、


「もう二度と、あんなことするんじゃねぇぞ? しようとしたら、俺がお前を絶命させてやる」

「え?」

「お前が、命を無駄にしようとするなら、俺がお前を殺すってことだ」


 無抵抗な女の子に、殺人予告を渡す俺は、さぞかし不審者だろう。

 神崎は涙をボロボロと流しながら、アタフタしている。


「だから、俺を殺人者にさせないでくれ。どうか、無駄死にだけはしないでくれ。永遠とは言わない。俺のそばで、俺の話し相手くらいにはなってくれよ」


 そう言って、俺は泣いている神崎を抱きしめる。

 既に神崎は意気消沈していて、全身俺にされるがままだ。


「……で、これは一体どういう状況なんですか?」


 と、そこに真理亜さんが登場。

 一気に場が凍る。


「……真理亜さん? いつからそこに?」

「さ、さっきですけど?」


 そうは言うが、真理亜はなぜか俺の方を見ていない。

 チラっと見えたのだが、どうやら真理亜は顔を真っ赤にしているらしかった。

 

「嘘言うなよ。もっと前からいたんだろ?」

「い、いるわけないでしょう!?」

「だったら、なんで俺の方見ないんだよ?」

「せ、先輩がきもいから?」

「……やっべ。かなり心に来たわ」


 不意に飛んでくる真理亜の精神攻撃に俺は見事に撃沈され、傷心中。

 再起は……未定。


「あ、せんぱ――そういうんじゃなくてですね……先輩!? 先輩ぃ!!」


 自分の感情が制御できずに暴走する真理亜。それに巻き込まれ撃沈する俺。そして、それを見て懐かしそうに笑う神崎。

 まだ、綺羅を助けに行けないみたいだった。

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