何が本当のことなのか……
読んでくれると嬉しいです
昼下がり、頬杖を立てて俺は窓の外を眺めていた。
授業が面倒なわけでは……もちろんそれもあるが。今はその理由が主ではない。
綺羅、今日も学校に来なかったみたいだな。
そう、スサノオとかいう神様に花嫁として認められ、学校にも来ないで家にいる幼馴染のことを考えていたのだ。
俺は、負けたんだもんな。もう、あいつのことは考えないほうがいいのかもしれない。
ここ数日でいろいろなことが起こりすぎていたため、一度整理する。
まず、綺羅は神様に問題を起こされている。
次に、未来から神崎がやってきた。
最後に、未来では俺は死んでいて、その分岐点が綺羅の救出が関わっている。
ざっと考えてみたが、どう見繕ってもいい答えなど出ては来ない。
と、そんな考えをしていると、
「どうしたんだい? 授業中からずっと考え込んでいたみたいだけど」
授業が終わり、動かない俺を面白がって話しかけてきたのは炎の神をパートナーとするフレイだった。
フレイはニヤニヤとイケメンのため余計にいけ好かないのに、無償にムカつく笑みを浮かべながら俺の怒りのボルテージを上げてくる。
「ああ、なんでもねぇよ。てか、近寄るな、触るな、笑うな」
「あっはっはっは。君は面白いことを言うね!」
「……お前みたいに能天気でいられたらどれだけマシか……」
「あははははは」
「はあ……」
こいつと話していると、一気に上がったボルテージが一気に下がるというよくわからない現象に会う。
しかし、ホントにこいつは何なんだ? 俺を追いかけて学校に留学とかどんだけ俺のこと好きなんだよ……あれ? これ、前にも言ったっけ?
「そういえば、君のお気に入りの女の子。今日も来ていないね」
「……は? 誰?」
「ほら、君のお気に入りだよ。名前は確か……き、き、き、綺羅だ!」
「下の名前しか覚えていないのかよ。まあでも、よく気がついたな」
「ははんっ! これでも頭はいい方なんだよ」
「うそこけ……」
「まあ、否定はしないけどね」
フレイは勝ち誇ったように胸を張り、ムカつく言い方で話を続ける。
「で? 本当にどうしたんだよ」
「……ちょっと、な」
「ふーん」
フレイはそれより先は聞いては来なかった。
それが、俺に気を使ってなのか。単に興味がなかったからなのかはわからなかったが、聞かれなかったことに俺は救われた。
こんなこと、コイツに話せるかよ。
それは重い話だからではない。俺に勝った神様がいると話せば、きっとこいつのことだ、自分が倒すと言い張ってホントに倒しに行くだろう。
だが、その場合。代償となるのはこの街全体だろうけどな。
コイツが神様と戦ったあとの街が、火の海になることは容易に考えられた。
「でも、君らしくないと言ったら君らしくないよねぇ。迷いを感じるよ?」
「あ? 迷いだァ? テメェにそんなのわかるわけないだろうが」
「わかるさ。君、本当はここにいたくないんじゃないかい? 今からでも、何かに向けて走り出したい。そう思っているだろう?」
「……」
「おっと、否定はしないんだね」
またしても勝ち誇ったように胸を張るフレイ。
俺は、言い返すことができなかった。いや、言い返す言葉が浮かばなかったのだ。
俺が、迷いを感じてる? まさか、綺羅のことを心配しているとでも? 馬鹿馬鹿しい。あいつは俺より強いし、何かと物分りがいいやつだぞ? そんな奴を心配なんて……。
しかし、言い切ることはできない。心配をしていないとは、誰も言えるはずがない。
「ふざけんなよ」
「ん?」
「テメェが俺を語るんじゃねぇ。俺のことは、俺がよくわかってる」
「じゃあ、今君はここにいるべきじゃないことくらい、わかるだろう?」
「だから、語るな。それくらいわかってんだよ。でも、それを突き通していいのかも、分かんねぇんだよ」
「何を馬鹿な事を」
「あ?」
俺が真剣に考えていることをフレイは一言、馬鹿なことだと切り捨てた。
それに怒りを感じて、俺はフレイを睨んだ。
「突き通せることは突き通す。それが君だと、俺は認知していたんだけど、勘違いかな?」
突き通せることは突き通す。
そんな言葉、どこかで聞いたことがある。だが、それは思い出せない。
しかし、確かにその言葉は俺の心に深く突き刺さった。
ったくよぉ。今更クサイセリフ吐きやがって。
俺は頭を掻き、そっぽを向く。
「お前に言われなくても、わかってんだよ」
「それなら良かった。それでこそ俺のライバルだよ」
「誰がライバルだ。勝手に宿敵任命してんじゃねえ!」
「え~。いいじゃないかぁ。減るもんでもないし、むしろ増えるよ?」
「敵がな! 望んでないもん増えても嬉しくないわ!!」
「ホントは嬉しいくせに~」
「どこがだよ!?」
一瞬格好いいことを言ったかと思えば、今度はこのふざけ様である。
ホント、イケメンとか何考えてるのかわけわからん。
俺は立ち上がって、一つあくびを漏らした。
「お、戦いに行くのかい?」
「馬鹿言え、トイレだっつの」
俺はフレイのふざけを軽くあしらって、トイレに向かった。
ホント、俺もあいつも、わけわからんな。